ID:l9sUXtG70氏:井戸端会議は続く。 ~Good Afternoon

「‥‥暇ねぇ」
「‥‥暇だねぇ」

薄く太陽が照り付けてくる昼下がり。
夏には地獄のホットゾーンとなりうるそれも、冬になってしまえば砂漠のオアシスの如きありがたさである。
みゆきは委員会の仕事、つかさは料理の専門学校に通う為の資料探し。3-Bの教室には、残されたこなたとかがみが脱力しながらそれぞれ机に身を委ねていた。

「ねぇねぇ、かがみん」
「ん~?」
「お昼ごはん、食べたっけ?」
「さっき食べたばっかでしょ~。お弁当にチョココロネ3つなんて尋常じゃない量を食べといて、まだなんか食べる気ぃ?」
「ホラ、なんか寒くなるとさ、ビミョーに甘いもんが恋しくなったりしない?」
「‥‥私は年中だから、そんな季節によって差を感じたりはしないかな」
「そうかぁ‥‥へーぇ、ふぅん」
「何よ、まだお腹空いてるんなら、今から食堂にでも行く?」
「んーや。暇だから聞いてみただけ」
「あっそ」

会話が途切れる。
夏のようにやかましく蝉の鳴き声が響いてるわけでもなく、教室内の微かな喧騒と、木枯らしに揺られた窓がガタガタと枠にぶつかる音。
それが全てだった。

「暇だねぇ」
「そうねぇ」

つぶやくと、つっぷしていた頭を左から右へ傾ける。今まで机で塞がれていた片方の耳が開放され、外の空気に触れた。
ひんやりとした感触と、やけによく聞こえる空気の通過音。それは向かいで同じように突っ伏している相手の呼吸に他ならない。
おぼろげに前を見る。
さっきまで視界にあったのは窓辺の景色。それが180度視点が変わったために、今度は逆側にある教室の入り口が目に入った。
ドアの近辺ではしゃいでいる男子。それを微かにさえぎる、ジュースの紙パック。

目の前にあったそれを持ち上げてみる。無炭酸コーラ、なんて味な名前が書いてあった。
裏返してみる。内容量や含有成分などが事細かに記されていた。記載を覆い隠すように付属してある専用のストロー。
ただしそれはもう使用済みで、肝心のストローは飲み口のところにささっている。あるとすれば、ストローを出した後に残る袋。

ツメでかりっ、かりっと引っかいて、裏の接着剤ごと取り外す。
続いて、さしてあったストローを再び口の中にくわえ、その先をまっすぐ目標に向ける。
ストローの先に、剥がしたストローの袋を装着して。

狙撃準備完了。3、2、1、発射。



ひゅっ。

何かが風を切る音。

反応して顔を上げた目標の眉間に、装着してあったストローの袋がクリティカルヒット。

「やりぃ、命中っ」

思わず笑みがこぼれた。
つっぷしたまま顔だけ上げて、右手だけで力なくガッツポーズ。
だが相手は微動だにせず、ただただその光景を見つめていた。
そして自分の眉間に当たったものを確認しようと寄り目になる。まるでにらめっこをしてるみたいに。

突っ伏した体勢を変えず、当たって落ちた物体を目だけで追って視認する。

「‥‥‥かがみん、なにやってんの?」
「‥‥ん、暇だったからやってみただけ」
「あっそ」

がたがた。
木枯らしが一層強く吹いて、教室の窓を揺らしていた。
何ともいえない沈黙を、少しでも和らげるかのように。
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