ゆたかの失敗

「ゆーちゃん、このゲームやってみない?」
 そういってこなたが取り出したゲームは牧○物語。なぜかワンダフルライフ。
「あ、お姉ちゃん。それってぼくものだよね? ……ワンダフルライフって、結構昔のやつ持ってるんだね」
「最近このゲームにはまっちゃっててさあ。ガール版に比べれば不自由な部分が多いけど、こっちにはこっちでいいモノがあるんだよ」
「へ、へぇ…… じゃあ、やってみようかな……」
「よし、はじめからで、ポチッとな」
 OPを早めに飛ばして主人公の名前入力に行った。
「名前……は、『ゆたか』でいいね?」
「う、うん」
「犬はどっちにする?」
「え、え~っと……じゃあ、耳がたれてる方で……」
「じゃあ、名前は、『そうじろう』でいいね?私はそうしてるから」
「お、お姉ちゃんいくらなんでもそれは……」
「ごめんごめん。動物の名前は全部それで統一しちゃってるから、つい癖が出ちゃって」
「こなた、お父さんは悲しいぞ……」
 ドアの隙間からのぞいていたそうじろうが呟いた。
「じゃあ、名前は何にするの?」
「え、えと…… チェ、『チェリー』で…みなみちゃんのペットの名前が思い浮かんだから……」
「まあ、そういうのもありだね。じゃあ、ゆーちゃん。こっからは自分の力でプレイするんだよ」
「あ、はい」


 あまりゲームをやったこと無いのか、こなたに説明を受けながら……というより、質問しながらプレイしている。
「お姉ちゃん、この空いてる部分は何?」
「それは、まだ手に入れていないアイテムが入る場所だよ。今は関係ないよ」
「この奥の小屋は?」
「EDになっても開かないらしいよ。まあ、無視しておけばいいって」
「畑の土に3種類あるのは?」
「後で品種改良って言うのがあるんだけど、そのときできた種にやせた土とかだと育たないものがあるんだよ」
「へぇ~」
 熱心に質問するゆたかと、質問に淡々と答えるこなた。このようなやり取りが5分続いた。

「お姉ちゃんありがとう」
「いやいや、いつでも頼ってくれたまえ。そんなことよりさ、こういうのやってると牧場行きたくならない?」
「うんうん、牧場行きたくなるよね」
「でもさ、本当に牧場に行ったとしても、牧場独特のにおいとか、牛の唾液とか、そういうのが問題になるよね」
「う~ん、確かにそうかもしれないけど……」
「それに、主人公は軽々と馬を乗りこなしてるけどさ、都会育ちの男が手綱すら無いのにどうして軽々と馬に乗れるんだろうね」
「そ、そんなに速いスピードじゃないからとか?」
「いいや、馬は意外と早いんだよ。競馬の選手でさえ手綱をつけているのに、危険極まりない!」
「ま、まあ、これはこれ、それはそれ、ということなんじゃ……」
「むー、何か納得できないな」
 こんな調子で会話をしているこなたとゆたか。そして密かに見守るそうじろう。


「ゆーちゃん、そろそろセーブしといた方がいいよ。セーブし忘れてまたはじめから、なんてコトにならない用にね。私はちょっとトイレへ……」
 と、部屋を出て行くこなた。そうじろうはそそくさと自分の部屋へ戻った。
 5分後、トイレから戻ってきたこなたが見たモノは、コントローラーを持ったまま硬直したゆたかと、セーブデータ画面だった。
「あ、あれ? ゆーちゃんどうしたの?」
「お、お姉ちゃん……うっ、うっ……」
 ゆたかは突然泣き出し、こなたに抱きついてきた。こなたは状況が理解できず、慌てていた。
「お姉ちゃん、ごめんなさい…… 私…… うっ……」
「ちょ、ちょっといきなりなにをするんだね、ゆーちゃん! まず落ち着いてゆっくり話して! 何もしないから」
 こなたはなんとかゆたかを落ち着かせた。
「うっ、ぐすっ……じ、実は……」

―――1分前―――
「お姉ちゃんの言うとおり、そろそろセーブしておこうかな。」
 餌をやり終わり、畑に水を撒き終えて、一安心したゆたか。ベッドの隣のノートを調べて、セーブしようとしていた。
「データ1の方はおねえちゃんが使っているから……あっ」
 だが、ゆたかは間違えて、こなたのセーブデータに上書きしてしまったのだ。
「…………」
そしてそのまま5秒ほど硬直していて、こなたが部屋に入ってきて、現在に至る。

「ふむふむ。なるほど……」
「たそがれの章って、最後の方なんだよね? もうすぐでクリア目前だったのに、私のせいで……うっ」
「ゆーちゃん、大丈夫だよ。データなんて、また作ればいいんだし。そんなに気にすることじゃないよ。」
「お姉ちゃん……」
「許してあげる。かがみだったら許してなかったかもしれないけど、ゆーちゃんだけは特別。」
「ありがとう……うっ、うっ……」
 ゆたかを優しく抱擁するこなた。優しく声をかける。
「ほら、もう泣いちゃダメだよ? ゆーちゃんは、笑ってる方が可愛いよ。だから、笑って。ね?」
「お姉ちゃん……うん!」


「っていうコトがあってさあ」
「へえ。あんたにしてはいいコトするじゃない」
 とかがみが言う。
「泉さんは優しいですね。私だったら、怒ってしまうかもしれませんし」
「でも、もうすぐクリアだったんだよね? ちょっと残念じゃなかった?」
 そう聞くつかさに、こなたは答える。
「いや、実はさ、コピーデータを作っておいたんだよね」
「は?」
「よーするに、バックアップ。同じデータを別のメモリーカードに入れといたの。」
「なにそれ。じゃあ、結局データは無事ってコト?」
「そゆこと~」
 かがみはため息をつく。
「ハァ……感動したあたしがバカだったわ」
「でも、『嘘も方便』といいますし、泉さんはいい選択をしたと思いますよ」
「やっぱこなちゃんはすごいよ。私だったら、そこまで巧みに言えないと思うなあ~」
 みゆきとつかさがフォローをいれる
「ま、なんにしろ丸く収まったからいいんだよ」
「はいはい」


「っていうことがあっったんだ。お姉ちゃん、私があんなことしたのに怒らなかったんだ。優しいよね」
「……私もそう思う」
「ほほう、そんなコトがあったのか……フフフ……」
「田、田村さん?」
「泉さんと小早川さんには悪いッスけど……そのネタ、いただきますゥ―――――ッ! ……最近、ちょっと漫画のネタが全く思い浮かばなくて」
「は、はあ……」
「でも、オチが無いからなあ―――そこは自分で作るとしるよ。」
「あ、あの、田村さん?」
「じつは別のメモリーカードにコピーをとっていたとか、自分のデータではなかったとか、そういうのもありだな……」

さてはて、ゆたかが真実に気づくのはいつになるのでしょうか
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