ID:JsBXPbMn0氏:タイトル不明

あれからどれぐらいの月日が経ったんだろう。
皆別々の大学に進学して、でも連絡はとってて、でも、次第に面倒くさくなってきて放置して。
そのくせ夏休みになって帰省したときには、ちゃっかりかがみん家に遊びに行ったりして…。
かがみもつかさもいなかったけど…。みゆきさんは…どうだったかな?…忘れちゃった。

私の大学3年間は今思い返せば何も残らない3年間だったと思う。
留年しない程度に、と大学に通いつつ、後はネトゲと漫画とアニメ、そしてアルバイト。
高校生の時から常習化している行動が、大学に行って変わる訳もなく、私は毎日を消費してた。
変わったことと言えば、一人暮らしになって、咎めるものがなくなって、
ネトゲの時間が前より増えたことだけ。次第に減っていく睡眠時間。出席日数。
結局、時間が惜しくなってバイトは止めちゃったし…。最終的には大学も中退するはめになった。
お父さんは…何も言わなかった。

そうじろう「こなた、風呂、湧いたぞ」

扉越しにお父さんの声がする。そういえば3日風呂に入っていないんだった…。この、今やっているネトゲのせいだ。
ネットでは、メーカーの過度な拝金主義に、ユーザーを舐めてる!と一斉非難が起こったソフト。
でも不思議と中身そのものについてはそれほど悪い評価を聞かなかった。それで、どんなものかと、興味本位でやってみたのが大失敗。
いい加減ネトゲには飽きていたはずなのに、現在、無期限ネトゲ生活へとウェルカム状態だ。

着ているTシャツを嗅いでみる。やっぱり臭い。そろそろ入らないといけない。
でも、体と意識は、モニターに釘付けのまま。

「後で入るよ」

そうじろう「・・・」

お父さんは相変わらず、なにも言わない。しばらくするとそのまま立ち去って行った。


時計を見るとそろそろ8時。後30分も待てば、いつもの様に晩御飯を持ってきてくれるはずだ。
朝からご飯を食べてないので、素直に嬉しい。いや、またカップラーメンかもしれないけど。


……こんな生活がもう4年以上、いや、もうちょっと長いかもしれない間続いている。所謂ひきこもり。
かがみはOL。みゆきさんは大手企業の受付嬢。つかさは結婚して、専業主婦になったらしい。
いつだったか忘れたけどお父さんから聞いた。つかさの結婚に際しては招待状も届いてたみたいだけど、
お父さんに頼んでどうにか処理してもらった。今の自分を見せるなんて到底無理だからだ。惨め過ぎて。。

「…ッ!!」

昔のことを考えたら無性にイライラしてきた。乱暴にキーボードに右手を打ち付けると、
そのまま足で電源タップを蹴飛ばした。プチッ、という音ともにパソコンの電源が落ちる。
電気信号が切れたモニターには私の顔が映っていた。見る影も無いボサボサな長髪で、暗鬱な空気を宿した…。

…ああッ!、もう寝よう! 寝れば少しは気も紛れる。嫌なことも忘れられる!
座ってた椅子を乱暴に立ち上がり、電気も消さぬまま、私はそのままベットに飛び込んだ。
……全て。全て夢であったらいい。

…って、そう!私は今、悪夢を見ている最中で、うなされているだけ。そうだそうしよう。これは夢。きっと夢。
朝起きて、一緒に学校行って下らない話をかがみ達とするのだ。そうすればこんな夢は忘れられるに違いない!

布団を被り、強く強く目を閉じた…。早くこの悪夢から開放して欲しい・・・。早く・・・。早く・・・。早く・・・。


最近父の様子がおかしい。

こなたが私に相談してきたのはそんなことだった。
いつものオタネタから、どういった経緯でそういった話になったのかはここでは割愛させて頂くとして…、
何はともあれ、普段能天気なこなたの真剣な様子(なんだが・・・微妙な顔)から察するに、
尋常ではない事態だと察知したのがつい今し方。

こなたの話を簡単に要約すると、こなたの父、そうじろうが最近、異常に明るいのであるという。
まぁ、前から変わった人だと私は認識していたので、大差ないんじゃない?と言ったのだが、
こなたの話によると、近況から察するにあまりに不可解、とのこと。
曰く、小父さんは数日前まで仕事でスランプに陥っていて、ずっと不機嫌だった。
曰く、普段は溢さないような愚痴も食事中に言うようになっていた。
曰く、そんな状況が1ヶ月以上続いていたのに、改善したにしては、
機嫌がいきなりここまで良くなるのは不自然すぎる。等々。

なるほど、確かにスランプというものは0か1か、の様な単純な2択ではない。
多くの作家は長期的な期間を通してゆっくり問題を解決していくと聞く。
勿論、小父さんがそのケースでない、つまり、スランプ自体は長かったが、
問題自体は複雑ではなかったため解決!といった可能性も払拭できないが・・・。

「・・・で、取り合えず、あんたはどうしたいの? 別に悪くないでしょ? 機嫌は良いんだから」

こなた「いやいや、それだけじゃ・・・ないんだよねぇ・・・」

こなたとしては珍しく、幾分言いよどんだかと思うと、ゆっくりと口を開け始めた。
なるほど、先ほどまでの話は単なる布石ということか。

こなた「実は・・・」

―――その夜。

私はこなたの家にいた。つかさには簡単に「こなたの家に泊まってくる」とだけ伝えておいた。
時刻はちょうど11時を回ったあたり。通常、こなたはこの時間まだ起きているらしい。呆れた奴だ。
が、今夜は事情が特別。こなたはベットへ。私は押入れで待機。
・・・しっかし、この押入れ、汚くて驚いた。これではド○えもんも満足に横たわれないだろう。
無理やりスペースを確保して、結局、体育座りのような格好になった。

「じゃあ、かがみ。頼んだよ」

こなたはそれだけ言い残すと、電気を消した。

時間はゆっくりと過ぎていく。0時・・・。1時・・・。2時・・・。
・・・・・・いい加減私もここにいるのが辛くなってきた。私は、こなたと違って夜更かしはしないのだ。
睡眠と書かれた紙を頭に張った棒人間が、私をベットへと手招きしている。っと、これは危ない。幻覚だった。

――その時だ。
時刻は、、、ええと、手元の時計で3時を過ぎた辺り。こなたの部屋の扉がゆっくりと開いた。
私の手元は一気に汗ばむ。3時10分。草木も眠る丑三つ時だって40分以上前だ。
こんな時間に誰かが部屋に来ること自体がおかしい。しかもそれが、

「小父さん・・・」

こなたが言っていたことはあながち間違いではなかったのかもしれない。

暗がりなので断言は出来ないが、小父さんは酷く喜んでいるように見えた。
足音を立てずにゆっくり、ゆっくりと、とこなたのベットの方へと歩んでいく。・・・妙におかしい。
嫌な予感を胸に抱きつつ、ただ息を潜めて待つ。決定的瞬間までは何があっても出ないと
こなたに提案したのは私だ。破るわけにはいかない。

小父さんはこなたのベットの傍らに佇むとしばらくの間、こなたの寝顔を眺めているようだった。
どこかその仕草、視線は不吉と言うほどのものでもないようにも見えたり、でもよく分からなかったり。
ああ!この暗闇が煩わしい!!

やがて、小父さんの動きに変化があった。
ゆっくりと屈み、ベットの傍らに手を添えると・・・。

「えっ!?」

思わず声が出そうになった。あれは、えーと、そうだ。キ・・・、キ、ス、というやつではないだろうか?
え?なんで? 分からない。分からない。そんな馬鹿な? だって・・・え? 頭が一気に混乱し始めた。
ここからだと見えるのは、ベットに横たわるこなた。そして異常にそれに近い小父さんの後頭部。
つまり、そうは見えるけども、そうであるとは限らないのだ。確証が持てない。出るべきか、出ないべきか。
どうする・・・どうする・・・。

そうこう私が迷っている間に小父さんは頭をゆっくりと上げた。
立ち去ろうという気配が感じられた。

ヤバい!・・・ええい!こうなったら!

次の瞬間私は飛び出そうとした。その時、


そうじろう「―――お休み、かなた。愛してるよ」


私は・・・飛び出せなかった。


次の日。私はこなたに起こされた。
よくこんなところで寝られるね~と、軽く馬鹿にしたような軽い口調が心地よかった。
「あれ・・・? 私」

あれからどうしたんだっけ。自分の記憶が怪しい。確か、小父さんが「    」って言って、その後、ええと・・・。

こなた「・・・で、なにかあった?」

あ、思い出した。そう、私はあの後、結局朝まで起きたままで、でも小父さんが戻ってきそうで隠れたままで・・・。
で、そのまま朝日が来たところまでは覚えてる。でも、どうやらそこで寝てしまったらしい。不覚。

「あ、うん・・・。何もなかったわよ? あんた心配しすぎなんじゃないの?」
こなた「そうかなぁ? う~ん・・・」

「小父さんはきっとスランプから抜け出せて嬉しかったのよ。ほら、言っちゃ悪いけどちょっと変わってるしさ。
スランプの内容自体、私達からすればしょうがない悩みで、それが無事解決したから舞い上がってただけじゃない?」

こなたは少し考えた様子だったけど、すぐにそれで納得した様子だった。
本人からすれば不信な点は残るが、こっそり見張りまでつけて――つまり私のこと――何もなかったと言われては
納得をせざる得ないだろう。もう一回やる、やらないは別にして。

こなた「分かった。ありがとね、かがみ」

こうして、この件はお開きとなった。

――1ヵ月後。・・・結局、今も私はこなたに本当のことを言えないままでいる。
言ってしまえば、実は酷く危ないものの上に成り立った、泉一家の運命が変わってしまうかもしれない、と思ったからだ。
幸いなことに、こなたからその後、小父さんはどうとか、そういった話を聞かない。こなた自身もいつもの様にオタ話ばかりしている。
私のしたことは実はいけない事だったのかもしれない。いずれは言わなくてはいけない日も来るだろう。
でも、今はもう少しだけ・・・、もう少しだけ今の平穏な関係を甘受したい。そう、心の弱い私は思うのだった。 
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