第2夜

第2夜

次の日、陵桜学園内のどこにも泉こなたの姿は無かった。
「なんだよ、あいつ・・・。休むなら一言くらい言ってくれてもいいのに・・・」
「昨日、電話の時一方的だったから、怒っちゃったのかなぁ~?」
さびしげな二人。いつもいるはずのもう一人が今日はいない。
HRの時点でも担任である黒井は「ずるちゃうん?来たらとっちめてやるけどな~」としか、言ってなかった。皆勤賞とはいかないまでも、少なくとも3年になってからは
病欠以外のこなたを見ることは無かった。
「でも、メールも出来ないほど重症なのかも!」
「いやいや、それならおじさんから連絡が入るでしょ?」
「そだね・・・」
なにか、嫌な予感がしてた。お姉ちゃんも同じだと思うけど、なんか嫌な予感がする。
そう考えながらつかさは今日5度目のメールをこなたに送った。
<こなちゃん、何かあったの?>


泉こなたはそれから1週間、学校を無断で休んだ。
「どうしたんや泉?」
「すみません、ほんとに何でもないんです!あはは、ネトゲやりすぎてガッコ忘れてたとかさすがの私も言い出しにくくって・・・」
朝の職員室。校内にいる生徒の数もまだまだ少なく、静かな無機質な空気を感じた。
「にしてもやなぁ~・・・」
黒井ななこは思った。泉こなたとは同じネトゲでよく遊ぶほうだ。友人登録もしてるし、プライベートでのメール交換もしている。たしかにこいつは”オタク”と呼ばれる人種に間違いはない。
だが、そこまで羽目をはずしてのめり込むほど壊れた人間ではないはずだ!
教師と生徒以上のつながりを持つ彼女だからこそ、そこの疑問点がどうしても拭えない。
「ホント!ゴメンナサイ!」
こなたは飛び上がるように伸びると深々と頭を下げた。謝罪の言葉を言い終えると黒井の顔を一瞥して退室していった。
「まぁ、えぇわ。そや!今度、例の人狼倒しにいかへんかぁ?結構ゴールド稼げるらしいで?」
ビクッとして肩をすぼめる。歩みを止め小さな声で言う・・・。
「人狼はしばらく見たくないっすね・・・」
再び歩き出す蒼髪の少女。彼女のささやきは担任の耳に届いたのだろうか・・・。

それから放課後までの間というもの、つかさにみゆき、どこから聞きつけたのかひよりやパティまでがこなたの元にひっきりなしに訪れ、彼女の不登校について質問を浴びせた。
もちろん、かがみもその中にいたことは言うまでもない。だが、こなたは一様に「ネトゲ」とだけ答え、引きつった笑いでごまかし続けていた。

――またもや、奇妙な殺人事件が発生しました!現場はまたしても××町!若者の街として賑わいを見せていたこの街には午後8時以降、その影を見ることは出来ません――

家に帰った二人はそれぞれ別々の時間を過ごしていた。
どう考えても嘘をついているとしか思えない親友に対する怒りや悲しみが混沌となり、食事すら受け付けずに自室にこもる双子の姉。
垂れ流したままのテレビ画面をずっと凝視したまま動かない妹。
「あんたたち・・・。」
次女まつりも只事ではない何かを感じてつかさの横に腰を下ろす。
「どうしたのよ?何かあったの?けんかでもした?」
「うぅん。してないよ・・・」
「じゃあ、どうしたの?なんか変だよ。空気が澱んでる気がする・・・」
「え!?」
つかさは不意に正気を取り戻し、まつりにの顔に近寄る。
「うわぁ!な、何よいきなり!?」
「まつりお姉ちゃん、いま、なんて言ったの!?」
「へ?何のことよ?変って言っただけよ」
「ちがう!そのあと!」
いつも温和なつかさの表情に激しさが溶け込む。
「空気・・・空気が澱んでいる気がするよ、って・・・」
「やっぱりそうだよ!」
つかさは立ち上がり駆け出すように居間を飛び出る。あっけに取られたまつりは口をあけたまま妹の消えていく様を見ているしかなかった。


そこは少しかび臭くて、決して気持ちのいいものではなかったがどこか落ち着きのある静寂と温もりが充満していた。
ここに入るのは何度目だろう?少女はそんなことを考えながらろうそくの灯りだけを頼りにゆっくりと歩いていた。
しばらくすると古ぼけた木作りの扉が彼女の前を阻んでいる。中で何者かの呟く声と、ばさっばさっという音が、年代ものの扉の隙間から漏れ出てくる。
少女は扉に手をかけ力を込める。
「おとうさん・・・」
「おぉ、きたね・・・」
いつも見ているものの、その姿は平時のそれではなく、こんな夜中にする格好でもない。
「お父さん・・・」
心配そうに父を見つめる少女。父親は振り向きやさしく声をかけた。
「つかさは優しくていい子だね。それ故にこんな辛い役回りを務めさせて、ごめんな」
ただおは我が子に近づきそっと頭を撫で、やわらかく抱擁した。
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