ID:529ZbnPF0氏:ゆい姉さん大忙し!

いつもと同じ学校の風景。
いつもと同じ通学路。
陵桜に入ってからの私って、すっごい調子がいい!
ゆいお姉ちゃんも
「ゆたかがこんなに学校休まないなんて、お姉ちゃんびっくりだー!」
って。ふふふ、ゆいお姉ちゃんらしいよね。
こなたお姉ちゃんの家に引っ越してから結構経つけど、
毎週のように遊びに来てくれる。ゆいお姉ちゃんいつもありがとう!
それ以外にも、実はこっそり電話してきては、叔父さんに私の事聞いてるだってね?
本当にありがとう!私、ゆいお姉ちゃんが大好きだよ!

私っておっちょこちょいだし、からだ弱いからいつも回りに迷惑かけちゃう。
だから、高校進学も不安でいっぱいだったけど、何とか無事に過ごせてる。
周りの人たちみんなに感謝しなきゃね☆
「おはよう・・・ゆたか・・・」
「みなみちゃん!おはよー!」
今日もみなみちゃんキレイだな。私の大事な友達。大切な大切な親友。
「今日は・・・顔色すごくいい・・・」
「うん!今日はね、特に調子がいいみたい!体育の授業張り切っちゃおうかな?」
「ふふふ・・・」
文化祭が終わって少し寒くなってきたけど、なんだか今日はとっても気分がいいの。
なんでかな?

体の調子がいいと、学校ってすごく楽しいね。
中学まではそんなこと気がつかなかったんだけど、やっぱり環境の変化かな?
「ゆたか・・・」
「え?」
ぼふ!
「イタっ!えへ、またやっちゃった」
「大丈夫?・・・」
また、考え事して前見てなかったみたい。今日もみなみちゃんがかばってくれた。
「ありがとう。みなみちゃん」
「気にしないで・・・ゆたか・・・」

お昼休みはいつもクラスの仲良しさんでお弁当食べるんだけど、
今日は田村さん同人誌の締め切りが近いとかで部室に行ってるみたい。
「ゆたか・・・ほっぺたに・・・」
「あう」
「二人とも仲が良いですネー!ひよりんじゃなくても想像シテシマイマース!」
「そんな・・・」
うふふ、わたしとみなみちゃんは仲良しだもんね!ずーっと一緒にいてね!
「た、たたたた、大変っすーーーー!」
「田村さん?」
ざわざわとしてたけど、いつもと変わらないのんびりとした教室に田村さんの声が響き渡る。
みんなが一斉に教室の出入り口に集中すると、田村さんが息を切らしながら話し始めた。
「す、すぐそこの、じゅ、住宅で立てこもり事件が発生したらしいっス!」
急に押し黙るクラスの皆。でも、それも長くは続かず、ばたばたと教室を飛び出していく人が続出。
「Oh!これがヤジウマコンジョーネ!」
パティちゃんは手を叩いて喜んでるみたい。私もみなみちゃんもそういうのはあんまり・・・ね。
「何してるの?警官隊の中に成美さんもいるらしいよ!?」
「え!?」
近寄ってきた田村さんが発した言葉に私は一瞬血の気が引いた気がした。
知らないうちにみなみちゃんの腕が私の背中を支える。
どうしよう?大丈夫かな?ゆいお姉ちゃん・・・。
すごく心配だったけど、お姉ちゃんは交通課だし、前に出ることはないよね?
たぶん、起きたばかりの事件だから、臨時で出動してるだけだよ、きっと!
「ゆたか・・・大丈夫・・・」
私の頭の中を覗き見したかのように元気付けてくれる。
でも、事態は急変しちゃったの!
「ゆーちゃん!大変だよ!」
授業が始まったにも関わらずこなたお姉ちゃんが飛び込んできた。
「ゆい姉さん、人質と身代わりで犯人に捕まったらしいよ!」
「!!!」
声が出ない。
目の前が急に暗くなり始めて、地面が揺れる。
背中に温かくて柔らかい感触が伝わる。
「みなみちゃん・・・」
「ゆたか・・・行こう・・・」
私はうなずいた。
先生にはこなたお姉ちゃんが説明してくれた。外出の許可を貰い教室を飛び出る。
「保健委員・・・だから」
なんで、先生が納得してくれたのか分からないけど、みなみちゃんも一緒に。

事件は本当に近くで起きてた。
私たちの教室のある校舎のちょうど逆側の住宅だった。どおりで、あまり騒がしくないはずだ。
「わぁ」
おまわりさん達の車とマスコミさんたちがたくさんいる。
こなたお姉ちゃんは私の手を引っ張りながらその群れを掻き分けていく。
「こういうときは私たちの背の低さが光るね~」
こんなときにも冗談で元気付けてくれる。私の周りにいる人はみんな素敵な人ばかりだ。
でも、笑えない。
ほんとは信じなきゃいけないのに、祈らなきゃいけないのに、嫌な予感が頭の中でぐちゃぐちゃしてる。
「・・・お姉ちゃん・・・」

前に何回か会った事のある警部さんがいた!
「あ、あの、お姉ちゃんは・・・」
「ん?おぉ、君は成美君の・・・」
警部さんは私たち3人に状況を説明してくれた。

犯人は40代のおじさんで拳銃と刃物を持ってるらしい。
何も要求はしてないんだけど、刃物を振り回し、家の住人に何箇所かの軽傷を負わせた。
見るに見かねたゆいお姉ちゃんは自分から人質の交換を申し出たらしい。
「お姉ちゃん・・・」
「姉さん・・・」
「・・・」
さっきまで人質だったおばさんが涙を流しながら私に頭を下げてきた。
けど、ごめんね、おばさん。今はそんなこと言ってる場合じゃないの。
私の大好きなゆいお姉ちゃんが・・・。
パァーンッ!
突然、耳を突き破るような破裂音。一瞬の静寂が辺りを埋め尽くす。
「お姉ちゃんーーーー!」
無意識のうちに、自分自身でもびっくりするような大きな声が出ていた。
気がつくと涙が溢れていた。
「ゆたか・・・」
みなみちゃんが心配そうに声をかけてくれる。いてもたってもいられずみなみちゃんに抱きつく。
そして、声を出して泣いた。
釣られるようにうずくまっていたこなたお姉ちゃんも泣き出した。
「大丈夫!犯人の持ってる拳銃なら、成美君がやられる心配は無い」
警部さんが私の肩をたたく。みなみちゃんがぎゅってしてくれてる。
「犯人の銃はかなり小さいものだ。ほら、あそこの窓ガラスに穴が開いてるだろ?
あれだけ立派に貫通してるなら、成美君の身体には問題ないはずだ!」
警部さんが説明してくれるけど、涙が止まらない。
だって、拳銃なんて!拳銃なんてこんなに近くにあるもんじゃないよ!?
映画やテレビの中だけのものだと思ってた。
けど、実際に今、私の大事なお姉ちゃんがその拳銃によって危険に晒されている。
「大丈夫・・・」
みなみちゃんが必死で元気付けてくれる。私はそれに答えるかのように必死で抱きつく。

バタンッ!
民家の扉が荒々しい音を立てて口をあけた。
中から出てきたのは奇声を発しながら凶器を振り回す犯人と手に縄つけられたゆいお姉ちゃん。
「お姉ちゃん!」
思わず駆け寄ろうと立ち上がる。それを制するみなみちゃん。
一斉に体勢を整えるおまわりさん達。見たことも無い形相で犯人を睨むこなたお姉ちゃん。
じっとしたまま動かない・・・ゆいお姉ちゃん。
やっぱり撃たれたんだろうか?警部さんの勘違いですごい拳銃だったのかもしれない!
「あ!・・・」
それに最初に気がついたのはみなみちゃんだった。
声につられて扉の辺りを見ると、ほんの少しだけど、お姉ちゃんが動いてる!
「おね、、、んむぐぅ」
みなみちゃんの手が私の口をふさぐ。
「ほら、見て・・・」
みなみちゃんの言う通りにお姉ちゃんの顔を見る。何か必死で表情を変化させてる?
猿ぐつわをはめられたままだったけど、何かを言ってるみたい。
「なに?」
「わかった・・・ゆたかを・・・たのみます」
「うお!?」
みなみちゃんは私をこなたお姉ちゃんに渡すと一人、どこかへ消えてしまった。

犯人は相変わらず刃物を振り回し、奇声を発し続けている。
時には聞くに堪えないような卑猥な言葉やおぞましい言葉を織り交ぜながら。
ゆいお姉ちゃんはじっとして動かない。うん、動かないようにしてるんだ!
肩口が少し赤く染まってるけど、たぶん、大丈夫!
そのとき!
庭先の物陰から黒い影がサァーッと犯人に近づいていった!
「みなみちゃん!」
声を出すのとほぼ同時に犯人が振り向く。
「ぐぅっ!」
左手に握っていた刃物を構え、お姉ちゃんを蹴り飛ばしてみなみちゃんに向かう。
足元にお姉ちゃんの影を見つけたみなみちゃんは一瞬たじろいだように見えた。
犯人の左手が振り下ろされる。
パァーンッ!
空に向かって放たれる弾丸。みなみちゃんはあの長い足で犯人の左手を蹴り上げ、
そのまま肩から腹部に体当たりした!
いきなりのことで同様もあったのか、犯人はそのまま後ろに倒れていった。
すぐさまおまわりさん達が犯人に駆け寄り、身体を押さえつける。
「おわたー」
私を抱っこしてくれてたこなたお姉ちゃんの身体から力が抜けるのを感じた。
「あははははー、なんとか解決~!お姉さんびっくりだー!」
「無事で・・・よかった・・・」
私は二人に駆け寄った。そして・・・
「ばか!ばか!ばか!ばかー!二人とも何笑ってるのよ!!!
私、私・・・、私すごく心配したんだから!!!!
もうやめてよ!危ないことは!私の大事な人にもしものことがあったら、私、私・・・」
それ以上は言葉が出なかった。
顔が真っ赤になってる、きっと。暑い。涙も溢れてる。止まらない。
夢中でゆいお姉ちゃんとみなみちゃんを叩きつける私をこなたお姉ちゃんが止めてくれて、少しだけ落ち着けた。
「ごめんね、ゆたか」
「ごめん・・・」
それから私たちは4人一緒になって泣き喚いた。
周りの人目も気にせず、4人で、大声で。

―――――

いつもと同じ学校の風景。
いつもと同じ通学路。
いつもと同じ私の生活。
私の周りは大事な人で溢れてる。
よかった、今日も元気だ!

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