「おはよう!みなみちゃん」
「…………」
みなみちゃんはそんなに喋る人ではない。
でも、最近のみなみちゃんは無口すぎる。朝一番の挨拶にも軽く頭を下げるだけ。
そして自分の机に突っ伏して寝ているふりをする。
「みなみちゃん…どうしたの?具合悪いの?」
返事はやはりない。
私達との関わりを避けんばかりに無視を貫いている。
「きっと…一人になりたいんだよ…そっとしておいてあげよ?」
「田村さん…でも……」
田村さんは間違いなく親友だ。細かく心配してくれるし、何よりも私達をよく見ていてくれている。
みなみちゃんも年上みたいだけど、田村さんは保護者みたい。なんとなく。
「……どいて…」
一言呟いて席を立ったみなみちゃん。そのままトイレに向かっている。
失礼だけど…後をつけた。
みなみちゃんの入った個室から嘔吐の水音が響いた。
思わず自分も胃の内容物が逆流しそうになった。
みなみちゃんが個室から出てきた。
にわかには信じられなかった。
口からは血のながれた筋が残り、制服の一部にも血が付いていた。
半開きの個室にも吐血が付着しているのが見えた。
「………!」
目を見開いて、即座に逃げ出したみなみちゃんを追う気にはなれなかった。
みなみちゃんはその日、学校を早退した。鞄を残したまま。
「岩崎さん…なにか隠してるよ…」
「体が…悪いのかな?」
二人だけで過ごす昼休みはとても長く感じた。
「岩崎早退かよ。なに?まさか女の子の日ってやつ?」
「あいつ居るとなんか寒いんだよなwwさすがは雪女の親戚w」
陰口なんか気にしてはいけない。でも……
「ねえねえ、田村さんに小早川さん、正直あいつと居るの疲れない?縁切ったら?」
沸々とこみ上げてくる。
私の怒りの沸点は高いはずだけど。
限界だ。
最終更新:2007年10月16日 19:27