ID:GcmNgHob0氏:かがみの長い一日

わ、私は柊かがみ。私立陵桜学園に通う高校3年生。
神社の娘で4人姉妹の3番目、双子の姉です。
趣味はラノ。。。いや、読書!べ、別にオタクとかじゃないんだから!
そ、そりゃ、ゲームやアニメも少しは興味あるけど、ぜんっぜん!そんなんじゃないんです!
まぁ、そんなことは別にどうでもいいわね。

今日は私の私生活を話そうと思うの。
そこ!いつもと同じだとか言う突っ込みはやめなさい!
えー、コホン。あれは。。。いつだったかなぁー。。。?


―――――――


冬服に代わって何日かしたころ、いつものように学校へ向かう私。
「おはよ~、かがみん~」
「おぉ、こなたぁ、おはよっ」
「こなちゃんおはよ~」
私の目の前からやってくるゆる~い顔した小さな女の子、泉こなた。私の同級生で親友の一人。
腰よりも長い青い髪の毛と頭の上からにょろんと生えてる不思議な毛がトレードマークだ。
そして、こっちは私の双子の妹、つかさ。あんま似てないんだけどさ、私の大事なかわいい妹。
「休み空けってだるいよねぇ」
「あんたの場合、どうせ1日中ネトゲ三昧だったんだろ?」
「まぁ、そなんだけどね~」
こなたは中身知らなければそれなりにかわいいし、需要もあるだろうに。。。
典型的なオタクってやつで。まぁ、私達はとっくに慣れたんだけどね。
「こなちゃんの集中力ってすごいねー」
「いやいや、こいつの場合そこだけだからさ、その力が発揮されるのは」
「あはは、ほめられたよ」
「ほめてないっつーの!」
つかさの間の抜けた返答もいつもと同じ。わが妹ながら天然ってやつは。。。
こんな他愛もない会話で毎日が始まる。なにもかもがいつもと同じ。
「そだ、かがみんや、今日の昼休みなんだけど。。。」
「ん?ごはんでしょ?そっち行くわよ?」
「いや、そうじゃなくって、ちょっと話あるんだけど、さ」
「え?なによ?変な子ね」
珍しいこともあるもんだ。皆と一緒だと話せない話なのかな?
まぁいっか。
「じゃ、あとでね~」
「じゃね、お姉ちゃん」
そういって二人は自分たちのクラスに入っていった。
こなたの台詞が気にはなったけど、私も自分のクラスへ向かった。

「おっす、ひぃらぎー!」
「おはよう、柊ちゃん」
「おはよー、日下部に峰岸。今日もセットだな」
「ひぃらぎもちびっ子と一緒だったんだろ?」
そういうと元気印二重丸の日下部みさおが妙ににやけた顔で私の顔を覗き込む。
「ふふふ、さっき廊下で見かけたよ」
なんだろ?峰岸あやのまでが、普段見ないようなにやけ顔で直視してくる。ていうか、なんか、背後やいろんなところから視線を感じるのは気のせいか?
私はふと周りを見回す。なに?なぜお前たちそそくさと顔を背ける!?
「な、なに?」
なんとも言えない不快感と不安を抱え思わず声が出る。と同時に始業のチャイムが鳴る。
「じゃ、あとでなー」
おとなしく席に着き先生がやってくるのを待つ。ねぇ、今、私何か変なこと言ったっけ?ねぇ?
あ゛ーっ、わからん!私が注目のマトになるとかありえないわ。あぁ、でも、何かしたのかな、何か言ったのかな、どうしようかな。
なんか、凹むな。。。
先生が何か話してるけど、授業が手につかない。なに気にしてるんだろ、私。
「な!」
急に携帯が鳴り出す!もちろん、音は切っておいたけど。
ん?日下部?
<柊、最近噂だよなー( ̄ー ̄) あんまりアブノーマルはまずいと思うぜ!(笑)>
な、な、な、なにーーーーー!!?!?!1!!
何のことよ!いったい!?
後ろの方から日下部うすら笑いが聞こえて来そうだわ、急いでメールを。。。ってタイミング悪っ!先生こっち見てる!

はぁ、結局メールできなかったわ。さっさと日下部捕まえなきゃね。そう思って終業のチャイムとともに席を立つ。
日下部いない。峰岸に聞いてみると、部活のミーティングとからしく、ものすごい勢いで教室を出て行ったらしい。
なんで、こんなにタイミングが合わないかな?
まぁ、いいわ、メール、メール。。。ってあれ?私、携帯どこに置いたっけ?
あぁー、なんか変だわ、今日わ。。。

一体全体どうしたものか?私の携帯はどこへ行ったのでしょう?
確かにさっきまで自分でいじってた。先生に見つかりそうになって、急いでスカートのポケットに。。。入れたっけ?
ゴソッ
な、穴っ!?
その瞬間、無情にも2時限目の始業チャイムが鳴り響く。
うそ!?教室の床をきょろきょろと見てみるも、それらしきものはどこにも見当たらない。
最悪な気分の真っ只中、黒井先生が教室の扉を開けて入ってきた。
「はじめるでぇ~」
いつもながら快活で大きな声が教室にこだまする。
「今日はやなぁ~」
あぁ、それどころじゃないのよ、授業どころじゃないの!
気がつけばいつの間にか日下部は自分の席にいてやっぱりこっちをニヤニヤと見つめてる。
あんたねぇ~。。。
「柊ぃ~、ウチの授業中によそ見するとは、いい度胸やないか~?」
「あぁうぅ、す、すみません」
「しばらくそこで立っとれ!」
やっちゃった。黒井先生怒ると怖いな、やっぱり。これは怒られたからだろうけど、クラスのみんなの視線がなんだか痛い。
峰岸は自慢のおでこを狭めて心配そうな表情をしている。が、その親友ときたら、笑いを我慢するのに
必死そうにお腹を抱えてブルブル震えている。あんた、覚えときなさいよ!
「あ、せやせや。柊!」
「は、はい!?」
また怒られるのかと思った。声が裏返って恥ずかしい。
「携帯持ってきてはいかんな~。一応校則やし?放課後になったら取りにきぃ~や」
なんですとーーーーー!?
なんで、落としたはずの携帯電話が黒井先生の手元に!?
勘弁して~!どうなってるの?今日の私!!!


結局2時限目は立たされたままで足が痛いったらないわ。
それより、日下部!携帯はもう、どうにもならないし、今は日下部よ!
「みさちゃん、いないよ。ミーティングだって」
「まじで!?う~あいつ聞きたいことあるんだけどな~。。。」
「何の話?私で分かることなら。。。」
そういえば、峰岸も普段と違う表情で私を見てたっけ。
「朝のことなんだけど、峰岸もあいつも私に何か隠してない?」
「え!?柊ちゃんに隠し事?ん~、何だろう?別にしてないはずだけど。。。」
嘘じゃないみたいだ。真剣な顔して考え込んでる。
「あいつから噂がどうとかメールが来てさ。そ、その、あああ、アブノーマルとか」
うわぁ、恥ずかしいな声に出すと。思わず顔が火照って赤くなるのが分かる。
「あぁ!あっ!な、なんでもないよ」
「ちょ、峰岸!なんか知ってるな!?教えて!ねぇ!ねぇってばー!」
「あははは、何も知らない、知らないのよ柊ちゃん!」
なんか引きつってるんですけどー、笑顔が!
「そ、そういえば、今日は隣行かないの?」
「ん?あ、そうだった!上手く逃げたわね。まあ、いいわ。ちょっと行ってくる!」
ほんとに上手く逃げられた気がしたけど、うっかりこなたとの約束を忘れるところだったわ。
私は急いでお弁当を持つと、こなた達のクラスへと早足で向かった。
だけど、こなたがいない。
「お待たせ!こなたは?」
「あれ?お姉ちゃん?」
「泉さんならなんだか慌てて教室を出て行きましたよ?」
つかさとみゆきは二人で向かい合わせにお弁当をつついている。
どう見てもそこに重力に歯向かって育つ青色の謎生命はいない。
「お姉ちゃんが待ってるって、こなちゃん言ってたよ?」
「へ?どこで?」
「ううん。知らないよ」
「待ち合わせしてたのではないのですか?」
「いや、朝は場所までは話してなかったし。。。まさか、メールか!?」
しまった!携帯なくしたのはこの為の伏線か!?畜生、作者め!
なんてこと考えてる暇はない。朝のこなたの表情は少しだけ真剣だったし、
今日の流れからして”何か”嫌な予感がする。
と、気だけは焦るもののこなたが行きそうな場所に見当なんかつかないし、
私たちのゆかりの場所って言っても・・・あぁ、こなたの教室ぐらいしか思い浮かばん。
「どうしよ!?」
あまりに不安が募り過ぎたせいか誰もいない廊下で思わずつぶやく私。
あの子がわざわざ私を呼び出すんだもの、何か分からないけど、きっと重要なことに違いない!
いけない、私ちょっと涙目だ。だって、あの子に嫌われたくないから・・・。


結局私はお弁当を開けることなく初秋の柔らかな午後の空気を吸いながら授業を受けている。
こなたには会えなかった・・・。正確にはチャイムがなる寸前、隣のクラスに入っていく彼女を見かけた。
「こな・・・」
声が出なかった。
こなたはちょっとだけ顔をこちらに向け、そして何事も無かったかのように教室に戻った。
そう、少しだけまゆを顰めて・・・あれは、落胆の表情だ・・・。
どうしよう!どうしよう!!!私、大変なことをしてしまった!大切な、大切なあの子を傷つけてしまった!私の大親友を・・・。
ただでさえ、情緒不安定のまま過ごした午前の授業の影響もあり、私のテンションは最悪。
世の中にこんなにも苦しいことがあるなんて思いもしなかった。
気がつくと授業は終わっていて、授業開始時に出したままの状態の教科書をまたカバンに戻した。今にもこぼれそうなほどの涙をためて・・・。
「ひぃらぎ~」
「なにっ!」
「うわあ!びっくりしたじゃないか~」
ごめん、日下部。ちょっと今の私、おかしいの。普通じゃ、ない。
「朝の話だけどさぁー、あれ・・・?泣いてる?」
「!」
すこしだけホッとする。とりあえず一つ目の問題を片付けられそうだ。
「そうよ!思い出したわ!あのメール何よ!?あ、あ、アブノーマルって・・・私そんなに変かな?」
安定しない感情のせいもあって妙にネガティブな私。
「いひひひひー。ひぃらぎー、お前んち神社でよかったよなー」
「へ!?」
「キリスト教だったら同性愛は問題ありなんだってヴぁ」
「な、なに言ってんの!?いきなり!わけわかんない!」
「へへへ、気にすんなって。私はひぃらぎがそういう趣味でも友達だぜ!」
おいおい、そのめちゃくちゃ元気に立っている親指はなんなんだ。
「ちょ、ちょっと、なんでそうなるのよ!?ちゃんとわけを言ってよ!」
「おぉっと、授業始まっちゃうぜ!じゃなー」
なんなのよ、あれ!意味が分からない!
私がど、同性愛者とか・・・そ、そりゃ、そういったテーマの小説を読んだことにわけじゃないし、この歳になれば恋愛とかそういうことに興味を持たないわけじゃないけど。
いきなり同性愛とか、そんな、あ、え?もしかして・・・。いや、ち、違うのよあれはただ、仲がいいだけだし、趣味も合ってる。うん、そう!
確かにあっちはすごくコアだけど、私の趣味も理解してくれるし、うん。そうね、格闘技の経験者だって言ってたし、そこらへんの軟弱な男子よりは強いのかも?
よく見ると、いや、よく見なくてもかわいらしい顔してるし、おてんばな性格に反比例するかのようなちっちゃい体はいわゆる一つの萌要素!!!
いやいやいやいやいや、違う違う!認めるな、私!認めてどうする!?
あ、違う違うそうじゃないのこなた!嫌いだって言ってる訳じゃないのよ?

「ふむふむ。てことは、やっぱ、好きなんだよなー?」
「う、うん。そうね、好きかと言われれば確かに・・・って、な、な、何をーーーーーーーーーーーーっ!!??」
「ふふふ、柊ちゃん。もう、授業終わったよ?」
「桜庭のやつが『目が逝ってるな。放置。』とか言ってたぜ~」
これでもか!というような勢いでケタケタと笑う日下部。笑いを押し殺してるであろう峰岸。
ていうか、も、もしかして・・・、
「声・・・出て・・・た?」
「うんっ!~趣味も理解して~、辺りから聞いてたんだぜ」
「おかしな柊ちゃん」
ボンッ!って絶対に音が出たに違いない。私の顔が火を噴きそうなほど温度に達して何で冬服着てるのか分からないほど体温が上昇する。
日下部好きの奴が見たら即死しそうなほどの満面の笑みで返事しやがって!峰岸もフォローしてくれ!
「ちょ、あ、そ、これ・・は、あの、えとー、あ・・・」
「あははは!ひぃらぎ、落ち着けってヴぁ!」
いや、お前にだけは言われたくないんだがな日下部君!
しかし、顔の温度はどんどん上昇するし、背中に汗が滴っているのまで感じる。これほど落ち着きのない私はいまや世界ランキング入りだ。
「とにかく、落ち着いてから帰ってね。そのまま帰ったら事故にでも会いそうだから」
「だよなー。ちびっ子たちも帰ってったみたいだぜ?」
「え!?」
いけない、大事なことを忘れてた。私は出した覚えのない教科書やノートをカバンに詰め込むと、イスを倒しそうな勢いで立ち上がる。
「じゃ、じゃあ、また!」
「お、おう!気をつけろよ~」
「また、明日ね」
二人の別れの言葉を後姿で聞きながら走り出す。いけない、昼間のこと怒ってるのかな?うん、怒ってるに違いない!そだ、携帯を取りに行かないと!
イメージの中では水泳のクイックターンなみの軽やかさで廊下を逆走。目的地は一路職員室。

あーん!絶対怒ってるよー!
再び私、涙目!返してもらった携帯電話に入ってるメールは5件!そのうち4件がこなたからだ!
3件は昼休みの待ち合わせ場所についてのメール。残りの1件は昼休みの後に来たメール。
<ばかがみん>
ごめんね、ごめんねこなたー!どうしよう!?なんて返信したらいいんだろう?まずは素直に謝らなくちゃ。
あ、でもでも、着信拒否とかにされてたら謝罪の言葉も届かないよ。だめだ私、完全にマイナス思考が定着してる。
「あ、お姉ちゃん!」
「つ、つかさー!?なんで、ここに?」
「なんでってもうお家だよぉ?」
「は!知らないうちに!」
「変なお姉ちゃん。そういえば、メール読んでくれた?」
「メール?」
そうだ、そういえばもう1件メールが入ってた。こなたのメールに夢中ですっかり忘れてた。
<こなちゃん、ちょっと怒ってるみたい。一人で帰るって>< 私もゆきちゃんと帰るね>
やっぱ、怒ってる。
「お姉ちゃん、メールの返信くれないから帰ってきちゃった。みさおちゃんたちと楽しそうに話してたみたいだし」
「ご、ごめん」 
私はとりあえず、つかさに携帯を没収されたことや日下部たちとの会話を説明した。すると、
「あぁー、そういえばこなちゃんも噂の話してたよ~。出所は分かってるって言ってたよ」
「あいつ知ってるんだ///」
「それよりも、こなちゃんちょっと変だったから、心配だな・・・」
「変って?」
「うん、なんかね、少し泣いてたみたいな気がするの・・・」
「!?」
これはほんとに只事じゃなくなってきた!
「つ、つかさ!これ持って帰って!! 私、こなたんちに行ってくる!」
「え、わ!お、お姉ちゃん!」
つかさにカバンを投げ渡すと駅の改札をダッシュで通過した。早く行かなきゃ!

電車が停まると一目散に駆け出した!
相変わらず電車の中ではネガティブな思考が頭の中を独占し続けてたうえに、日下部たちとの会話のせいでメレンゲもびっくりなほど私の頭はぐしゃぐしゃになってたと思う。
通いなれたと言っても差し支えないほどに良く知った道。つかさと二人でいつも通った。
つかさは知らないけど、2,3回ほど一人で来たこともある。べ、別に変な意味じゃ、ないのよ!
夕日が空を朱色に染め始め私の分身が長く伸びていく。走ってきたおかげで寒さは感じないけど、夕焼けと庭木から舞い落ちる木の葉が郷愁を感じさせた。
インターホンに手を伸ばす。
――ピンポーン
こなた。。。
「は~い、どちらさ、まで、す、、、」
玄関の扉がゆっくりと音もなく開くと部屋着姿の蒼髪の少女が姿を現した。
「お、おっす!」
ちがう。
「かがみ・・・」
消え入りそうな声。
「な、なんだよ?私が来たことがそんなに不思議なの?」
ちがうって。
「何しに、来た、の?」
誰がどう見ても不機嫌そうな顔。
「べ、別に、特に用はないんだけど、、、さ」
ちがう、ちがう!そうじゃない!そんなこと言いに来たわけじゃないって!
自分の性格がつくずく嫌になる。もっと、もっと素直になりたいよ!
「・・・今日は、帰って・・・」
「え!?」
「気分・・・乗らないんだ・・・」
扉が開いたときと同じように音もなく閉じていく・・・。
いやだ!
私は即座にその扉の間に体を割り込ませた。
そんなことになるとは思ってないこなたは力を入れたまま扉を引く。「いたっ」
「かがみ!?ごめん!ごめんね!」
「帰らないよ、私。あんたが何考えてるか、何を思ってるのか聞くまでは!」
ちょ、ちょっと痛かったな。胸、無くてよかった・・・って一瞬頭によぎって後悔した。

「コーヒーかな?それともお茶か紅茶の方がいいかな」
「な、なんでもいいわ・・・」
「・・・うん」
なんでかな?こなたの部屋って落ち着く。アニメのポスターに無造作に並べられた漫画本や雑誌の山。いつも唸りを上げたままのPCにかわいい女の子のフィギュア。
落ち着くってのには程遠い景観だけど、ここの空気が好きなのかな。
ううん、今はそんなこと考えてる場合じゃない。あの子が戻ってきたら、今度こそ謝らなくちゃ・・・。
――ガチャ
「こなた、ごめん!!ごめんなさい!」
そんなことを考えて緊張してたら扉の音とともに土下座してしまった。
「うお~。びっくりしたよ!」
「ご、ごめん///」
紅茶をテーブルの上においてほんの少しの沈黙。
私にはものすごい長い時間に感じられたのだけど、実際にはほんとにほんとにほんの少しだけの静寂。

「「あの・・・」」
二人同時に声が出る。また、沈黙。
私から切り出さなくっちゃ。
「こなた、ごめん。今日は本当にごめんね」
「うぅん。もういいよ。こやって来てくれたんだしさ。私こそさっきはごめんね。少し感情的になってたかも・・・」
こなたが紅茶をすする。アールグレイ、か。少しずつ笑顔が戻ってきた、気がする。
「で、でね、話、なんだったのかなぁ~って」
「うん。話さなきゃ、ね」
え!?なんで、そんな顔・・・。
「あのね、かがみ。ちゃんと聞いてね?」
「う、うん」
「かがみと出会って、もうすぐ3年経つよね。もうすぐ、離れ離れになるけど、私、楽しかったよ」
「な、何よ!?そんなこといいた・・・」
「ちゃんと聞いて!」
何よ!そんなにきつく言わなくてもいいじゃない。それになんで泣いてるの?
「かがみは私といて、楽しかった、かな?」
「そ、そんなの、あ、当たり前じゃない。やめてよ、らしくないわよ?今生の別れじゃあるまいし・・・」
「お願い!ちゃんと聞いて!」
「!」
「2学期も始まったばかり、これから文化祭とか体育祭、クリスマスにコミケ。あと、かがみんちに御参り。ずっと、一緒に過ごしたかったんだ」
まって!今、なんて言ったの?
「私さ、こんなだけど、アニメよりもゲームよりも皆のことが好きだったよ」
だった、って何?なんで、そんなに泣いてるの?

「私ね、もうすぐこの町からいなくなるの」
青天の霹靂!声が出ない。しゃべりたいけど声が出ない。私の口と目は開いたまま、時間が止まった気がした。
「もうね、もうすぐね、つかさにもみゆきさんにも会えなくなるの。そう、かがみにも・・・」
・・・。
「うぅん。がんばれば会えるの。だけど、そんなに簡単に会える訳じゃない」
こなたは続けた。固まってる私に気づきながら・・・。
「お父さんがね、海外に行くって。作品がすごく評価されてるらしくってね。お父さんあんな風だけど、仕事は仕事ですごく真剣にやってるの。
それで、今度、海外の出版社からオファーが来て、契約したみたいなの。もちろん、文章っていう形式だから日本にいても問題は無いんだけど、
もっと経験と知識を増やしたいって・・・」
「でも、それなら・・・」
「うん。かがみの言いたいことも分かるよ。もう18歳なんだし、残ってもいいよね?でもね、かがみのこと好きだけど、お父さんも好きなの。
それに、お父さん一人にしちゃったら、お母さんになんて言えばいいか・・・」
死人にくちなし、か。この世にいない人にはかなわない。そう思うと納得できた。
だけど、涙が止まらなくなる。
「ごめんね。でも、これで終わりじゃないって思ったら、やっぱりお父さんを選んじゃった。ごめn・・・」
こなたが抱きついてきた。私は両手を背中に回して優しくそして、強くこの子を抱きしめる。
小さいな。それん、こんなに華奢だったんだな。震えてる。小さく小刻みに震えてる。
押し殺そうとしてる嗚咽が微かに耳に入るたびに、私も同調してきたのか肩を揺らす。
気がつけば二人、何ものも気にすることなく悲鳴を上げるように泣きじゃくり始めていた―――。


ひとしきり泣いて体が熱くなったのか、アールグレイの効果で中から温まってきたのか、私たちは夜風を浴びに近所に散歩に出た。
時計の針は8時を指してる。
初めてこなたの家に来たときもこの道を歩きながら会話したっけ。
「今日は星が良く見えるね」
「そだね。流れ星、流れないかな・・・」
「ふふ、つかさったら『流れ星に”どの”お願いしたらいいのかな?』とか私に聞きにくるのよ?星のきれいな夜は必ずね」
「あはは。つかさらしいや。でも、選択に悩むほど企みを持っているとは・・・。なかなか侮れないですな!」
いつものこなたが戻ってきたみたい。目を細めて、口を尖らせておどけてみせる。
「いつまで、、、いるのよ・・・」
「・・・文化祭は・・・出られない・・・」
「そ、そんな・・・2週間無いじゃない・・・」
「うん。だから、かがみには一番最初に伝えたかったんだ」
さっきふいたばかりの瞳に再び涙が溢れてくる。はぁ、私ってこんなに涙もろかったのかな?
今日はいったい何回涙を流せばいいんだろ?
しばらくの間沈黙が続き、何気なく顔を上げるとそこには桜の大樹が私を見下ろしながらたたずんでいた。

そんなに大きくは無い公園。だけど、その桜の木だけは私たちを包み込むように優しく大きく、悠然と構えていた。
その桜の木下に腰を下ろし、二人で夜空を眺める。流れ星は流れない。
人を当てにするほど出来ない子じゃない。人に頼るのも好きじゃないしね。だけど、願いならたくさんある。両手なんかじゃ足りないほどね。
幸せっていうのは自ら得ようとしてこそ得られるものだ、なんて文章を読んだことがある。
ほんとにそうだよね。いま星が流れれば、私は一つだけど幸せが欲しいと願うだろう。
だけど、自分から手に入れなくちゃ。流れ星を待つほどこなとの時間は残されてはいない。
「ねぇ・・・こなた・・・」
「なに?」
「別にさ、深い意味はね、ほんとに、無いんだよ」
「なんのこと?」
きょとんとして私の顔を見つめる。
「あ、あのさ、き、キス、しよっか?」
うわ!や、やめろ!そんな目で私を見るな!そのさげすんだ目で私を見つめるんじゃない!
深い意味は無いっていっただろ?その、なんだ、もうすぐいなくなるんだし、もっとこなたのことを知りたいって言うか、日下部たちの話が頭に残ってたというか。。。
「うん、しよしよ!」
あれ?めっちゃ笑顔じゃないのよ。取り越し苦労ってやつ?
「言っとくけど私もそんな属性は持ち合わせてないからね?」
「わ、分かってるわよ!と、友達としてよ!?その、し、親友としてn・・・」
こなたが覆いかぶさってくる。よそ見してた私にカウンターパンチのごとく強烈な一撃!
いや・・・一瞬。

その刻は、二人で向かい合った沈黙よりも、疲れきった今日の一日よりも長く、永遠に続くとも感じた悠久なる時間。
私はその刹那、すべてを理解した。
こなたは私にとってかけがえの無い親友。私はこなたにとってかけがえの無い親友、だと。

「さ、帰ろ!」
「うん!」
唇がこなたに別れを告げ、私は立ち上がり、こなたの手を引く。こなたは頷いて付いてくる。
「明日には皆に話さなきゃね」
「だね。つかさやみゆきも泣くのかな・・・」
「泣いてくれたら、嬉しいな!申し訳ない気持ちでいっぱいだけど、嬉しいな」
「そ、その、ふ、二人にもき、きき、き」
「むふふふふー。しちゃおっかな~?」
「いや!あ?ち、違うって、そ、そういう意味じゃなくって!!!」
本日2回目のボフッ!
ほ、ほんとにそういう気持ちとかじゃないんだから!!!///
「うそだよ~!私のキスは超レアなんだから!かがみんと彼氏以外にはしないも~ん!」
「へ!?彼氏!?いたの!?」
「それも、冗談!ふふふ。動揺してあたふたするかがみ萌え~」
無邪気に私の前を飛び跳ね回るこなた。青色の髪の毛が月明かりを浴びて幽玄な光を湛え、秋風がそれをそっと包み込む。
星たちが無造作に煌き、静寂を守る夜の散歩道。
私はこの時間を忘れない。きっと、いつまでも、ずっと。。。


~エピローグ~

こなたの家に着くと時計はとっくに9時を超え、まもなく10時にさしかかろうとしていた。
出版社から戻ってきていたおじさんは居間でゲーム(おそらくギャルゲー)をしてのほほんとしている。
「たっだいま~!」
「おじゃましまーす」
「お?おかえり。かがみちゃんと一緒だったのか」
「そだよー」
「すみません、こんなに遅い時間まで・・・」
「ついさっきお家から電話があってね、こなたと一緒にコンビニに出かけてると言っておいたよ」
「え!?あ、ホントだ!着信すごい入ってる!」
私はポケットの中の携帯を取り出すとウィンドウに光る四角い枠をみて、少しだけ冷や汗をたらした。
「かがみにあの話してきたよ」
「あの話?」
「ほら!あの話!お父さんの職場の・・・」
「短い間でしたけど、お世話になりました!二人ともお元気で!」
私は一歩後ずさり、こなたとおじさんの両方を正面にして深々と頭を下げた。
「うわぁ~~~~~~~~!!!!!!!!!!!」
突然大きな声を出すおじさん。びっくりして壁際まで飛びのく私たち。
「す、すまん!こなた!あの話のことなんだが・・・」
おじさん、おじさん、すっごい量の汗が噴出してますよ!?お風呂もう一回入ります?
「あれ、1週間の取材旅行にした!おれ、やっぱかなたから離れたくないわ!」
青天の霹靂ツー!
二人同時に顔を見合わせる。両手を広げこなたに抱きついた!
涙が出る。今度こそほんとにほんと、正真正銘、嬉しい涙だ!
あぁ~だけどさ!これ、何度目の涙かな?これだけ泣いたら少しはやせてくれよ!わたし!


―――――

とまあ、ちょっと恥じさらしちゃったけど、こんな感じの日常です。
私は柊かがみ、私立陵桜学園に通う高校3年生。
神社の娘で4人姉妹の3番目、双子の姉です。
趣味はラノベ。私の周りにはこんなにも大切な親友がいるんです。
え?いや、そうじゃなくて、自慢なんかじゃ、ないんだから!!!









真エピローグ
「しまった~、これはまずいな~」
ぶつぶつと呟きながら廊下を歩くのは田村ひより。
「泉先輩に頼まれて二人のイラスト書いたのはいいけど、調子に乗って百合漫画描いちゃった」
ぶつぶつ言い続けたかと思うと、目を閉じてにやけ顔。
「はぁ~、そのコピーをどっかに落としたんだけど・・・どこ行ったんだー!」
髪をわしゃわしゃかきむしるひより。顔に縦線入ってますよ!www

ツールボックス

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