ねむい。
昨日の晩はやけ酒あおったからね…
でも二日酔いとかはないね……けっこう飲んだのに。
ゆい姉さんびっくりだ。
「ゆーちゃん!朝だよ!起きなよ!」
あーそっか、ゆたかは学校かー。
私は今日は休みだからもーちょい寝てようっと。再びおやすみ。
「ゆーちゃん!?どうしたの!?遅刻するよ!?」
うるさいなあこなた…ゆい姉さんは寝てるの。
仕方ないなー、私がゆたかを起こすか。
「こなたおはよう。ゆたかまだ起きないの?」
あれ?
なんで目の前にこなたがいるの?
どうして私は体が縮んでんの?
「ゆーちゃん…何言ってんの…?」
こなた、なにその怪しい物を見る目は。
これでも姉さん婦警なんだよ。あ、別に関係ないか。
「何?私なんか変?」
「ゆーちゃん…それは新手のギャグ?」
「ゆい姉さんは本気で正気だよ。顔になんか付いてる?」
「体ってか頭の具合悪いの?大丈夫?」
「大丈夫大丈夫。えーっと眼鏡眼鏡…」
眼鏡を探して部屋を見渡した。
あれれー、私どうしてゆたかの部屋にいるの…?
パジャマもゆたかのだね…自分の手もちっちゃい。
「ねえこなた…私は誰?」
「見た目はゆーちゃんだよ…」
なんだかやな予感がしたので洗面所にダッシュ。
「…びっくりだ」
しっかり磨かれた泉家の鏡には私のちっこい妹、
ゆたかの姿が映っていた。
「あわっ!あわわわっ!ゆたかが私で私がゆたかでゆたかでゆたかいゆいゆたかいっ!」
「落ち着いて!自称ゆい姉さん。まずは落ち着いて」
こなたよりちっちゃい体、ぺったんな胸、かわいい声、今の私はゆたかの体になっている…!
とりあえずホットミルクをごっくんして頭を整理しよう。
私はゆたかの体になった。
「わわ、私が…なんで?」
ゆたか…起きたんだね。
「ゆい姉さんゆたかになっちゃったよ」
「…え!?」
思いっきり驚くと私こんな顔になるのか。自分の顔まじまじと見つめるのも変な気持ちだね…
「本当に入れ替わったんだ…こなたびっくりだ」
真似しないの。
「それより、時間大変だよ!学校遅刻しちゃう!」
こなたーそんなに焦らなくても…って今私高校生だーっ!
「うわっ急げ急げ!ゆたか、セーラー服ってどう着るの!?私わかんない!」
「えっとえっとまずそのファスナーを…」
できた!髪結んで出来上がり!
ゆたかのちっちゃな靴を履いて外に飛び出した。
「…ゆい姉さん、学校であんま変なことしないでよ」
「大丈夫。ゆい姉さんにまかせたまえ!」
久々の高校生生活だ!電車に揺られながらわくわくてかてかしてきたよ…!
へーっ、陵桜って大きいんだねー。
げた箱びっしり並んでてびっくりだ。
「ゆーちゃんのげた箱はここ。他の人のと間違えないでよ」
「だあーい丈夫。これでも人妻だよ」
「人妻と警察は関係ないし学校では封印ね。今はゆーちゃんなんだよ」
ああそうだった。
「一年生の教室はそっち。なんかあったら上の私の教室に来てよ」
いつの間にか頼れる子になったね。こなた。
きっとおじさんも、向こうにいったかなたおばさんも幸せだよ。
「小早川さんおはよう」
「おはよう…ゆたか」
教室に着いたら二人の子が挨拶してくれたよ。前お見舞いに来てくれた子達だね。
たしかみなみちゃんと田なんとかさん。
「おはようみなみちゃん、田中さん」
今日は一日ゆたかだからね。ゆたかっぽくしゃべらなきゃ。
「ゆたか…熱あるの?」
「私田村だよ?具合悪いなら無理しちゃ駄目だよ?」
あれ…ゆたかっぽく振る舞ったつもりなんだけど。ごめん田村さん。
「私全然大丈夫だよ!チアダンス踊れるくらい大丈夫だよ!」
ぴとって私の額に手を当てるみなみちゃん。あったかい。
「…熱はない」
「じゃあ…大丈夫…なのかな?」
もろ心配されてるよ…ゆたか…てか私。
でも、ゆたかも幸せだね。こんなにも心配してくれる友達がいるんだからね。
「今日は具合がいいんだよ。体育も出られるよ!」
「そこまで言うなら…」
そうゆうことだよゆたかの友達達。
授業…難しいなー。
私のしてた勉強より大分難しいねこりゃ…さすがは陵桜、進学校。
何ですか階差数列って。
何ですかドップラー効果って。
そんなことより体育だ!なんと今日はバレーボールだ!
ゆい姉さんこう見てもスパイクの名手でね!
スパイカーゆいってね!
「ゆたか…バレーボール、気をつけてね…」
「私達と同じチームになれればいいんだけど…」
久々のブルマはスースーするね。心配ご無用だよみなみちゃん、木村さん。
試合が始まった。
二人とは同じチーム。よかったよかった。
敵チームのサーブをみなみちゃんがアンダーで打ち上げた。
こ れ は チャンス!
「ていっ!」
タイミングバッチリ、高さよし、位置よし!
私の打球が相手コートに突き刺さった。やった!
「…………」
「……………」
相手チームも味方チームも静まり返ったよ。
や り す ぎ た
「ま、まぐれだよ…」
ナイスフォロー眼鏡の野村さん。ありがとうサンキュ!
結果私達のチームが接戦を競り勝ったよ。友情の勝利だね!
……うえ…体だるい…ゆたかの体じゃ無茶はできないんだね…疲れた…
机くっついて友達と弁当食べれば元気回復だ!なおるよ!
「いやーびっくりしたよ。小早川さんがあんなスパイク打つなんて」
誉められると照れるよ田島さん。
私も昔はきよたかくんに誉められたくてハッスルしてたなー。
でも結局デートで張り切りすぎて帰りの電車で疲れて寝ちゃうんだよな……
ゆたかもそのうちそんな経験、するのかな。
「じゃあその紙に名前を書いてください」
どうやらこの時間は席替えをするらしいね。あの二人と一緒になれるかな?
いや、してやらねばならない。ゆい姉さんの幸運パワーを込めて名前を書けばきっと…
できた!
『小早川 ゆい』
ま ち が え た
「はい後ろの人集めてー」
ああっ、ちょっと、持ってかないで!
結局持ってかれた。
先生が名前の書かれた紙を集めて袋に入れ、一枚ずつ取り出している。
くじ引きか。
…どうなるんだろうね。
私の隣は…
『田村』
私の後ろは
『岩崎』
よかったね。私のパワー通じたよ。後ろみなみちゃんだよ。
ほくほく幸せモードのまま下校だ。隣には
ちょっぴり無口だけど本当は優しい女の子と
時々視線が怪しいけど親しくしてくれる女の子。
ゆたか、陵桜に来て良かったね。ゆたかのまわりにはこんなにも素敵な人達がいるよ。
・
・
・
「ただいまー」
「おかえりゆーちゃん、の体のゆいちゃん。ゆーちゃんから聞いたよ」
そうじろうおじさんただいま。まさか私に変なことしてないよね?
「お姉ちゃんおかえり~」
うんおかえりゆたか。あ、ただいまだ。
自分の体におかえりって言われるのもなんだかなー。
「学校、どうだった?」
「楽しかったよ!小早川ゆいの頃に戻ったみたいで!」
こなたが休み時間に尋ねてきて一言言ったんだ。
『きっと今晩寝て起きたら元に戻ってるよ。よくあるパターンだからね』
そうなんだろうな。
こんなことしてられるのも今日限り。
でもラッキーだったよ。ゆたかの学校生活を知ることができて。
ゆたかはもう独りじゃない。私がついていなくても……きっと大丈夫。
私もそろそろ、妹離れする頃なのかもね……
晩ご飯をみんなで食べて、風呂入って、テレビ見て、うだうだして。
今日もこうして終わる。
ベットに横たわって布団かぶって瞼閉じて。
すーっと湧き上がった睡魔に身を任せ、ゆっくりと夢の中に。
ねむい。
目が覚めたら体が大きくなってた。
あ、元に戻ったのか。
今日もまた、いつもと同じ日常が始める。
変わった日がたまにはあってもいい。でも、
毎日びっくりだは勘弁だよね!
おしまい
最終更新:2007年10月05日 01:00