ID:lUy > 9Mql0氏:タイトル不明2

私は今日、こなちゃんに進められて学校の売店でチョココロネを買ってきた。
こなちゃんを魅了するチョココロネ…私もその味を体感してみたかった。
しかしチョココロネって何かに似ている…そう巻貝だ。
私は巻貝と同じように耳にチョココロネを当ててみた。すると驚いたことに音が聞こえる。
神秘的な…しかし巻貝とはまた違う聞いたことのない音色…
一度聞いただけで私はこの魅力に取り付かれてしまった。
「こなちゃんこなちゃん!!これ耳に当ててみて!」
私はこなちゃんにチョココロネを耳に当てるように言った。もちろん向こうは怪訝な顔をする。
「あのさつかさ…巻貝じゃないんだから…」
「いいから当ててみてって、おどろくよ」
しかし答えは意外にも何も聞こえないだった。
それどころか「あんたちょっと天然過ぎるわよ」とまで言われてしまった。
確かに聞こえたのに…しかしもう一度耳にあててみるとその音はやんでいた。
次の日、私はまたチョココロネを買った。耳に当てるとまたあの音がする。心地よい音。
聞いているうちになんだか歌声のような気がしてきた。
しばらくするとその音は消えた。どうやら音が聞こえるのは一回きりでそれも少しの間だけらしい。
それから私は毎日チョココロネを買った。
次第にその声ははっきりと聞こえるようになってきて聞こえる時間も長くってきた。
そして私はますますその声の魅力に取り付かれていった…
だが何かその声には違和感のようなものを感じた。なぜかその声に完全に体を預けることができなかった。
私はそれをもどかしく感じていた。

不思議なことに学校以外で買ったチョココロネはそんな音が聞こえなかった。
そのうち私は学校のチョココロネには妖精さんが住んでいるのだと思い始めた。
チョココロネの妖精さん…なんて素敵なんだろう。
一ヵ月後、私は完全にチョココロネに取り付かれていた。
その頃になると一つのチョココロネで1時間はその声を聞いていられることが出来た。
私は毎日チョココロネをたくさんかって帰り、暇さえあれば部屋にこもってその音を聞いていた。
流石に私のお姉ちゃんは心配したのかよく私にその行為を止めるように言った。
しかしもう私はこの声無しの生活なんて考えられなくなっていた。
隠れて大量のチョココロネを買い込み、夜中にこそっと聞いていた。
毎晩夜眠るのが遅くなり疲れがたまってきたがそんなものでは私はチョココロネを買うのを止めなかった。
そのうち小遣いがそこをついてきた。私はおねえちゃんの部屋に進入してお金を盗みそのお金でチョココロネを買った。
お姉ちゃんが気づかないわけがなかった。
「ちょっとつかさ!あんた私のお金を盗んでチョココロネ買ってるでしょ!」
「ごめんなさい、お金がなくて…」
「もう買わないようにって言ったはずよ、あんた本当に大丈夫?」
「うるさい!私はおかしくないもん!」
「な、人が心配してあげてるのに!」
「余計な心配なんかいらない!!」
私は家を飛び出した。お姉ちゃんは大好きだったがそれ以上にコロネの妖精を否定されるのが許せなかった。
そして向かった先は学校。
(耳に当てるだけなら…お金は要らないよね)
学校に着くとそこにはたくさんのチョココロネ…私は片っ端からチョココロネを耳に当てていく。
幸せ…こんな気持ちのいいことがあったなんて…だんだん頭がぼぅっとしてくる。
「ねえ、チョココロネの頭ってどっちだと思う?」
突然はっきりと声が聞こえた。チョココロネからだ。声は…こなちゃん!?

「先のとがったところかな…貝の頭みたいで…」
「そう、じゃあ下は何?」
「下?下は口…」
そこまで言って私は前に皆で海に行ったことを思い出した。
そうだあの時もこうやって耳に当てて音色を聞いてて、それで下から…
そこまで来て私は思いだした。そこから出てきたのは…ヤドカリ!!
「キャアア!!」
チョココロネの下を見るとそこから何か黒いスライムのようなものがずるずると這い出してきている。
あわてて地面にチョココロネを投げ捨てる。だがその物体は私の周りを取り囲み言う。
「ねえ、私と一つになれば一日中この声が聞いていられるよ?何で逃げるのかな?」
「やだ!来ないで!!」
もうだめだ、完全に体に付きまとわれ私は気が遠くなった…

「お、やっと目が覚めたか」
誰かいる。この人が私を助けてくれたのだろうか?
「危ないところだったな。もう少しで蟲に食われるところだった」
「蟲?」
「そうだ、普通の人の目には見えないんだがな…お前はどうやら感が良いらしい」
「もしかして私だけにしか音が聞こえなかったのって…」
「ああ、他の皆には蟲の存在が感知できなかったんだろう。
あれは人の耳の中にある渦巻き管に寄生するタイプの蟲でな、お前はもうちょっとで完全に飲み込まれるところだった」
「そんな…」
「動物の心地よい音をだして自分をなるべく耳に近づかせ、寄生しやすいようにしていたんだろう。案の定お前は完全に魅了されていたわけだ。
ああいう人間の感覚器官を操作できる蟲はその分寄生能力が低い場合が多い。
今回の場合もお前に何度も耳に当てさせることによって少しづつ耳をのっとろうとしていたわけだな」
「でも何でチョココロネなんかに…」
「形が渦巻き管そっくりだから寄生しやすかったのだろう。しかし厄介なことにここにあるチョココロネとやらには全部寄生しているようだ。
一つでも売れ残りがあればそこから新しく入荷されたそれに進入し子孫を増やす。一度全て取り替えたほうがよさそうだな」
そこまで言うとその男は首をかしげた。

「だが不思議だ。お前は見たところ相当前からこの音を何度も聞いていたみたいだが…なぜこんなにも寄生が遅れたんだ?」
「それは多分私がこの前海に嫌な体験をして………それのせいかその声を聞いている間何かずっと違和感を感じていました」
「なるほど興味深い。そのトラウマのおかげで寄生が長引いていたというわけか…
多分その友達の声が聞こえたのはチョココロネ=その友達という思い込みがあったからだと思う。
大丈夫だ、その子はただチョココロネが好きなだけで取り付かれているわけじゃない…ん、これなかなかうまいな」
「あの…どうしてこんなことに詳しいんですか?」
「それは俺が蟲師だからだ」
「蟲師?」
「そろそろ行くか、お前、ヤドカリには感謝しておけよ」
そういうとその男はいくつかチョココロネを持って壁の裏に消えた。追いかけたがそこにはすでに男の姿はなかった。
名前どころかお礼すらいえなかった…仕方がないからその男が言い残した最後の言葉を実行することにした。
「あんた水槽なんか買ってきてどうするつもり?」
「ヤドカリ飼うの」
「あ、あんた虫嫌いなのに一体どうしたのよ?」
「えへへ、それより私将来蟲師になるんだ」
「虫?」
「うん、蟲!」
しかしそれから私は一度も蟲に出くわすことはなかった…。
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