ID:M47OdhUNO氏:ヨーグルトは甘かった

俺は橙色に輝く夕日をバックに机に腰掛け、あいつがこの1-Dに来るのを待っていた。
我ながら女々しいと思うが今朝、彼女のげた箱に五時に教室で待っている的な内容の手紙を入れてきた。直接言うのは流石に……な。
俺以外に無人の教室の窓から差し込む夕日の赤が教室を、俺を赤く染めあげる。
俺が告白したら、あいつも真っ赤になるんだろうか。真っ赤になるのは俺だけで、以外と平然としてるかもしれないな。
なんたってったってあいつだぜ?いっつも留学生のパトリシアさんやちびっ子の小早川と一緒にいるあいつ。
俺はそいつに惚れたんだ。


閉じていた教室のドアのすりガラスに女生徒の影が映った。ああ、来たんだな。シルエットでわかる。

「……何の…用?」

やっぱりこーゆうのには慣れてないピュワガールだったのな。俺も告るのなんか初めてのピュワチェリーボーイだがな!
ズボンのポケットから手を出して、黒板の前に立っている彼女の正面に立つ。その距離三メートル。

「あのさ……」

心臓バクバクドッキンドッキンだ。声裏がえってないよな?

「映画…見に行かないか?余っちゃってさ」

冷静に考えたらおかしいよな。なんでチケット余ったからってろくに話したことのない女子映画に誘うんだよ。俺バカじゃねえの?

「なんの…映画?

おいおい、映画の種類によっては行ってもいいってニュアンスにもとれるぞ?そのセリフ。

「…創世の〇クエリオン」

「……………」

「………………」

気 ま ず い 沈 黙 だ よ 畜 生

あれ…やっぱまずかったかな?いっつも休み時間とかノートに何か描いてるし、三年の先輩と濃厚なオタトークしてたとこ見たことあるし、だいたいアニ研所属だし。

「や…やっぱいらねえよな…ワリイ…呼びつけたりして…田村さん本当にゴメン」

さらば、なっがい黒髪を三つ編みにする野望、ワインレッドの瞳に見つめられるロマン。さらば、空のかなたに旅立った妄想たち。

「…だ、ダメじゃないよ!」

……………マジすか?


顔真っ赤なのは夕日のせいじゃないよな?俺…やったよ…俺…!



週末までのことははっきり覚えてない。ずーっと幸せな妄想をしてたからな。

「よう」

「うん」

待ち合わせ場所の公園で軽く挨拶をして映画館へ向かった。ガムを踏んづけても今日は怒らない。
でもまあ手をつないだり肩を寄せ合ったりってことはないわけで。
これからなんだぜ。映画見終わってから田村さん家に連れてかれてそこで俺と田村さんはクラスメート以上の関係にっ!


「………………」

「………………アクエリオンマーズかっけえ」

俺達感無量。最高でした。
さあて、本番はこれからだ。これから田村さん家で二人の距離は急接近!

…だと思ってました。
結構大きい田村さん家に俺達二人だけなんてことはなくて

「こんにちは。ひよりから話は聞いてるよ。うん、なかなかいい」

さわやかなお兄さんが出てきました。
おかしいなー俺の妄想だと『今日…家族いないんだ…』とかってひよりんの優しいボイスでフラグが立つ筈なのにさ。

「さあ、僕の部屋へ」


「…………………」

なんで俺上半身裸になってんの?
なんで田村さん兄も上半身裸なの?
なんで田村さん兄は俺と絡んでくるの?暑苦しいですよ?
なんで俺の顔にはヨーグルトが飛び散ってるの?このヨーグルトは何を意味してるの?

「……いい…すごくいい……もうちょっと近づいて……」

ひたすらスケッチするひよりさん。見たいような見たくないような…
田村の兄さん、あんたシスコンなんですか?なんでそんなに従順なんですか?

そ の 元 気 な 下 半 身 は な ん で す か ?



青い春と書いて青春。

今日俺が経験したのは青くさい経験じゃなくて白で、とってもイカくさい経験だった。本当にイカくさかったわけじゃないさ。
でも田村さんのスケッチブックから伝わるビジョンは限りなくイカくさい空気で満たされていて………

俺は夕日に吠えた。

「ホイホイついてった俺の バカヤローッ!」

おしまい。
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