ID:rK9RWZZr0氏:タイトル不明

「あれ・・。」

放課後の教室夕焼け空で教室の半分が埋め尽くされていた忘れ物を取りに行った時に
誰も居ないと思っていた無人の教室に高良みゆきがそこにいた。

「どうなさったんですか?忘れ物とか・・ですか?」

ぴょこぴょこと心配そうに俺の顔を覗き込む高良、この顔でほとんどの男子はノックアウト
になるだろう。

高良みゆき、頭脳明晰、容姿端麗で非の打ち所の無い女子としてクラスの人気者になっている。
当然そうなるさ、同年代で敬語を使って本当の自分を隠してやがるんだ、そういう奴こそ
腹黒いもんさ。

あぁそうだよ、単刀直入に言わせて貰うよ。俺は高良みゆきが嫌いだ。

入学式の時から高良みゆきの能力は一際目立っていた、その真面目で清楚な彼女が
委員長とやらになるにはそう時間が掛からなかった、先生からも一目置かれ正直言って
憎たらしい感情しか芽生えてこない。

俺は高良みゆきをずっと見てきた、根暗でろくに喋らない俺にとっては眩しすぎる程の
太陽みたいなもんだった、憧れと言うより逆に恨みの感情が芽生えてきた。

いつもいつも努力しても上手くいかないものもあいつは一瞬でできてしまうんだ。
納得がいかなかった、どうしてなんだ、何で俺よりあいつの方が人気があるんだ。

あいつと俺と一体何が違うんだよ。

「さ・・さっきから黙って何を―」
「またそれかよ!」

突然の怒号に高良は眼を白黒させた。

「容姿端麗で頭脳明晰で・・・そんなに俺等みたいな一般人を見下したいのかよ!」
「違います!そんなつもりは―」
「じゃあどう違うんだよ!」

俺の声が夕焼けの教室に響き渡った、この校舎全体に通り抜ける感じがして多少の
恥を受けたような感覚がしたがそんな事はどうでもよかった。

「お前さぁ・・・浮いてるよ、1人で可愛い子ぶってそんなに楽しい訳?多分虐め
られると思うよ?お前が悪いんだぜ?そういういい高校に行かないお前が。」

自分でも最低な事を言ったと思う、俺は高良をずっと見てきたが高良は俺と会話
さえした事すら無い、そんな俺がこんな事言ったら忠告どころかただの悪口だ。
泣かれるか殴られるか覚悟はして俺は高良を見た。

今度は俺の方が眼を白黒させる番だった、今の高良の顔は俺の想像とは違っていた。

「えっと・・・・・。」

高良は俺の言った事を悲しみもせず怒りもしなかったらしい、俺は高良のいう言葉
を待つ事にした。

「私は・・・・周りから言われる程完璧な人間ではありません・・・。」
「だからそれが―」
「待って!まだ話が終わってません!」

高良が怒鳴った、小さい声であった、けど底知れぬ威圧感があり俺は押し黙った。

「確かに何でもできるって言われてますけど私にだって欠点だってあります、
それは隠すつもりもありませんし友人の人達だってそれはわかってます。」

高良が真っ直ぐな瞳で俺を見詰た。

「私は歯医者が怖いんです。」
「は?」
「それで・・・その何も無い所でも突然落ちたりして・・・。」
「・・・・・・・・・・・・。」

拍子が抜けて俺は口元が緩むのがわかった。

「わ、笑わないで下さい!」
「わ・・・悪い。」

俺は今までこいつの表面上しか知らなかった、容姿端麗、頭脳明晰、高良みゆき。
そんな肩書きに今まで振り回された自分がまぬけに思えてきた。

しかもこんな顔を赤くししてもじもじしている表情だって初めてだ、これは夕焼け
のせいじゃないだろうね。

「高良。」
「はい?」
「ごめん。」
「いえ、私も少し言い過ぎたかもしれませんし・・。」

今回の事で悪いのは俺だ、それなのに高良はこんなにまで優しくしてくれる。

「私も出来るだけ飾らないようにします。」

「でも」と最初につけ、

「友人達の優しさ気配りは別ですよね、それと私の敬語ですがこれは癖みたいな
ものですから気にしないで下さい。」

安直に頷くしかない自分に悔しさを覚えた時だ。

「ではまた明日。」
「待て!」
「はい?」
「俺・・その・・・」

俺の言い出す事はかなりの勇気のいる事だ、何とか喉から声を捻り出そうとする。

「また・・・機会があったらこんな感じで話し合おうな、でも悪口とかじゃ無いから・・。」

こんな俺を許してくれるだろうか、高良の答える時の間が俺の心を締め付けた。
ゆっくりと俺は顔を挙げた、すると高良は満面の笑みで、

「はい。」

適当に別れの返事をして去っていく高良の後ろ姿を見詰るしか無かった。
俺は高良の笑顔に不覚にも心が揺らいでしまったんだ。

最初俺は高良の御人好しの性格は単なる見せ掛けだと思っていた、俺はあいつの
事が嫌いだったしあいつの真相なんて知りたくも無かった。

このまま嫌っていった方がいいなんて、何でそんなつまらない事思ったんだろう?

もっとあいつの事を知りたい、もっと仲良くなってみたい。
この感情が何なのか、何でずっと見ていた理由が嫌いだからなのかもう隠すつもり
は無いさ。

やがてオレンジの色に染まった教室が暗くなっていく、暗闇に照らされた星空が
輝いて綺麗に見える。さてもうそろそろ帰るか。

明日はまた違う俺が待ってる筈さ。

家路に帰る俺の足は何故か軽く思えた。

終了
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