「テレビゲームは空気を読みました。」 ID:PrC6E9knO氏

テレビゲームは空気を読みました。

テレビゲームは泉家においてポピュラーな遊戯です。
泉家の長女こなたは今日もいとこのゆたかを相手にテレビゲームで遊んでいます。上級者が初心者と対戦するのは結構気を使います。

加減したのがみえみえだと初心者側は不快ですし、かといって大人気なく瞬殺するのもnot goodです。
ゲームに勝つために集中できる初心者ゆたかは上級者こなたの細かい手加減に気づきません。上手く手加減できるゲーマーは本当の上級者です。
時に人は、自分の発言の重さに気づけない時があります。

「やあやあ!ゆたかにこなた~ゆい姉さんが来ちゃったよ~」
旧姓小早川ゆい、つまりゆたかの実姉のゆい姉さんがやってきました。
「おっ、ゆたか頑張ってるね~!こなた押されてるんじゃないの~?」

仲良く二人並んでゲームをしている二人の真ん中に割り込んできました。それにしてもこのゆい姉さん、酒臭くてたまりません。でろんでろんです。
ゆたかの小さな肩に顎をのせて対戦を鑑賞すれゆい姉さんでしたが、ここでとってもやぶぁい発言が飛び出してしまいました。
「こーしてると私達姉妹みたいだね~。私が一番上でこなたが真ん中~んでもってゆたかが末っ子~」
ここまではなんてことないですよ。でも
「そんでね~おか~さんがね~、ゲームは一日一時間って言ってお開きになっちゃうんだよ………」

そのままゆい姉さんは瞼を閉じて睡眠タイムに突入してしまいます。
『おかあさん』
そんな高橋名人みたいなことを言ってくれるお母さんは泉こなたにはいません。
理解はできているし、悲しんでいる素振りも外では見せません。
理解はできていても、
本当は悲しいんです。
泉こなたは昔から思うことがありました。
今この場所にお母さんがいたら。例えば小学校の入学式。
真っ赤なランドセルを背負った女の子の両脇をお父さんとお母さんが両手をつないで歩きます。
泉こなたの隣には泉そうじろう、彼女のお父さんがいます。

彼は彼なりに明るく振る舞い、亡き妻かなたのぶんも親として務めようと努力しています。
それでも泉こなたは見つめてしまいます。空っぽの右手を。

泉こなたの手が止まり、彼女の分身たるゲームのキャラクターは動きを止めました。
待機モーションをとるゲームキャラは体を左右に震わせます。
泉こなたの肩も上下に震えます。

健気に振る舞う彼女にだって、弱さはあるんです。

ゲームのコントローラーにあつい水滴がポツポツと落ちます。

ゆたかはゆい姉さんにかける毛布を探しています。泉家のリビングにはテレビゲームのBGMと、
彼女の小さな嗚咽が響いていました。

そんな彼女に泉そうじろうはゆったりと後ろから近寄ります。

抱きしめるのは、最高の愛情表現です。

普段の軽いスキンシップとは違う、心からの愛情表現。
「こなた。お父さんはいなくならないからな」

戦闘時間が終了し、いきなり穏やかになったゲームのBGMが、二人だけのリビングを包み込みました。

おしまい
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