ID:3KEzEZoY0氏:BLOCKS

・・・・暑い。今、頭に浮かぶ文字はその二文字だけ。
真夏の外を自転車で走るのは予想以上に辛い。
けど、こんな苦しみもあいつと会うため。
そう思いながら私は自転車を漕いで炎天下の道を下っていく。

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こなたから電話がかかって来たのは先週のことだった。
来週、暇だから遊ばない?という、あいつらしい、いつもの軽いノリの電話だった。


自転車を漕いで十分後、こなたの家に着いた私は、家のチャイムを鳴らしてこなたを呼び出す。
程なくしてこなたが出てくる。・・・が。


「あれ?かがみどうしてウチ来たの?」
こなたの顔には明らかに戸惑いの表情が出ている。
「え、今日遊ぶ約束したじゃない。」
予想にもしなかった対応に、変に素で答えてしまう。
こなたはそんな私の反応に一瞬戸惑ったように見えた。
「・・・・かがみん、メール見た?」
「しばらくチェックしてなかったけど・・・・何か送った?」
「したよー。今日、急にバイトが入ってさ、遊べなくなっちゃった、ゴメーン、ってやつ。」
鞄を手で探って携帯を取り出し、メールボックスを見てみると確かにこなたの言った通りの
内容のメールが届いていた。

「・・・・・・・」
私は何も言わず、ただその場に立っている。
「か、かがみ~・・・その・・・怒ってる?ほんと、ごめんね。今日になって
急に店長から電話が電話があってさ・・・いや・・・その・・・今度アイスおごるしさ・・・」
「仕方ないよ。」
「ふえ・・・・?」
もっと私にギャーギャーと怒鳴られることを予想してただろう、こなたは私の変にあっさりした反応に
逆にドギマギしている。
「仕事なんでしょ?まあ、寝ててすっぽかしたわけじゃないんだから別に怒ってないって。
それより、バイト頑張りなさいよ?」
「う、うん。そうする・・・・」
「そ、じゃあ、頑張ってね。」
「・・・・かがみ。」
「何?」
「本当に・・・、怒ってないの?」
こなたはまだ、しどろもどろしながら私に聞いた。
「全然怒ってないわよ・・・・。それじゃ、私は帰るわね。」
ポカンとしながら私の背を見るこなたを尻目に私は自転車を行きとは逆向きに漕ぎ出す。
・・・怒りとはまた違う、急に生まれた奇妙な「感情」と一緒に。

その後、道の途中で自転車がパンクしてしまい、このクソ暑いのにわざわざ押して帰る羽目になってしまい
今日はなにか厄日はなにかではないかと思いながら家へとたどり着いた。
部屋に入るなりクーラーをつけて、タオルで汗をふき取る。そうしてベッドにバフンと飛び乗ってそのまま
横になる。

「ホント・・・今日はツイてないわ・・・」
天井を見上げながらそう呟いた。
今日は久しぶりにこなたと遊べる。そう思ってた。
外は暑くて本当なら外に出るだけでも嫌だったけど、こなたと遊べるならそれは些細なことに思えた。


・・・・・・さっきから変に思考が堂堂巡りばっかりして、さっぱり落ち着かない。


こなたはあの時、怒ってる・・・?と私に聞いた。
普段の私からすると怒っていたかもしれない。
けど、今日は初めから、怒りの感情は全く生まれなかった。
そのかわり。怒りとは違う、変な感情だけがあれからずっとお腹のあたりで蠢いている。
私にはその感情が何であるか解らない。
いや・・・・、解ろうとしていないだけかもしれない。
そんなことを考えているうちに、私の意識は眠りに溶けていった。


しばらくして、目がさめた。少し眠れば収まるだろと思っていたあのうごめきはまだ
お腹の中に残っている。むしろ、さっきよりも増して全身からうごめきの鼓動が聞こえる。
そのうごめきは今にも私の体を突き破って出て行きそうなくらい。

・・・・痛い。うごめきが刺すような痛みに変わって今度は私の体を刺していく。
そんな痛みと戦っている最中、急に携帯から着うたが流れ出す。
私にはその流れてくる曲だけで発信元はわかる。
そして、その曲を聴いた瞬間、私の体の痛みはピタリとやんだ。
こなただ。
こなたが私に電話をかけてきたんだ。


この曲はこなたが勧めてきたものだった。
「アニソンだけどさ、良い曲だから一回聴いてみてって!」
半ば無理矢理進められたけど、実際曲を聴くと、想像以上に良くて、
気に入ったからダウンロードしてこなたからの着信にはこの曲に設定したんだっけ。
子供のようにはしゃぎながらこの曲の入ったCDを見せていた時のこなたの表情をまだ私は覚えている。
その時の顔は・・・・・変な言い方かもしれないけど、とても無邪気で、とても楽しげで、
とても可愛らしくて、とても健気で・・・私が生まれて今まで見た顔で、おそらく一番素敵な笑顔。
そう、私には思えた。

なんて思っているうちに電話が切れてしまってはいけないので、通話ボタンを押して電話に出る。
「はい。」
「あ、かがみんー?今日はホントにごめん。もう怒ってないかな・・・・
って、昼間からごめんばっかり言ってるような気もするけど・・・・
ま、まあ、本当にすまなかったよ~。来週にまた暇な日があるからさ、そんときに今日の
埋め合わせもかねてさ、遊ばない?」
元気のいい、こなたの声。昼間と違って本当に反省したのかと言いたくなるくらい、テンションの
高い声。
けれど、そんなこなたの声に、帰ってからずっと私の中にでうごめいていた「何か」が
音もなく解けていくのが解った。
「怒るも何も、最初から怒ってなんかないってずっと言ってるでしょ~。
・・・埋め合わせねぇ。じゃあ、3○のキングサイズのアイスでも奢ってもらおうかしらね~」
「いいけど・・・また太るよ?そうでなくとも普段からアイスよく食べてるくせに~」
「う、う、う、うるさいわね~!とにかく、ちゃんとおごりなさいよ?忘れてたら今度こそ
怒るからね!」
「ってもう怒ってるじゃん・・・まあ、よかった。いつも通りのかがみんで私は安心したよ~。」
そこからはまた、いつもの他愛ない会話が続いていく。
そんな会話のなかで私はようやくあのうごめきの正体が解った。

私は・・・寂しかったんだ。
こなたに遊ぶ約束をドタキャンされて、怒るより「寂しさ」が私の心を支配していたんだ。
だから、あの「うごめき」は私の寂しさ。私のこなたに会えなかった寂しさ。
今、それがはっきり解った。

「かがみん~、今日はそろそろお開きにしない?」
そういわれて、ようやく知らないうちに長電話していたことに気づく。
「そうね・・・もう遅いし、そうしよっか。」
もっとこなたと話していたい-----そう喉まで出掛った言葉を何とかして押し込める。
それから2、3分して私は電話を切った。
携帯を机に置いてまたベッドに寝そべる。
昼間のこうして同じように寝ていたんだっけ。
けど、昼間、全身を蝕んでいたあの蠢きは今はなく、変わりに心地よい疲れが私を溶かしていく。
疲れに浸された私は、眠りに落ちる前に、次にこなたと会う時には
予定をすっぽかされたお詫びにアイスと今日、こなたに会えなかった「寂しさ」を
埋め合わせてもらわないと・・・・・
そう思っていた。
    


                 
おしまい
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