私は机に突っ伏しながら思った。どこか遠い熱帯の無人島に逃げ出したいと。
部屋の整理をしていたら中学のアルバムが出てきた。後ろの寄せ書きを書き込むスペースは真っ白のまま。
あまり思い出したくはない中学時代だった。親しい友達のいなかった私の朝一番にする行動は机に突っ伏して寝たふりをするか、黙って本を読むかだ。
寝たふりをしていて陰口を聞いた時には逃げ出したかった。
どこか人のいない、私一人の楽園。
いや、独りの楽園。
独りの楽園など、楽園ではない。楽しい園で楽園だ。
独りでいて楽しい筈がないのだから。
楽園は、遥か遠くの南の国でも、太平洋に浮かぶ小島でもなく、
すぐ近くにあった。
ひたすら勉強に打ち込んだ私は陵桜学園を受験した。結果は上々。しかし、試験の結果よりも嬉しい出来事があった。
ほんの少しの勇気と心からの親切は、「彼女」に伝わった。
嬉しい反面、緊張もしていた。
小さな「彼女」が一言一言話し掛けてくる度に、私の心臓は激しく働いた。背中は冷たい汗を流していた。
それでも、私の頼りない勇気は私を支えてくれた。
「彼女」 と出会ってからは素晴らしい日々が始まった。「彼女」、小早川ゆたかと一緒にいれば埼玉の街並みも楽園だ。楽園はこんなに近くにあったんだ。
アルバムを黙って閉じ、倉庫に片付けた。
南の自然豊かな無人島に行くなら、みんなと行きたいな。
「みなみ」の自然「ゆたか」な無人島
おしまい。
最終更新:2007年08月14日 01:02