ID:dHJNhOn80氏:幻想(ページ1)

 もう二年生も終わろうとしている頃だった。放課後、私はいつものようにお姉ちゃん達とお喋りをしていた。
こなた「かがみ、これからゲーマズ寄って行こうよ」
かがみ「あんたはそれしか用がないのか……しょうがないわね……」
珍しいこともあると思った。二つ返事でお姉ちゃんはこなちゃんの誘いを受けた。
こなた「みゆきさんもどうかな?」
こなちゃんがゆきちゃんを誘うなんて。初めてかもしれない。
みゆき「私は図書室で調べ物があるので……」
お姉ちゃんは私を見た。
かがみ「つかさは、たまには寄り道もいいものよ」
こなた「そうだよ、とっても楽しいよ」
かがみ「言っておくけど、私が言ったのはたまにだからな、た・ま・に」
あれ、お姉ちゃんが私を誘うのも初めてかな、今日は珍しい事が続くな。
つかさ「別に買いたい物ないし、今日はこのまま帰るよ」
こなた「それじゃ話は決まり、行こう、かがみ」
こなちゃんは教室を飛び出した。
かがみ「全く、すこしは落ち着きってものが欲しいわね、あいつに……」
お姉ちゃんはゆっくり立ち上がった。
かがみ「それじゃ行ってくるわ」
つかさ・みゆき「いってらっしゃい」
お姉ちゃんは教室を出た。
みゆき「それでは、私も失礼いたします」
ゆきちゃんもゆっくり席を立った。
つかさ「それじゃ、また明日……」
そして、教室に私だけが残った。辺りを見回しても教室には誰も居ない。ちょっと寂しい感じ。寂しいけど、
遠くから運動部の掛け声が微かに聞こえる。校庭はきっと賑やかに違いない。何か不思議な気分……
あれ……なんで私は教室に残っているのかな……みんな行ったから私も帰らなきゃ
私は慌てて帰り支度をして教室を出た。
バス停に着いたけど、お姉ちゃん達はもう居なかった。あの時直ぐに行っていれば駅までは一緒に帰れたのに。
私って本当にダメダメだよね。自分でつくづくそう思ってしまった。
 
 
『幻想』
 
 
つかさ「ふぅ」
ため息をついてバスを降りた。幼少の頃から、授業中も友達と遊んで居る時も何かボーとしちゃっている時がある。
でも、何も考えていないわけじゃない。遠くの音とか、いろいろな音が混ざってくるのを聴いていると、
どんどん想像がふくらんでしまう。丁度巻貝を耳に当てたような……そんな幻想的な感じ……
だからたまに、話についていけない時もある、困っちゃうな、こんなの早く直したいな……私って何かの病気なのかな。
ハっとした。辺りを見回した。私は今まで見たことも無い町並みが目に飛び込んで来た。
私は慌てて歩いてきた方向を振り返った。駅への案内表示があった。どうやら駅を通り越してしまったみたいだった。
嗚呼……とうとう根本的におかしくなっちゃったのかな。私って……もうだめかもしれない。
つかさ「ふぅ」
また、ため息。とりあえず駅に戻ろう。足を駅に向けた時だった。古ぼけた一軒屋が目に入った。
何だろう。アンティークの店、それとも歴史館……違う、のれんが架かっている。定食屋さんみたい。
今にも壊れそうなオンボロ……周りの建物と対照的で余計に目立った。足がいつの間にか止まっていた。
気になる。何故、それは私にも分からなかった。別にお腹が空いている訳でもないのに。
のれんが架かっているって事は、きっと開店中に違いない。入ってみるかな。恐る恐る店に近づいた。
店の前に立っても扉は開かない。自動ドアではなかった。引き戸の窪みに手を入れた。
『ガタガタ』
建てつけがわるいのか開かない。この店、お客さんは入っているのだろうか。本当に開店しているのかな。
そんな疑問をもちつつ、扉に力を込めた。
『ギッ、ギギー』
軋む音を立ててゆっくりと扉は開いた。どうにか私が入れるくらいの隙間が開いた。もう私の力ではこれ以上
開かない。店の中を覗いてみた。外が明るいせいなのか暗くてよく見えない。なんか気味悪くなってきた。
帰ろうかな……でもここまで開けたのだから……私は扉の隙間に体を横にして店の中に入った。
つかさ「ごめんください……」
中は静まりかえっていた。目が慣れてきた。外の佇まいとは違って中は整っていて綺麗だった。あっ、人の気配。
私は気配のする方を向いた。
台の上……誰かが椅子に乗っている。私は見上げた。天井から紐の様な物が垂れ下がっていて……先が輪になっていた。
その輪に手を掛けて……首を入れて……あれ、あれ、これって……今にも椅子から飛び降りそうな体勢に……
自殺だ!!!
心の中で確信した。
つかさ「ダメ~!!!」
思わず叫びながら椅子に乗っている人に抱きついた。
「だ、誰だ……う、うゎ~、は、放せ……」
放したらきっと飛び降りてしまうに違いない。私は持てる力の全てを両腕に入れた。すると私に体重が乗ってきてしまった。
重い、支えきれない……バランスを失って二人とも床に倒れてしまった。
「イテテ……」
椅子に乗っていた人は倒れてもたついていた。私は直ぐに立ち上がった。
つかさ「死んだらダメ!!!」
椅子に乗っていた人に向かって叫んだ。よく見ると歳を取った男の人が倒れていた。
お爺さんはゆっくりと立ち上がった。
老人「あんたは誰だ、いきなり掴みかかるなんて……」
つかさ「私は……このお店に入ろうとして……そしたら、首を吊ろうとしていたから……」
老人「……お客さんかい……このオンボロ店に来る客なんてよっぽど物好きか、不動産屋くらいしかいない」
お爺さんは電球を持っていた。お爺さんはまた椅子の上にゆっくりと上った。よく見ると天井から垂れ下がっていたのは
電灯だった。お爺さんは電球を取り替えた。すると店の中が明るくなった。
老人「電球が切れていてね、取り替えようとしたらあんたが飛び込んで来た……びっくりしたよ」
早とちりだった。でもそれでよかった。私はホッと胸を撫で下ろした。
老人「もっとも、こんな店の店主じゃ自殺もすると思うのも無理もない……ふふ」
笑いながら椅子を降りると、入り口の扉に向かった。半開きになった扉をお爺さんは足で蹴飛ばすとスーと音もなく
動いた。そして扉を閉めた。
老人「さて、いらっしゃい、何にする?」
つかさ「え、えっと……」
老人「なんだい、お客さんだと思ったのに、冷やかしかい」
まごまごしている私を見て怒り出した。
つかさ「ご、ごめんなさい……なんかだか分からなかったけど……気になったもので、つい入ってしまいました……」
私は深々と頭を下げた。
つかさ「失礼します」
私は扉を開けて店を出ようとした。
老人「待ちなさい……」
私は立ち止まった。
老人「学生服……高校生かい、自殺を止めようとしたのか、今時の子にしては珍しい……座りなさい」
お爺さんはカウンターの椅子を指差した。お爺さんの言われるまま、その椅子に座った。
老人「……それに、素直だな……」
お爺さんはカウンターの向こうの厨房に入った。
 
 暫くすると、お爺さんはお椀をカウンターに置いた。
老人「まさかお客が来るとは思わなかったから仕込みはしていなかった、取り敢えず食べなさい」
おわんにはうどんやそばに使うだし汁で満たされていた。その中に見たことの無い塊が入っている。茶色い色、形は整われていない。ちぎっている様な断片が数個入っていた。
つかさ「これは、何ですか?」
老人「何だ、最近の子供は食べないのか、蕎麦掻きだ」
そう言われても見るのも食べるのも初めてだった。
つかさ「そばがき……」
箸で塊を摘んだ……弾力がある、水団みたい……一口食べた……
つかさ「お蕎麦……これ、お蕎麦でしょ?」
口いっぱいに蕎麦の香りが広がった。なんかモチモチしている。
老人「蕎麦だ、名前の通り」
一言そう言うと、作業をし始めた。
つかさ「美味しい、お蕎麦って麺にしてあるのしか知らなかった……どうやって作るの?」
老人「蕎麦粉をお湯で練る」
つかさ「それだけ?」
老人「それだけ」
愛想の無い受け答え。話が続かなかった。私は、蕎麦掻きを食べるのに集中した。
 
つかさ「ごちそうさま、美味しかった……」
お椀をカウンターに返した。お爺さんは何も言わずお椀を受け取り流し台に持っていった。私はポケットからお財布を取り出した。
老人「御代はいらん」
つかさ「え、で、でも……」
老人「要らんと言ったら、要らん……」
お金は受け取ってくれそうになかった。私は席を立った。
つかさ「……ごちそうになります……ありがとう」
扉を開けようとした。入ってきたのと同じように開かなかった。扉はガタガタと音を立てるだけだった。
老人「扉の下を蹴飛ばせ」
さっきお爺さんがしていた様に扉の下を足で蹴った。
『ガタ』
今度は力を入れなくても扉は開いた。このまま店を出るのは何となく心が引ける。店を出ず、扉を閉めて店の奥に戻った。
つかさ「あ、あの~」
老人「……なんだ、まだ居たのか……」
少し起こり気味だった。
つかさ「ここってお蕎麦屋さんですか、外に看板とか何もなかったので……」
老人「……寿司屋に見えるのか」
つかさ「え、うんん、そうじゃなくって……お客さんに分るようにお品書きを出した方がいいかなと思って……そ、それに、扉はちゃんと直した方がいいかも……」
老人「……喧嘩売っているのか……」
お爺さんは私を睨みつけた。思った事を言っただけなのに……余計な事を言ってしまった。どうしよう。
つかさ「ご、ごめんなさい、蕎麦掻き……初めて食べたけど、とっても美味しかった……でも、これだと誰も美味しいお店だって気が付かないと思って……それに、お蕎麦屋さんなら……
    細長いお蕎麦も食べてみたい……」
老人「……お節介な子だ、名前は」
少し口調が和らいだ。
つかさ「柊つかさ……です」
老人「明日、来なさい」
つかさ「はい」
お辞儀をして店を出た。
 
つかさ「ふぅ~」
一気に緊張が解れた。職人気質の頑固なお爺さん……そんな感じだった。商売気が全くないみたい。でも……蕎麦掻きを食べた時のあの香り……あれが本当の蕎麦の味なのかも知れない。
掘り出し物を見つけたような。そんな感じになった。今度お姉ちゃん達も……ダメ……あんな頑固なお爺さんの所に皆を連れて行ってもまともに相手をしてくれないかも。
何度か通って仲良くなってからが良いかな。明日が楽しみ……どんなお蕎麦が食べられるのかな~
 
 家に帰ると既にお姉ちゃんは家に居た。着替え終えると、お姉ちゃんが部屋に入ってきた。
かがみ「今までどこに行っていたのよ、用がないのならとっくに帰ってると思った」
つかさ「ん~ちょっとね」
かがみ「何よ、隠すような所に行っていたの?」
お蕎麦屋さんに行って来た……だけどお姉ちゃんに教えるのはまだ早いって決めたから。
つかさ「まだ準備が出来ていないから……」
お姉ちゃんは腕を組み、急に細めになってニヤけた顔になった。
かがみ「ふ~ん、彼氏の所にでも行っていたのか……何時の間に、つかさも隅に置けないわね、相手は誰なのよ」
え、何でそんな話しになるの……
つかさ「ち、違うよ、そんなんじゃないから、たいした事じゃないよ、本当に」
お姉ちゃんは腕組みを解いた。そして私をじっと見た。
かがみ「必死に否定する所が怪しいわね……ま、いいわ、準備が出来たら紹介しなさいよ」
お姉ちゃんは部屋を出て行った。
言い方がいけなかったのかもしれない。誤解のないように答えを考えておけば良かった。
でも、お姉ちゃんで良かった。こなちゃんだったらきっとちゃんと言うまで聞いてくるに違いない。
 
 次の日の放課後、私はお爺さんの約束の通り店に向かっていた。
『ゴリゴリ』
何だろう店から音がしている。そういえば昨日もそんな音がしていたかもしれない。だから気になって立ち止まったのか。
あれ、何だろう扉に何かある。
……お品書きが扉に貼り付けられていた。扉に手を掛けた。
力を入れなくても扉はスーと開いた……嬉しい。昨日言った事をしていてくれていた。
つかさ「こんにちは~」
『ゴリゴリ』
店に入ると更に大きな音、何かが擦れているような音。音のする方を見た。するとお爺さんが座って何かをしていた。
つかさ「何をしているの?」
お爺さんは石臼をゆっくり回していた。石と石の隙間から白い粉が零れていく。
老人「蕎麦粉を挽いている……」
つかさ「もしかして、昨日、お蕎麦食べたいって言ったから?」
老人「蕎麦屋だから当たり前だろう」
このお爺さん、面白いかも……それなら。
つかさ「お品書きが外に出ていました、扉も直ってる、昨日、私が言った……」
老人「暇だからやっただけだ……少し黙っていてくれ、気が散る」
本当はそうじゃないのは分った。暇なら私と会う前だってそうだったはず。
私は椅子に座った。
『ゴリゴリ』
石と石が擦れる音、蕎麦の実が潰れる音……目を閉じてその音を聞き入ってしまった。
 
 石臼の音が止まった。目を開けてお爺さんを見ると石臼で挽いた粉を篩いにかけていた。古いから落ちていく粉をボールに受けている。その粉を見て驚いた。
真っ白い色をしていた。私の良く見る蕎麦は茶色い。小麦粉を見ているみたいだった。
つかさ「真っ白……」
お爺さんは篩いにかけながら話した。
老人「これが本来の蕎麦だ、実の殻が黒っぽくしている……」
篩い終わるとボールの中に水を少し入れて手でかき回し始めた。水は少しずつ、すこしずつ入れていく……体全体を使って粉を押さえつけて、気合が入っている。その時のお爺さんの
顔が印象に残った。蕎麦粉が固まりだしてきた。そしてボールに一個の大きな粘土みたいな塊が出来た。その塊を台の上に置いた。手のひらで塊を押さえつけて
平らにすると、棒を取り出した。その棒で平らになった塊を伸ばし始めた。ある程度延ばすと棒に巻きつけてコロコロと転がしていった。
素早い手つきに目が追いついていかない。あっと言う間に蕎麦麺は台一杯に広がった。それを何段にも折り返して小さく畳んだ。木で出来た板で折り畳んだ蕎麦麺を挟みこみ
大きな包丁でリズムよく切っていく。
『トントントン……』
細く、同じ幅でどんどん切られていく、私の知っている蕎麦だ。
全て切り終わると、お釜いっぱいに沸騰したお湯の中に豪快に放り込んだ。お湯の中でお蕎麦が踊っている。お爺さんはそれを楽しそうに見ているみたいだった。
暫くすると、時計も何も見ていないのに、何の迷いも無く笊をお釜の中に入れて蕎麦を全て掬い上げた。
素早く隣の冷水が溜まっている桶の中に笊ごと蕎麦を沈める……蛇口を捻って水を全開に出して桶の中に入れた。手を桶の中に入れて素早くかき回す。
そして水を止めて笊を出した。手を押し付けて蕎麦の水を切った……
お爺さんは蒸篭を持ち出し、水を切った蕎麦を盛り付けた。徳利の中にそばつゆを入れて私の前に出した。お爺さんは何も言わずまず食べろと言いたげな目で私を見ている。自信満々。
蕎麦が出来る工程を全て見たのは初めてだった。盛り付けられた蕎麦を改めて見た。
つかさ「いただきます」
箸で蕎麦を一掴み、そばつゆを付けて口に入れた。
お蕎麦の香りが口いっぱいにひろがった。その香りが鼻から抜けるくらいだった。
つかさ「美味しい、美味しいよ」
山盛りに盛られたお蕎麦をあっと言う間に食べてしまった。
お爺さんはそんなのは当然のような顔をしていた。こんなに美味しいのにお客さんが来ないのかな。やっぱりお品書きがあっても値段が付いていないと怪しがって店に入ろうとしないのかも。
その時だった。扉が開いた。そこにはサラリーマン風の男性が立っていた。
つかさ・老人「いらっしゃい!!」
ほぼ同時だった。私とお爺さんは顔を見合わせた。
つかさ・老人「ふふふ、はははは」
私達は笑った。サラリーマン風の男性は不思議そうに私達を見ていた。
 
 
『キーンコーンカーン』
チャイムが校舎中に響き渡った。
放課後、私は忙しく帰りの準備をしていた。こなちゃんがじっと私を見ている。
こなた「つかさ、そんなに急いで帰って、何かしてるの、最近はかがみと一緒に帰らないし……かがみを待たないの?」
そういえばこなちゃんやゆきちゃんとも最近一緒に帰っていない。今日は学級委員会でお姉ちゃん達は会議室に行っている。
つかさ「うん、ちょっとね……」
こなちゃんは席を立ち私に近づいてきた。
こなた「……なに、なに、ちょっとって、話せない事なの?」
興味津々だった。あの時のお姉ちゃんみたい。
つかさ「アルバイトをちょっとね……」
こなた「アルバイト、アルバイトだって、つかさが?」
私は頷いた。
こなた「つかさをよく雇った人がいるもんだ、どんなバイトなの?」
つかさ「……飲食業……」
こなた「へぇ~それならつかさらしいや……バイトなんかして、何か欲しいものでもあるの?」
つかさ「うんん、特にないよ、私もこなちゃんみたいに働いてみようかな……なんてね」
こなちゃんはちょっと照れていた。腕時計を見た。いけないバスの時間がもうすぐ。
つかさ「もう時間、それじゃ明日ね」
こなた「バイバイ」
こなちゃんは手を振って送った。
 
 あれから私はあのお蕎麦屋さんでアルバイトをするようになった。少しずつだけどお客さんが増えてくるのが楽しい。あんな美味しいお蕎麦が売れないなんて絶対におかしい。
と言うより、出来れば自分でも蕎麦を打てるようになりたかった。皆に美味しいお蕎麦を食べさせたかったから……
そう思ったから、ダメ元でお爺さんに頼んでみた。意外にお爺さんは二つ返事で頷いてくれた。もうお店で働くようになって二週間が過ぎようとしていた。
でも、あの頑固なお爺さん、そう簡単に教えてくれない。今は石臼で粉を挽いているだけ……それでもあの石臼で挽く時の音がとても心が落ち着く。
 
 店の前に着いた。またお品書きが傾いて着いている。あのお爺さんはこうゆう所が無頓着。まるで機械のように正確に蕎麦を打つ姿からは想像も出来ない。
お品書きの傾きを直すのが私の最初の仕事。
つかさ「これでよし!」
扉を開けた。
つかさ「こんにちは~」
老人「遅いぞ、さっさと着替えろ」
つかさ「は~い」
遅いと言っても平日だとこの時間に来るのが精一杯だった。更衣室で着替えた。
つかさ「お待たせしました……」
老人「蕎麦粉を頼む、少し多めに挽いてくれ」
つかさ「は~い」
このままだと一週間前の倍の量になる。お客さんの量がどんどん増えているのが分る。石臼へ蕎麦の実を運んだ。
蕎麦の実を一掴み石臼の穴の中に入れてゆっくりと臼を回す。
『ゴリゴリ』
実が潰されていく。だけどまだ粉は直ぐには出てこない。音を聞いて……小さくなってきたら。もう一掴み……何度か入れると、溢れるように石の隙間から粉が出てくる。
それの繰り返し……
そういえば……お爺さんの名前聞いていない。このまま「お爺さん」じゃいくらなんでも失礼だよね。
つかさ「あの~お名前は何ですか、今更なんですけど、まだ聞いていないので……」
臼を回しながら話した。お爺さんは何も言わず蕎麦打ちをしていた。聞こえなかったのかな。臼を止めた。そしてもう一度同じ質問をしようとした。
老人「止めてはダメだ……」
慌ててまた回し始めた。
老人「回し方が速い……もっと優しく回しなさい……」
つかさ「は、はい……」
臼の速度を遅くした。
老人「名前は……そのままでいい」
そうポツリと言った。
 
 蕎麦の実を全て粉にすると小休止。お爺さん、なんで名前を教えてくれないのかな。頑固とかそうゆう感じではなかった。何か寂しさを感じた。その理由はきっと教えてくれそうにない。
このお爺さんにどんな過去があるのかな。話したくないなら話さない方がいいよね。もうこの事を考えるのは止めよう。
そんなことより、どうかな。蕎麦の打ち方教えてくれるかな。怒鳴られちゃうかもしれない。でも、もう二週間もここで働いて冗談も言ったりする程打ち解けてきた。
言っても良いかも知れない。
つかさ「あの、突然ですみません……蕎麦の作り方、教えてくれませんか?」
お爺さんの動きが止まった。
老人「やっぱり、それが目的か……おまえも技術だけを盗もうとして近づいてくる族(やから)か……誰に頼まれた」
つかさ「誰って……私は誰からも頼まれていません……私は……」
老人「黙れ!!」
お爺さんは突然立ち上がった。
老人「出て行け!!!」
怒鳴ったと同時だった。お爺さんはフラフラと体が揺れ始めた。
つかさ「お爺さん?」
『ドサッ』
そのまま床に倒れてしまった。私はお爺さんに近づいた。どうしよう。
つかさ「だ、大丈夫ですか?」
何も反応がない。頭が真っ白になった。何をして良いか分らない。あたふたするだけだった。扉が開いた。
「回覧板です……お爺さん?」
回覧板を持ったおばさんが入ってきた。近所の人だ。
つかさ「突然倒れちゃったの……どうしよう……」
おばさんは溜め息をついた。
おばさん「まったく、またかい、ちゃんと薬を飲まないからからだよ」
おばさんはお爺さんに近づき肩を持って起こした。
おばさん「部屋まで運ぶよ、手伝っておくれ」
つかさ「は、はい……」
私はお爺さんの足を持って部屋まで運んだ。部屋の中央にお爺さんを寝かすと、おばさんはまるで自分の部屋の様にタンスを開けた。そこから袋を出した。薬の袋だ。
おばさん「意識が戻ったらこの薬を飲ませて……全く、ちゃんと飲んでいないからこうなるんだよ、あんたも言ってやって」
つかさ「は、はい……」
おばさんから袋を受け取った。おばさんは回覧板をテーブルに置くと店を出て行った。
袋を見ると血圧のお薬みたいだった。きっと怒ったから頭に血がのぼって倒れたに違いない。
 
 お爺さんを見た。静かに寝ている。大丈夫みたいだった。でもお店は私だけではどうにもならない。扉にかけてあったお品書きとのれんを店の中に仕舞った。
厨房では釜に火がかけたままになっている。今日はもう終わりだよね。火を止めた。そして、更衣室で学生服に着替えた。
でもまだ帰る訳にはいかない。少なくともお爺さんの意識が戻るまでは……
このままじっとしているのも気が引ける。何かお爺さんに作ってあげよう……お菓子なら作れるけど、お爺さんは何が好きなのかな……
蕎麦掻きを思い出した。そうだ。蕎麦掻きを作ろう。そばつゆはお鍋にあるし、蕎麦粉もある。
作ったことないけど。作り方はお爺さんの作っているのを見てなんとなく分る。やってみよう。
お茶碗に蕎麦粉を入れて、お湯を少しずついれて……お箸で掻き回す……掻き回す……
蕎麦粉が固まってきて、粘りが出てきて箸が重くなってきた。お爺さん随分時間を掛けて掻き回していた。こんな時間ではまだ足りない。何度も何度も掻き回した。
腕が重くなっても掻き回し続けた……
 
「う~ん」
うめき声と共にお爺さんの意識が戻った。
つかさ「気が付いたね、大丈夫?」
私は水とお薬をお爺さんの目の前に差し出した。
老人「お前が、つかさがここまで運んだのか」
つかさ「うんん、近所のおばさんが来てくれて、一緒にここまで」
お爺さんは黙ってお薬と水を受け取り、薬を飲んだ。
つかさ「お爺さんが倒れたから、店を閉めました……厨房のお釜も火を止めてあります」
お爺さんは黙ったまま、また横になった。
つかさ「ごめんなさい、やっぱり私にはアルバイトは無理でした……最後に蕎麦掻き作ったので食べて下さい……」
蕎麦掻きの入ったお椀をテーブルの上に置いた。
つかさ「あ、おばさんが回覧板を置いていきましたので……さようなら……」
私は店を出ようとした。
老人「待ちなさい……」
私は立ち止まった。振り向くとお爺さんは起きてお椀を持っていた。箸で蕎麦掻きを挟んで口の中に入れた。
老人「……良く掻き回している……初めてにしては上出来だ」
つかさ「おつゆはお爺さんのです」
老人「汁なんて簡単なもんだ、見ただけでここまで出来るならもう少しここで働いてくれ」
つかさ「で、でも、私はお爺さんの技を盗もうとして……」
老人「二人で運んだ……ここまで運んだのをわざわざ正直に言う人が嘘を言うはずがない……それに蕎麦打ちなんて誰でも出来る、そんな大それた技じゃないよ」
つかさ「それじゃ、ここに居ていいの?」
お爺さんは頷いた。
つかさ「ありがとう」
私は飛び上がって喜んだ。
老人「どちらにしても今日はもう閉店だ、帰りなさい……お疲れ様」
つかさ「お疲れ様でした……」
 
 お爺さんが倒れたので帰宅はアルバイトをしてから一番早い時間になった。
つかさ「ただいま~」
玄関に入るとお姉ちゃんがまるで私が帰るのを待っていたみたいに立っていた。何も言わず、私の入るのを妨げるように立ちはだかっていた。
かがみ「つかさ……私の部屋に来なさい」
重く圧し掛かるような声だった。顔も今までのお姉ちゃんとは違う、今まで見たことのないような険しい顔だった。お姉ちゃんはそのまま階段を上がって自分の部屋に入った。
何だろう、私は自分の部屋に鞄を置くと着替えるのを止めてそのままお姉ちゃんの部屋に入った。
つかさ「なあに、何かあったの?」
お姉ちゃんは玄関に立っていたときと同じ顔のままだった。
かがみ「あんた、アルバイトやっているらしいわね……」
また思い声……
つかさ「あ、こなちゃんから聞いたんだね、うん、二週間前から……」
かがみ「こなたに話して私には話さないつもりだったの」
私が話しているのに割り込んで来た。ちょっと感情的になっている。
つかさ「そ、そんなつもりはなかったよ、あの時は準備が……」
かがみ「準備って何の準備よ、アルバイトを何で私に隠さなきゃいけないのよ」
何で、何で怒っているの、分らない……
つかさ「皆を誘って食べさせたかったけど、だけど、店主のお爺さんが頑固で……もっと打ち解けてから……」
かがみ「何訳の分らない事を、もういいわ、一人で勝手にすればいい」
つかさ「お姉ちゃん、聞いて……内緒にするつもりは……」
かがみ「もういいって言ってるでしょ!!」
お姉ちゃんは部屋を出て行ってしまった。
何で、どうして、頭の中でそれだけが響いていた。まだお姉ちゃんが怒っている理由が分からない。アルバイトの事を黙っていたから。先にこなちゃんに話してしまったから。
でも、こなちゃんに先に話したって、それで怒るなんて……あ、ここはお姉ちゃんの部屋だった。いつまでも居るとまた怒られそう、とりあえず自分の部屋に戻ろう……
 
『コンコン、コンコン』
お姉ちゃん、開けて……
夕食後も、居間で一緒に居る時も、お姉ちゃんは口を利いてくれなかった。そして、こうしてお姉ちゃんの部屋に入ろうとしても入れてくれない。
まつり「なにをしてるの?」
つかさ「まつりお姉ちゃん……」
まつり「そういえばさっきからかがみの様子が変だったかな……」
私がお姉ちゃんの部屋の前に居るのに気が付いたまつりお姉ちゃん、普段ならそのまま通り過ぎて自分の部屋に行ってしまう。
つかさ「突然怒り出しちゃって……」
まつり「あれれ、かがみとつかさが喧嘩……珍しい事もあるな、明日は雨か……」
大き目を更に大きくして驚いた。
つかさ「話を聞いてくれないの……」
まつりお姉ちゃんは、自分の胸をポンっと叩いた。
まつり「私に任せなさい!」
凄い自信たっぷりの顔だった。まつりお姉ちゃんはノックもせずドアを豪快に開けた。
かがみ「ちょ、なによ、いきなり、ノックもしないで」
突然の出来事に驚くお姉ちゃんだった。
まつり「なぜつかさを無視するの、部屋の外で泣きそうじゃない!」
何時に無く強い口調でお姉ちゃんに言い寄った。
かがみ「姉さんには関係ないわよ、放っておいて」
お姉ちゃんはまつりお姉ちゃんの陰に居る私に気が付いた。
かがみ「つかさ、姉さんを使うなんて卑怯な手を使うわね」
つかさ「わ、私は……」
まつり「卑怯も何もないでしょ、かがみが聞く耳を持たないからでしょ」
かがみ「嘘つきつかさなんかと話す気にもならないわ、二人とも出て行って」
嘘つき……私がいつお姉ちゃんに嘘なんかついたの……もしかして、お姉ちゃんが私に彼氏が出来たって言った事……
私はまつりお姉ちゃんの前に出た。
つかさ「あれはお姉ちゃんが勘違いしていたから、私は否定したよ……」
かがみ「勘違いさせたのはつかさでしょうに」
つかさ「だから、否定したのに……勝手にお姉ちゃんが勘違いしたから」
かがみ「勝手……勝手に、言ってくれたわね、思わせぶりな態度を取ったのは誰なのよ」
お姉ちゃんは立ち上がった。透かさずまつりお姉ちゃんが私達の間に割り込んだ。
まつり「ストップ!!!  まった、待った、二人とも落ち着きなさい……これじゃ話しにならないでしょ」
お姉ちゃんがこんなに分からず屋だったとは思わなかった。まつりお姉ちゃんとよく喧嘩していたけど。まつりお姉ちゃんの気持ちが分ったような気がした。
かがみ「勝手になんて言われて黙っていられないわ、姉さんそこを退いて」
つかさ「だって、勝手だもん」
まつり「バカ、つかさも煽るな……もう、いい加減にしなさい」
まつりお姉ちゃんは私の腕を掴んで部屋から出た。お姉ちゃんは勢いよくドアを閉めてしまった。まつりお姉ちゃんは私の手を引き、まつりお姉ちゃんの部屋まで連れて行かれた。
 
まつりお姉ちゃんの部屋に入ると手を放してくれた。
まつり「かがみの挑発につかさまで乗ることないでしょ、あれじゃ喧嘩になるだけだよ」
その言葉に我に返った。
つかさ「ど、どうしよう、お姉ちゃんともう話すことが出来ないかも……」
まつりお姉ちゃんは深い溜め息をついた。
まつり「ふぅ~あんた達、喧嘩なれしていないね……と言うより、さっきの、初めてかがみとつかさの喧嘩を見た気がする、高校生になるまで喧嘩しなかっただけでも奇跡だ」
つかさ「そういえば……喧嘩なんかしたこと無い」
まつり「それより何でこうなったの?」
つかさ「えっと……」
私はアルバイトの事を話した。
 
まつり「へ~、お蕎麦屋さんね……つかさはお菓子作りが好きじゃなかった?」
つかさ「そうだけど……成り行きって言うのかな……」
お蕎麦作りに興味を持ったのは成り行きと言う他はなかった。
まつり「そのお爺さんが頑固だって言うのは分った、そんなに頑固なら友達や私達を連れてきたら追い返されるかもしれないと思ったのも何となく分る……
    つかさは小さい頃から裏表がなかった……普段から秘密なんか作らなかったから、秘密をもったつかさにかがみが動揺しちゃったのかもしれない」
つかさ「秘密……別に秘密にするつもりは……」
まつり「かがみも思い込みが激しいから、ああ成ると当分は手がつけられない。ほとぼりが冷めてから話すこと、無理に話そうとするとさっきの様になるから」
まつりお姉ちゃんは何度もお姉ちゃんと喧嘩しているから、仲直りの方法も知っている、私とお姉ちゃんを直ぐに引き離したのもその為だったのかも。
つかさ「ありがとう、そうしてみるよ、いつもお姉ちゃんと、まつりお姉ちゃんが喧嘩していたけど……その気持ちが分ったような気がした」
まつり「ふ~ん」
まつりお姉ちゃんは私をじっと見た。
つかあ「何?」
まつり「つかさも自分を主張するようになったね、少し見直したよ、アルバイトも悪くない……それとも、頑固なお爺さんの影響かな」
まつりお姉ちゃんは笑った。その笑顔をみると私もお姉ちゃんと仲直りができそうな気がした。
 
 次の日、何となく気が重い。まつりお姉ちゃんと話したけれど、やっぱり朝からお姉ちゃんと会い難かった。登校は別々にする事になってしまった。
つかさ「おはよ~」
みゆき「おはようございます……」
ゆきちゃんは教室に入ってきた私周りをきょろきょろと見回した。
つかさ「どうしたの?」
みゆき「かがみさんはどうされたのですか?」
いつもならお姉ちゃんは私と一緒にクラスに入ってゆきちゃんと少しお話してから自分のクラスに行く。
つかさ「お姉ちゃんは……」
私の顔を見てゆきちゃんは言った。
みゆき「つかささん、何かあったのですか……元気ないですね……」
つかさ「あのね、昨日なんだけど……」
私は昨日の出来事を話した。
みゆき「かがみさんと喧嘩なされたのですか……」
つかさ「うん……まつりお姉ちゃんが言うには今まで喧嘩しなかったのが奇跡だって……」
みゆき「私は一人っ子なのでその辺りはよく分りませんが……喧嘩できる兄弟、姉妹が居るというのは羨ましいです、特につかささんは三人もお姉ちゃんが居るのですから」
私は自分の席に鞄を置いた。そして席に着いた。するとこなちゃんが教室に入ってきた。とぼとぼと元気のない歩き方だった。私と目を合わせないようにしているみたいだった。
私とゆきちゃんはこなちゃんに近づいた。こんなに沈んでいるこなちゃんを見たのは初めてだった。席に座ると頭を抱ええていた。
つかさ「おはよう」
私の声にこなちゃんはゆっくりと頭を上げて私を見た。
こなた「つ、つかさ……昨日のかがみなんだけど……何かなかった?」
つかさ「昨日ね、初めてお姉ちゃんと喧嘩しちゃったよ」
こなた「やっぱり……アルバイトの話しになったら突然怒り出して……もしかしてアルバイトの話しはしちゃいけなかった?」
半分涙目になっていたこなちゃんだった。
つかさ「うんん、あんなに成るなんて思ってもいなかったから、内緒にしてって言わなかったし、しょうがないよ」
こなた「それで、仲直りはできたの?」
私は首を横に振った。
こなた「そうだよね……参ったな、私もどうすればいいか分らないよ、ごめん……」
つかさ「仲直りには時間がかかりそうだけど、アルバイトはお姉ちゃんと喧嘩するために始めたわけじゃないし、あまり気にしないで」
みゆき「そのアルバイトはどんなものなのですか?」
つかさ「お蕎麦屋さん」
こなた・みゆき「お蕎麦屋さん!?」
その時、チャイムが鳴った。それと同時に黒井先生が入ってきた。私達は慌てて席に戻った。
 
 お昼休みが来た。
昼休までの何度かの休みで私はこなちゃんとゆきちゃんにお蕎麦屋さんのお爺さんのお話をした。こなちゃんはお弁当を取り出すと立ち上がった。
つかさ「どこへ行くの?」
こなた「もちろん、かがみのクラスだよ」
確かに今日、お姉ちゃんはお昼を食べに来てくれそうにない。
つかさ「でも……今日は止めておいた方がいいと思うけど」
こなた「昨日の今日だし……つかさと喧嘩するくらい機嫌が悪いのも分ってる、でも、つかさは少なくとも悪いとは思わない、だから、私から言えばかがみはきっと……」
つかさ「まつりお姉ちゃんも時間がかかるって言ってるし、ここで一緒に食べようよ」
こなちゃんは暫く考え込んだ。
こなた「やっぱり行ってくるよ」
そう言うと小走りにお姉ちゃんの教室に向かった。入れ替わるようにゆきちゃんがお手洗いから戻ってきた。
みゆき「お待たせしました……泉さんは?」
つかさ「お姉ちゃんの教室にお昼を食べに行ったよ」
ゆきちゃんは心配そうな顔になった。
みゆき「二時限目の休憩時間、トイレでかがみさんと会ったのですが、とてもお話しするような状態ではありませんでした、なんと言うのか……近寄り難いと言いましょうか」
つかさ「なんで……私は止めたのに……」
みゆき「かがみさんにつかささんのアルバイトの話をした責任を取ろうとしているのでしょう」
つかさ「そんな……その話でお姉ちゃんが怒るなんて誰も分らないよ、それなのにこなちゃんは……」
ゆきちゃんは鞄からお弁当を取り出した。
みゆき「今は待ちましょう」
ゆきちゃんは微笑んだ。その笑顔に釣られて私もお弁当を用意した。
 
 お弁当を食べ始めて暫く経った。こなちゃんが戻ってきた。まだお昼休みは半分も終わっていない。こなちゃん自分の席に戻ってお弁当を片付けていた。
私とゆきちゃんは顔を見合わせた。いつもなら真っ先に私達の所に来てお話しするはずなのに。私はこなちゃんの席に行った。
つかさ「どうしたの、もう帰って来ちゃって、お姉ちゃんと何かあったの?」
こなちゃんはお弁当を仕舞いながら話した。
こなた「私がかがみの所に行ったら……つかさに言われて来たのかって言われて……違うよって答えたたら……みさきち達と一緒の席で……
    でも……私がつかさの話をした途端に、帰れ……それから先は全くダメだった、話しすら聞いてくれない……諦めて帰ってきた」
つかさ「そ、そうなんだ、もういいよ、ありがとう、後は私とお姉ちゃんの問題だから」
こなた「そう言ってくれるんだ、でも、かがみは、つかさの見方なら絶交だって……」
それからこなちゃんは何も言わなくなった。
つかさ「こなちゃんは関係ないのに、なんで絶交なの、そんなのないよ」
居ても立ってもいられなくなった。私は教室を出ようとした。
みゆき「待ってください、つかささんは感情的になられています、今行かれては、きっとまた喧嘩になってしまいます、それだけは避けなければなりません」
それは分っていた。分っているけど。こなちゃんの泣きそうな顔を見ると何もしないなんて出来ない。
つかさ「こなちゃんが絶交なんて絶対におかしいよ、取り消してもらう」
ゆきちゃんの制止を振り切った。

 

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