ID:tr > BKQpAO氏:初詣

初詣の日。
私、宮河ひかげは姉や友達と神社に来た…までは良かったのだけれど。あろうことか、というかベタと言うべきか。
「皆してはぐれるなんて…全部アンタのせいだかんね!泉こなた!!」
「ひどいなぁひかげちゃん。私は悪くないよ」
「いや、アンタが悪い。こなたがトイレ割り込まなきゃ良かったんだし」
柊かがみさんが共感してくれる。まったく、こいつさえ割り込んで来なきゃ、みんなははぐれなかったのに。
「ま、まぁ…済んだ事は仕方ないとして」
『反省しろ!』
こいつの辞書に反省と節制の文字はない。冬コミだって…お姉ちゃんを刺激しまくって。
「またしばらく塩かゆ生活だってのに…水島のやつ…神にお金あげる余裕ないってのに…」
なんでゆきなはあんなのと幼なじみなんだろ。
まぁ私も人の事は言えないか。「なんで私、アンタと知り合いになっちゃったんだろ」
「…あきらめなよひかげちゃん。ひなたさんの妹なんだから」
「お姉ちゃんが悪いみたいに言わないでよ…金銭以外で」
「あれれ、ひなたさんひどい言われよう?というかかがみ、まるで私が迷惑しかかけてないみたいじゃんか」
「大学のレポートまで助けてと言い出してた奴に言われたくない。単位落としたらアンタのせいだかんな」
よくわからないが、人は簡単にはかわれないって事なのかな。
「とにかくさ、私と会ったのが不幸ってのは撤回してほしいかな。今頼んでたんだから」
頼む?そういえば、ゆきな達の特徴訊いて、さっきまで携帯いじってたみたいだったけど。
「誰かにメール?あけおめメールでも出してたの?」
「いや、こなたは基本パソコンだから。それにアタシ達には手紙で来てるし」
「んー、どうやらみんなこっちに来てたりいたりするからね。だから頼んだんだ。『助けて』って」
………こいつ馬鹿だ。
「助けてほしいのは私なんだけど」
「うん。だから『ひかげちゃんを助けて』ってみんなに言った」

「…他人が泣いてるの助けてくれるわけないじゃんか」
「小学生なのに厨二入っちゃった?冬コミで色々助けてもらってたのに」
「アレは私が小学生だからじゃない。‘紳士’な人達だし」
「……間違ってないだけに否定できないな」
「かがみ、今のがわかるのの意味わかってる?まぁ、奢るからさ」
そういって泉こなたは財布を取りだし
「ジュースを飲んで、待ってなよ。おねえさん達が皆を集めてくれるから」




「いやー、どうしようかね水島」
「どうすっかな、小池」
水島と小池えりかは途方にくれていた。
内海ゆきながトイレに行こうとしたさい、くせ毛がピンと立った髪の長い上級生くらいの人物に割り込まれ、人波に流されてしまったからだ。
更にゆきなを探して宮河ひなたが人波に呑まれ、ひかげは上級生らしき人物を追って居なくなってしまった。
「宮河も宮河のお姉さんも戻ってきそうにないな。ゆきなはどこまでいったんだ?」
「わっぴーは大丈夫でしょ。何かあの上級生知り合いみたいだし」
「にしても、あんな長い髪の上級生うちの学校にいたっけ」
「さぁ…わっぴーの交友関係ってタマにわかんないからね」
当然ながら二人にはそのくせ毛の上級生らしき人物こと、泉こなたとは面識がない。
そのため、こなたとひなたが友人である事も、こなたが大学生である事も知らない。
「んじゃゆきなが心配だな。場所分かればいいんだけど…あいつ、泣いてないかな」
「うーにゃは泣かないと思うけどね。でも戻ろうとして更に道間違えるかも」
「そうなったらあいつは人に聞くだろ。今は泣き虫じゃねぇし。むしろそれ、宮河がするんじゃねぇか?」
「ひっど……ん?」
「見つかったか?」
「うんにゃ。そじゃなくて、さっきの『泣いてないか』って誰の事?うーにゃじゃなかったの」
「はぁ?!今気にすることかよ」
「いやだって『今は泣き虫じゃない』とか言っときながら『泣いてないか』とか変じゃんか。…もしかしてわっぴー?」
「ちげーよ!なんで宮河の心配なんざ」
「んじゃ誰?妹は連れてないし私はここだし」
「お前の心配は絶対しない。えーとだな………宮河の姉ちゃんだよ。ほら、今日だって泣いてたし」
本人が聞いたら「ぷんすか」という擬音とともに怒りそうな話である。最も、ひかげから姉の所業を聞いている二人にとっては怒りに納得しないだろうが。
「…あー、寝坊したとか言ってたし、それでわっぴーに叱られて泣いてたね」
「だろ!」
「いや、いくらひなたさんでもそこまではないかと」
『…え?お姉さん達誰?』
不意の声に、二人がそちらを見る。そこには高校生とおぼしき女性が五人いた。
「ポニーテールって事は、貴女が小池えりかちゃん?」
目を髪で覆い隠している女性ー山辺たまきが確認するように尋ねる。
「は、はい」
「んじゃ、こっちの男の子が水島くんだね。ひかげちゃんの言ってた通りっス」
髪の長い眼鏡をかけた女性ー田村ひよりが水島を見て頷く。
「宮河の、知り合いですか」
「まぁね。でも君…『絆創膏鼻につけたバカ面男子』って説明だったんだけど、仲悪いの」
「ア、アイツ…!」
くせっ毛の女性ー毒島みくの言葉に水島は唸る。それをまぁまぁと言いながら色黒の女性―八坂こうが口を開いた。
「ひかげちゃん自身がツンデレなんだから、君が素直に告白しないと伝わらないんだよ」
「ぶっ!!」
「え?アンタそうなの?!」
「チゲエョ。ソレヨリオネエサンタチダレデスカ」
「んー、ひかげちゃんの友達の後輩」
「同じく。あと姉のひなたさんがサークルの常連客」
「その友人兼先輩が私達二人」
「あ、こっちの長い髪の子が後輩ね」
「…ただの巻き込まれた人」
こう、ひより、たまき、みく、永森やまとの順に答えていく。
「やまと、巻き込まれた人って…私の親友じゃん」
「事実だもの。ひかげちゃんって子は知らないし、泉って先輩も会った事ないから」
「えっと…じゃあお姉さん達、わっぴーがどこにいるのか知ってるの?」
親友は否定しないんだなぁ、と思いつつえりかが聞く。
「うん。今から案内するよ。…ゆきなって子もひなたさんも、たぶんそこにいるから」

「どこに行っちゃったのかしらゆきなちゃん」
宮河ひなたは周りを見ながら呟いた。
朝から寝坊してひかげに怒られ、情けない姿を見せてしまった事の名誉挽回に探しにきたものの、あまりの人の多さに完全に見失っていた。
「困ったわね…ひかげちゃんもこなたちゃん追いかけちゃったし」
どうしてあの子はこなたを敵視したがるのだろうと考える。ひかげの心配はしない。こなたを追ったのなら、こなたに聞けばわかるはずだし、こなたがひかげを撒いたりはしないと確信しているからだ。
「あら、パティちゃんじゃない。明けましておめでとう」
「…?Oh!ユタカ、ミナミ、イズミ!イましたよ!」
「え?」
知り合いのパトリシアに会ったので挨拶をしたら何故か人を呼ばれ、混乱するひなた。
「ひなたさん、明けましておめでとうございます。こなたお姉ちゃんが探してましたよ」
「明けましておめでとう、ゆたかちゃん。こなたちゃんが?あぁ、ひかげちゃんと一緒なのね」
どうやらひかげと合流して欲しくてこなたが探してるのだろう、とひなたは察した。
「あら、貴女は」
「初めまして。若瀬いずみと」
「コミケやお店でよく会うわよね。確かアニメイ」
「うわぁぁぁぁ!」
いずみは慌ててひなたの口を塞いだ。隠れオタクである彼女にとって、そう言った事実はあまり口に出して欲しくない。
「…委員長、宮河さんが窒息しちゃう」
「え?あ、そうね岩崎さん。…勘弁してくださいよ、どこで誰が聞いてるかわからないんですよ。『壁に耳あり障子にあの野郎許さねえ』って言うじゃないですか」
「それって『障子に目あり』なんじゃ…あの野郎許さねえって何?」
「槍を揉んだらって意味よ。それで、ひかげちゃんは?」
「今案内します」



内海ゆきなは途方にくれていた。トイレに行こうとしただけなのに、どういう訳かはぐれてしまった。
「ここ…どのあたりなんだろ。だいちゃん達どこかなぁ」
誰かに場所を聞こうか、とも考えた。
しかし、水島達がどこにいるのかもわからないから訊きようがない。それにひかげが
「気をつけた方がいい。下手な‘紳士’だったら危険なんだから」
と言っていた。…正直、意味がわからなかったが、ひかげの本気は伝わったので用心する。
実際、和服のようなものを着てカメラを持った無精髭の怪しげなおじさんがいたのが更にその言葉を信用させた。
と、視界に巫女さんが入った。神社の人、それに女性なら‘紳士’ではないだろうと声をかける。
「あ、あの」
「ん?なに、貴女迷子?」
「いえ、そうじゃなくてその」
「参ったな~せっかく姉さんに隠れてサボってるのに…とりあえず社務所かな。うん、じゃお姉さんに」
「まつり!忙しいんだからサボってんじゃない!」
「ゲッ姉さんにつかさ…。違うわよ、迷子よ迷子」
「迷子?もしかして…内海ゆきなちゃん?」
「えっ…」
突然名前を呼ばれ、ゆきなは混乱した。この人が‘紳士’という種類の人なのだろうか。
(男だけじゃないならそう言ってよひかげちゃん!)
触られたり誘拐されたりするのか、と身構える。そんなゆきなに
「あの、大丈夫ですよ?私達は宮河ひかげさんのお姉さんのお友達ですから」
お母さんのような雰囲気を持った人が、優しく微笑んだ。




「あ、だいちゃん!ひかげちゃんにえりちゃんも」
「ゆきな!ってまた増えた!」
一体これで何人になったの?
私にゆきなに水島にえりりん、お姉ちゃん。泉こなたにかがみさん、みゆきさんにつかささん。同人サークルで会った田村さんに八坂さんに永森さん、毒島さんに山辺さん。それにコミケで会ったパトリシアさんに若瀬さん。あと泉こなたの親戚の小早川さんに……誰?それに巫女さんが二人…は含めなくていいか。どっか行ったし。
「…あれ、峰岸と日部は?」
「あーやはデート中らしいからね。みさきちは…」
「さっきからずっといるぞ~」
あ、知り合いなんだこの人も。
「あの、ひかげさん?」
「何、みゆきさん」
「私、そんなに年上に見えますか?」
「小学生から見れば立派に年上だけど…ああ。ゆきな、この人まだ大学生だからね。ママとか呼ぶと傷つくから」
はぁ…こっちは早く働きたいって言うのに。
ん?誰よつついてくるの?水島?
「わっぴーわっぴー、結局、この人達って何なの」
えりりんだった。何って…サークルの客と売り手の関係だったりライバルだったりその仲間だったり今初対面の人とかだったり…簡単に言うと
「友達…かな。こなた除いて」
「だからなんで私を除くのかな」
「小四相手に大人げない大学生は除いていいじゃん!」
「手加減すると怒るくせに」
『え゛っ、大学生?!』
あれ、言ってなかったっけ?
「とにかくさ、初詣済ませない?向こうにお好み焼きの屋台あったから寄りたいんだけど」
「山さん、空気読んで」
「けど実際、この大人数が一ヶ所に溜まってるのは迷惑なのよね。さっさと御詣りしてきなさい」
「確かに。急ぎましょうか。…はい」
「何?やまと。手なんか出して」
「またはぐれたらやっかいだからね。やさこもひよりんも、手繋いだ繋いだ。先輩方も」
「そうだね~はい、ゆきなちゃんも水島くんも」
「あら水島くんはひかげちゃんとよね」
「…小学生に出会いで負けるとは…」
「何言ってるんだ柊?」
ホントに何の話?

けど19人が手を繋ぐのっていうのも迷惑なんじゃないのかな。
「ひかげちゃん、はい。お姉ちゃんと手を繋ぎましょ」
「あのねお姉ちゃん…」
「?なに?」
大人数の手繋ぎって…ま、いいか。
「わかった」
「♪」

新年だしね。…うん。
甘えたって、いいよね。





お賽銭でいくら出すのかで揉めたのは、また別の話。

終わり


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