ID:2LkPp8nI0氏:私とこなた(ページ1)

 今日の部活は疲れた。珍しく担任の先生が来たせいかもしれない。私は制服に着替え終わり鞄を取った時だった。しまった。明日提出するプリントを

教室に忘れてきたに気が付いた。どうしようもないほどのおっちょこちょいだな。
 
 教室に戻り自分の机の中のプリントを鞄にしまった。ん……隣のクラスから話し声が聞こえてきた。もう終業時間も間近、自分の教室にはもう誰も居ない。
それに何か聞き覚えのある声が混ざっている。何気なしに隣のクラスの扉の窓から中を覗いてみた。そこに二人の生徒が楽しそうお喋りをしていた。
あれは、柊の妹じゃないか、それにお喋り相手は……なんて言ったっけな、名前は忘れたが柊が高校になってからの親友だ。長髪で青い髪のちっこい子。
話に夢中で時間を忘れている感じだった。それに柊の妹は柊と一緒にいつも帰っていたっけな。私は扉を開けた。
みさお「おーい、もう終業時間だぞ」
二人の会話が止まり、二人は私の方を向いた。
つかさ「え……もうこんな時間なんだ……」
???「そういえば……もう夕方だね……しまった早く帰らないと」
青い髪の子は急に慌てだして帰りの準備をし始めた。
つかさ「でも、お姉ちゃんがまだ来ていないよ……」
柊の妹は柊を待っていたのか……まてよ、確かお昼に柊が言っていたな。
みさお「柊は会議が終わったら眼鏡っ子と帰るって言ってたぞ」
二人は顔を見合わせた。
つかさ「……そういえばそんな事言ってたような……ゆきちゃんと何か用事があるって……」
???「えーつかさ、それはないよ、今までこんな時間まで待ってて……ばかみたいじゃん」
柊の妹も鞄を取り帰りの支度をした。
 
それから私達三人はそのまま一緒に教室を出た。そして校舎を出る間、二人はまた話しに夢中、こっちからは何も話せない状態だった。
とはいってもこの二人に何を話して良いのかも分からない。
校舎を出ると校庭の先にバスが止まっているのが見えた。あのバスの後は暫く待たないと来ない。
みさお「よっし、先に行ってバスを止めといてやる」
私は走り始めた。その時、私の横から風の様に追い越して行く人影……青い髪の子だった。みごとな前傾姿勢、風になびく長髪、みるみる距離が広がっていく。
私は全力で走った。しかし距離はどんどん離れていった。
 
???「おーい、速く早く~」
バスの乗車口から手を振っている。全力で走ったのに……何故。曲がりなりにも陸上部員の私が帰宅部の生徒にここまで差を付けられるなんて。
部活で疲れているから全力が出せなかった……そんなのは言い訳だ。負けは負けだ。
私がバスに乗り込もうとした時、柊の妹が息を切らして走ってきた。
つかさ「はぁ、はぁ、こ、こなちゃん……速過ぎだよ、日下部さんも……」
柊の妹がバスに乗ると程なく発車した。私達は一番後ろの席に座った。柊の妹はまだ息が乱れている。私は青い髪の子をじっと見つめた。
???「あの、何か?」
みさお「バス停までのあの走り素人には出来ない、もったいないな、今からでも運動部に入れば即戦力になるぞ」
すると青い髪の子は人差し指を立てて私の目の前に出した。
???「だって、夕方のアニメに間に合わないじゃん」
みさお「へ?」
何を言っているのかこのちびっ子は、こいつはそんな理由で部活に入らなかったのか?
みさお「ま、まじなのか、それ、マジで言っているのか?」
ちびっ子は深い溜め息を一回ついた。
???「はぁ、だからあまり走りたくなかったんだよね……私にとってはそっちの方が大事なんだよ……それはそれとして……どちら様でしたっけ、つかさの友達?」
言葉を失った、ちびっ子は私と柊がよく一緒に居るのを見ているはず、今更『はじめまして』的は言い方をされるなんて。
つかさ「こなちゃん、本当に知らないの、お姉ちゃんの友達の日下部みさおさんだよ……」
???「う~ん、かがみの友達……覚えていなかったりして、うちのかがみがお世話になってます」
ぺこりとお辞儀をした。うちのかがみがだって。どうやったらそんな台詞が出てくるのか。
つかさ「そういえば……まだ紹介していなかったかな……お姉ちゃん何もしないから……友達の泉こなたさんだよ」
泉こなた。そういえばそんな名前だったかもしれない。思い出した。ちびっ子はそのまま柊の妹と話をし始めた。その内容はゲームやアニメの内容だ。
おかしい。柊とどこに同じ接点があるのか。柊はアニメの話なんてしない。ゲームだって時々話題に出るくらいだ。
私はちびっ子の様子を観察し続けた。
 
バスを降り、電車に乗り換えて暫くするとちびっ子は駅を降りた。
結局ちびっ子はいわゆるオタクである事意外何も分からなかった。柊の友達ならもう少し同じ要素もあるかと思ったが……
みさお「わからないな、ちびっ子……」
つかさ「実はね、私も同じ事言われた、駆け足速いねって言ったらね」
よほど私が驚いたのが印象に残ったのか。ちびっ子の話題になった。
みさお「いや、ただ勿体無いなって思ってね」
つかさ「こなちゃんって運動はあまり好きじゃないみたい」
みさお「そういやスポーツ中継でアニメが延期になるって嘆いていたっけ」
ちびっ子の話をしている。こうしてみると柊の妹は柊と違っておっとりしているな。柊が別の友達と帰るのを忘れていたくらいだし。まてよ……
柊の妹とこうして話すのは今までなかった。中学から知っている人なのに。クラスが違うからか。
登校時はいつもこの姉妹は一緒だった。そんな時出会っても柊の妹と会話を交わす事はなかった。それに柊も一度も紹介していない。
柊の妹が遠慮しているだけなのかな。遠慮ってどんな遠慮なんだよ。異性でもないのに話すくらいは幾らでも何時でも出来たはず。
つかさ「どうしたの?」
私が考え事をしていると心配そうな顔をして私を見ていた。
みさお「い、いやね、柊の妹と一緒に帰るのも初めてと思ってね」
柊の妹は暫く上を見て考えていた。
つかさ「こうやって話すのも初めてかもしれないね、何故だろうね」
みさお「きっと柊が私を会わせたくなかったんじゃないか」
つかさ「ごめんなさい、今度お姉ちゃんに言っておくよ」
柊の妹は急に悲しい顔をした。冗談で言ったのに真に受けちゃっている。本当にこの子は柊の妹なのか。大人し過ぎるし優しすぎる。柊に同じ質問をすれば
きっと『私は紹介なんかしないわよ、あんたから話しかければいいじゃない』って言われるに違いない。
みさお「冗談だって……」
そう言うと少し笑顔を取り戻した。
つかさ「ゆきちゃん、高良みゆきさんも紹介していないよね?」
みさお「眼鏡をかけている子、今日柊と帰った学級委員長さんだね」
柊の妹は頷いた。
みさお「ちびっ子が紹介されないのだからね……ってことは私のクラスのあやの、峰岸あやのも同じかな」
つかさ「峰岸さんも中学から知っているけど、あまり話したりしないから……」
その原因の一部は柊にありそうだ。
気が付くつともう柊の家の近くまで一緒に歩いていた。私の家の分かれ道までもうすぐだ。
みさお「私はこっちだから」
つかさ「……今日はありがとう」
みさお「ありがとうって、そんなお礼を言われるような事してないぞ」
つかさ「だって日下部さんと話せたし、こなちゃんも喜んでると思うよ」
そうは思わなかった。少なくともあの態度を見れば私に全く関心がないに違いない。
みさお「どうかな、あのちびっ子、喜んでいるようには見えなかった」
柊の妹はクスっと笑った。
つかさ「こなちゃんは面白いよ、お姉ちゃんと一緒に居る時は特にね」
みさお「それは何となく分かるようなきがする、さっきだって終業時間まで夢中でお喋りしているくらいだし」
つかさ「今日も見たいアニメがあるらしいよ」
だからあんなに慌てていたのか。面白そうな奴だな。
つかさ「あ、もうこんな時間、それじゃまた」
みさお「柊の妹、話せてよかったよ」
私達は別れた。柊の妹は照れくさそうに自分の家に向かった。
 
次の日、登校すると早速あやのに昨日の出来事を話した。あのちびっ子に駆けっこで負けたのは言わなかった。なぜか負けたのが妙に悔しかったからだ。
あやの「そうだったの、そういえば私も妹ちゃんやその友達とあまり話したりしない、楽しそうな人たちね」
かがみ「おっす」
そこにちょうど柊が登校してきた。
みさお・あやの「おはよう」
かがみ「昨日つかさから聞いたわよ、あんた色々話したそうね」
なんだ、してはいけないような言い方は。朝会っていきなりそんな口調で言わなくても。
みさお「話したけど、それがどうかした、柊の妹も結構良い奴だよ」
かがみ「つかさも同じ事言ってたわ……つかさはみんな同じように言うから信用できないのよ」
みさお「おいおい、私はそんな性格悪いのかよ」
かがみ「少なくとも良い方とは言えないわね」
朝から不機嫌だ。ここはあまり意地を張るとこじれるだけだな。
みさお「それはないよ~」
あやの「まぁ、まぁ、二人ともそのくらいにしましょう」
あやのも合いの手を出してくれた。柊の険しい顔もすこし落ち着いたよう。
みさお「それより、こんどちびっ子や眼鏡っ子、柊の妹をちゃんと紹介して欲しいな」
かがみ「……もう話しているわよね、もう私が改まってする事じゃないわ、話したければはなせば良いじゃない」
 
思った通りの答えだった。冷めた言い方だった。なんか私達を合わせたくないような感じにすら聞こえた。そんな柊の言葉に私もなんだか冷めた感じになった。
これが原因かどうかは分からない。分からないけど高校二年は柊の妹のクラスの友達とは言葉を交わしたり会ったりはしなかった。
 
高校三年生になった。クラス割りは二年と同じだった。柊はやけに悔しがっていた。それは傍から見ている私にも分かるほどだった。
三年生になり程なくした頃だった。柊の妹とちびっ子が私の教室に来た。目的は分かっている。きっと柊の妹が教科書を忘れてきたのだろう。
二年の時もそうだった。月に何度か来ていた。そのおかげか柊の妹とは二言三言、話す機会はあった。でもちびっ子を連れて来たのはいいチャンスかもしれない。
丁度ここにはあやのも居る。柊を見ると本を読んでいて柊の妹に気が付いていない。
みさお「柊の妹じゃないか、柊になんか用か?」
つかさ「えっと、英語の教科書を忘れちゃって……」
やっぱり。
みさお「おーい柊、妹が来てるぞ」
気付いた柊がこっちにやって来た。
かがみ「つかさ、また忘れ物したわね、今度は何よ」
つかさ「えっと、英語の教科書、お姉ちゃんのクラス、授業あったでしょ?」
かがみ「しょうがないわね」
柊は自分の机に教科書を取りに言った。柊の妹の影に隠れているようにちびっ子がいた。何か言いたいのかな。もじもじしていた。
二年の時はそんな恥かしがり屋には見えなかったが。ちびっ子は柊の妹の背中を人差し指で突いた。
つかさ「あ、ごめん、そうだった、こなちゃんも教科書忘れたの……」
珍しいこともあるもんだ。ちびっ子が教科書を借りにきたのは初めてかもしれない。
かがみ「こなた、あんた置き勉してたんじゃないの、忘れようがないじゃない」
置き勉……私だってそんなのはしたことない。なんて奴だ。
こなた「いやー、なんて言うか、たまたま昨日宿題をしようとしたら……忘れちゃった」
かがみ「教科書はもうつかさに貸したからないわよ」
こなた「いや、忘れたのは世界史の教科書、五時限目なんだ」
つかさ「黒井先生、厳しいから……お願い」
つかさは柊に手を合わして頼んでいる。世界史は六時限目だったな。
みさお「それなら私が貸そうか、こっちも授業があるからお昼休み取りに来れば?」
こなた「さっすが、みさきち、ありがとう」
みさきち、みさきちって言われた。何でそうなんだ。
みさお「みさきちって……」
こなた「だってみさきちじゃん~」
こ、こいつは。
みさお「おい柊、こいつになんか言ってやってくれ、教科書を借りる態度じゃないよ」
柊は溜め息をついたまま私達を見ているだけだった。もしかしてちびっ子は柊達の前では私をそう呼んでいるのか。
こなた「かがみも何も言わない、決まったね、みさきち、お昼休みよろしく!!」
みさお「ちょっと待った、ちびっ子!!」
後ろを向いて帰りかかったが、この声にピタリと動きが止まった。
こなた「ちびっ子って、前からそう思っていたね」
みさお「思うも何も見たまま言った」
こなた「かがみ~みさきちに何か言ってよ」
柊は私達の近くに歩いてきた。
かがみ「だからあんた達を会わせたくなかったのよ、同類だから反発するのは目に見えてた」
同類……それはない。私は人差し指をちびっ子に向けて怒鳴った。
みさお・こなた「こいつと同類だなんて思わないでくれ!!!」
ちびっ子も私に指を向けていた。
みさお・こなた「はっ!!」
磁石で反発でもしたように私とちびっ子は一歩退いた。同じ反応をするとは思わなかった。あやのはそんな私達を見て笑っている。柊や柊の妹も今にも吹き出しそうだった。
私とちびっ子だけが真顔で柊に怒鳴っていた。皆もそう思っているのか。ちびっ子と同類。なぜインドアのオタクと私が一緒なのか。何故だ。理解できない。
かがみ「その反応、同類以外なにものでもないわ、もういい加減にしなさい」
柊は柊の妹に英語の教科書を渡した。
こなた「かがみ、世界史の教科書を貸して」
なんてやつだ、私の好意を無にする気なのか。
かがみ「残念でした、私の教科書は乱丁見つかって注文中なの、今日の授業に黒井先生が持ってくる事になってる、言っておくけど峰岸のもそうだから」
こなた「そんな~」
涙目になってしまった。
かがみ「日下部の教科書を素直に借りなさいよ」
みさお「いいや、さっきの態度で貸したくなくなった」
こなた「けち……」
ちびっ子はそのまま自分の教室に戻っていった。柊の妹は私を悲しそうな目で見ながらちびっ子の後を追った。
 
かがみ「確かにこなたが忘れたのが悪い、だけどそこまでしなくても……あだ名で呼ばれたくらいで怒ることでもないだろう」
あやの「そのあだ名、みさちゃんらしくて良いと思うけど」
いや、あだ名は別になんと呼ばれようと気にしない。二年生の時ちょっと話したくらいであそこまで親しくされると何か違和感が込み上げてきた。それよりも……
みさお「それよりちびっ子と同類ってどうゆうことだよ」
かがみ「どうもこうもないわよ、言葉の意味その通り、改めて似たもの同士ってのが再確認出来たわ」
あやのも相槌を打つ。これは否定すれば否定するほど突っ込まれる。もうこれ以上否定してもだめだと感じた。私はそのまま自分の席に着いて一時限目の準備をした。
柊達もこれ以上私に話しかけなかった。
 
 昼休み、柊がちびっ子の教室から戻ってきた。私とあやのもお弁当を食べ終わった頃だった。教室の入り口に柊の妹が立っていた。私を見ている。まさか。
みさお「ちびっ子のやつ教科書を借りるのに柊の妹をパシリに使っているのか?」
かがみ「こなたは日下部から借りるつもりはないみたいね、もう黒井先生の鉄拳も覚悟の上、つかさはそんなこなたを放っておけない……そんな所かしら、
    それにこなたは人をパシリには使わない、何かを頼むなら自分も動くわよ」
柊の妹は自分の意思でそこに立っているのか。ちびっ子の為にか……柊もちびっ子を深く理解しているみたいだな。
かがみ「日下部、貸すにしろ、貸さないにしろ白黒つけてつかさに伝えた方が良いわ、このままだと昼休みずっとあのまま立っているわよ」
それは困る。あんな目でずっと見られたらこっちが悲しくなってしまう。それにこうゆう話に私は弱い。机の中から教科書を取り出して柊の妹の所へ行った。
みさお「ちびっ子に、これで良いんだろ?」
教科書を渡すと柊の妹は大事そうに抱え、笑顔で答えた。
つかさ「ありがとう」
そして足早に自分の教室に戻って行った。
かがみ「いい所あるじゃない、見直したわよ」
私の肩をポンと叩いた。
みさお「あれはちびっ子のためじゃない、柊の妹の心意気に打たれただけだよ」
かがみ「それでも良いわよ、ありがとう」
すると眼鏡ちゃんが教室に入ってきた。
みゆき「乱丁の歴史教科書、お昼に入荷したので先に受け取って来ました……」
柊とあやのは教科書を受け取った。
かがみ「ありがとう、でも、その必要はなかったわね、日下部が貸したわよ」
眼鏡ちゃんは私に深々と頭を下げるとそのまま自分の教室に帰っていった。それを追うように柊も教室を出た。
もしかして柊の策略だったのか。いやいや、柊がこんな手の込んだ事をする訳がない。ってことは柊の妹、眼鏡ちゃん、それぞれがちびっ子の為にした。
あやの「泉ちゃん、みんなに慕われているのが分かったような気がする」
私は言葉を返せなかった。
五時限目が終わるとちびっ子自ら教科書を返しに来た。
 
 
あれから一年が経った。まさかちびっ子と同じ大学に通うことになるとは思わなかった。もちろん二人で決めたわけじゃない。偶然の一致。
腐れ縁ってやつなのか。泉こなた、柊つかさ、高良みゆき、この三人は柊の友達だった。あの教科書の一件以来、私達は急激に会うようになった。
みさお「どうだい?」
かがみ「今見たばかりじゃない、もう少し待って」
今は柊の家にお邪魔している。用件はレポートのチェックだ。ちびっ子と私の二人で作った。柊は一通りレポートを読み終えたようだ。
かがみ「言っておくけど、大学も学部も違うから私が見てもこれでいいかどうかは分からない、講師特有の癖も分からない、だから誤字、脱字のチェックくらいしかできなかった」
みさお「それでも充分さ、第三者が見てくれるだけでも在り難いよ」
柊はレポートを机に置くとお菓子を一つつまみ話し出した。
かがみ「あんたとこなた共同レポートって言ってたわよね、はっきり言うわよ、こなたはこのレポートの二割も関係していないじゃない、確かに文字の数からすると
    日下部とほぼ同じ、だけど回りくどい言い回し、必要のない仮定を入れて文字数を稼いでいるだけよ」
みさお「そうだろうね、それは私でも分かる」
そのちびっ子はアルバイトでここには来ていない。私が代わりにチェックを受ける事になっていた。
かがみ「だったら一言言ってやりなさいよ、何も言わないと調子に乗るわよ」
みさお「それも高校時代で分かってる」
かがみ「どうしたのよ、こなたと取引でもしたのか」
不思議そうに首を傾げる。
みさお「私は出だしが苦手なんだ、だから例え二割でもちびっ子が書いてくれたおかげでレポートが進んだ、柊の指摘してくれた箇所はちびっ子に直させる」
かがみは溜め息をついた。
かがみ「あんた、いいように使われているわね、同じ会社に就職したらきっとこき使われるわよ、てか、なぜこなたが来ていないのよ、アルバイトなんか理由にならない、
    共同制作にならないじゃない、このレポートの点数は二人とも同じになるのよ、普通は損得考えるだろう、訳がわからん」
腕組みをして呆れ顔をする柊だった。
みさお「使われていると言えばそうかもしれない、でもそんな事言ったら今こういて柊にレポート見てもらっているけど、柊はこれで何かを得るものはあるのか、
    他人の、しかも全く違う大学生のレポートのあら探し」
かがみ「……得るものねぇ……ある訳ない、こっちは頼まれてしているのだから、当たり前じゃない」
みさお「でも断ることも出来た」
柊は言い返してこなかった。
みさお「そんな所だ、私達なんてそんなにたいした理由で動いている訳じゃないんだよ」
かがみ「じゃ何の為に?」
みさお「さぁ?」
かがみ「なによ、答えがないのか……期待した私がバカだったわ、まったく、そう言う脈絡のない所はこなたとそっくりだ」
柊は机の周りを片付け始めた。何を期待していたんだ。ちびっ子か……また一緒にされた。あいつの顔が脳裏に浮かぶ。やっぱりちびっ子と私は違う。
みさお「ちびっ子だよ」
かがみ「いきなりなんだ」
柊は手を休めず片付けながら話した。
みさお「高校時代あいつと駆けっこをした、もちろん正式なものじゃなく校庭からバス停まで、それで見事に負けた」
かがみ「こなたの俊足は私も認めるわ、それがさっきの話と関係するのか」
みさお「ちゃんと練習すれば恐らくレギュラーは確実、県大会レベル以上の実力だ、短距離走は素質が九割くらいだからな」
私はあの時の出来事を柊に話している。なぜだろう。昔はこんなのは話せなかった。
かがみ「……それも否定はしないわ、あいつは妙に運動神経は良いわね」
みさお「俊足ならどんなスポーツだってできるさ……そうさ、部活をしてみなって言ったんだ、そうしたらちびっ子はなんて言ったと思う?」
柊は片付けていた手を休めて考えた。
かがみ「そうね、あいつの事だから……夕方のアニメが見れないとか、面倒くさいとか言ったんじゃない」
みさお「それが理由なのか、そんなどうでもいい理由で自分の力を潰していいのか」
かがみ「な、なんだ、私に聞いてどうする、それはこなたに聞いてくれ」
柊は引いた。思わず感情的になってしまった。私は一呼吸して気分を落ち着かせた。
みさお「ちびっ子にしたら駆け足が速いとか運動神経はあってもなくても関係ない、好きなアニメやゲームをしていた方がいいんだ……渡しはそんな時間を
    費やして練習した、他の人よりかは手を抜いていたかもしれない、だけどそれなりにやってきた……でも勝てなかった、これって不公平だ、
    必要のない能力なら私にくれって……」
かがみ「ふ~ん」
柊はニヤリと微笑しながら私を見た。
みさお「な、なんだよ」
柊お得意の突っ込みか、ダメ出しかな、どちらにせよ冷たく言われるんだろうな。そんな覚悟をした。
かがみ「時折見せるこなたとのいざこざの原因の一部がやっと分かったわ、日下部らしくもない、いつもならそんなの気にしないじゃない、天性の才能には敵わないわ、
諦めなさい」
突っ込みでもダメ出しでもなかった。むしろ慰めに感じる。
みさお「そんなものなのかな、ちびっ子はその天性を捨ててしまってる」
柊はレポートを開いて私に見せた。何をしたいのか分からない。私は首を傾げた。
かがみ「……まだ分からないの、それじゃこなたと同じね、よくこのレポート見なさい」
柊はレポートを私の目の前に突き出した。よく見るとちびっ子の書いた箇所は訂正の線がいっぱい引いてあるけど私の書いた箇所は一箇所もなかった。
かがみ「これってセンスよね、学部が違う私でも分かり易い文章、結論も断言的で日下部の思考がよく分かる、こんな書き方、だれでも出来るものじゃない、
    私の見た限り誤字以外に修正する箇所はない、むしろ手本にしたいくらいよ」
みさお「またまた、冗談で煽てても何も出ないぞ」
私は笑い飛ばした。
かがみ「日下部は自分の天性が何かも分かっていない、こなた以上に才能をゴミ箱に捨てている、レポートを見る限りこなたは手抜きやいい加減に書いてはいない、それはきっと
    日下部の実力を知っているから、追い付こうとしているのよ、あんたの駆け足みたいにね」
目が真剣だった。冗談ではない。柊は本気で言っている。
みさお「追い付こうとしてるって何で分かる、ちびっ子に聞いたのか?」
柊は悲しい顔になった。
かがみ「追い付こうとしてもすぐ引き離される……何度もね、みゆき……高良みゆき、私と張り合っている事すら気付いていない、もう高校で諦めた、
    だから日下部やこなたの気持ちは理解できる」
みさお「ふ~ん」
かがみ「な、何よ」
今まで柊に突っ込みを入れるなんて出来なかったからな、このチャンスを見逃すわけにはいかない。
みさお「眼鏡ちゃんと柊じゃ結果は私でもわかる、もっとレベルを下げないとダメだ、眼鏡ちゃんもライバルとは思わなかったに違いない」
かがみ「悪かったわね、高望みなのは分かっていた、いいじゃない、なんだ、その納得した態度は、てか、納得するな!!」
みさお「でも柊に褒められるほど私は達筆だったとは思わなかった」
かがみ「それはあくまで個人的な意見、世間一般の評価とは違うからそれだけは言っておくわ」
それでも他人から良い評価を貰えるのは滅多にない、嬉しかった。
かがみ「才能なんて誰も教えてくれない、一生それに気が付かない人が殆どよ、こなたのように気付いても使わない人もいる、でもそれは珍しい事ではない、才能があるからと
    言って強制したら意味はないわ……才能に気が付いて自分の為に使う人、他人のために使う人、良い事、悪い事に使う人、様々ね、」
みさお「それで、柊は見つかったのか」
かがみ「さあね……」
冷たく一言、でもそれは私に対してじゃない。柊自分自身に言っているような気がした。確か柊は弁護士になるのが夢だったような。気が変わったのかな。聞きたかったけど
柊の表情からして聞けるような状態ではなかった。
 
レポートの下書きも終わり、そろそろ帰ろうとした時だった。柊にここまでして貰って何もしないのは心苦しい。
みさお「今度柊がレポートとかあったら見てやろうか」
かがみ「日下部に……その気持ちだけ頂くわ」
相変わらず素直じゃないな。
『コンコン』
ドアがノックされ扉が開いた。つかさだった。
つかさ「ただいま……あ、日下部さんいらっしゃい」
みさお「おっす」
かがみ「おかえり、早かったわね……」
つかさ「うん、あやちゃんからいろいろ料理を教えてもらったから、それでね、これから教えてくれたたケーキを作ってみようと思うんだけど……日下部さんも、どうかな?」
みさお「ご馳走様~」
かがみ「こら、少しは遠慮ってものを……」
つかさは嬉しそうに部屋を離れた。私はもう暫く居る事にした。柊は私を早く帰したかったのか。まぁそんなのはどうでもいいや。
みさお「そういえば卒業してからあやのとよく会ってるな、つかさは料理の専門学校だろ、今更あやのに何を教わるんだ」
かがみ「そこまでは知らないけどレパートリーは峰岸の方が多いって言ってたわね」
みさお「凄いな、つかさはそこまで料理が好きなのか」
確かに何度かつかさの料理を食べたけど、食べるごとに美味しくなっているのが分かる。
かがみ「好きな事が出来るのが一番、『好きこそ物の上手なれ』とは良く言ったものね、つかさが初めて作った料理なんか食べられたものじゃなかったわ」
みさお「悪食の柊でも食えない物があるのか?」
かがみ「誰が悪食だ!!!三秒ルールとか言ってるやつに言われたくない!!!」
うわ、高校時代一回しかしていないのによく覚えているな。ここは下手に反論すると返り討ちあうな。
それよりつかさは始めから料理が上手かった訳じゃなかったのか。好きな事か、それで飯が食えるならそれが一番だな。私の好きなことって何だろう……。
かがみ「全く、そうゆう所もこなたそっくりだな」
その台詞は高校時代から何度も聞いている。でも何故か昔ほど違和感がなくなって聞こえる。慣れとは恐ろしい。
 
 しばらくするとつかさが自作のケーキと紅茶を持ってきてくれた。そこで三人で雑談をしながら楽しく過ごした。ケーキの味はもう店の味とさほど変わらない。
あやのよりも上手くなったかもしれない。つかさは料理の才能があったのか。それとも好きだから才能がついたのか。
そもそも自分だけで食べるのであればここまで美味しく作る必要がない。他人が食べて美味しいと言わせたいと思わないと美味しく作れない。
そういえばつかさは私に教科書を借りに来た。関係ないこなたの為に。なるほどね。つかさの優しさが料理を上手くしたのか。
柊はそんな妹を持って羨ましいと思った。
結局私は夕食までご馳走になってしまった。

 

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