ID:ZuZQueW5O氏:旅立ちの日

大きな病室に一つだけのベッド。
数人の人が、それを囲むように、ベッドに横たわる少女を見つめる。
その視線には、悲しみと、重く残酷な運命に対する哀しみがあった。


「………皆さん、いままでお世話になりました」
横たわっている少女が、微笑みながら言った。
表情からは病にかかっているようには見えないが、
その身体は、見るに堪えない程痩せ細っており、顔色も悪い。
「みゆきさんッ!何弱音吐いてるんだよ!」
青色の髪の少女が、バンッと両手をサイドテーブルに叩きつけた。
一瞬、びくっと周囲にいた人たちが肩を揺らす。
「こなた!」
それを、薄紫色の髪をツインテールで結んだ少女が咎めた。
「何……弱音吐いてるんだよ…っ、みゆきさんっ…………」
重力に従って、涙がテーブルに散っていく。
その様子に、みゆきさん、と呼ばれた少女はハッとして
困ったように笑みを浮かべた。


「ごめんなさい……でも、知っています……今夜が、峠って」
「ゆきちゃん……」
呟くと、薄紫色の――彼女、かがみと双子であるつかさが、
そっと彼女の細い手を握った。
「……ふふ、なんだか暖かいですね……」
今にも泣きそうなつかさに、彼女は笑顔を向ける。
だが、その声はだんだん弱々しくなっていく。
そして、比例するように握られた手から力がするすると失われた。

「みゆきさん!」
「みゆき!」
「ゆきちゃん!」

3人が、身を乗り出してみゆきを見る。

「私……こんなにす、てきな皆さんに、会えて、…幸せ、でした」

「もう、存在はできないけど……魂はずっと皆さんと共に………」


ゆっくりと、ゆっくりと目を閉じるみゆき。
ただ、眠りにつくだけのように。


ピーッ………………………


「……午前2時16分…………ご臨終です」

医者の声が、妙に冷たく、心に突き刺さった。


「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーッ!!!!」
こなたが、その場で崩れ、絶叫する。

「みゆき………」
茫然と立ち尽くすかがみ。

「ゆきちゃぁぁぁぁぁぁんー!!!」
だんだんと冷たくなる手に、つかさも悲痛の叫びをあげた。


――肉体はないけど……

――魂は、共にありたい……

「……!」

――私は、皆さんと一緒にいたい……

「ゆき、ちゃ……」

――だから……


――だから、皆さんも………どうか、私を忘れないでください

――私は、皆さんの心の中に生き続けますから………

頭に響く、暖かい声。
「忘れるわけ……ないじゃん……」
こなたは、深い眠りについた、みゆきの頬に触れる。
「私たちは……4人組ですもの……みゆきは、永遠に私たちの仲間よ……」
かがみも、身を抱き締めながら涙をはらはらと流した。
「ゆきちゃん………ゆきちゃんは、私たちの心の中で………」
冷たいその手を力強く握り締め、つかさは凛と天井を見上げる。



もう、笑えないはずのみゆきが、一瞬だけ微笑んだような気がした。
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