ID:MThDHAAAO氏:こなたの命日

ある日の夕方


「うぇ~ん、遅くなっちゃったよぅ」
つかさは呼び出しをくらい一人残されていた。用が済んだ頃にはもうじき日も沈もうかという時間だった。遅くなると知っていたので他の三人は既に帰っている。


ゴトッ

「あれ?今変な音が…」
つかさは鞄を持つと物音がした隣のクラス―姉である柊かがみのクラスをひょいと外から覗いた。何か赤い塊のようなものが見えたがよく見えなかったのでドアを開け中に入った。その時は人の気配は感じていなかったが教室の後ろでその赤い塊を見つけたその瞬間叫び声をあげながら膝から崩れ落ちた。
「こ、こなちゃ…イヤァァァァァ!」
その赤い塊は制服は赤く、長く青い髪まで真っ赤に染まっていた泉こなただった。つかさは胸にナイフが刺さり仰向けになっているこなたの横で今だに叫び続けている。

次の日話題は昨日起きた事件で持ち切りだった。なにしろ自分の学校で事件が起きたのだから生徒の反応もそれなりに大きかった。
「なぁあやの…」
「みさちゃん」
何か言いかけた日下部みさおをいつものようにニコッと笑い峰岸あやのはみさおに答えた。ただその笑みにはいつもの優しさをみさおは感じていなかった。
「柊の奴相当ショックなはずだぜ。ちびっこがあんな」
「みさちゃん!」
さっきよりも強く別の感情が込められたように自分の名前を呼ばれ思わずみさおは続きを言おうとしていた口を閉じた。
「……あやの」
「わかってる。わかってるのよ。でも私は…!」
みさおは彼女が怒っている所はほとんど見たことがなかった。感情をあらわにして怒鳴るなんて尚更見たことがなかった。だが目の前のあやのはぷるぷると拳を握り締め、今にもその拳を机に振り落とさんばかりの剣幕で喋っている。
「………」
「私が怒ってるのは泉さんの事じゃないの。こんな時に友達に何も言えなかった自分が嫌なの!!」

みさおが事件の事を知ったのは昨日の夜あやのからの電話でだった。その時からあやのの様子がおかしいのは気付いていた。しかし改めて感情をぶつけられるとみさおはどうする事もできずにしばらく黙っていた。
「とりあえず今日の帰りにでも柊ん家寄ってみようぜ。今日は午前中だけだし。無駄かもしんないけど行かないよりマシだろ?」
「けど柊ちゃんもう携帯に出てくれないし家にかけても部屋に閉じこもったままだって…」
「だーもう!あやのらしくねぇな!そんなに嫌なのか?」
あやのは俯いたまま答えようとしなかった。
みさおはため息をつきながら昨日のこなたの血の跡らしき場所に被せられたビニールシートをちらっと視界に入れた。きっとこびりついた血の跡がとれなかったのだろうと推測しながら自分の席に戻った。
「大丈夫かな…アイツ」
その独り言は誰の耳にも届いていなかった。

今日は午前中に緊急集会があり今日の授業は午前で終わるという私の予想は当たっていたようです。昨日あんな姿の泉さんを発見してしまったつかささんや音信不通らしいかがみさんの様子が気になるのでまさに好都合です。先程つかささんに今日はこれから家に寄らせてもらうという筋のメールを送ったので後は黒井先生のホームルームが終わるのを待つだけです。

と、黒井先生を待っていると誰かが入ってきたようで教室のドアが開きました。そして私はそのドアから見えた人物を誰だか理解すると私その人の名前を呼びながらその人に駆け寄りました
「つかささん!!」



昨日の放課後の事はよく覚えてないや。確か…血だらけのこなちゃんを見つけた時の私の叫び声を聞いて偶然忘れ物を取りにきていたゆきちゃんが駆け付けてくれたんだよね。こなちゃんの様子を見たゆきちゃんは何か凄くテキパキとした動きでこなちゃんを触ってたね。病院で聞いた話だとゆきちゃんはあの時応急処置をしてたみたい。病院の先生も応急処置がなかったら確実に死んじゃって…ううん!こなちゃんは死んでないんだからこんな事考えちゃダメだよね!
まだこなちゃんは危ないみたいだけどきっとまたお話できるもん!でもそういえば私はそれからどうしたのか全く覚えてないな…病院から家に帰った所も覚えてないや。ふと自分に帰ったらもうすぐお昼の時間だった。携帯のメールを確認すると峰岸さんやゆきちゃんからたくさんメールが届いてて驚いちゃった。

『無理して学校に来なくていい』

っていう感じのメールもあったけど私は不安でじっとしていられなかった。とりあえず私は時間割も確認せずに鞄を掴んで学校に向かった。あっ、そういえば私制服から着替えてなかったんだ。着替える手間が省けかな…
そんな事を思ってると教室のドアがもう目の前にあった。

「こなた」
私は部屋のベッドの上に座りながら何もない所をじっと見つめながらずっと友人…いや、それ以上の関係であるアイツの名前を呼んでいる。
「こなた…」
昨日から電話やらメールがかかってきたけど私はそれに対応しなかった。お母さんや姉さん達も部屋の前でなにか言ってたみたいだけど私には聞こえなかった。聞こうともしなかった。

「こなた……」

私はアイツの名前を呼び続ける。



「で、なんだよ話って」
つかさ達のクラスにあやのとみさおはみゆきにホームルームが終わり次第来るように言われていた。
「本当は小早川さんやみなみさん達が来てから話した方がいいかと思いましたが、まずは皆さんにお話ししとこうかと思いまして」
「だからなにをだよ」
「泉さんのこと?」
あやのがそう言うとみゆきは頷いた。そしてなにか決断をしたような目で話し始めた。
「泉さんは昨日かがみさんのクラスで倒れていました。そして私とつかささんの証言から泉さんは…
自殺未遂を起こしたと警察の人は見ています。」
「それがどうしたっていうんだよ」
「私も最初はその…考えたくはありませんが泉さんがナイフで自殺をしたのだと思っていました。しかし今考えるとおかしな点がいくつかあったんです。」
するとみゆきは立ち上がり、着いて来て下さいと隣のクラスに向かった。
「まず泉さんを発見した時の状況です。つかささん、確か物音がしたからこの教室に入ってきたんですよね?」
「うん、そうだよ」
「ですが出血の状況から見て泉さんは随分前に意識はなかったものと思われます。」
「でも物音くらいしても普通じゃない?無意識に体のどこかが動いたりとか」
「峰岸さんの言う通りその可能性もあります。ですので私はあくまでも不自然な点をあげているだけです。」
「それが何になるっていうんだよ」
「みさちゃん…」
みゆきが話すにつれて機嫌が悪くなっていくみさおの事を知ってか知らずかみゆきは今はとりあえず話を聞いて下さい、と続きを話した
「次にですがナイフについてです。ナイフは右手で持っていましたがその点は気になる所はありませんでした。誰かにナイフを握らされたような不自然さもありません。しかし問題なのはナイフの鞘です」
「さや?」
「鞘というのは刀などを収める時に使うものですよ。あのタイプのナイフには鞘があるそうです」

「ちびっ子が持ってたんじゃないのか?」
「ええ、泉さんはナイフの鞘を持っていませんでした。こうなるとどういう事かわかりますか?」
「どういう……?」
つかさは首を傾げうーんと唸っている。あやのとみさおも答えはわかっていないようなそぶりを見せた。
「…鞘を紛失というのもありますが今回の場合は誰かが持ち去った、つまり泉さんは自殺ではなく誰かに刺されたと私は思うんです。」
「そんな!こなちゃんが?」
つかさは思わず大声をあげてしまったがそのことを気にせずみさおはみゆきを睨むような視線を送ったままだ
「そこまで言うっていうんなら何か確証があって言ってるんだよな?」
「はい、私の推測ですが犯人もある程度わかっています」
「高翌良さん、よかったら聞かせてくれない?」
「もちろんです。そのために皆さんに集まってもらいましたから」
みゆきの周りに集まった三人との間には不穏な空気が漂っていた。そんな中みゆきは

「犯人…というよりも一番の被害者と言った方がいいかもしれませんね…」
と悲しそうに独り言をポソっと吐いた

「ゆたか…大丈夫?」
私がそう言うとゆたかは笑顔でうん、と頷いた。
でもその笑顔は不自然で無理をしてるっていうのは多分私以外でもわかると思う。それくらいゆたかの様子はおかしい

泉先輩の事は昨日みゆきさんから聞いてその後すぐにゆたかに電話してみたらおじさんがゆたかが気を失って寝込んでるって教えてくれた。夜だったけどそんなのは気にならなくて必死にゆたかの家まで急いだ。おじさんは驚いてたけど私を部屋まで通してくれた。どうやら泉先輩の服とかを持っていく所だったみたいで留守番とゆたかを頼めるかい?と言われ私はその時から明け方までゆたかが目を覚ますまでずっと側にいてあげた。手を握っていたら突然ゆたかが目を覚まして泉先輩を虚ろな目で呼び出した。そして寝巻きのままフラフラと歩き出したゆたかを後ろから抱きしめた。私にはそれくらいしかできなかったけど
『ずっと私がいる、ここに私がいるから大丈夫だよ』
ってゆたかに言い続けてもゆたかはどこかのネジが飛んだように泉先輩を呼び続けてた。
どれくらいそうしてたのかわからなかったけど私は気付いたら泣いていた。あの時の涙はどんな涙なのか今考えてみてもわからない。…多分ゆたかがどこかに行っちゃう気がしたんだと思う。
それからゆたかは私が泣いてるのに気付いてからは段々と普段のゆたかに戻っていった。今日学校は休むつもりだったけどゆたかが行くって言いだしたから私も心配だからゆたかに付き添って学校まで来た。無理しなくても言いって言ったけどあのまま家に居たら泉先輩の事しか考えられなくなるのはなんとなくわかる。

まだ少し虚ろな目をしたゆたかを連れて私はみゆきさんのいる三年のクラスまで急いだ。


昨日は…よく覚えてないな。お姉ちゃんが血まみれで病院に運ばれてきた所から…
私は倒れちゃって気がついたらみなみちゃんが私を後ろから抱いてくれてた。
何故かみなみちゃんは泣いてた。何が悲しいんだろうって思ったけど多分私が関係してるんだろうね。そういえば朝から頭がよくボーっとするなぁ…
それから…私は家に居たら頭の中がおかしくなっちゃいそうだから学校に行こうと着替えたりしてたら私も行くってみなみちゃんが色々用意してくれたよね。でもどうやって学校に来て朝先生からどんな事を言われたのかは覚えてないや。今はみなみちゃんに手を引いてもらいながらどこかに向かっている。…なんだかまた頭がボーっとしてきた

みなみちゃんがいっしょならわたしは、あんしんだよ
おねえちゃん、はやくかえってきてほしいな



私のボケた頭を覚ましたのはお姉ちゃんのクラスから聞こえてきた怒鳴り声だった

「もう一回言ってみろ!」
「ちょっとみさちゃん!暴力はダメ!よ」
みなみとゆたかが教室に入ってくるのとほぼ同時にみゆきの話を聞いていたみさおがみゆきに平手打ちをし、さらに襲い掛かかろうとした所をあやのがなんとか抑えつけた。
「こうなるのは予想してましたが…わかっていても痛いですね」
「ゆきちゃん大丈夫?」
慌てて近寄ってきたつかさをよそにみゆきはみさおの方を改めて向き、再び話し始めた
「日下部さん認めたくないでしょうがほぼ私の思う通りです。状況的にもそれしか考えられません。」
「ふざけんな!私は認めないからな!なんで私達に相談もなしに死ななきゃならないんだ!」
「あっ、みさちゃん!」
みさおは抑えてられていたあやのを振りほどき再びみゆきの方に向かっていったが背後からみなみが近付き、みさおは腕を掴まれそのまま倒されてしまった
「先輩…すいません」
「みなみさん、そこまでしなくても私は日下部さんに殴られる覚悟はしてましたから。もう離してあげて下さい」
「はい…」
みなみは素直に腕を離しみさおから離れたが、みさおは床に伏せたまま立ち上がらなかった。どこかケガをさせたのかと心配になったみなみはみさおに近寄ったが様子がおかしい
「日下部先輩……どうしました?」
「なんであいつが…なんで……」
みさおは嗚咽を漏らしながら泣いていた。
泣き顔を見られたくないのか顔はそっぽを向いている
「そんなの…ッ、可哀相過ぎるッ…じゃねぇか……柊も…ちびっ子…もッ…」
「私も今までこんなに悲しいと思った事はありません…」
ふとみなみが周りを見回すとゆたかと自分以外は全員涙を流していた。
「みゆきさん、一体どんな話しを?」
「えぇ…まずは

かがみさんと泉さんが付き合っていたのは知ってますね?」


私はかがみ先輩と泉先輩が心中しようとしたんじゃないかっていうみゆきさんの話を全て聞いて何も言葉が出てこなかった。隣いるゆたかもそうだったみたい。
柊先輩と泉先輩が友達を越えた仲というのはなんとなく知っていた。二人で帰る時は手を繋いでいたしそれから…その…キ、キスをしたりしてるのも偶然だけど目撃してしまっていた。
でもそれはみゆきさん達にとってはもう普通の事になっていたみたいで女同士だから、とかはなかったみたい。でも親は…
私はゆたかが泣いているのに気がついてハンカチで涙を拭ってあげた。

今私達はかがみ先輩の家に向かっている。みゆきさんが連絡が取れないのを心配して様子を見に行きましょうって珍しくみゆきさんがみんなを引っ張って先輩の家に向かっている。…でも本当は最悪の事態を考えてるんじゃないかな。みゆきさんの表情は曇っていた


さっき立て続けにメールが届いたので流石に気になって携帯を見てみたら全てみゆきからだった。
少し驚いたけど一つ一つメールの内容を見ていくとどうやらみゆきは全て分かったみたい。流石にみゆきは騙せなかったか…
ナイフの鞘を右手で握りしめ残りのメールもチェックした。

…ん?最後のメールの内容が終わってもまだ下にスクロールが続いていた。何だろうと下にスクロールを続けていくと最後に一言
『かがみさんは生きて下さい』
とだけ書いてあった。

確かに私はこなたが死んだら自分も死ぬつもりだった。
放課後こなたに呼び出されて私の親達にこなたとの関係がバレたって言われた時は心臓が止まるかと思った。こなたは淡々と話を続けて私とこなたはもう会わないように言われたらしい。私はこなたと付き合った時から最後はハッピーエンドにならないのはわかってた。でもこなたが好きだった。私の甘さもあって今回みたいなことを引き起こしてしまったんだ。
話を終えたこなたは涙を流すでもなくスッと懐からナイフを取り出した。

あぁ…こう言うのなんて言うんだっけ…そうそうヤンデレだ。でもこなたに殺されるならいいかなと思っていたらこなたは私に殺して欲しいと言ってきた。
私はそんなのできないって言ったけど

「私を…『泉こなた』をここで殺して!」

と凄い剣幕で私に迫ってきたかと思うと、私の腕を強引に引っ張りこなたの上に被さるように倒れた。

そこからどうなって家に帰ったは正直覚えてない
最後にこなたが
「ありがとう…お願いだから……かがみは死なないで」
と言ってた気がする

みゆきのメールが届いた時間から推測するともうそろそろ家に着くころだと思う。
私信じてるからね…アンタは死ぬわけない…看病は私がしてあげるんだからね…こなた…………

私が天井を見上げてると玄関が開く音がしてバタバタと慌てて家に入ってくる足音が沢山聞こえた。そんなに焦らなくても自殺なんてしないわよ…
私はみゆき達を迎えに行こうと立ち上がった瞬間乱暴に部屋のドアが開け放たれ一番聞きたくない台詞を聞かされた
「お姉ちゃん!家に帰ってる途中おじさんから電話があってこなちゃんが!こなちゃんが…!」

私は今『泉こなた』の墓参りに来ている。墓といっても墓地にあるようなものじゃなくてその辺りに落ちていそうな木の棒を突き刺しただけの簡単な墓だ。ここからは『泉こなた』が倒れた教室がよく見える。言い忘れていたがここは墓地ではなく学校の校庭で、この墓も勝手に作ったものだ。
あの日から今日は私にとって特別な日になった。新しくスケジュール表を買えば友人の誕生日等と一緒に記念日として書き加えるし、毎年墓参りをしようと決めている。記念日といえばほとんどが楽しい日しかない。だからこんな日が一年に一度くらいあってもいいだろう。
私は合わせていた手を離しまた来年ね…と新発売の食玩を墓に置いてそこから離れた。



もうすぐアイツが来る
まぁ…この日を記念日にしてるって聞いたアイツと本当は一緒に来る予定だったけどまた夜中までゲームしてたみたいで寝坊したから置いてきた。

本当に憎たらしくて…人をおちょくるのが好きで…イタズラばっかするし………でも大好きなアイツが


「お~いかがみん。置いていくなんて酷いじゃん!」

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コメント:
  • 眠れない -- 名無しさん (2015-01-08 00:46:26)
  • どういうことが言いたかったんだろうか -- 名無しさん (2012-04-27 17:09:40)
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