ID:6DyRCOk0氏:喧嘩作戦(ページ1)

  二時限目の休憩時間の時だった。こなちゃんがそそくさと私に近づいてきた。

こなた「ちょっといいかな」
つかさ「なに?」
こなた「いや、ここじゃちょっと言い難い事なんだ」
そう言うと教室を出た。私はこなちゃんの後に付いていった。言い難い事、一体なんだろう。でもだいたいその内容は想像がついていていた。
こなちゃんは人があまり通らない廊下まで来ると立ち止まった。
こなた「最近のかがみとみゆきさんの事なんだけど……つかさはどう思う?」
やっぱり。そう、お姉ちゃんとゆきちゃんはここ一週間全く会話をしていない。目線すら合わそうとしていない。昨日のお昼もお姉ちゃんはお弁当を食べに来ていなかった。
つかさ「やっぱりその話だったんだね……確かにおかしいよね、昨夜お姉ちゃんに何となく聞いてみたんだけど……何も話してくれなかったよ」
こなちゃんは両手を組んで考え込んだ。
こなた「私もみゆきさんに聞いてみたんだけどね……うまく誤魔化されちゃった……まぁ、あの二人の行動を見てだいたい察しはついたけどね」
つかさ「分るの?」
こなた「喧嘩だね」
こなちゃんは短く答えた。喧嘩。お姉ちゃんとゆきちゃんが喧嘩。原因は何だろう。何で喧嘩なんかしたんだろう。
つかさ「お姉ちゃんとゆきちゃんが……あまり想像がつかないんだけど……原因はなんだろう?」
こなた「……残念ながらそこまでは分らないよ、真面目な二人だから喧嘩をすると後を引くもんさ」
つかさ「もし本当に喧嘩だったら、早く仲直りしないといけないよね」
こなちゃんはこの言葉を待っていたかのように微笑んだ。
こなた「そうだよね、つかさもそう思うよね、だから協力して欲しいんだ」
つかさ「協力はいいけどお姉ちゃんとゆきちゃんが本当に喧嘩しているのか確かめないと……」
するとこなちゃんは得意そうな顔をした。
こなた「私の考えた作戦をすればそれも分るよ」
つかさ「作戦……何?」
その時休憩時間終了のチャイムが鳴った。
こなた「やばい、次は黒井先生の授業だ、詳しい話はお昼休みで」
 
 こなちゃんの考えた作戦。一体なんだろう。私にも出来ることなのかな。あまり複雑な作戦だったら何も出来ないかもしれない。失敗しちゃうかもしれない。
急に不安になってしまった。でも、こなちゃんも私と同じようにお姉ちゃんとゆきちゃんの変化に気が付いていた。やっぱり喧嘩じゃないにしろ何か二人の間に問題があるのは
確かみたい。こなちゃんの作戦がうまくいけば解決できるかも。期待と不安がグルグルと頭の中を駆け巡った。
 
 昼休み、お昼を食べ終わるとゆきちゃんが席を外すのを見計らって私を体育館裏に連れて行った。
こなた「みゆきさんの目が気になったからなかなか誘えなかったよ」
こなちゃんはほっと一息を入れた。
つかさ「そうだね……でも、お姉ちゃん今日もお弁当食べに来てくれなかった……」
こなた「それは直接関係ないと思うよ、以前だって一週間くらい来なかった事もあった」
そういえばそうだった。あの時は別に喧嘩もしてないし。何か特別な事もなかった。私はこなちゃんをじっと見た。
こなた「何?」
つかさ「え、いや、えっと、こなちゃんって結構いろいろ考えてたんだね……と思ってた」
こなた「……それじゃ私は普段何も考えていないみたいじゃん」
こなちゃんは不機嫌な顔をした。
つかさ「ごめん……」
こなた「直ぐに謝るところはかがみとは違うね……まいいや……本題に入るよ」
不機嫌な顔がすぐに元に戻った。そしてこなちゃんは真剣な顔になる。自然と私も真剣になった。
 
こなた「私はかがみとみゆきさんが喧嘩をしていると思ってる、それもかなり深刻な状態、あの二人に仲直りしてもらおうとして考えたんだけどね、二人を合わせただけじゃ
    ダメだってのはつかさだって分かるよね……二人を元に戻すには……私達も喧嘩をしちゃえばいい……つまり、喧嘩作戦」
私とこなちゃんが喧嘩。意味が分からない。そんな事しちゃったら余計に混乱しちゃうような気がした。
つかさ「……なんで私達まで喧嘩しなきゃいけないの……それにこなちゃんと喧嘩なんかできないよ」
こなちゃんは人差し指を立てて説明しだした。
こなた「演技だよ……え・ん・ぎ」
つかさ「演技?」
こなた「そうだよ、私だって何でも無いにつかさと喧嘩なんかできないよ、私とつかさが喧嘩している所を二人に見せて二人に気付いてもらうんだ、喧嘩はみっともないってね」
つかさ「でも」
私が言おうとするとこなちゃんは手を広げて私に向け口を止めた。そして話し続けた。
こなた「分ってるって、つかさは演技は苦手だよね……行き当たりばったりでやってもすぐに演技だってバレちゃう、それに私とつかさが喧嘩するんだ、かがみ達にも
     納得した理由じゃないとすぐに見破られる、私とつかさが喧嘩する理由がしっかりしてないとダメなんだよ」
つかさ「あるの、そんな理由」
こなた「あるある、この前私が貸したゲーム、そのゲームのセーブデータをつかさが上書きしちゃって消した事にするんだよ」
この前こなちゃんから借りた携帯ゲームソフトがあったのを思い出した。こなちゃんから借りたゲームなのはお姉ちゃんもゆきちゃんも知っている。
こなた「つかさはまくし立てられるといつも黙っちゃうでしょ、私がつかさに詰め寄るから俯いて泣きそうな真似をすればいい……それで頃合を見計らって……
     『こなちゃんなんか大嫌い』って叫んで教室を飛び出すんだ、そしてかがみかみゆきさんがつかさの後を追えばとりあえず成功」
つかさ「その後は……どうするの?」
こなた「……多分かがみもみゆきさんもつかさを慰めると思うよ、そうすれば心が自然と緩くなるから、二人の事を聞けばいいよ」
なんとなくこなちゃんの作戦の全体は見えてきた。でも、あまり自信はない。
こなた「……そんなに真剣にならなくていいよ、失敗してバレてもそれ自体がかがみ達の喧嘩の話をする切欠になるから……気楽に……気楽に」
緊張していたのに気が付いてそう言ってくれたのかどうかは分らないけど、その言葉に一気に肩の荷が降りた。そして出来そうな気になってきた。
つかさ「なんか出来そうになってきた」
こなた「そうそう、その調子、それじゃもう少し話を詰めよう……」
こうしてこなちゃんと念入りな打ち合わせをした。何故か頭の中にすんなりと打ち合わせが入っていく。
 
 二日後の放課後。喧嘩作戦を実行する時が来た。私は教室でお姉ちゃんを待っていた。暫くするとお姉ちゃんが教室に入ってきた。
かがみ「つかさ帰るわよ」
その時だった。こなちゃんも教室に入ってきた。ゆきちゃんが居ない。確か二人とも居る時点でこなちゃんが教室に入ってくる予定だった。でもこなちゃんの手には携帯ゲーム機
が握られていた。これは作戦開始の合図。私はその合図を信じた。
こなた「つかさ!やってくれたね!」
私に怒鳴りつけた。これも予定通りの台詞だった。お姉ちゃんはこなちゃんを見てびっくりしている。
つかさ「どうしたの」
こなた「どうしたもこうしたもないよぉ!」
こなちゃんは打ち合わせどおり携帯ゲーム機を私に見せた。
こなた「私のセーブデータ消しちゃったでしょ……あれはね、三日間徹夜でやっと手に入ったアイテムのデータがはいっていたんだ!」
つかさ「でも……ブロックAは消していいって……」
これで私の台詞はもうない。あとはこなちゃんが私にまくし立ててくる。
こなた「違う、違う、そんな事言ってない、ブロックBは消して良いって言ったんだよ」
えぇ、これは予定に入っていない台詞だった。それでも私は俯いた。
こなた「黙ってちゃ分らないよ、なんでAを消しちゃったんだよ」
これも予定に入っていない。それにさっきからAを消したって言ってたけどゲームを借りた時セーブはAでやってねって言ってた。だから私はAに上書きをした。
こなた「AとBなんてどうやったら聞き間違えるんだよ……信じられない……ボケつかさ」
これも予定に入っていない台詞だった。これだけ予定にない事を言われて少しカチンときた。でもお姉ちゃんは私達を見ている。ここで予定外の事をしちゃいけない。
って、予定外の事をしているのはこなちゃん。さっきからAを消したって。私は借りた時しっかりAを消して良いって聞いた。それにボケつかさって……いくらなんでも酷い。
私は思わず顔を上げてこなちゃんを見た。こなちゃんは目にいっぱいの涙を浮かべていた。そして顔が真っ赤になっている。こんなこなちゃんを見るのは初めて。
まさか。これは演技じゃない。本当に私に怒っている。こなちゃんは私がAに上書きした事を本当に怒っている。
つかさ「こ、こなちゃん……何で今頃になってそんな事言うの……」
思わず言った言葉。もちろんこんなのは言う予定は全くなかった。この瞬間から『喧嘩作戦』からただの喧嘩になった……。ただの感情のぶつかり合い。
 
 喧嘩……そういえばこなちゃんと喧嘩するのは初めてかもしれない。家でもたまにお姉ちゃん達と喧嘩をする事がある。でもそれは喧嘩と呼べるものじゃない。
お姉ちゃんが一方的に私に怒鳴りつけるだけ。私は言い返さない。うんん、言い返せない。大抵私のヘマだったりするのが多いから反論の余地がない。
お姉ちゃんは言いたい事を言うとそれで終わっちゃう。そんな喧嘩が殆どだった。
だけどこなちゃんのはそうじゃない。確かにこなちゃんは消していいと言った。聞き間違えはないよ。何度も聞きなおしたし、消す時も何度も確認した。
それを今頃になって……大事なデータならもっと早く気付くはずだよ……今度だけは言い返した。
 
こなた「わざとやったんでしょ、つかさがそんな人だったなんて思わなかった」
つかさ「違う、違うよ、絶対にこなちゃんはAを消していいって言った……」
私も目が熱くなった。きっとこなちゃんみたいに顔も赤くなっている。
こなた「こなちゃん……そんな気安く呼ばないで」
私が言い返そうと思った時、お姉ちゃんが私達の間に入ってきた。
かがみ「二人ともそこまで、さっきから聞いてれば……」
こなた「かがみ……つかさを庇うの?」
こなちゃんはお姉ちゃんを睨んだ。お姉ちゃんは即答した。
かがみ「こなたが本当にBと言ったのか、それともつかさが聞き間違えたのか私には分らない、だけどデータを消したのはつかさ……」
こなた「ほら見ろ、やっぱりそうじゃないか」
私に向かって得意げにそう言った。
かがみ「しかし、つかさがそんな事をするのは……いや、つかさじゃなくてもそう、誰かに貸すならデータが消える可能性は容易に想像できたわね、何故バックアップしなかった、
     布教用とか言って同じ物を三冊も買ってるこなたとは思えないほど軽率だ」
こなちゃんは黙り込んでしまった。だけど納得している訳じゃなさそう。私を睨みつけてる。
かがみ「あんた達の喧嘩、私から見れば五分五分ね、つかさ、謝っちゃえよ……こなたもいい加減諦めろ」
確かにデータを消したのは私。同じゲームをしたから分る。せっかく強くしたのにデータが消えちゃったら悔しい。わたしは謝ろうとした。
こなた「私帰る」
こなちゃんは自分の席の鞄を取ると携帯ゲームを鞄にしまった。
つかさ「こなちゃん……」
こなた「私をもうそんな風に呼ばないで」
吐き捨てるように言うとそのまま教室を出てしまった。私とお姉ちゃんはしばらくこなちゃんの去っていく方向を見ていた。私はこなちゃんを追いかけようと教室を出ようとした。
かがみ「つかさどこに行く……こなたの所に行くなら止めた方がいい」
つかさ「どうして……私はこなちゃんに謝りたくて……」
お姉ちゃんは空いている椅子を取り私の席の隣りに置いて座った。
かがみ「とりあえず席に着いて、よく考えてみて」
冷静な口調で私を嗜めるように誘う。こなちゃんを追い掛けたい気分はあったけどお姉ちゃんのその見切ったような態度に何故か座って考えてみるような余裕な気持ちになった。
 
 五分くらい経過した。お姉ちゃんは答えを求めてきた。
かがみ「分った?」
つかさ「うん、データを消される悔しさは私にも分るよ、あのゲームはとても難しかったし……こなちゃんあのゲームすごく気に入ってたから」
かがみ「違うそんなことじゃない、何故私がつかさを止めたか、それを聞いてる」
まったく分からなかった。
つかさ「謝って仲直りしようとしたんだけど、行っちゃいけないの?」
かがみ「……今つかさが行ってらまたさっきの喧嘩の続きになるだけ、こなたも分ってるのよつかさを怒ったってデータは帰ってこないってね、ただその怒りをつかさにぶつけて
     憂さ晴らししたかったのよ、でも引っ込みがつかなくなった……そんな状態のこなたに謝ったって真意は伝わらない」
つかさ「じゃあどうすれば……」
かがみ「一日放っておく、明日になったら普通に戻ってるわよ、その時普通にしてれば向こうから話しかけてくるわよ、それで解決」
つかさ「……それでいいの?」
お姉ちゃんは頷いた。何だろう。お姉ちゃんとゆきちゃんの喧嘩を解決するつもりだったのにこれじゃあべこべ……。お姉ちゃんとゆきちゃんは本当に喧嘩をしているのかな。
そんな事を考えているとお姉ちゃんが思い出したように私に聞いてきた。
かがみ「こなたは何で今頃そんな事言い出したんだ、つかさがゲーム返したのは随分前じゃないのか……」
つかさ「うん随分前だった……」
かがみ「そうか……それでか」
つかさ「何?」
かがみ「いや、なんでもない」
つかさ「ゆきちゃんはどうしたのかな、さっきから居ないみたいだけど」
かがみ「みゆきはもう帰ったわよ、なんでも急用ができたみたい」
あれ、お姉ちゃんはゆきちゃんと話をしているみたい。それじゃ喧嘩をしていないのかな。
つかさ「お姉ちゃんはゆきちゃんと最近一緒だけど何かあるの?」
かがみ「……何かって、何もないわよ、それより自分の事を心配しなさい……」
こうしてこなちゃんの『喧嘩作戦』は失敗に終わった。そしてこなちゃんと私の仲直り、それとお姉ちゃんとゆきちゃんの謎だけが残ってしまった。
 
 次の日の朝、私はこなちゃんに呼ばれて体育館裏に行った。お姉ちゃんの言うように仲直りができるのかな。それとも絶交……それだけはやだ。
こなちゃんは私と目が合うと直ぐに話し出した。
こなた「私はつかさに謝らなければならない」
つかさ「私も……謝らないと」
こなた「ゲームのデータは消えていない、つかさは私のデータを消していない」
つかさ「へ??」
何が何だか分らない。
こなた「……どうだった私の迫真の演技、正直これは賭けだった、だけどつかさも怒ってくれて……助かった、おかげでかがみは本当に私達が喧嘩したと思った」
つかさ「どうゆう事なの、こなちゃん?」
こなた「昨日つかさに説明した作戦は嘘だったんだ、嘘だけど最初は殆ど同じ……それでつかさが私を怒るようにしたんだ、つかさには本気で怒って欲しかったから」
つかさ「私を騙したの?」
こなた「結果的はそうなっちゃね、だからごめん、でも敵を欺くには見方からって言うじゃん、許して」
こなちゃんは両手を合わせている。怒る気はなかった。
つかさ「別に、怒ってないよ」
こなた「ありがとう、ところで昨日私が教室を出た時追いかけてこなかったけどどうして?、追いかけてきたら今の事話したのに」
つかさ「お姉ちゃんが止めたんだよ、今行っても仲直りできないって……それで行けなかったんだよ」
こなちゃんはニヤリと笑った。
こなた「いいぞ、かがみは完全に騙した、これでかがみ達の喧嘩をうまく止められるかも」
つかさ「こなちゃん、お姉ちゃん達喧嘩はしていないみだよ、でも何か隠してる……そんな気がする」
こなた「喧嘩じゃない……じゃ何を隠してるんだろ、私達に知られちゃ困る秘密って何だろう」
こなちゃんは腕を組み考え始めた。
つかさ「私はあまり興味ないよ、隠しているのならきっとなにか深い訳があるんだよ」
こなた「違うなつかさ、秘密が喧嘩じゃなかったら私達は除け者にされたんだよ」
つかさ「除け者……」
こなた「かがみはつかさと姉妹でとても仲がいい、そんなつかさにも話せない秘密、知りたいとは思わないの、困ってるなら力になりたいとは思わない?」
昨日のお姉ちゃんは私がこなちゃんを追おうとした時止めて助言してくれた。私だってたまにはお姉ちゃんの力になりたい。
こなた「かがみはこっちのペースに巻き込むことが出来そう、問題はみゆきさんだね、でもみゆきさんは私達と同じクラス、かがみと別れている時間が多いからチャンスはある、
    お昼、かがみは来ないからその時がチャンスだね」
話をどんどん進めていくこなちゃん。本当にこれでいいのかな。だけど普通に聞いていたんじゃ教えてくれない。
こなた「つかさ、私達はまだ仲直りしてないって事にしておいて、その方が向こうも気を使って動きやすい」
つかさ「え、あ、うん、分った、出きるだけそうするよ、自信ないけど」
そうだ、もう後戻りはできない……かな。
こなた「それじゃ教室に戻るよ、一緒に戻ると怪しまれるからつかさは予鈴が鳴るぎりぎりで教室に入ってきて」
 
 こなちゃんは走って教室に戻って行った。ふと腕時計を見た。まだ予鈴が鳴るには十五分以上ある。遠回りして戻るかな。私はこなちゃんとは反対方向に足を進めた。
話し声が聞こえた。聞き覚えがある声。お姉ちゃんとゆきちゃんの声だ。二人も隠れて私達と同じように話してる。私は忍び足で二人に近づいた。丁度建物の陰で見えない。
だけど声はしっかりと聞こえた。
かがみ「みゆき、二人の秘密がやっと昨日わかったわ」
みゆき「そうですか、私の予感が当たってしまったのですね、それで何が分ったのですか」
かがみ「この前こなたが携帯ゲームを貸したの覚えてるかしら、つかさのやつこなたのセーブデータ消しちゃったのよ」
みゆき「……泉さん、そのゲームの話になると楽しそうでしたね、それで泉さんの様子は?」
え、お姉ちゃん昨日の事をゆきちゃんに話してる。私達の秘密って、ゆきちゃんの予感って何だろう。
かがみ「すごい権幕だったわ、私も思わず立ち尽くした……あれだけ言われちゃつかさだって怒るわね」
みゆき「温和なつかささんが怒ったのですか、それは大変ですね……仲直り出来るでしょうか」
かがみ「みゆきがそんなんでどうするのよ、私だって自信なんかないわよ……こなたのやつあだ名で呼ぶな、何て言うのよ、そんな状態のこなたにつかさを近づけたら
     どうなるか分らない、謝りに行こうとするつかさを止めて嗜めたわ」
みゆき「それは正解だと思います、泉さんの怒りをまず鎮めないと」
かがみ「あとあの二人は私達が喧嘩していると思っているわよ」
みゆき「それはかえって好都合かもしれません、それを利用すれば仲直りがし易いと思います」
これって、もしかしてお姉ちゃんとゆきちゃんって私とこなちゃんに何か秘密があると思っていた?どうしよう。私達が思っていたのと同じことをお姉ちゃん達も思っていたんだ。
かがみ「みゆきがあの二人と同じクラスで良かった、二人の監視、これからも頼むわよ、お昼私は行かない方が良いわね、携帯もむやみに使わない方がいいか」
みゆき「それがいいと思います」
お姉ちゃん達本気で私達が喧嘩してると思ってる。このまま二人の前に飛び出して『えへへ、あれは冗談だよ』って言うかな。だめだめ、お姉ちゃん達きっと怒るよ。
その怒りはこなちゃんにも……。お姉ちゃんとこなちゃんの喧嘩は何度も見たことある。だけどそれはじゃれ合いみたいなもの。本気の喧嘩になったらきっと大変な事に。
かがみ「そろそろ時間ね、私は直接戻るから」
みゆき「私は職員室経由で戻ります」
うゎ、どうしよう。私達は在りもしない秘密をお互いに探っていたんだ。そして両方の秘密を私は知ってしまった。こなちゃんがこの事を知ったらどうするかな。
予鈴が鳴った。考える時間がない。もう成り行きに任せるしかない。私は急いで教室に戻った。
 
黒井「柊……柊つかさ」
え、まだ予鈴なのに出席をとってる。慌てて教室の扉を開けた。
つかさ「はい、はい、居まーす」
言葉よりも早く先生の中指が弾いた。私のおでこにピシっと当たった。デコピンだ。意外と痛かった。思わず額を手で押さえた。数人の生徒がクスクス笑ってる。
黒井「返事は一回……今日は早いというてるはずや、柊、最近たるんでるで……さっさと席につきなや」
なんとか遅刻は免れたみたい。額を押さえながら私は席に戻った。そして早めのホームルームが始まる。席に着いて辺りを見回した。こなちゃん、ゆきちゃんも居る。
そういえばこなちゃん予鈴の少し前に戻ってくるようにって言ってたっけ。忘れてた。
お姉ちゃんとゆきちゃんの会話が頭から離れない。
お姉ちゃんとゆきちゃん私達と同じように喧嘩を利用するって言ってた。まさかこなちゃんと同じように喧嘩作戦でもするのかな。もうそんなのやだ。
 
 休み時間、ゆきちゃんはこなちゃんとしきりに会話をしていた。こなちゃんとの約束があったので私は話しに参加できない。朝の会話から考えるとこなちゃんの怒りを
鎮めようとしている。きっとそうだ。本当の事をこなちゃんに教えたい。でもゆきちゃんはこなちゃんから離れようとしなかった。
このままお姉ちゃんの所に言っても良かった。でもこなちゃんに一回話をしてからじゃないと話せない。そして三時限目の休み時間、ゆきちゃんは私の所に来た。
みゆき「つかささん、お昼ご一緒にどうですか」
つかさ「……一緒にっていつも一緒だよね、どうしたの改まって」
みゆき「いえ、なんと言って良いのか……泉さんと一緒なんですが……宜しいでしょうか」
あ、そうだった私達喧嘩してる事になってったんだ。どうしよう受けるべきなのかな。考えているとゆきちゃんの後ろからこなちゃんが手で丸のサインを出していた。
前の休み時間でこなちゃんも誘われたのか。ゆきちゃんは私達を仲直りさせようとしている。そんな気がした。
つかさ「いいよ、一緒に食べよう」
何か気が引けた。本当は喧嘩なんかしていない。ゆきちゃんの誘いを受けてこなちゃんはどうするつもりなんだろう。
 
 お昼休み、私達はテーブルを囲んでお弁当を食べた。
こなた「そういえば今日もかがみ来ないね、どうしたんだろ」
みゆき「あ、忘れていましたしばらく峰岸さん達と食べるそうです」
ゆきちゃんも本当の事を隠そうとしている。こなちゃんとゆきちゃんは楽しそうに話しながらお弁当を食べている。私は今朝の事とこなちゃんと喧嘩したことになっているので
話すこともできない。でも何か聞かれたらどう答えるか。そんな事ばっかり考えていた。皆がほぼお弁当を食べ終わった頃だった。
みゆき「つかささん、泉さん……ちょっと宜しいでしょうか?」
こなた「なに?」
私は返事はせずにゆきちゃんの顔を見た。
みゆき「昨日の喧嘩の話はかがみさんから伺いました、どうでしょう、もう一日経った事ですし、許してもいいと思うですがいかがでしょうか」
これは朝の話には無かった。きっとゆきちゃんの自分の判断なんだ。凄いなゆきちゃん。それに比べて私なんか一人じゃ何もできない。
こなちゃんは何ていうだろうか。私はこなちゃんの顔を見た。こなちゃんは『私に任せろ』って言っているような目をしていた。もうこなちゃんに任せるしかない。
こなた「みゆきさん、折角だけど、まだ私は許す気になれないよ……こうして一緒にご飯を食べるのも、今は嫌なんだ……みゆきさんが居るからここに居られるようなもんだ」
こなちゃんはまだ作戦を終わらす気はないのか。私はもう終わらせたい。
みゆき「話ではつかささんは泉さんに謝りに行こうとしたようですが……泉さんはご承知でしたか、私から見てもこれはなかなか出来るものではないと思います」
こなた「そんなの知らないよ、勝手に謝ったって私の気の済む問題じゃない」
なんかゆきちゃんの言葉がとても嬉しく感じた。あれは演技じゃなかった。私のしようとしたことは少なくとも間違っていなかった。目頭が熱くなった。
こなた「ちょ、つかさ……」
こなちゃんが私の涙に気付いた。ゆきちゃんも気付いた。私は慌てて涙を拭いた。
こなた「つかさ……泣いたってだめだから」
こなちゃんは席を立ち教室を出てしまった。ゆきちゃんは暫く黙ってしまった。こなちゃんは私が泣くなんて思ってもいなかったからびっくりしちゃったみたい。
みゆき「つかささん、すみませんでした……そんなつもりは無かったのです、でしゃばり過ぎました」
ゆきちゃんは深々と頭を下げていた。もうこんなのは止めにしよう。でもそれにはこなちゃんの説得が必要。作戦を終わらせないと。
つかさ「ゆきちゃん、嬉しかったからつい泣いちゃったんだ、気にしなくていいよ」
みゆき「……泉さんがあれほど意固地になっていたなんて知りませんでした、かがみさんの話は大げさではなかったのですね」
つかさ「今日の放課後、こなちゃんと会うんだ、それで直接話すから……それで終わりにするよ」
みゆき「……終わりだなんて言わないで下さい、たった一回の間違えで別れるなんてあまりにも……悲劇的過ぎます」
しまった、いい間違えちゃった。
つかさ「ゆきちゃん、終わりって喧嘩を終わらせるってことだよ、私だってあれだけでこなちゃんと別れるなんて思ってないよ」
本当は『喧嘩作戦』を終わらせるんだよ。
みゆき「それを聞いて安心しました、陰ながら祈っています」
お昼休みはもう少し時間があったけどこなちゃんを追うことはしなかった。もう演技だって分るから。
 
 放課後、私はこなちゃんを屋上に呼んだ。
こなた「泣くなんて結構やるね、つかさにそんな演技力があるなんて思わなかったよ、こっちの対応が遅れるところだった、これでみゆきさんもこっちのペースに巻き込めるよ」
つかさ「あれは演技じゃいよ、ゆきちゃんの言葉に感激しただけだよ……」
こなた「どっちでもいいよ、とりあえず今後の作戦を練らないとね、二人の秘密を暴くんだ」
楽しいそうになってるこなちゃん。やっぱりこなちゃんは本来の目的を忘れてゲーム感覚になってる。
つかさ「こなちゃん、もう作戦はおわりだよ……お姉ちゃん達に私達が心配するような秘密なんてないよ」
こなた「何言ってるのさ、つかさだって言ったじゃん、二人の行動がおかしいって」
つかさ「それはお姉ちゃん達が私達をおかしいとおもっていたから……それを見て私達もおかしいと思ってた、お互いに疑っていただけなんだよ」
こなた「……何だよ急に、まるでかがみ達から聞いたような言い方してさ」
つかさ「そうだよ、今朝こなちゃんと別れた時にお姉ちゃんとゆきちゃんの話をきいちゃったんだ」
私はこなちゃんに今朝の二人の話を聞かせてあげた。
……
つかさ「そうゆうことだよ」
こなた「その話もかがみ達が仕組んだものだったらどうよ、つかさが通った所に偶然にかがみとみゆきさんが居るのは不自然すぎる」
つかさ「そうだよね、嘘かもしれない、でも私の聞いた話がお姉ちゃん達の作り話だったとしても、もう私はこなちゃんの力になれない」
こなた「どうして」
つかさ「昨日のお姉ちゃん、お昼のゆきちゃん、二人とも私達が本当に喧嘩したと思ってる、それで本気に仲直りさせようと思ってる、もうそれで充分だよ……
    なんて言ったらいいか分らないけど、もうこれ以上二人を苦しめたくなくって……なんか涙が出てきちゃった」
お昼と同じように涙が出てきた。でも今度は涙は拭かなかった。こなちゃんを説得する最後の私の問いかけ。
こなた「わかったよ、どっちにしろつかさが協力してくれないとこの作戦は成立しない、もう分ったから泣かないで」
つかさ「あ……りがとう」
分ってくれた。嬉しくなって余計に涙が出てきた。
こなた「嬉し泣きするのはまだ少し早いよ、どうやってかがみ達を納得させるんだ、中途半端なことするとそれこそかがみの鉄拳が飛んでくるぞ」
確かにそうだった。私は涙を拭って一呼吸してから話した。
つかさ「大丈夫だよ、このまま二人で笑ってお姉ちゃん達に会えばね、仲直りしたって……」
こなた「なるほど……そして作戦は私達二人だけの秘密ってことだね」
つかさ「秘密を作るとこんどはお姉ちゃん達が作戦しちゃうから……ほとぼりが冷めたらちゃんと話さないとね」
こなた「そうだ、そうだよね」
私達は笑った。
こなた「さっそくかがみ達に会いに行こう、たしか二人は委員会会議だったよね、もう終わってるかな」

 

 

 私達はとりあえず自分の教室に戻った。教室の扉を開けたときだった。
かがみ「いい加減にしろ!!」
怒号と共にお姉ちゃんがゆきちゃんを平手打ちする光景がいきなり飛び込んできた。ゆきちゃんの頬を打つ乾いた音が教室に響く。それと同時にゆきちゃんの眼鏡が飛んだ。
こなた「まずい」
こなちゃんが低い声でそう言うとゆきちゃんはお姉ちゃんの足元に倒れた。ゆきちゃんは床に倒れたままピクリとも動かない。
つかさ「ゆきちゃん?」
私はゆきちゃんの元に駆け込んだ。ゆきちゃんを起こそうとした。
こなた「触っちゃダメー!!」
叫びにも似た声に私の動作が止まった。
こなた「動かさないで、みゆきさんの耳を見て」
ゆきちゃんの耳から血が垂れてきている。こなちゃんは素早くゆきちゃんを動かさないように制服のボタンを取って服を緩めた。そして口元に耳を当てている。
こなた「よし息がある、かがみ早く職員室から先生呼んで、救急車も」
かがみ「うそ……そんなに強く打ってない……みゆきなに冗談してるのよ……起きなさいよ」
お姉ちゃんはその場に止まってゆきちゃんを打った手を見ている。
こなた「かがみ何してるの!!!早く!」
お姉ちゃんは放心状態。ぼーとして動かない。私が職員室に行こうとすると近くに居た男子生徒が代わりに職員室に行ってくれた。すぐに先生がきてくれて暫くすると
救急車のサイレンの音が近づいてきた。ゆきちゃんは素早くタンカーに乗せられ教室を出て行った。その時お姉ちゃんはスイッチが入ったように泣き崩れた。
お姉ちゃんは先生に抱きかかえられるように職員室に向かっていった。きっと事情を聞くため。私達も教室で待機するように言われた。
 
 私とこなちゃん以外誰もいない教室。床についた血の跡が生々しい。まさかこんな事になるなんて。お姉ちゃんとゆきちゃんが喧嘩をしてしまった。それも演技じゃない本気。
それ以外考えられない。きっと私達が関係してる。こなちゃんも全く動かないで自分の席に座っている。きっと私と同じことを考えてるに違いない。お姉ちゃんはまだ
もどってくる気配はない。このまま黙っていても辛いだけ。こなちゃんと何か話そう。
つかさ「ゆきちゃんが倒れてからの行動が素早かったけどどうして分ったの、救急隊員の人も関心していたよ」
こなちゃんは私の方を向いて答えた。
こなた「耳への掌打……護身術であるんだよ、昔ゆい姉さんから教わった、女性の力でも充分ダメージがあるんだ……かがみは頬じゃなくてちょうど耳の上に平手打ちをした、
    だから衝撃が耳に直接いっちゃったんだよ、あれだと少なくとも鼓膜は破れてるよ、三半規管、脳にまで傷があるとちょっとまずいことになるかもね」
つかさ「そんな、ゆきちゃん……お姉ちゃんは武術なんかやってないよ」
こなた「……これは偶然、みゆきさんが反射的に避けようとして耳に当たっちゃったんだね……応急処置も一通りゆい姉さんから教えてもらった……万が一首を捻っていると
     まずいから動かさないようにって言ったんだよ」
 
 話が先に進まなくなった。時間だけが過ぎてゆく。西日が窓から入ってきた。どのくらい時間が経ったかこなちゃんはその窓を見ながら話し出した。
こなた「つかさ、ごめん」
つかさ「え、いきなりどうしたの?」
こなた「私は随分前からこの作戦を計画してたんだよ、つかさとよくゲームの話をかがみやみゆきさんの居ない所で話してたの分かってた?」
そういえばそんな気がしてきた。全然そんなのは気にしていなかった。
つかさ「言われて今気が付いたよ、分からなかった、お姉ちゃんもゆきちゃんもあまりゲームやらないし……」
こなた「それを利用したんだ、私たち二人でコソコソしてれば何かあるように見えるよね、するとにかがみとみゆきさんも……コソコソしだすよね」
つかさ「こなちゃん……なんでそんな事を……」
私がお姉ちゃんとゆきちゃんの様子がおかしいと思ったのはその為だった。それでこなちゃんはそれを喧嘩だって言って私を協力させたんだ。
こなた「もう高校も終わりだし最後に大きな悪戯をしたくなったんだよ、みんながびっくりするような……」
つかさ「こなちゃん、はっきり言うよ、もうこれは悪戯のレベルじゃないよ……もしバレたらお姉ちゃんもゆきちゃんも絶交しちゃうかもしれないよ……私もこなちゃんに協力
     したことになるよね……それでお姉ちゃんとゆきちゃんも本気で喧嘩しちゃったし……私達、卒業したらもう二度と会えないかもしれないよ」
こなた「つかさは私を許してくれる?」
こなちゃんは涙目になっていた。
つかさ「許したいけど、こんな事になっちゃたら……お姉ちゃんとゆきちゃんが許さないかも、私も同罪かも」
こなた「だから今までの事全部秘密にしてほしい、ほとぼりなんか一生冷めないよ」
こなちゃんは両手を合わせて私にお願いをしている。
つかさ「私だってみんなとバラバラになるのはやだよ……でも秘密なんて」
私は俯いてしまった。
こなた「かがみがあんな簡単に引っかかるとは思わなかった、つかさも本気になって怒った……それが面白くなってこんどはみゆきさん……これは私の計画が良かったわけでも
    演技が上手かったわけでもない、私はみんなの友情を利用して弄んだだけだった、屋上のつかさの涙を見てそう思った……今頃気付いても、もう遅いよね……」
 
 私は始めて友情って言葉を聞いたような気がした。お姉ちゃんと大喧嘩して別れたとしても私たちは姉妹、その関係までは消えない。でも、こなちゃんやゆきちゃんと
喧嘩したりして別れてしまったらもうただの他人。もう一生会うこともないかもしれない。そうだよね、当たり前すぎるよ。せっかく出会ったんだからそんな別れ方は悲しいよね。
つかさ「もうやっちゃった事をどうにかしようとしてもどうにもならないよ、今はお姉ちゃんを待つのと、ゆきちゃんの無事を祈ろうよ」
こなた「うん……」
 
 もう日が暮れて終業時間が近いというのにいっこうにお姉ちゃんが戻る気配がない。
こなた「かがみ遅いなどうしたんだろ」
つかさ「まさか、ゆきちゃんに何かあったのかな、私……怖くなってきた」
こなちゃんは動揺しだした。
こなた「ばか、そんな事言うもんじゃないよ……大丈夫、大丈夫……きっと」
教室の扉が開いた。
つかさ「お姉ちゃん!」
こなた「かがみ!」
同時に呼んだ。でもそこに居たのは黒井先生だった。
黒井「災難やったな、まさかあの二人が喧嘩しよるとは私も思わんかった……」
つかさ「先生、お姉ちゃんは……」
先生はしばらくしてから答えた。
黒井「……事件性はあらへんようだし、警察沙汰はなしや……事故扱いで報告する」
私達はほっと胸をなでおろした。
こなた「かがみは……何処に」
黒井「柊はもう病院に向かったで……行ってもまだ面会はできへんけど……二人はどないする、行くなら車で送るで」
つかさ・こなた「お願いします!!」
 
 
 
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