ID:5UE4CHc0氏 :肝試し (ページ1)

 今日のお昼はかがみが居ない。この時を待っていた。しかし遅れて来る事もある。ここは確かめる必要がある。念には念を入れないと。
こなた「つかさ、今日かがみは?」
つかさ「今日は自分のクラスで食べるって言ってたよ」
チャンス、最近は毎日のようにお昼を食べに来る。帰りも一緒。つかさとみゆきさんとまともに話す事ができない。
こなた「つかさ、みゆきさん、旧校舎に現れる幽霊の噂聞いたことある?」
つかさ「……あるけど……」
みゆき「ありますね、昼夜問わず旧校舎の音楽室に出てくると言われてます、それがどうかしましたか」
こなた「今度そこに肝試しをしようと思うんだけど、いいかな」
つかさは急に震え始めた。
つかさ「……止めようよ、私は行かない、行けない」
こなた「ふ・ふ・ふ別につかさを誘っているわけじゃないよ、行くのはかがみだけさ」
つかさとみゆきさんは顔を見合わせた。
みゆき「どうゆうことですか」
こなた「先週、かがみと話しててこの話になったんだけど、かがみのやつそんなの怖くないって言うんだよ、だからそれを確かめたくてね」
つかさ「……お姉ちゃんそゆう話したことない……」
こなた「でしょ、意外と怖がりだったり……かがみが叫んで泣いている姿……見たいとおもわないかい?」
つかさ「あまり見たくない……でも、何でお姉ちゃんだけの話に私達にも?」
こなた「かがみは私だけの誘いじゃ多分乗ってこない、だからつかさとみゆきさんにも協力してもらって誘って欲しいんだよ」
二人は暫く考えていた。
みゆき「かがみさんが怖がりかどうかは興味ありませんが、音楽室に出る幽霊には興味あります」
こなた「お、みゆきさん、流石だね、話が早い……つかさは……つかさが誘えばかがみは必ず来ると思うんだけど……」
つかさ「お姉ちゃんの事だから多分こなちゃんも肝試ししないとダメなような気がするけど……こなちゃん、大丈夫なの?」
こなた「それこそ望むところだよ、『肝試し』だからね」
つかさ「……話すだけなら……」
こなた「決まったね、それじゃ放課後早速かがみに話そう」


 三日後の午後九時……陸桜高校校門前。辺りは静まりかえっている。校庭は街灯が灯って明るいが旧校舎は明かりは無く暗かった。
かがみ「約束通り来たわよ、こなた、止めるなら今のうちよ」
かがみを見て驚いた。いつもはツインテールのはずなのにポニーテールで来た。体育の授業でも髪型は変えないのに。顔もなんとなく強張っているような感じだ。
かがみはここに来るのにかなりの覚悟を決めてきている。
こなた「なにそんなに意気込んでるの?」
かがみ「よ、よ、余裕よ、全然大丈夫なんだから、それより約束通りこなたが先に行くんでしょ、大丈夫なのか」
三日前、肝試しを誘った時、私が先に行くのがかがみの条件だった。もうその時点でかがみはそうゆうのが苦手だと分ってしまった。
かがみ「ところでこんな夜遅く校舎に入れるのか」
こなた「それは大丈夫、旧校舎は解体されるから鍵はかかってないよ……それじゃルールを説明するよ……スタートでつかさがストップウオッチをスタート、
     灯りは懐中電灯だけ、旧校舎入り口から入って一番奥の音楽室のピアノの足にリボンを結んで戻ってくる、タイムが短い方が勝ち、明日、
     リボンがちゃんと結んであるかどうかみゆきさんに確認してもらう、以上!」
かがみ「……そうゆう所は抜かりないな……」
こなた「物足りないなら二階の実験室の……」
かがみ「いいわよ、さっさとやって帰ろう」
つかさ「こなちゃん、リボン渡すよ……よーい……はい」
つかさがストップウオッチのスイッチを押した。つかさからリボンを受け取り旧校舎に向かった。

 

 この程度の肝試しなんかたいした事はない。平静を装ってるかがみ。笑いをこらえるのが大変だった。五分も経たないうちに音楽室にたどり着いた。
早速ピアノの足にリボンを結んだ。私が先に来たのはもう一つ理由があった。ひよりんから渡されたビデオムービー。かがみが恐怖でパニックになる
様子を撮ってほしいと頼まれた。何でも漫画の作画の参考にすると言う。懐中電灯でカメラを隠す場所を探す。音楽室全体が入る位置にカメラを置くと
スタート地点に戻った。

つかさ「十五分三十秒……」
思いのほか時間がかかってしまった。
かがみ「本当に音楽室に行ったのか?」
こなた「ピアノの足にリボン付いてるよ、行くと分るよ」
かがみ「……そんなのは分ってるわよ」
つかさがかがみの分のリボンを渡した。かがみはリボンを握り締めなにならぶつぶつと唱えている。ひよりんのカメラに映るかがみの姿が楽しみだ。
つかさ「お姉ちゃん頑張って……よーい……はい」
かがみは暗い旧校舎へと消えていった。

かがみを待っている間、つかさと雑談をして時間を潰した。
こなた「つかさ、私が旧校舎に言っている間、かがみと何を話してた?」
つかさ「うんん、何も話してない」
こなた「何も話してないって、何してたのさ」
つかさ「私が話しかけても俯いちゃって……行きたくないなら止めればいいのに……」
我慢できない。私は笑ってしまった。かがみは私が思っていた以上に怖がりだった。
つかさ「こなちゃん、こうなるの分っててこんな事したの?」
笑うのを止めるのが大変だ。
こなた「うははは……いや、ここまでとは思わなかったよ、でも、先週の旧校舎の幽霊の話をしたらやけに怖くない、怖くないって言い張るから
    肝試しをしようってなったんだけど、かがみも引っ込みがつかなかったんだね」
つかさ「……私もそこまでとは思わなかった、でも、旧校舎に行けるだけ私より凄いと思うよ」

つかさ「四十分三十秒……ねえ、こなちゃん、ちょっと遅すぎない……」
確かに三十分過ぎてもかがみは戻ってこない。つかさの言うようにちょっと遅すぎる。
こなた「腰でも抜かして動けなくなったのかな……まったく、しょうがないな、私、ちょっと行ってくる……」
私が旧校舎に向かおうとすると、懐中電灯の明かりが私達を照らす。かがみだった。
つかさ「お姉ちゃん、どうしたの、心配したよ」
つかさがかがみの元に駆け寄る。
かがみ「なんでもないわよ……どうやら私の負けみたいね」
スタートした時の表情とは違い、何か吹っ切れたような清清しい表情だった。
こなた「へー、負けを認めるんだ、リボンは?」
かがみ「一応結んだわよ、でも、明日のみゆきの確認は要らないわね、後で私が連絡するから……帰ろう、終電に乗り遅れるわよ」
こうしてかがみと肝試しは終わった。こうもあっさり負けを認めてしまっては拍子抜けだった。かがみことだから食い下がってくると思った。むしろそれを期待した。

 次の日の早朝、私は一番に学校に入った。そして旧校舎の音楽室に向かう。ビデオカメラを回収する為だ。暗い所でうまく撮れたか心配だった。
カメラを確認するとメモリーいっぱいになっているのを確認した。動作はしていたみたいだ。ふとピアノを見るとかがみのリボンが足に結ばれていた。
かがみは一応この部屋までたどり着いて目的を果たしている。さて、四十分も何をしていたのかな。ビデオカメラの再生をした。

 

 画像は暗いが何とか確認できそうだった。懐中電灯をもったかがみが音楽室に入ってくる。辺りをきょろきょろと見回して及び腰だ。かがみはゆっくりとした
動作でリボンを結んだ。画面の端からなにやら白い煙のような物が写った。するとその煙のような物がかがみの口の中に吸い込まれるように入って行くように
見えた。かがみはそれから人形のように止まって動かない。私は慌てて早送り再生する。かがみは動かなかった。三十分間。その後はスイッチが入ったように
動き出し、何事も無かったように音楽室を出て行った。もう一度私は再生する。何度見ても煙がかがみの口の中に入って行くように見えた。
あの煙のようなものは何だったのだろうか。背筋がぞっとした。まさか幽霊。私は思わずメモリーを消去した。

ひより「昨夜の肝試しどうだったスか、かがみ先輩、音楽室にたどりつけたっスか」
こなた「ごめん、録画ボタン押すのわれちゃってさ……カメラ返すよ」
ひより「残念っス、普段見られないかがみ先輩が見られたような……」
あんなの見ても面白くない。

 教室に着くと、かがみ、つかさ、みゆきさんが既に居た。
かがみ「オースこなた、今朝はやけに早いわね……何よ、私の顔に何か付いてる」
私はじっとかがみを観察するように見てしまった。
こなた「いや、えーと、昨夜、四十分も何してたの」
かがみ「四十分?、ああ、肝試しの事ね、四十分もあんな所にいたなんて、つかさに聞いて初めて知ったわよ、リボンを結ぶ所までは覚えてるんだけど」
目を上に向けて考え込んでいるかがみ。
こなた「えっと、何か口に中に入ったような感じはしなかった、煙みたいの見なかったかな」
かがみ「……朝から何訳の分らない事言ってるのよ、さては、私をまだ脅かそうとしているのか」
みゆき「旧校舎の幽霊は私なりにいろいろ調べました。お昼休みにでも話しましょう」
つかさ「私はあまり聞きたくないな……」
かがみ「さて、私は戻るわよ」
かがみは自分のクラスに戻っていった。見たところどこも変わっていない。じゃあのビデオは何だったのだろうか。夜で暗かったからビデオの誤動作でもしたか。
でもそれならかがみの動きが止まった三十分はどうやって説明する。ビデオの映像が頭から離れない。そんな午前中だった。

 お昼休み、みゆきさんは先生に呼ばれて行ってしまった。先にお弁当を食べていいと言われたので三人で食べることになった。
つかさ「そういえばこなちゃん、午前中ずーと元気なかったけどどうしたの」
こなた「うーん、昨夜帰ってからゲームやったからそのせいかな……」
つかさ「えっ、あれからすぐ寝なかったの」
かがみ「それは大変ね……」
ぽつりと呟くように話し、黙々とお弁当をたべてる。突っ込まない。いつもなら『またネットゲーか』とか言ってくるのに。そういえばお昼から何か様子がおかしい。
何か違和感がある。かがみを見ていてその違和感に気が付いた。
こなた「かがみ、いつから右利きになったの」
かがみは箸を右手に持ってお弁当を食べていた。あまりにも自然に使っていたので気が付かなかった。つかさもそれに気が付いた。
つかさ「あれ、ほんとだ、右手でお箸持つ練習何時したの?」
かがみは直ぐに左手に箸を持ち替えたが子供が箸を使うように掴んだおかずをぽろぽろと落としてしまった。
かがみ「やっぱりこっちがいいわね」
右手に箸を持ち換えて、また黙々を食べだした。
かがみ「何よ、あ、このから揚げ欲しいのか、欲しいなら言いなさいよ」
かがみはから揚げを私のお弁当箱に入れた。こんな事したこと一度もなかった。私とつかさはかがみの動作にただ注目した。

 食事が終わり、暫くした時だった。
かがみ「まだ時間はあるわね、こなた、つかさ、外に出て風でも浴びましょ」
普段なら雑談に花が咲く。会話を切るように言った。かがみはそのまま席を立つと教室を出て行った。私とつかさはかがみの後を付いていく。
かがみは校舎を出て学校の外に出て行った。少し後からつかさと話す。
こなた「やっぱりかがみ、なんかおかしいよ」
つかさ「私もそう思う、お姉ちゃん何かあったのかな」
学校から少し離れた広場。そこにかがみは腰を下ろした。
かがみ「ここで話しましょ」
私達も腰を下ろした。かがみはおもいっきりの両手を上に上げて背伸びをした。
かがみ「この広場の向こう、小川がながれてるでしょ、昔ね、もっと大きな川だったのよ」
つかさ「郷土の授業でそんなの教えてもらったかな?」
かがみ「昔はよく氾濫してね……」
かがみは小川を見ながら語っている。
こなた「それで、そんな話をするためにここに私達を呼んだのかい」
かがみ「ちょっとこの川に落し物をしたのよ」
こなた「落し物?」
かがみ「そう、もう見つからないかもね」
つかさ「何を落としたの」
かがみ「木箱に入ったお守り」
つかさ「御守りって、うちの神社の?」
かがみは頷いた。
こなた「かがみが御守りなんて何に使うのさ」
かがみは黙り込んだ。
かがみ「……さあ、もうお昼休みは終わりよ、戻るわよ」
かがみは立ち上がると学校に戻ってった。
つかさ「お姉ちゃん、何がしたかったのかな」
こなた「さあ」

 かがみの不可思議な行動。昨夜の肝試しが原因なのだろうか。ビデオに映ったかがみ。止まっている間、かがみはどうなったのだろう。
気になって何もできない。たまには居間でテレビでもみるか。居間に行くとすでにゆーちゃんがテレビを見ていた。
ゆたか「お姉ちゃん、知ってるかな、近くの広場に新校舎を建てるって」
こなた「それはまた急だね……広場って、小川がある広場の事?」
ゆたか「そうだよ、でもね変な噂が一年生の間で広がってるんだよ」
こなた「噂?」
ゆたか「うん、旧校舎を壊すと祟りがあるって……」
こなた「またなんでそんな噂が」
ゆたか「分らないけど、旧校舎にお化けが出るって噂が……」
こなた「それはうちのクラスでも話題になってる」
ゆたか「それよりお姉ちゃん昨夜遅かったけど何してたの?」
こなた「ちょっと、旧校舎で肝試し……」
ゆーちゃんは飛び上がり驚いた。
ゆたか「お姉ちゃん、うちのクラスの子も先週肝試しやって交通事故に遭って入院しちゃったんだよ」
こなた「……そ、そうなの、だ、大丈夫だよ、私のクラスには神社の娘がいるから」
ゆたか「つかさ先輩だね、今度御守りでも貰ったらいいよ」
ひよりんは今朝そんな事言ってなかった。しかし祟りがあるとしたらもう一人の神社の娘、かがみ。もうその片鱗を見せている。かがみは幽霊に憑依されたのか。
ゆたか「お姉ちゃん、顔色悪いよ、こうゆう話は大丈夫だったよね」
こなた「大丈夫だよ、今日は疲れた……早く休むよ」
ゆたか「おやすみなさい……」

 次の日、眠ろうとしたが結局眠れなかった。眠い目を擦りながら登校した。駅でかがみ達を待つ。
かがみ「オース、こなた……なんだその目はクマができてるぞ、さてはゲームで徹夜したな、まったく、その意気込みを少しは宿題にむけなさいよ……行くわよ」
普段のかがみだった。私はバス停に向かうかがみを見送っていた。
つかさ「おはよう、こなちゃん……お姉ちゃんね、昨日のお昼の事覚えていないんだよ、それで、今朝朝食を食べている所見たんだけど左利きに戻ってた、
     お姉ちゃんどうしたんだろ……一応こなちゃんに渡しておくよ、気休めかもしれないけど受け取って」
つかさは御守りを私に差し出した。私は御守りを受け取った。
こなた「ありがとう……ゆーちゃんのクラスでも肝試しした人がいたみたい、そうしたらその人交通事故に遭ったって」
つかさの顔が急に青ざめた。
かがみ「おーい、つかさ、こなた、バスが来るわよ」
こなた「とにかく行こう……それしかないよ、これはかがみには内緒で」
つかさ「うん、でも、もうお姉ちゃんに言っちゃたから内緒じゃないかも……」
元気のないつかさの返事が余計に不安になってしまった。

 お昼休み、今日はみゆきさんも一緒だ。かがみも今日はいつものノリで突っ込みいれてきた。いつものかがみだ。
みゆき「そういえば昨日、幽霊の件で調べたことを話していませんでしたね」
私はあまり聞きたいとは思わなかった、つかさもきっと同じだろう。
みゆき「……聞きたくないようですね」
みゆきさんは私とつかさの表情で察したようだった。
かがみ「聞きたいわね、折角調べてくれたんだし、話なさいよ」
まさかかがみが知りたいと思っているとは思わなかった。みゆきさんは少し嬉しそうに話し出した。
みゆき「ここは昔、江戸時代、もっと大きな川が流れていたそうです、しかし何度治水工事をしても川は氾濫したそうです、そこで人柱を捧げることになりました」
つかさ「人柱?」
かがみ「人を生贄として建物の土台として生き埋めにするのよ、それで災害を鎮めようとしたのね、昔はよくやったそうよ」
みゆき「人柱は村の娘が選ばれたそうです、満月の夜、娘は生き埋めにされて、そこを基礎にして治水工事が行われ、
     それ以降川が氾濫する事がなくなったそうです」
こなた「それで、その話と今回の幽霊噂と何の関係が?」
みゆき「その娘が埋められた場所が旧校舎の辺り……と言うことです、確証はありません、旧校舎が出来てから何度か生徒が事故で亡くなったそうです、
     私の母はその旧校舎で学んだそうですが、すぐに使われなくなったそうです」
こなた「人柱にされた娘の怨念……か」
つかさ「人柱になった子って年齢はどのくらいだったの?」
みゆき「さあ、そこまでは分りませんが」
つかさ「きっといろいろしたい事もあったんだろうね……」
つかさは悲しげだった。
かがみ「年齢は私達と同じくらい、彼女には心に決めた男性がいた、満月の夜、彼女達は駆け落ちをした、どこか遠くに行って静かに暮らそうと誓った」
みゆき「その話はどこで……」
かがみは目を閉じ話を続けた。
かがみ「月明かりを利用して彼女達は走った、逃げた、途中に寄った神社で御守りを買いお互いに交換した……でもね、結局捕まってしまった、
     彼女は村に連れ戻された、男性は人柱を逃がした罪で村を追放……そして次の満月の夜、彼女は人柱となった、本人が望まない人柱だったのよ」
時代劇のような話。でたらめを言ってるとも思えない。
かがみ「肝試しの時、音楽室で突然頭に浮かんだイメージみたいなものが浮かんだのよ、彼女の無念と怒りは私達では計り知れないわね、
     彼女は言った、私も人柱になれって……次の満月の夜……私は……死ぬ」
なぜ、なぜ、かがみだけが。同じ事をした私がそうなってもいいはず。
こなた「はは、冗談にしては出来すぎてるね、肝試しの恐怖で幻覚をみたんだよ、うん、うん、きっとそうだ」
かがみは左腕を私に見せた。腕に星型の痣があった。
かがみ「これがその証だと言ったわ、この前の警告を無視して来た報い……と言っていた」
ゆーちゃんのクラスの生徒が肝試しをしたって言ってた。トバッチリだ。私達はすっかりかがみの話を聞き入っていた。

 かがみ「ふふ、あはははは、何、マジになってるのよ、そんな話に、バカじゃないの……ははは、おなか痛い」
かがみは腹をかかえて笑い出した。
かがみ「さっき咄嗟に思いついた話だけど、本当だと思った?」
こなた「……全然思わないよ、そんな作り話」
心配して損した。もうかがみの心配なんかしない。
かがみ「さてと、少し早いけど戻るわ、それじゃね」
かがみは教室を出て行った。
こなた「まったく、あんな話なんか……どうしたの、つかさ、みゆきさん」
二人は何か真剣は表情をしていた。
みゆき「駆け落ちした男性が追放された点があまりにも……」
こなた「どうゆうこと?」
みゆき「普通なら死罪になるでしょう、しかし男性と一緒に死んでしまっては『心中』になってしまいます、あくまで女性は『人柱』で神々に捧げなければなりません」
こなた「……みゆきさん、それは考えすぎだよ」
つかさ「お姉ちゃんの腕の痣、あんなの私は知らないよ、あんなに目立つ痣なんか無かったよ」
こなた「痣なんか言われないと気が付かないものだよ、それともまだ一緒にお風呂はいってるのかい、つかさ」
つかさ「……そんなの中学生までだよ」
顔を赤くして本当の事を言うなんて。冗談を真に受けちゃってるところはつかさらしい。
みゆき「もう少し調べてもいいかもしれませんね、放課後、私は図書室に行きます」
みゆきさんもつかさも何なら考え込んでしまった。

 午後の退屈な授業が始まった。このままだと睡魔に負けてしまいそうだ。何か別の事を考えて気を紛らわす。
ふと昨日のお昼のかがみを思い出した。広場に連れ出して、昔話なんか始めちゃって……。まてよ。ビデオに映っていた煙が人柱になった女性の幽霊だったら、
今日のかがみの話と一致する。駆け落ちしてたどり着いた神社はかがみの神社だったんだ。御守りは捕まった時に落としたのかな。
それとも駆け落ちした男性に渡そうとしたのか。川に落としたと言っていた。好きな人と引き離されたあげくに人柱で死んじゃうなんて。好きなひとに御守りすらも
渡すことが出来ない時代……。これはかがみが考えた話だった。何真剣になって考えてるんだ。でも本当の話だったら……。
落とした御守り。それを見つけてあげれば幽霊は成仏できてかがみは助かる。元は私が企画した肝試しが原因。もしかしたら私がかがみのようになっていたかも。
あの広場を探してみるかな。

 放課後、私は学校に残って御守りを探すことにした。ジャージに着替え、広場に向かった。広場に着くと小川の近くで立っている人を見つけた。
よく見るとつかさだった。しきりに下を見ている。
こなた「つかさ」
つかさ「こなちゃん、なんでここに……」
こなた「多分、つかさと同じ理由だよ」
つかさは少し間を空けて話した。
つかさ「こなちゃんもそう思ったんだ、お昼のお姉ちゃんは人柱になった女の子……落とした御守りを見つければお姉ちゃんを許してくれるかも」
こなた「その話、かがみの作り話だったらどうするの」
つかさはまた間を空けて話した。
つかさ「話が嘘ならお姉ちゃんは助かる、本当でも御守りを見つければ助かる、そうだよね、こなちゃん」
御守りはまず見つからないと思った。人柱になった時代から数百年。普通にしまっていたってボロボロだ。御守りはもう土になっている。
こなた「そうだね……」
気休めの返事をした。
つかさ「昨日は新月だったよね、満月まで約半月……十五日、十四日、それまで探すよ、もしかしたらゆきちゃんが何か見つけてくれるかもしれないし」
こなた「それより着替えたらどうなの?、制服じゃ探し難いよ」
つかさ「……こなちゃん、だから着替えてきたんだね、着替えてくるよ」
つかさは走って学校に戻った。
さて、私も探すかかな。しかし見つかる事はなかった。

 六日後、私はかがみに呼ばれて学校の裏庭に向かった。かがみは腕を組んで私を待っていた。どうやらご機嫌はあまりよくないようだ。
こなた「なんだよ、こんな所に呼び出して、それに私だけ?」
かがみ「どうゆうつもりなの、私はそんな事をしてもらうためにあんな事を話したわけじゃない」
こなた「なんのことやら」
かがみ「あんた、つかさと広場で御守りさがして、つかさは私が満月の日死ぬと思ってるわよ、悪ふざけもいい加減にしなさいよ」
すごい権幕だ。私がふざけてつかさと御守り探しをしていると思っている。確かにかがみが死ぬとは思ってはいないけど、ふざけているわけじゃない。
こなた「つかさは真剣にかがみを助けたいと思ってる、少なくともそれは確かなことだよ」
かがみ「だったら何故つかさに付き合うのよ、無駄なことをさせて」
こなた「だったら何故あんな話をしたのさ、みゆきさんが納得するほどリアルな話を……みゆきさん、今日も図書室に行ってるよ、あの話は作り話だったの?」
急に勢いがなくなった。かがみはそのまま俯いてしまった。
かがみ「作り話じゃない……あの話は肝試しの時に見た夢のようなもの、それを言葉にしただけだけ」
こなた「祟りの話は?」
かがみ「……それも、同じよ」
私はため息をついた。
こなた「それじゃつかさは探すのを止めないね、少なくとも満月の時までは、もちろん私もだけどね」
かがみ「あれは私の見た夢、そんなの真にうけるなんて、ゲームばかりやってるから現実と混同するんだ」
こなた「ゲームならやり直しが効くけどね、現実はそうもいかないじゃん、それに肝試しも私が言い出したことだし……かがみが夢だと思うならそう思えばいいよ、
     そう思っててくれた方が私達も気が楽だ」
かがみ「……話すんじゃなかった、夢だと思ってバカにしてたらみゆきが食いついてくるなんて、痣もつかさがあんな反応をするなんて……」
かがみは本当の事を言った。それなら私も言わなければならないことがある。肝試しの時、音楽室に置いたビデオ。悪く言えば盗撮だ。
私はかがみに怒られるのを覚悟で話した。そしてそのビデオに映っていたことを。

 かがみ「私は三十分も動いていなかった、どうりで時間が合わなかったと思った」
こなた「怒らないの?」
かがみ「何が?」
こなた「盗撮したこと」
かがみ「動機はどうであれ許せない……けど、つかさと一緒にしてくれていることでチャラね、呼びつけて悪かった……みゆきの所、図書室に行くわ」
かがみはそのまま図書室へ向かった。満月まであと七日か。かがみはビデオの事を怒らなかった。怒ってくれた方が私の気が晴れたかもしれない。

 私はジャージに着替えて広場に向かった。しかし先に行っているはずのつかさが広場に入らず立ち尽くしていた。
広場の入り口にはフェンスがひかれていた。立ち入り禁止の立て札が掲げられていた。広場の中には車が数台止められている。新校舎建設の準備のようだった。
つかさ「こなちゃん、これじゃ入れないよ」
こなた「もう新校舎の準備してるなんて、まだ旧校舎が取り壊されていないのに……」
つかさ「どうしよう……」
こなた「どうしようって言われてもね……」
かがみ「何よ、これは」
後ろからかがみの声がした。私達が後ろを振り向くとジャージ姿のかがみとみゆきさんが居た。
みゆき「これでは入ることが出来ませんね……」
つかさ「お姉ちゃん、ゆきちゃん、来てくれてありがとう」
かがみ「ありがとう、は私が言わなきゃいけない、自分の事だから私も御守り探ししようとして来てみたけど、とことん私は呪われているわね……」
さすがのかがみもショックは隠せないようだった。
こなた「諦めるのはまだ早いよ、まだ工事が始まったわけじゃない、夕方になれば作業員の人も帰るよ、夜になったら探そう、これしかない」
つかさ「私も行くよ」
みゆき「私は皆さんより短い時間になりますが探します」
かがみ「ありがとう、でもそこまでしなくてもいいわよ……と言ってもつかさは一人でも行きそうな勢いね……一度帰って準備しましょ、懐中電灯とかね」

 夜七時、私達は広場前に集まった。あまり遅くまでやってもしょうがないので二時間だけ探して帰ることになった。各々懐中電灯を持ち足元を照らしながら
探した。みゆきさんはスコップも持ってきていた。柔らかい所を掘り返していた。しかし探しても見つからなかった。
空を見上げると真上に半月が見えた。もう半分も時間が経ってしまった。これ以上月が大きくならないように願ったけど空しいだけだった。

 家に帰るとゆーちゃんが出迎えてくれた。
ゆたか「お帰りお姉ちゃん、今日アルバイトだったの?」
こなた「まぁ、そんなところかな、ところで肝試しで交通事故に遭った子ってどうなったの」
ゆたか「今日、みなみちゃんとお見舞いに行ったけど思ったより元気だったよ」
こなた「それは良かったね」
ゆたか「うん、でもね、幽霊の言うとおりいつも通学している道を行けば事故に遭わなかったって言ってた」
こなた「幽霊の言うとおり?」
ゆたか「うん、音楽室に入ったら金縛りになって声が聞こえたんだって、いつもの道で帰れって……あの子霊感強いみたいだから何かを感じたんだね」
かがみの時とは随分違う扱いだ。肝試しにきた子を助けようとしてたなんて。おかしい。かがみは警告でその子を交通事故を起こしたって言ってた。
話が合わない。そういえば満月にかがみを死なすと言っておいて、右利きになったかがみが広場で語っている姿はとても悲しげで優しい感じを受けた。
同じ幽霊とは思えない程のギャップだな。幽霊はいったい何がしたいのか分らなくなった。

 家庭科の授業。準備のたの移動中だった。すると廊下の先でかがみが男子生徒と話しているのを見つけた。私は暫く立ち止まり二人の様子を
見ていた。楽しそうに話しているように見えた。かがみは私に気付くと慌てるように男子生徒と別れて私に近づいた。
かがみ「ごめん、ごめん、待ったかな、次は家庭科の授業よね、家庭科室に行きましょ」
暫く私は黙ってかがみを見ながら歩いた。
かがみ「……えっと、さっきの人はD組の学級委員で、明日の議題について話していたのよ」
こなた「ふーん」
興味なさげな態度でそう言った。
かがみ「こなた、言っておくけどそんなじゃ無いからね」
こなた「私はまだ何も聞いてないよ、それにそんなんじゃ無いってどうゆうことなの」
かがみ「何よ、その態度がそう聞いているように見えたから……何よ黙って、何か言いなさいよ」
私は何もしていないのにかがみの方からいい訳じみたことをいいだして。顔を真っ赤にして。普段の私ならそんなかがみをいじって反応を楽しむのだが。
こなた「はは、余裕だね、あともう四日しかないって時に、好きな男の子の前ではなんでもないんだ」
かがみ「……男子とちょっと話してただけじゃないの、それとは関係ないでしょ」
こなた「ちょっとね、私が居るのに気が付かないで楽しそうに話して……この十日間私やつかさが何をしてきたのか知ってるの、みゆきさんだって」
かがみ「……何、どうしたのよ、こなたらしくない、焼き餅なんか焼いちゃって」
焼き餅、これが焼き餅って言うのか。確かに今まで味わったことの無い感じがする。でも今更元には戻せない。
こなた「やっぱりそうだったんだ、悪いけど今日からバイトがあるから、御守り探しはつかさ達とやって」
かがみ「いい加減にしなさいよ……それに私は頼んでいるわけじゃないから……」
何やってるんだろ。こんな時にかがみと喧嘩かよ。確かに会議の話をしていただけかもしれない。でもなぜか止めることが出来なかった。
いつの間にか私達は立ち止まって言い合いの喧嘩をしていた。

つかさ「お姉ちゃん、こなちゃん何してるの、もうチャイムが鳴っちゃうよ……」
つかさが私達の間に割って入った。さすがにこれ以上喧嘩は出来そうに無い。かがみは無言で私から離れて家庭科室に向かった。
みゆき「どうしたのですか、何か意見の相違でもありましたか」
こなた「何でもないよ」
つかさ「何でもないって、さっきお姉ちゃん怒鳴ってたよ、遠くからでも分るくらいに」
私もそれ以上は何も言わず家庭科室に向かった。それから私とかがみは一言も話すことは無かった。放課後もかがみが来る前に学校を出ていた。
今日のバイトはもう休むと言ってあった。そのまま家に帰宅した。家に帰って私ははそのままベットに横になった。今頃みんなは広場で探しているかな。
かがみと男子がただ話していただけだった。ただそれだけなに私はかがみが死ぬかもしらない危機に家に帰ってしまった。
焼き餅、嫉妬。まさか私が嫉妬だなんて。かがみに彼氏……普通に考えて居てもおかしくない。友達なら喜んであげるよ。なにやってるんだろ……私。

 満月の夜、月の明かりでぼんやりと景色が見える。見たことがある神社。そうかがみの神社だ。月の光に照らされた二人。女性は箱を持っていた。
箱から御守りを取り出すとそれを男性に渡した。二人は見つめ合っている。恋人だ、誰が見ても分る。急に辺りが騒がしくなる。男女も気付いた。
慌てて神社を出ようとする。しかし出入り口は一つ。提灯を持った大勢が神社に入ってきた。逃げる二人。しかし月夜の晩、容赦なく明かりは二人を照らし出す。
やがて二人は捕まり引き離された。
突然場所が変わった。同じく満月の夜だった。女性が柱に縛られている。柱は地面に埋められる。そう、女性と一緒に。彼女は叫んだ。その叫びは隣町まで
届きそうな大きさだった。しかし作業は続く。埋め終わっても彼女の叫びは止まらなかった。何度も男性の名前を呼びながら……


 目が覚めた。全身汗で濡れていた。嫌な夢だった。昨日、かがみと喧嘩したから変な夢をみたのかな。かがみと同じような夢だな。汗を掻いてしまった。
時計を見ると普段起きる時間よりも一時間も早い。シャワーでも浴びるかな。
シャワーを浴び終え、歯を磨いている時だった。
ゆたか「お姉ちゃんおはよう、今日は早いね」
渡しはうがいをした。
こなた「おはよう、たまには私だって早起きするよ」
ゆたか「そうだね……あれ、お姉ちゃん、その腕の痣どうしたの」
ゆーちゃんは私の左腕を指差した。そこを見ると。星型の痣がくっきりと付いていた。かがみと同じ痣だ。頭の中が真っ白になった。
ゆたか「お姉ちゃん、洗面台、私も使いたいんだけど……」
こなた「あ……ごめんごめん、今退くからね」
ゆたか「どうしたの、急に……顔色悪いよ」
こなた「……なんか急に気分が悪くなってきちゃった……部屋で寝るよ」
ゆたか「大丈夫?」
こなた「……大丈夫……じゃないみたい、今日は学校休む」
ゆたか「それじゃ、学校に私が話しておくよ、黒井先生だっけ、お姉ちゃんの担任の先生」
こなた「うん、お願い……」

 自分の部屋に入ってもう一度腕を見た。かがみと同じ痣が付いている。手で擦ったけど取れない。急に怖くなった。私は満月の日死んじゃう。
ベットに潜り込んだ。
そうじろう「こなた、具合がわるいのか、なんなら今日出かけるの止めるが……」
居間からお父さんの声がした。
こなた「いいよ、そこまでじゃないから」
そうじろう「そうか、お昼は適当に頼むぞ」

 死がこんなに恐ろしいとは思わなかった。かがみはこれほど怖いのに平気で登校して、しかも冗談も言っていた。私にはそんな事できない。
震えが止まらない。私はただ子犬のように震えていただけだった。

 午後になってつかさが訪れてきた。お父さんが私の部屋につかさを案内した。布団から出られない。震えているところを見られたくなかった。
つかさ「こなちゃん、大丈夫、ゆたかちゃんから聞いたよ、急に気分が悪くなるなんて」
こなた「ちょっと気分が悪いだけだから」
つかさ「良かった、そうそう、もう広場で御守りを探さなくても良くなったよ、お姉ちゃんの痣が消えたんだよ」
かがみの代わりに私が死ぬってことか。かがみと喧嘩したから祟りが移ったのか。
こなた「……そのかがみは来てないみたいだけど、昨日のこと怒ってるんだね」
つかさ「うんん、今日は会議だって、ゆきちゃんもだよ、今も怒っているけどお見舞いには行きたがってたよ」
こなた「そう……なんだ」
なんか涙が出てきた。かがみと同じ状態になって初めてかがみの気持ちが分るなんて。かがみは恐怖と闘っていた。
でもそんな事を私達には全然感じさせていなかった。
つかさ「思ってたより元気そうでよかった、明日は学校に来れそうだね、私、もう帰るね」
こなた「うん、かがみによろしく言っておいて」
つかさ「うん」
つかさが私の部屋を出ようとした時だった。
こなた「待って、つかさ」
立ち止まり振り返って私を見た。私はベットから起き上がりつかさに腕を見せた。
つかさ「こなちゃん……その痣、どうして、どうしてなの」
こなた「分らない……だけど私がどうなっているのかは分るよ……助けてつかさ、助けて、死にたくないよ」
私はつかさの手を両手で握り命乞いをした。分ってた。自分勝手なのは分ってた。笑ってこのまま黙っていようと思った。でもつかさが後ろ向いて
部屋を出ようとした時、急に寂しくなって思わずつかさに声をかけてしまった。あとはもう感情の赴くままだった。
つかさ「助けてあげたいけど、広場ね、もう工事が始まっちゃったんだよ、ブルドーザとかショベルカーとかが入ってきて……もう探せないかも」
こなた「そんな……」
つかさ「今夜七時、広場に集まろう、ゆきちゃんとお姉ちゃんにも誘うから、ね、きっと見つかるよ」
こなた「ありがとう」

 午後七時、月は明るくなっている。着実に満月に向かっていく。私はかがみに近づき謝ろうとした。
こなた「かがみ、私は……」
かがみ「もういいわよ、何も言わなくていい、満月になってから聞いてあげる、今は探すわよ」
そうゆうと広場の中に入っていった。
とにかく探した。機械で掘り返された所も。小川の中も。でも御守りは出てこない。やはりもう土になってしまったんだ。そんな絶望感が漂ってきた。

 

つかさ「これなーんだ」
満月まで一日前の朝、突然つかさは私に御守りを見せてきた。つかさは満面の笑みだった。つかさの神社の御守りであることは分かったが
随分デザインが違う。色もあせていて所々に穴があいている。虫食い跡かな。
こなた「ボロボロの御守りだね……ってもしかしてその御守り」
つかさ「そう、探していた御守り……」
こなた「どこにあったの?」
つかさ「神社の奉納庫……」
こなた「そんなの持ってきちゃって平気なの?」
つかさ「家族には内緒、黙って持ってきた、でもちゃんと元に戻すから……」
こなた「その御守りがどうかしたの……もしかして」
つかさ「ゆきちゃんが調べてくれたんだ、神社の言い伝えや伝説をね……昔ね、若い男女が訪れてしばらく神社に住んで居たんだけど男女が住んでいた
     村からその男女を引き取りにきたんだって、なんでも村の掟を破ったからだって、神社側の村もどうしようもなく引き渡した、
     しばらくすると男性だけ神社に戻ってきた、そして一生、女性の供養をしたんだって、女の人が何で死んだのかは書いてなかった」
みゆきさんがつかさの言った事に付け加えた。
みゆき「この伝説を見てかがみさんの言ってたことと、学校の地域に伝わる人柱伝説と一致するのではないかと思いまして、つかささんに神社を知れべて
     もらったのです、この御守りはその時の御守りと考えていいでしょう、当時、心中が美徳とされていましたから、このような話はあまり語り継がれなかった
     のかもしれません、この伝説を探すのに手間取りました、私的にはこちらの伝説の方が心惹かれますけどね、心中は良くありません」
こなた「でも、わたしの痣は消えてないよ」
二人に腕を見せた。くっきりと痣はついている。
つかさ「なんで、見つけたのに、何か足りないのかな、御守りをどこかに持っていかなきゃいけないとか?」
その時私の見た夢を思い出した。
こなた「その御守りは小さな箱に入っていた、箱は人柱になった女性が持っていた、多分箱を探してその御守りと一緒にしないとだめなのかもしれない、
    痣がつく時に夢で見たんだよ、男女が御守りと箱を渡していた夢をね」
つかさ「そんな……」
こなた「御守りを探すだけでこれだけ時間がかかってしまった、今夜までに箱を探さないといけない、ありがとう、つかさ、みゆきさん、もういいよ」
つかさ「もういいよって……諦めちゃうの」
こなた「あと一日でどうするんだよ」
みゆき「御守りの在る場所は幽霊さんがヒントをくれていました、箱のある場所もヒントをくれていると思うのです、それさえ分れば……」
こなた「もうみゆきさんが調べつくしているよ、みゆきさんが知らないのはかがみが右利きになった時の話くらいだよ」
みゆき「何ですか、その話は聞いてませんね」
つかさ「その時ゆきちゃんは先生に呼ばれて居なかったから……」
みゆき「詳しく話して下さい」


 お昼休み、みゆきさんは広場入り口に私達を呼んだ。
かがみ「どうしたのいきなり呼び出して、御守りはもう探したはずよ、もうここには用はないはず」
みゆきさんはかがみのいう事を聞き流した。急いでいるようにも見えた。
つかさ「……こなちゃんの痣が消えないから、まだ何か足りない……御守りが入ってた箱も探さないとだめみたい」
みゆき「泉さん、つかささん、かがみさんがここに来た時、どうしまたか」
つかさ「えっと、確かこの辺りに座って御守りの事を話し出したんだよ」
こなた「そうだった、かがみはここに座った」
かがみ「何の話よ、私はここに座ったことなんかない」
つかさ「お姉ちゃんは覚えてない、以前言ったでしょ、お姉ちゃんがお昼休みの時右利きなっちゃったんだよ」
かがみは腕を組んで考えて思い出そうとしていた。
みゆき「かがみさんここに座って下さい」
かがみ「いいけど、意味が分からない」
かがみはつかさと私が示した場所に座った。
みゆき「かがみさんはその時の記憶がないので……済みませんが座っていて下さい、泉さん、つかささんこの位置で間違いありませんね」
こなた・つかさ「うん」
みゆき「かがみさんの座っている下におそらく探している箱があると思います、確証はありませんが……」
そこは工事のフェンスの外だった。私達はフェンスの中を探していた。
つかさ「え、お姉ちゃんは適当に座ったわけじゃないの?」
みゆき「かがみさん、いいえ、幽霊さんが乗り移ったかがみさんはおそらく箱の在り処を知っていた、それを知らせたかったのかもしれません」
かがみ「詮索は後、早速そこを掘るわよ」
みゆき「それは出来ません、そこは工事の入り口のすぐ近くです、恐らく許可してくれないでしょう、今までと同じように夜にするしかないと思います」
つかさ「でも、もし……もしも、ゆきちゃんの推理が外れてたら……」
こなた「今掘って外れが分かったとして、半日で新たな場所を探すことはできないよね、これが最後のチャンス、私はいいよ、みゆきさんに賭けるよ」
みゆき「有り難うございます」
みゆきさんは石を幾つか持ってきて積み重ねて印を付けた。
みゆき「夜になると雰囲気が変わって場所が分らなくなるかもしれません……これでいいでしょう、では戻りましょう」
みゆきさんとつかさは学校に戻って行った。私は暫くみゆきさんの石の印を見ていた。

 かがみも戻らず私と同じように石の印をみていた。
かがみ「こなた、盗撮の事は話して、私が右利きになった事話さなかったわね」
怒っているようにも感じた。そうでないようにも感じた。
こなた「つかさが話したと思ったけど、違った?」
かがみ「つかさは確かに話した、だけど半分聞き流していたわ……身内の話って意外と聞かないもの、こなたが言ってくれれば」
こなた「……私が言ったら、信じた、そしてもっと早く解決した、それはどうかな、普段の私はかがみにいつも悪戯してるし、いじってるし、ばかにしてるし」
かがみ「……そこまで自覚してるなら少しは自重しろ!」
身を乗り出し、私に怒鳴りつけた。
こなた「右利きだったかがみは別人だったよ、幽霊がかがみを操ってたんだよ、今のような反応はなかったからね」
かがみ「そんな反応で悪かったわね……でもさっきみゆきに言った言葉、見直したわよ……なかなか当事者が言えることじゃない、凄いわよ」
こなた「……かがみほどじゃないよ」
かがみ「謙遜するなって、……わたしほどじゃない、どうゆうことよ」
こなた「満月になっても生きてれば教えてあげるよ……喧嘩のケジメもついてないからね」
私はそのまま学校に向かった。かがみもそれ以上は聞いてこなかった。

 最後の夜が来た。月はまだ空に出ていない。みゆきさんの話ではもう暫く月は出ないようだ。空に出る時は満月のはずだ。
みゆきさんは広場に穴を掘る許可を取っておいてくれた。
みゆき「さて、始めましょう、シャベル、つるはし、スコップは元に戻せば使っていいと許可を取っています」
かがみ「……みゆき、あんたいつからそんな行動派になったのよ」
みゆきさんはわき目も振らずスコップを石の目印目掛けて振り下ろした。それに釣られてかがみもシャベルで掘り出した。
つかさ「ゆきちゃん、こなちゃんを助けたいんだよ……私もだけどね」
つかさスコップでこそこそと掘り始めた。私も掘り始めた。自分の為に。

みゆき「おかしい……出ない…もうすぐ月が出てしまいます」
焦りだすみゆきさん。スコップを振るスピードが速まった。そんな姿を見たのは初めてだ。
かがみ「私はもう少し違うところを掘るわよ」
かがみは少し場所を移動した。つかさは黙々と掘っている。
こなた「皆少し大げさだよ、やっぱり死ぬなんて嘘っぱちだよ、私はこうして元気……」
なんだろう手が痺れてきた。私はスコップを落としてしまった。拾っても力が入らないまた落とした。
かがみ「何ふざけてるのよ」
こなた「いやね、急に力が入らなくなって、運動不足……かな」
今度は寒気が襲ってきた。体が無意識に震えだす。腕を組んでしゃがみ込んだ。
かがみ「ちょっと、こなた、しっかりしなさいよ」
こなた「なんか寒いよ……」
かがみ「寒いって、こなた」
そのまま倒れ込もうとする私をかがみが駆け寄り支えた。
こなた「力が……入らない」
東の方を見ると月の頭が見え始めていた。
こなた「なんか……本当みたいだ……ね、死んじゃう……みたい」
かがみ「まだ、月は完全に昇ってない、もう少しで探すから、待って」
こなた「はは、月は待ってくれないよ、なんか目が霞んできた」
かがみ「ばか、満月の日に私に話すことあるんじゃないの、満月よ、早く……言いなさいよ」
こなた「なんかダメ……みたい」
私の頬に熱いものが当たった。涙。かがみの涙か。もう目は殆ど見えない。かがみは私に何か言っているが聞こえなくなってきた。
かがみが私の為に泣いてくれたのか。つかさとみゆきさんはどうしたのだろうか。もうそれも分らない。気が遠くなってきた。これが死ぬってことなのかな。
急に寒気が取れた。そしてすごく眠くなった……意識が遠くなる。真っ暗だ……真っ暗。

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