ID:5UE4CHc0氏 :肝試し (ページ2)

 淡い光がまぶた越しに感じた。私は目覚めた。満月が私の目に映った。私は木の根元に寝ていた。月が真上にあるのか。私はどのくらい
寝ていたのかな。上半身だけ身を起こした。
つかさ「こなちゃん、大丈夫?」
声のする方を向いた。つかさが座って心配そうに私を見ていた。つかさが居てくれたのか。
こなた「私……助かったの」
つかさ「これなーんだ」
満面の笑みでつかさは私に小さな木箱を見せた。夢で見た女性が持っていた木箱に似ている。
こなた「見つかったんだね……」
つかさ「私が見つけたんだよ、漆塗りの箱の中に入ってた、だから箱が腐らなかったってゆきちゃんが言ってた」
こなた「そうなんだ……」
急につかさは私に抱きついた。
つかさ「……この箱の中に御守りを入れて祈った、皆で祈った……こなちゃんが倒れて、お姉ちゃんはこなちゃんに行って、ゆきちゃんは呆然として
     動かなかった、でも私は探した……探したんだよ……私だけで探したんだよ」
こなた「ありがとう……つかさの気持ちは分ったから放して、ちょっと苦しいよ」
つかさは離れた。私の胸元が少し濡れていた。つかさも泣いてくれたのか。私は立ち上がった。
つかさ「もう立って大丈夫なの?」
こなた「なんかすっきりしちゃったよ」
背伸びをした。そして何気に腕を見てみた。痣は消えていた。
こなた「痣が消えてる、祟りか呪いか分らないけど」
つかさ「祟りでも、呪いでもないよ、二人はただ会いたかっただけ、何百年も逢えなかった恋人がやっと逢えたんだよ、それを私達が手伝った
     ……最後に会ったのもこんな満月の夜だったんだね」
つかさは箱を胸元に当てて目を閉じながらそう言った。
つかさ「この箱と御守り、奉納庫に戻しておくね」
こなた「それがいいかもね、ところでかがみとみゆきさんは何処へ?」
つかさ「使った道具を戻しに行ったよ、もうすぐ戻ってくるかも」

 程なくして二人は戻ってきた。二人は立っている私にすぐ気が付いた。かがみは立ち止まったがすぐにみゆきさんが後ろから押して私の前に立たせた。
かがみは私と目を合わせようとはしなかった。
かがみ「さあ、満月は頭上にあるわよ、私に何が言いたかった事、言ってみなさい」
予想していた通りの言い方だ。だけどそんな言い方をするとこっちも素直にはなれない。
こなた「かがみ、そんな態度だと、彼氏に嫌われちゃうよ」
かがみ「初恋は実らない……もう終わったわよ……」
つかさ「お姉ちゃん、恋してたんだ……知らなかった、教えて欲しいな、どうなったの?」
乙女モードになったつかさがかがみ言い寄った。かがみも我に返ったようだ。
かがみ「わー、今のは関係ない、こなた、なんでそんな事言うんだ!!……つかさも余計な詮索はしない!!」
かがみは広場の方に逃げるように歩き出した。つかさはそれを追った。みゆきさんはそれを見て笑った。
みゆき「かがみさんは月夜の独特の雰囲気に流されてしまいましたね」
私もかがみとつかさを見ながら笑った。ふとみゆきさんと話したくなった。
こなた「かがみと肝試し……負けたの私の方だったね」
みゆき「どうしてですか?」
こなた「つかさから聞いたでしょ、私が学校を休んだ理由……死ぬのが怖かった、だけどかがみはそんな事しなかったし、冗談だって言って笑ってたよ、
     一方私は、怖くてただ震えてただけだったし、つかさに命乞いまでしたんだよ、どうみても私の方が弱虫だよ」
みゆきさんは少し間を空けてからから答えた。
みゆき「……死そのものより死の予感の方が恐怖すると聞いたことがあります、人柱に選ばれた女性、満月になるまで間の心情は私では計り知れません、
     人は必ず死にます、しかし何時死ぬかは分らない……だから生きていけるのかもしれません」
こなた「それ、今の私なら分るよ」
みゆき「かがみさんも同じですよ、かがみさんも私達に助けを求めていた……肝試しで見た夢を話しましたね、それは助けて欲しいと言っているのと同じです」
こなた「そうかな……」
そんなものだったのかな。かがみも助けて欲しかったのか。
みゆき「……そういえば私はまだ肝試しの判定をしていませんでしたね」
みゆきさんは少し間を空けた。
みゆき「肝試しの判定は引き分けと言いたい所ですが……主催者も同じく怖がってしまってはどうしようもありません、泉さんの負けですね」
にっこりと私に微笑みかけた。
こなた「なんだ、やっぱり負けか……」
私は苦笑いをした。

 かがみとつかさは相変わらず鬼ごっこをしている。みゆきさんはかがみを見ながら言った。
みゆき「かがみさんに何を言おうとしてたのですか」
こなた「喧嘩の事を謝ろうとしてね、それに私の事を見直したなんて言うから、私は命乞いをしたからそんなことないよって言おうとしたんだけどね」
みゆき「……もう肝試しは終わりました、喧嘩も終わっていますね、ここにかがみさんが居るのがなによりの証拠」
こなた「みゆきさんが居なかったら御守りも、箱も見つからなかった、ありがとう……」
みゆき「いいえ、どういたしまして」

 かがみが私達の所に戻ってきた。
かがみ「こなた、何てこと言ってくれるのよ、つかさがしつこくてしょうがない」
みゆき「私も是非聞きたいですね、かがみさんの恋の話……」
かがみ「ちょ……なんでそうなるのよ」
つかさ「ゆきちゃんもそう言ってるよ、もう話してよ、お姉ちゃん」
三人で話す、話さないで会話が弾んでいる。なんだかんだ言ってかがみも満更でもなさそうだ。私は会話から外れて足元に生えている野花を摘んだ。
かがみがそれに気付いた。
かがみ「何してるのよ、らしくないことして」
こなた「見ての通り花摘みだよ、あの二人の霊に供えようと思ってね」
それを聞いたみゆきさんとつかさは私と同じように花摘みを始めた。かがみは一人立ったままだった。
かがみ「あの霊はこなたを殺そうとしたのよ、私だって……よくそんな気になれるわね」
こなた「あの霊は私を殺そうとはしなかったような気がして」
かがみ「そんな事はない、現にこなたは倒れたじゃないの」
こなた「つかさが箱を見つける前にすでに月は見えていたよ、もうとっくにタイムオーバーだった、私を殺すつもりならもう死んでるよ、それに、ゆーちゃんの
    クラスの子も肝試しをしたけど、その子は交通事故に遭った、でもそれは防げた事故だった」
かがみ「ゆたかちゃんのクラス?、初めて聞いたわねそんな話」
こなた「そんな話したら、もっと怖くなるでしょ」
かがみ「……それは否定しない、だけど何故幽霊はそこまでして私達を怖がらせた」
何故と聞かれて直ぐには答えられなかった。花を摘みながらつかさが答えた。
つかさ「二人は逢いたかった、それだけの理由があれば充分だよ、私が幽霊だったらそうするかも……それに私が箱を見つけたときはもう月は完全に出てたよ」
みゆき「幽霊の目的は泉さんやかがみさんの死ではなかったのは確かですね、御守りと箱を一緒にして欲しかった、そして二人の境遇を理解して欲しかった」
突っ立っていたかがみは自然に腰を落とし、花を摘んでいた。

かがみ「月下では白い花が映えるわね」
かがみは白い野菊を中心に摘んでいたようだ。確かに白い花は月の明かりを反射してより白さを際立たせていた。
つかさ「このくらいあれば大丈夫かな、皆、お花をかして」
私達はつかさに花を渡した。つかさは自分のリボンを外すと花を纏めて結んで花束を作った。即席にしては上出来だ。色々な花が混ざっている。
皆それぞれのセンスの違いか。
つかさ「どこに供えようかな?」
かがみ「この辺り、昼間は人通りがあるわね」
みゆき「あそこはどうでしょうか」
みゆきさんが指差す所を見ると、ここから少し離れたところに小高い丘があった。
かがみ「あの丘ならこの辺りも見下ろせていいかもね、行きましょ」

 丘に着いて私達は辺りを見回した。学校、校庭、広場。全てが見えた。公園のようだが滑り台やブランコはなくベンチが数個置いてあるだけだった。
かがみ「こんな所があったなんて今まで気が付かなかったわ」
みゆき「運動部はこの辺りまで走っているようですが、私もここに来たのは初めてですね」
こなた「運動系の部活やってなければこんな所まで来ないよね……つかさ、花を」
つかさは花束を私に渡した。私は一番広場が見える場所に花束を置いた。暫く私達は目を閉じて黙祷をした。

 突然私のポケットから携帯の着信音が聞こえた。
かがみ「こなた、こうゆう時はマナーモードにしておきなさいよ」
と言っていたかがみからも着信音がする。かがみは慌てて音を切った。
つかさ「もうこんな時間だよ、多分お父さんだと思うよ」
私は腕時計を見た。もう0時を過ぎていた。もうこんな時間か。
こなた「か弱き乙女が四人もこんな時間まで外にいれば心配もするね」
つかさ「お父さんにメール入れておくよ」
かがみ「みゆきはいいの?」
みゆき「私はもうこうなると思っていましたので予め話してあります」
こなた「流石だね」
かがみ「もう電車もないから帰れないわよ、朝までここで過ごすしかない、そこにベンチがあるから休みましょ、丁度人数分あるから」

 みゆきさんとつかさはベンチに座ると直ぐに眠った。地面を掘って疲れたのだろう。かがみも転寝状態だ。しかし私は眠ることができなかった。
倒れてたせいかもしれない。それとも満月の光のせいか。月の光がこれほど明るく感じたことは無かった。夢に見た月夜と同じだ。月は西に傾いている。
みゆきさんが言っていた。死の予感は怖いって。確かに怖かった。この日に死ぬなんて言われたら……人柱になった女の子もそうだった。
昔、あの広場で夢で見た出来事が起きた。ゲームでも漫画でもない。昔の事とはいっても人を生き埋めにして祈るなんて馬鹿げてる。
人柱伝説はここだけじゃない、日本全国にあるってみゆきさんが言ってた。興味本位でやった肝試しだったけど。こんな伝説を知っていればやらなかったかも。
かがみ「眠れないのか」
後ろから私に声をかけてきた。
こなた「そう言うかがみだって、いきなり起きてきてどうしたの」
かがみは私の横に並んだ。そして私と同じように広場を見た。
かがみ「意外と月の光は眩しいのね、どうも寝付かれなくてね」
こなた「ふふ、私と同じだ」
しばらくの間、私達はぼんやりと夜景を見ていた。遠くでは街の明かりが月の光に負けじと灯っている。今更ながら陸桜学園もけっこう街から外れているなと思った。
かがみ「今度から満月を見る度に、こなたとの肝試しを思い出すことになりそうね、可笑しいわね、肝試しは新月にやったのにね」
こなた「夢の事を言っているの?」
かがみ「そうよ、多分こなたが見た夢と同じ、ただ違うのは私が満月の日に死ぬと言われた事ね、正直怖かったわよ、学校を休もうとしたぐらいにね、
     月がどんどん満月に近づいていくのを見ると涙が出てきた」
こなた「それで私達に夢の事を話したんだね、みゆきさんの言う通りだ」
かがみ「そうね、みゆきには敵わない、まさか御守りがうちの神社にあったなんて……そして箱の在り処もみゆきが当てたわね」
俯いて肩を落としている。気弱なかがみを見るのも初めてかもしれない。
こなた「そういえばまだ言ってなかったね、満月になったら言うって」
かがみ「……もういいわよ、どうせ喧嘩の事でしょ、つかさやみゆきにバレちゃったし、思い出したくもないから」
失恋か、私も聞きたいけど、それはもう少し経ってからからでいいかな。
こなた「私が倒れた時、泣いてくれたよね、私の頬に数滴涙がかかったのを感じたよ」
かがみ「私が、こなたの為に、まさか、気が動転して勘違いしてたんじゃないの、喧嘩してふて腐れて御守り探しをしなかった人に涙なんか流さないわよ」
月明かりでも分かるほど顔を赤くして否定してる。相変わらず素直じゃないな。今回はそのまま受け入れるか。そういえば、つかさやみゆきさんに言った言葉、
まだかがみには言ってなかった。
こなた「……でも、私の時は探してくれた、ありがとう」
かがみ「ばか」
かがみらしい返事だ。でもかがみの気持ちは分かった。死の予感をお互いに体験したから。

 空が薄く明るくなってきた。日の出が近い。満月はもう目立たなくなってしまった。その満月も西に沈もうとしていた。
こなた「もうすぐ日の出だね、もう月が霞んじゃってるよ」
かがみ「月は夜でないとその美しさは出ないわね……まさかまた日の光を見る事ができるなんて、良かったわね」
こなた「うん」
かがみがあくびをした。
かがみ「今頃眠くなってきた」
こなた「授業中居眠りしないようにね」
かがみ「こなたじゃあるまいし、今の言葉そのまま返すわよ」
こなた「相変わらず手厳しいね」
かがみ「さてと、つかさとみゆきを起こして学校に戻りましょ、学校の方が休めるわよ、裏門に行けば入れてくれるはず」

 月夜では綺麗に見えた花束。まだ日が完全に出ていないのにくっきりと見える。野性の花だけあってやっぱりお花屋さんで売っているものより色褪せている。
少し残念な気持ちになった。

 あれから三日後だった。広場の工事中に白骨死体が発見された。柱に括り付けられた状態だったと言う。それは江戸時代、人柱で生き埋めにされた
女性であることが分かった。工事は一時中止となった。その代わりに旧校舎の解体工事が繰り上げて行われることになった。
旧校舎が解体された後、そこは公園になる計画らしい。そんな中、つかさが急に旧校舎の音楽室を見てみたいと言い出した。一人では行けないから皆呼ばれた。
こなた「なんでいきなり行きたくなったのさ」
つかさ「明日から解体工事始まっちゃうから……」
こなた「まさかつかさも肝試しモドキをって?」
つかさ「……ちがうよ、ただ、ただね、人柱にされた女の子が見つかったから……もう一度祈ってあげようかなって」
こなた「それなら一人で行けるじゃん、無人の建物とは言え昼間だし、明るいし……」
っと言ってもつかさはかがみの側から少しも離れようとはしなかった。しかし音楽室に近づくと日が差し込まないのでうっすらと暗くなった。つかさの顔色が
青ざめていくのが分る。体もすこし震えている。すると奥から音が聞こえた。小さい音。音楽室から聞こえる。ピアノの音だ。つかさはその場で止まってしまった。
かがみ「どうしたのよ、行くって言い出した人が立ち止まっちゃったら先にすすまないじゃない」
つかさ「だって……ピアノ……なってる……よ」
こなた「幽霊は江戸時代の人だよ、ピアノなんか弾ける訳無いじゃん」
みゆき「……この曲は……」
みゆきさんまで立ち止まった。私とかがみはため息をついた。
こなた「それじゃ私とかがみで音楽室見てくるからそこに居てて……」

 私とかがみで音楽室の入り口の前に立った。はっきりとピアノの音が聞こえる。静かな曲だ。私は扉に手をかけた。かがみも扉に手をかける。お互いに頷いた。
こなた・かがみ「せーの」
二人で思いっきりドアを開けた……。ピアノの演奏は止まった。私達はピアノの前に駆け込んだ……。
こなた「みなみ……ちゃん」
ピアノの前に座っていたのはみなみちゃんだった。私達を見て驚いていた。
かがみ「ご、ごめん、驚かすつもりはなかったんだ、こなたのやつがいきなり慎重になるもんだからね……」
こなた「いや、かがみが急にへっぴり腰になったもんだから……」
慌てて言い訳をした。そんな私達を見てみなみちゃんは笑い出した。音楽室の雰囲気に気が付いたのかつかさとみゆきさんも音楽室にやってきた。
つかさ「みなみちゃん、どうしてこんな所に……怖くないの?」
みゆき「みなみさんでしたか……」
かがみ「何故こんな所でピアノなんか……正式な音楽室があるじゃないの」
するとみなみちゃんはすこし寂しい顔をした。
みなみ「明日から、もうここでピアノが弾けなくなるから……」
みゆき「みなみさん、今日が初めてではないのですね、ここでピアノを弾くのは」
みなみ「はい……入学してからすぐにここで……誰もいないからいい練習場……でした、幽霊騒ぎが起きてからは誰も来なくなりました」
かがみ「放課後、夕方、早朝、音楽室で幽霊を見たとう噂……旧校舎の幽霊騒ぎは三年生なってから……」
私達四人は顔を見合わせた。
こなた「幽霊騒動の犯人は……」
つかさ「みなみちゃんだった?」
みなみちゃんはキョトンとした顔でこちらを見ていた。幽霊とかオカルトとかは平気、と言うよりは感心すらないみたい。
いくら私でも四六時中は居られない。状況が分っていない様だ。私は今までの経緯を話してあげた。

みなみ「そんな事が……私のクラスでも、クラスメイトが……」
こなた「ゆーちゃんから聞いたよ、大変だったね」
みなみ「もう明日退院するから……」
つかさ「それは良かったね……あれ?、この花、どうしたの?」
つかさはピアノの楽譜を置く所に一輪の花を見つけた。その花はその辺に生えている野菊だ。もうしおれかかっていた。水の入った小瓶に入っていた。
きっとみなみちゃんが入れてくれたのだろう。
みなみ「ピアノの上に置いてありました、これと一緒に」
みなみちゃんはリボンを持っていた。
つかさ「これ、満月の時花束にした私のリボンだよ、なんでこんな所に……」
みゆき「やはりそうでしたか……」
かがみ「やはりって、何か分ったの?」

 みゆきさんは何かもやもやが晴れたようにすっきりしていた。
みゆき「みなみさんの弾いていた曲は『月光』でした」
かがみ「月光って、ベートーベンの?、曲は知ってるけど、さっきの曲は聴いていなかったから分らなかったわ」
みゆき「そうです、みなみさんはここで何度も月光を弾いていました、確かに幽霊騒動の正体はみなみさんだったかもしれません、しかし、人柱になった女性の
     幽霊を呼んだのもみなみさんかもしれません」
かがみ「……確かにあの曲は月夜を連想させるわね……」
みゆき「そして、幽霊は思い出した、月夜で誓った愛を……そこに肝試しに来たかがみさん、かがみさんはその時恋をしていました、そんなかがみさんに
     想いを伝えたかったのかもしれません、しかし思うように伝わらないので……今度は泉さんに」
つかさ「……この花は幽霊さんの答えだね、喜んでいるんだね、そうだよね」
みゆき「おそらく……」

 私は音楽室の中央にある椅子に座った。
こなた「聴いてみたいな、その幽霊を呼んだみなみちゃんの月光」
みなみちゃんは顔を赤くした。
みなみ「……まだ一楽章しか弾けない……それに人前で弾いたことも……」
かがみ「私も聴いてみたい」
かがみも私の隣に座った。みゆきさんも座った。
つかさ「私も聴いてみたいな、どんな曲なのかな」
つかさはみなみちゃんのすぐ近くに座った。四人の目がみなみちゃんに集中した。
躊躇っていたけど覚悟をきめたのか目を閉じしばらく瞑想をしてから弾きはじめた。

 静かに曲は始まった。聴いたことがある曲だ。同じようなリズムの繰り返しのように聞こえる。月夜……そう月夜だ。この静けさは満月の夜。
草原にそよ風が吹いている。草花がゆっくりとなびいている。月の光が淡く照らし出す。そんな感じの曲だ。そうか……それで幽霊は恋人との再会を選んだ……。
人柱として生き埋めにされた怨みだけだったら、私も、かがみも、ゆーちゃんのクラスメイトも、死んでいたかもしれない。
みなみちゃんの演奏が幽霊の心を癒したんだ。私は演奏をもっと聴きたくなった。

 彼女の想いは通じた。人柱の彼女自身も発見された。きっと記念碑が建つ。そしてこの旧校舎は取り壊される。 この曲が終わった時、この物語も終わる。
永い夜が終わる。私達は祈るようにその曲を聴いた。

終。


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