ID:Sk9cJtA0氏:蒲公英

こなた「みんな、私達って何の為に生きてるのかな?」

 お昼休み、突然言い出した。かがみさんは飲んでいたお茶を吹き出しそうになった。つかささん食べる動作を止めてこなたを見た。私も何も準備が出来て
居なかったので戸惑った。
かがみ「バカ!、唐突に何をいいだすんだ、お茶噴出しそうになったじゃないか」
つかさ「どうしたの?何かあったの?」
泉さんは普段そんな話はしないせいかかがみさんは半分冗談と思ったのだろうか。つかささんも心配そうに泉さんを見ている。
こなた「私がそんな質問するのおかしいかな」
かがみ「……そうね、普段のこなたからは思いもよらない質問だ、昼休みにいきなりそんな哲学的な質問をするなんて」
少し間が空いた。
こなた「で、答えられるかな?」
真剣な顔で話す泉さんに私達は気付いた。冗談で質問をしていることではないことは分った。
かがみ「目的の為に生きているのよ、日々努力してその目的、目標に向かってね、こなただってこの高校入るのにそうしてきたんじゃないの」
泉さんはかがみさんの話を聞き終わると今度はつかささんの方を向いた。
つかさ「……私?そんな難しいこと分らないけど、幸せになる為、じゃないかな……」
こなた「つかさは今、幸せなの?」
つかさ「うん」
満面の笑みでそう答えた。泉さんは今度は私の方に向いた。しかし私は答えなかった。二人の答えとは違っていたから。
こなた「みゆきさんらしくないね……さて、食べ終わったし、少し風を浴びてくるよ」
泉さんは立ち上がり教室を後にした。かがみさんは驚いて私に話した。
かがみ「さっきのこなたは驚いたけど、みゆきも驚いたわね、いつもの薀蓄はどうしたのさ」
みゆき「私はお二人とは違った答えでしたので、泉さんが混乱されといけないと思いまして」
かがみ「こなたはその答えを期待してたんじゃない?私達の答えは在り来たりだったからね」
つかさ「でも、そのくらいしか答えようないよね?」
かがみ「そうね、でも今のこなたには私達の答えは酷だったかもね……柄にもなく黄昏ちゃって、何があったのかしらないけど、みゆき、行ってあげなさいよ、
     こなたの所に……待ってるわよ」
みゆき「と、言われましても、どちらへ行かれたのでしょうか?」
かがみ「風を浴びると言えば屋上しかないでしょ」

 かがみさんの言われるままに私は屋上に向かった。本当に泉さんは屋上に居た。かがみさんの洞察力に感心してしまった。
泉さんは屋上から校庭を見下ろしていた。
みゆき「泉さん」
こなた「あれ、みゆきさん、どうしてこんな所に?」
自分の意思ではなくかがみさんに言われてここに来た。なんて言っていいか分らなかった。
こなた「ふふ、どうせかがみに言われてここに来たんでしょ、私が変な質問するから」
微笑んでいる。
みゆき「その質問のことなんですが……」
こなた「ああ、あの質問ね……あれは、何でもないよ、ちょっと皆の考えを聞きたかっただけだから、気にしなくてもいいよ」
泉さんはまた校庭を見下ろした。

みゆき「そうですか、かがみさんも気になされていましたので、でも、その様子でしたら問題なさそうですね」
私は教室に戻ろうとした。
こなた「みゆきさん、帰っちゃうんだ」
みゆき「え?」
こなた「まだ、みゆきさんの答え聞いてないよ」
かがみさんに言っていたことは本当だった。泉さんは私の答えを聞きたがっていた。
みゆき「私の答えはたいした事はありません、聞いても参考にならないと思いますが、それに泉さんの質問の真意が分りませんので……」
泉さんは黙ってしまった。
みゆき「恋愛、失恋、将来の期待と不安、いじめ……もっと漠然とした不安なのかもしれません、そのような事でしたら誰にでも起きうる事です、大人になっても
     消えることはないと思いますが」
こなた「そんなんじゃないよ、ただ、何で私が居るのかなって、居ても居なくても何も変わらないような気がして、私の居る意味が無いような気がして」
みゆき「自分の存在意義を疑っているのですか」
また泉さんは黙ってしまった。なんて言ったらいいのだろうか。いい加減な事を言えば余計に泉さんを傷つけしまう。
みゆき「居ても居なくてもと言うのであれば、泉さんはもう既に多大な影響をこの世界に与えていると思いますが」
こなた「なぜ」
みゆき「昨日泉さんが買った漫画は人気で売り切れらしいですね、泉さんが居なければ、泉さんの買った漫画は誰かの手に入っていたはずです」
こなた「それはそうだよ、当たり前じゃん」
みゆき「泉さんが居なかったら、この高校に入学できた人が一人居たことになります、その人は今頃どうしているでしょうか、別の高校に入学したのか、
     それとも就職したのでしょうか……」
こなた「……それはみゆきさんも同じじゃないの?」
みゆき「そうですね、だから私達は知らないうちに、誰かに影響を与えているのです、それが泉さんが居ると言うことなのではないでしょうか」
こなた「なんか私が居ると悪いような例だね……」
みゆき「それはどうでしょうか?、漫画の事はそうかもしれませんが、この高校、陸桜に入学しない事が悪いことだとは思いませんが、入学できなかった人、
     もしかしら、この学校では出会えなかった人に会ったり、もっと素敵な出来事が起きているかもしれません」
こなた「私はこの学校に居て良かったのかな」
みゆき「泉さんが居なかったら、楽しいお昼や、今、こうして私と話すことはありませんね」
こなた「それだけ、私って、それだけなんだ……」
みゆき「本当にそう思っているのですか、それが私にどれだけの影響を与えているのか」
また泉さんは黙ってしまった。いったいどうしたというのか。
みゆき「いったい何があったのですか、泉さんらしくありません」
それでも泉さんは答えようとはしなかった。何が泉さんにそうさせているのは分らないけど、何をしようとしているのかは分った。あの時と同じ。思い出した。

みゆき「泉さん、もしかして死のうとしていませんか?」
泉さんは驚いた顔で私を見た。
こなた「まさか、そんな……ことないよ」
元気ない答えだった。
みゆき「今、死ぬのは楽です、いえ、本当に楽かどうかは分りません、死んだ後、どうなるか語れる人はいません」
こなた「みんなそう言うよね……」
みゆき「いずれ、何もしなくても皆死んでしまいます、二百年後、今、ここに居る全ての人は居ないでしょう」
こなた「それなら、今死んでも、寿命で死んでも同じだよね」
みゆき「本当にそう思います?」
返事はなかった。

みゆき「それを見てください」
私は屋上の足元を指差した。
こなた「何?、何もないよ」
不思議そうに泉さんは足元を見た。
みゆき「そこにあるものです、わかりませんか」
コンクリートとコンクリートの隙間に僅かにある土、そこにタンポポが生えていた。綿毛を蓄えた茎が一本。
こなた「タンポポ?」
みゆき「そうです、不運にもこんな所に種が落ちたのですね、コンクリートの隙間……根も満足に張れず、水も足りずにいたでしょう」
こなた「よくここまで育ったね、凄いね」
みゆき「これが、目的です」
こなた「目的?何の?」
みゆき「私達の目的です、生きること」
こなた「今、生きているじゃん」
みゆき「私達は生き物ですから、生きるのが目的です、努力とか、幸せとかはその手段にすぎません」
また泉さんは黙ってしまった。

こなた「生きていても良いこと無いよ」
みゆき「そうですね、でも、生きていないと良い事も起きませんよ」
泉さんはタンポポを見ている。
こなた「このタンポポは良い事なんて一度もないんだね、可哀想だ」

みゆき「そう思いますか、このタンポポは綿毛を付けてますね、この綿毛が風に飛んでどこか広場の土に降りれば今度はしっかりとした根をおろすことができます」
こなた「でも、またどこかのコンクリートに降りちゃうかも」
みゆき「それも生きていないと確かめられませんね、どうせ死ぬならそれを確かめてからでも遅くはないかと」
こなた「確かめるって何時まで?」
みゆき「死ぬ時まででです」

 泉さんはずっとタンポポを見ていた。
出入り口の方から足音が聞こえてきた。
みゆき「迎えにきましたよ、戻りましょ」
こなた「迎えに?」
出入り口につかささんが立っていた。
つかさ「こなちゃん、何してるの、来ないから心配になっちゃったよ」
こなた「つかさ……」
少し遅れてかがみさんがやってきた。かがみさんは黙って泉さんを見ていた。

こなた「いや、何でもないよ、ちょっと屋上の景色が良かったから眺めていたんだよ」
つかささんは泉さんの手を取り、教室の方に連れて行った。かがみさんと目が合った。かがみさんは私にウインクで合図をすると泉さんと一緒に教室にもどった。

 ほっと一息。何気なく私もタンポポを見た。
みゆき「まさかあなたに二人も救われるなんて……かがみさんの時は黄色い綺麗な花を見せてくれたましたね……いいえ、三人かも、私も加えると……
     私の時は青々とした葉を見せてくれました」
私は何も出来ませんけど、せめてものお礼です。私はタンポポの綿毛の茎をもぎ取り、口から思いっきり息を吹きかけた。
タンポポの綿毛は行きよいよく飛び散った。綿毛は風に乗り屋上から飛んで行った。丁度そこに昼休みが終わるチャイムが鳴った。

どうか全ての種が土に降りますように。



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