ID:O4RUfT.0氏:WALS-7

「お姉ちゃん、こなちゃん、おまたせー。できたよー」
「おお…」
「へー…」
 目の前に差し出された皿の中身を見て、こなたとかがみはただ感嘆のため息をつくだけだった。
「これ…ほんとにあの携帯食料?」
「…普通にシチューにしか見えないわ」
「うん。町を出るときにね、調理器具とか調味料とか持ってきたから、それで少し料理してみたんだよ。味気の無いもの食べてたら、いざって時に元気が出ないから」
 そう言いながらつかさは自分の鞄を軽く叩いた。
「やけに鞄がでかいと思ったら…」
「ホント、どんな世界でもつかさはつかさね…」
 かがみは苦笑しながらスプーンを口に運んだ。そして、一口食べたところでスプーンを皿に置いた。
「ん?どうしたの、かがみ?」
「も、もしかして、美味しくなかった…?」
 こなたとつかさが心配そうに聞くと、かがみは首を振った。
「ううん、美味しいわよ。前より美味しくなってるわよ…ただ、つかさの味だなって思って。すごく懐かしい感じがする」
 目をつぶって息をつくかがみ。それを見ながら、つかさは少し顔を赤らめながら頬をかいた。
「えへへ…あ、そうだ。デザートもあるよ」
 つかさはそう言いながら、自分の鞄から布の袋を取り出した。
「町を出る前にね、クッキー焼いておいたんだ。ヒールベリーをドライフルーツにして中に練りこんであるんだよ」
 つかさの説明に、こなたは感心したようにうなづき、かがみは唖然とした表情を浮かべた。
「そりゃまた…えらく贅沢なクッキーね」
「え、そうなの?」
 こなたが聞くと、かがみは軽くうなづいた。
「こんな荒野だらけの世界だから、果物って貴重なのよ。おまけにヒールベリーには回復効果もあるからね…高いのよ、アレ」
「へー、そうだったんだ」
 こなたがそう言う横で、つかさは今度は鞄の中からガラス瓶を取り出した。
「…ジャムも作ってみたんだけど…」
「い、いくらかかったのよ、そのジャム…」
「そういや、つかさは獲得賞金トップの賞金稼ぎだったっけ…お金持ってるんだなあ…」
 こなたの言葉に、かがみは少し考えるような仕草をした。
「いや、いくらなんでもコレだけのヒールベリーは…つかさ。もしかして稼いだお金ほとんど料理関係に使ったんじゃ…」
「え?…えっと…えへへへ…」
 照れ笑いで誤魔化すつかさに、かがみはため息をついて見せた。



― わいるど☆あーむずLS ―

第七話『滅びの国と天の魔星』


「それにしても、凄いところだね…」
 街路を歩きながら、こなたはそう呟いた。
 アークティカの城下町の入り口で食事をすませた三人は、朽ち果てた城門をくぐり、町の中を歩いていた。
「ほんとに、緑だらけね…ほんと、こんなところにみゆきがいるのかしら」
『A-ARMSがあることは間違いないよ』
「…ソレだけが落ちてるってことは無いでしょうね」
 アガートラームと話しながら、遠くの方を見るかがみ。見渡す限り、あらゆる場所が植物に覆われた町。むせ返るような草いきれに、かがみは顔をしかめた。
「あれはお城かな?その隣にあるの…木?凄く大きいね」
 つかさがかがみと同じ方を見ながらそう言った。町と同じく緑に覆われた城らしき巨大な建物。その隣にはソレをも凌駕する高さでそびえる大木があった。
「とりあえず、お城に行ってみる?なにかあるとすれば、あそこが一番あやし…」
 こなたがそこまで言ったところで、足元でビシッという音がした。
「…え?」
 こなたが下を向くその間に、かがみとつかさの足元でも同じ音がする。
「走って!」
 つかさが大声でそう言いながら走り出した。こなたとかがみもその後を慌てて追う。
「な、なに?」
「多分、狙撃だよ」
 こなたの問いに答えながら、つかさは上を見上げた。
「それも、真上からみたい」
 つかさにならってかがみも上を見るが、そこには青空が広がっているだけだった。
「真上って…空しかないわよ。どうやって…」
「わかんないけど…あの木の下に!」
 つかさが、民家の側にある枝振りのいい木を指差し、三人は転がるようにその下へと入った。
「も、もしかしてこれがマルドゥークってやつ…?」
 こなたがそう呟くと同時に、今度は頭の真上辺りで音がして、木の幹が穿たれた。
「え…ちょ…」
 恐る恐る前を見るが、そこにあるのは蔦に覆われた民家の壁だけだった。
「こなちゃん!」
 唖然とするこなたの手をつかさが引っ張り、木の下から連れ出した。その後ろでさらに数発の弾丸が木の幹を抉っていた。
「二人とも、こっちに!」
 かがみが近くにあった民家の扉を剣で切り開き、中に飛び込む。つかさと引っ張られてるこなたもそれに続いた。

「いくらなんでも、建物の中なら大丈夫でしょ…」
 かがみが息を整えながら、部屋の中を見渡す。
「どこから…っていうかどうやってあんな狙撃してるんだろ?」
 部屋の一つだけある窓から外を警戒しながら、つかさがそう呟いた。
『ああ、それは…』
「もらったーツ!」
 アガートラームがなにか答えようとした声を遮って、少年の叫び声が部屋に響いた。その声の主とつかさの間に、かがみが身体を割り込ませる。そして、納刀したままのナイトブレイザーで攻撃を受け止めた。
「…ショベル?」
 かがみは自分の受け止めたものを見て、思わず首を傾げてしまった。少しサイズが大きめのハーフコートを着て、赤いマフラーをなびかせる、自分より少し年下っぽい感じの少年。彼が振り下ろしてきたのは、間違いなく両手持ちのショベルだった。
「ディーン!下がって!」
 さらに別の方向から目の前の少年とは違う声がし、ショベルを持った少年は後ろへと跳んだ。
「ファントムライン!」
 その直後に、かがみの側を光の帯がかすめるように通り過ぎる。
「な…ビーム!?」
 ショベルの次はビーム。あまりに落差のある攻撃に、かがみは戸惑いながらも少し離れた位置にいたこなたと合流した。
「だめじゃないか、ディーン。不意打ちなんだから叫んじゃばれちゃうよ」
「だって、気合入れないとはずしちまうだろ?」
 そして、向こうではディーンと呼ばれたショベルの少年と、ビームを放ったであろうARMを持った少年がもめていた。明らかにサイズが合ってないだぶだぶのジャンバーを着たARMの少年はさらに年下らしく、どう見ても中学生くらいにしか見えなかった。
「…ねえ、こなちゃん」
 二人の少年から目を離さないようにしながら、つかさが肘でこなたをつついた。
「ん、なに?」
「さっきわたしが外見てた窓から真っ直ぐ前の家の屋根にね、スナイパーさんらしいのが見えたんだよ」
「え、マジで?」
「うん。だから、わたしとお姉ちゃんでこの子達抑えとくから、こなちゃん捕まえてきてくれないかな?相手の位置さえわかってたら、アクセラレイターで一気に近づけると思うから」
 向こうに聞こえないように小声でそういうつかさに、こなたはうなずいて見せた。
「ま、まったジュード。今こうしてる場合じゃないと思うんだ」
「そうだけど…ああ、もう。後でちゃんと話するからね…って、ああっ!?」
 ようやくこちらに向き直った、ジュードと呼ばれたARMの少年が、窓から出て行こうとするこなたを見て声を上げた。
「行かせない!ファントム…」
「グラッヴ!」
 ジュードがARMを撃つより先に、つかさがクレストショットをジュードの真上に放った。つかさの魔力により泡のような球体が生まれ、ジュードを床に押さえつけた。
「うわあッ!?…な、なに、これ…」
「ごめんね。こなちゃんの邪魔しないで欲しいんだ」
「くそ、クレストソーサレスかッ!」
 つかさに危険を感じたディーンが、ジュードの脇を抜けてつかさに接近しようとする。だが、その前にナイトブレイザーを抜き放ったかがみが立ちふさがった。
「おっと、あんたの相手はわたしよ」
「う…ちくしょー…」
 かがみに向かってショベルを構えたディーンが歯噛みする。それを見たかがみはため息をついた。
「なんか…わたし達が悪役っぽいわね」
「あはは…」
 そして、かがみの呟きを聞いたつかさが苦笑していた。

 窓から外に出たこなたは、アクセラレイターを使い目的の家の後ろに回りこもうとしていた。
 あの家に不意打ち要員が居たということは、スナイパーは最初からあの家に追い込むように撃っていたということ。その家の側に待機しているということは、出てきたところを狙い打つ気でいる。こなたはそう判断し、正面から登らず後ろに回りこむようにしたのだ。
 家の後ろについたこなたは、壁を一気に駆け上がった。そして、屋根に着地したところでアクセラレイターが効果を失った。
 屋根の上に居たスナイパーは、狙撃用のライフルを構え濃い緑色のローブを身にまとっていた。フードを目深に被っているため、顔は見えない。
 スナイパーはこなたに気がつき、振り返って銃口を向けてきた。こなたは再びアクセラレイターを使い、一気に間合いをつめた。
「ファイネストアーツ…ラウンドアタック!」
 こなたは相手の目前でしゃがみ、円を描くように足払いをかける。足をとられ転んだ相手に馬乗りになり、その顔に銃を突きつけた。
「ここまでだよ…」
『あまり、乱暴にしないほうがいいんじゃないかな』
 アガートラームの言葉に、こなたは首をかしげた。
「え、なんで?」
『この銃、A-ARMS04ロンバルディアだよ』
「え…それって…」
 こなたは驚いて自分の下敷きになってるスナイパーを見つめた。
「あ、あの…この声、もしかして泉さんですか…?」
 はだけたフードから覗いたスナイパーの顔は、眼鏡こそつけていなかったものの、間違いなく高良みゆきだった。



「…ほんっとーに、申し訳ありませんでした…」
 みゆき達に案内されて入った城の中の一室。無数の蔵書が収められた、図書室らしきその場所はみゆき達が拠点として使用している場所だった。
「言い訳になりますが、今朝眼鏡のフレームを曲げてしまいまして、あまり良く見えなかったんです…」
 そう言いながらディーンと共に頭を下げるみゆきに、こなたは手を振って見せた。
「いや、いいよ。だれも怪我なかったし」
 そのみゆきたちの後ろで何かをいじっていたジュードが顔を上げた。
「はい、直ったよみゆきさん。壊れたなら言ってくれればよかったのに」
 そう言いながら差し出された眼鏡をみゆきが受け取る。
「ジュードさんたちには色々お世話になってますから、これくらいは自分でと思ったのですが…」
 眼鏡をかけながらため息をつくみゆきに、かがみが苦笑して見せた。
「まあ、なんにせよ合流できてよかったわよ。こんな町にいるってわかったときは、どうなるかと思ったけどね」
「ところで、みゆきさんはこの世界に来てどれくらい経つの?」
 かがみの横から顔を出したこなたがそう聞くと、みゆきは顎に人差し指を当てて少し考える仕草をした、
「そうですね…三週間くらいでしょうか」
「みんなばらばらだねえ」
 みゆきの答えにこなたは腕を組んで難しい顔をした。
「とりあえず、今のわたしたちの状況を話しとくわね…」
 そして、かがみが今までの経緯をみゆきに話し始めた。
 かがみの話を聞き終わったみゆきは、しばらくうつむいて考え込む仕草をしていた。
「何故…という部分がまったくわかりませんね」
 そして、顔を上げてそう言った。
「何故、みなさんばらばらの時間、場所に飛ばされたのか、何故、A-ARMSなるものが側にあるのか…そして、そもそも何故このような世界にわたしたちが来たのか」
 そう言いながら、みゆきはこなた、かがみ、つかさの顔を順番に見た。
「その辺のことを知ってそうなのはいるんだけど…」
 こなたはそう言いながら、自分のホルスターを見た。
「…ポンコツだもんね」
「記憶喪失は仕方の無いことですよ、泉さん」
 みゆきはこなたをなだめながら、全員の座っている机の上にいくつかの本を並べた。
「わたしたちに今必要なのは、知ることですね。この世界のこと、わたしたちの立場…たとえば、世界地図はお持ちでしょうか?」
「ううん、この大陸のしかないよ」
 こなたが差し出した地図を見て、みゆきはうなずいた。
「泉さん。これが世界地図ですよ」
「…え?」
「ファルガイアには、他にもいくつか大陸はあるのですが、そのどれもがとても人が住める場所ではないということです。だから、これが世界地図として使用されているのです」
「世界の八割が荒野に…」
 こなたは唖然としながら、ロディの言っていたことを思い出していた。
「世界がここまで荒廃した原因は、魔族との戦争にあるようなのですが…魔族戦争のことはご存知ですか?」
 みゆきが一冊の本を広げながらそう聞くと、こなた達三人はばらばらにうなずいた。
「かなり有名な伝承らしいわね。何度も聞いたわ」
「はい…では、その魔族戦争でARMが生み出されたということはどうでしょう?」
「それは…初耳だわ」
 かがみの答えにうなずきながら、みゆきは本のページをめくった。
「この本はその辺りについて詳しく書かれています。各地の伝承を集め考察を行なったものなのですが…ここです」
 みゆきはページをめくる手を止めて、そこを指差した。
「魔族戦争の当初は、人が使う武器が魔族にまったく通用せず、魔族側が圧倒していたようなのです。そこで、当時人間より遥かに高度な文明を持っていたエルゥ族と呼ばれる亜人が協力し、魔族の力そのものを人が行使できる兵器…ARMを生み出したのです」
「なるほどね…ARMに銃器が多いのは、そのせいってわけね」
「はい。しかし、このARMを短期間で生み出すという行為は非常な危険を伴うものだったらしく、魔族戦争には勝利したものの、エルゥ族は衰退しファルガイアから隔離された亜空間へと居を移したと、この本には書かれてますね」
「…ふーん」
 こなたは感心したようにそう言うと、ホルスターに収まっているアガートラームを見た。ARMのようでどことなくそうではない。こなたはそんな感じがしていた。
「さて、ここからが本題です」
 みゆきはそう言いながら、別の本を出してきた。
「ARMは魔族の力を具現化する機械…そして、魔族は次元を超えてファルガイアに侵略してきた…と、いうことは…」
「まさか…」
 驚きに目を見開くかがみに、みゆきはうなずいて見せた。
「はい、次元を…異世界へといけるARMがあっても不思議ではありません。これを見てください」
 みゆきが出してきた本…なにかの研究書らしくものを開き、あるページを指差した。
「ここにはユグドラシル計画の経緯が書かれていますが、起動実験の際に空間が歪み別の景色が見えたと証言している研究者がいます」
「え、じゃあユグドラシルが…」
「はい、副産物とは言え、次元を超えるARMでもあったということです」
「だ、だめだよゆきちゃん」
 それまでとくに口を挟んでこなかったつかさが、慌てたようにそう言った。
「あれは危ないよ。緑の災厄ってのが増えちゃうよ」
「…わかってますよ、つかささん」
 詰め寄ってくるつかさを落ち着かせるように、みゆきは微笑んで見せた。
「確かにユグドラシルを直接使うのは危険ですし、そもそもユグドラシル計画は国家単位で行なうもの。わたし達だけではどうしようもありません…ですから、ユグドラシルをヒントに、わたしたちでもなんとかできる規模のものを見つけようと思ってます」
 そう言うみゆきに、つかさは安堵のため息をついた。

「そっか…やっぱりゆきちゃんはちゃんと考えてて凄いね」
「あ、いえ…凄いのはわたしではなく、ここにある資料ですから。放り出されたのが、このような場所だったことは幸運でした」
「でも、こんなたくさんの本普通読もうとしないよね…」
 こなたが部屋を見渡しながらそう呟いた。かがみでさえ、それに同意するようにうなずいている。
「え、えっとそんなことは…と、とにかく元の世界に帰れる可能性がありますので、とりあえずこの国のユグドラシルを調べて見ようの思うのです」
 誤魔化すようにそう言うみゆきに、他の三人は顔を見合わせて苦笑した。
「ま、うまくいけば思ったより早く帰れそうね」
「うん、そうだね…」
 こなたはかがみに同意しながらも、なにか心にひっかかるものを感じていた。
「…なんかこう…ううん、まあいいや」
 そして、それを振り払うように首を振った。



― つづく ―



次回予告

みゆきです。
わたしたち四人と、ジュードさんディーンさんは、それぞれの目的のために滅びの元凶であるユグドラシルへと向かいます。
そこでわたしたちは何かを知ることは出来るのでしょうか?

次回わいるど☆あーむずLS第八話『破戒樹ユグドラシル』

人の未来を開くための大樹。それは、ほんとうはそう呼ばれていたはずのものでした。


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