ID:hDfPlLI0氏:WALS-3

 村外れにある食糧倉庫。月明かりのみが照らす夜の闇の中、二つの影がそこに近づいていた。背丈は人間の大人の半分ほどだが、横幅は大人の倍くらいあり、かなりずんぐりとした体型をしている。地元の人間がゴブと名づけた、亜人型の砂獣だ。
 二体のゴブは倉庫の扉に近づき錠前があることを確認すると、二体同時に手に持った斧を振り上げた。
「はーい、そこまでー」
 しかし、斧が振り下ろされる前に後ろから声をかけられ、ゴブ達は斧を振り上げた格好のまま後ろを振り向いた。
「あんたらも懲りないっつーか、単純ね。盗みに入るパターンが決まってるから張り込みやすいわ」
 ゴブを小馬鹿にしながら姿を現した声の主は、長い髪を頭の左右でくくった少女だった。
 ゴブたちが警戒する中、少女は羽織っている黒いロングコートの中から、短めの剣を取り出した。刀のように反身であり、鞘には何故か銃のように引き金が付いていた。
 少女は鞘から剣を抜き、そのまま鞘を持った右手を前に、剣を持った左手を後ろにして半身に構えた。
 ゴブの一匹がその体型に似合わぬ跳躍力で、少女に飛びかかる。少女は上から振り下ろされる斧の一撃を冷静に鞘で受け流し、剣でゴブの胴を切りつけた。
 ゴブが地面に落ち砂に戻っている間に、もう一匹のゴブはすでに逃走を始めていた。それを見た少女は、ため息を一つつくと剣を鞘に戻した。
「…逃がさないわよ」
 そして、剣を腰溜めに…漫画やアニメでよく見るような居合い抜きの構えを取ると、左手で剣の持ち手をしっかりと握り、鞘を持つ右手の指を引き金にかける。少女はそのまま睨むように、逃げていくゴブに狙いを定めた。
「…飛燕!」
 少女が引き金を引くと発砲音が鳴り、剣が抜き放たれる。その切っ先から衝撃波がまるで銃撃のように撃ち出され、逃げるゴブの背中を袈裟切りに斬り裂いた。
 少女はしばらく剣を抜き放ったままのポーズで止まっていたが、ゴブが砂に戻るのを見た後、安堵のため息をついて剣を鞘に戻した。
「…お仕事終了っと」
 そして、少し乱れた髪を整えると、ゴブだった砂の山からライブジェムを回収し始めた。
「最近、多くなったわね…向こうも追い詰められてるのかしら」
 そう独り言を呟き、少女…柊かがみは大きく伸びをし、お守り代わりに左の二の腕に巻いてあるピンク色のスカーフを撫でた。



― わいるど☆あーむずLS ―

第三話『真面目兎とパン屋さん』


 夜が明けた後、昼ごろまで睡眠をとったかがみは、仕事の報酬を受け取りに村に一つだけある酒場に訪れていた。
「ほい、これが今回の報酬ね。ライブジェムの分も入ってるから」
 そう言いながら、中年の男性がカウンターの上に貨幣の入った袋をおいた。
「ありがとう」
 礼を言いながらかがみはその袋を手に取り、その重さに驚いた。
「あれ、これ多くないですか?」
 かがみが男性を見ながらそう言うと、男性はニッコリと笑い返した。
「ボーナスだよ。かがみちゃんのおかげで、今年も無事に過ごせそうだからね。村の近くにゴブのアジトが出来たときは、ホントどうなるかと思ったけどねえ」
「いや、そんなわたしは大したこと…」
 照れてうつむくかがみに、男性は大きく笑った。
「いや、実際こんなに長く滞在する渡り鳥なんていないからね…村人全員君には感謝してるよ」
「…それも特に行く当てが無いからだし…」
 かがみは仕事の窓口になってるとは言え、何かにつけて褒めてくるこの男性が少し苦手だった。
「そ、それじゃ、わたしはこれで…」
 だから早々に話を切り上げて、酒場を出ようとした。
「パン屋に行くんだろ?だったらアシュレーによろしくな!元渡り鳥なんだから、たまにはこっちの仕事もしろってな!」
 そのかがみの背後から、男性が大きな声でそう言った。
「余計なこと言わないでよ…」
 かがみは真っ赤になりながら、酒場を早足で出て行った。

村の中央辺りまで来たところで、かがみは一人の少年がこちらに向かって走ってくるのを見つけた。
「…トニーじゃない。またなにかやらかしたのかしら」
 村でも屈指のいたずら小僧であるトニーには、かがみも少し手を焼いていた。
「あ、いた!兎のねーちゃん!大変だよ!」
 トニーはかがみを見つけると、大声でそう言いながら駆け寄ってきた。
「…兎は止めてって言ってるのに…ってかわたしに用だったのか」
 かがみはため息をつきながら足を止めた。
「探してたんだよねーちゃん!ついさっき、村の前で行き倒れを見つけたんだよ!」
 自分の前に立ちそうまくし立てるトニーに、かがみが首をかしげた。
「行き倒れ?それは確かに大変だけど…なんでそれでわたしを探すの?」
「そいつの格好がさ、ねーちゃんが麦畑で倒れてた時と同じやつなんだよ!あのピンクの変な服!」
 トニーがそういい終わるや否や、かがみはトニーの両肩をがっしりと掴んだ。
「どこ!?その行き倒れはどこにいるの!?」
「…ア、アシュレーにーちゃんの家…だけど…ねーちゃん痛い…ってか怖い…」
 肩に指を食い込ませ、額がつきそうなくらいに間近にせまったかがみに、トニーは冷や汗を垂らしていた。



 こなたは皿に残ったパンの最後の一切れを口に放り込むと、コップに入った水を一気に飲み干し、空になったそれをテーブルの上において大きく息をついた。
「…ふー…助かったー…」
「いや…よく食べたね…」
 テーブルの向こう側にいた青年が、こなたを見ながら苦笑いを浮かべた。
「はあ…なんせ、遺跡を出てからすぐに砂獣に襲われて、食料も水も台無しにして、飲まず食わずで夜通し歩いてここまで来たものですから…いや、ほんと助かりました」
「あの荒野を飲まず食わずって凄いな…」
 青年はこなたが食い散らかした皿を片付けながらそう呟いた。
「あ、そうだ。ちょっと聞いていいかな?」
 そして、何か思い出したようにそう聞いた。
「はい、なんでしょ?」
「柊かがみって、もしかして君の知り合い?」
 まさか急にその名前が出てくるとは思わず、こなたは驚きで固まってしまった。
「…え…かがみ?」
 かろうじてそう呟くと、青年は満足そうに頷いた。
「やっぱり知り合いだったか。君の着てるそのセーラー服、かがみちゃんも着てたんだよね。まったく同じものだから、もしかしたらって思ったんだけど」
「かがみ…かがみがこっちの世界に…」
 こなたがそう言いながらうつむくのと、部屋のドアが勢いよく開かれたのはほぼ同時だった。こなたがそちらを見ると、そこにはほぼ一日ぶりに会うかがみの姿があった。
「…あ…あぁ…ホント…ホントに…」
 かがみは体を震わせて、目には涙を溜めていた。
「え、えっと…かがみ?」
 様子のおかしいかがみにこなたは少し戸惑っていたが、とりあえず近況を聞こうと近づこうとした。
「こなたぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
 しかし、それより早く遺跡で戦ったボス狼もかくやといった速度で、かがみがこなたに抱きついた。

「あははははっ!こなただ、こなただっ!ホントにこなただぁっ!!」
 そしてそのままもつれ合って床に倒れ、かがみはこなたを抱きしめたままゴロゴロと床を転がった。
「ちょ、ま、かが、み、おち、つ…頬ずりすなーっ!」
 そんな二人の様子を見ていた青年は、一つ頷くと部屋のドアに手をかけた。
「じゃ、俺は邪魔みたいだから…」
「待ってーっ!助けて!かがみんなんとかしてーっ!」
 その青年の背中に、こなたは必死で助けを求める。
「いや、なんとかしてって言われても…」
「ちょっと、アシュレー!埃が落ちるから暴れないでよ!」
 青年がどうすべきか迷っていると、階下から女性の怒鳴り声が聞こえてきた。
「…俺じゃないんだけど…ああ、もう…くそっ」
 青年は悪態をつくと、とりあえず床を転げ回っている二人を取り押さえにかかった。



 数分後。なんとか落ち着きを取り戻したかがみとふらふらしているこなた、憮然とした表情の青年がテーブルについていた。
「…すいませんでした…嬉しくてつい…」
 しばらくの沈黙の後、顔も真っ赤にして身を縮ませているかがみがそう言った。
「うん、まあ落ち着いたのならいいけど…この子はかがみちゃんの知り合いでいいんだよね?」
 青年がこなたの方を見てそう言うと、かがみは顔を上げて頷いた。
「はい。泉こなたっていって、わたしの友達です」
「君が元居た世界の?」
「はい」
 別世界の住人だと理解されてるなら話は早いな…と、こなたは二人のやり取りを見ながら思った。
「で、こなた。この人はアシュレー・ウィンチェスターさん。この家の一階のパン屋を奥さんと二人で切り盛りしてるの」
 かがみがそう言うと、こなたはアシュレーのほうを向いて軽く頭を下げた。
「改めてよろしく…で、アシュレーさん。早速悪いんですけど、席を外してもらえます?かがみとちょっと話がしたいんで…」
 こなたがそう言うと、アシュレーは首をかしげた。
「それは、俺には聞かせられないことなのかい?」
「ええ、まあ…ちょっとプライベートなことなんで」
「そうか…じゃあ、俺は店の方に降りてるよ」
 アシュレーはそう言いながら席を立ち、そのまま部屋を出て行った。こなたはアシュレーが階段を下りていく音を確認すると、かがみに向き直った。
「えーっと、色々聞きたいんだけど…とりあえず、さっきのはなに?」
 こなたがジト目でそう聞くと、かがみは思わず視線を逸らしてしまった。
「い、いやだから嬉しくてつい…知ってる人に会うの二ヶ月ぶりだったし…」
 かがみのその言葉に、こなたは目を丸くした。
「二ヶ月?ちょ、ちょっとまってかがみ。二ヶ月って何?」
「に、二ヶ月は二ヶ月よ。わたしがこの村の麦畑で目を覚ましてから、大体そのくらい経ってるのよ…」
 こなたの狼狽振りに、かがみが戸惑いながらそう答えた。こなたはしばらく唖然とした後、顎に手を当ててうつむいた。
「…わたしがこの世界で目を覚ましたの、昨日なんだよ」
「…え」
 ポツリと言ったこなたの言葉に、今度はかがみが唖然とした。
「かがみ。元の世界に居た最後の日が何日か覚えてる?」
 顔を上げたこなたがそう聞くと、かがみはコートのポケットからボロボロになった生徒手帳を取り出した。
「…この日よ」
 その中のカレンダー。そこに付けられた丸印を指す。それを見たこなたの眉間にしわがよった。
「わたしもその日が最後だよ…ってことは、全然別の時間に飛ばされたってことなのかな…」
 二人してしばらく考え込んでいたが、こなたが急に何か思いついたように手を叩いた。
「そうだ、コレ聞いとかなきゃ…かがみ。元の世界でさ、授業中に居眠りしなかった?で、おきたらこっちの世界に居たって感じだと思うんだけど」
「…うん、その通りよ。前の晩はしっかり寝たはずなんだけど、なんでか急に眠くなって…そのときの事は、はっきり覚えてるわ…っていうか、元の世界のこと忘れないようにしてたから…」
 そう言いながら項垂れるかがみに、こなたは困った顔をした。

「よく考えたら、浮かれてる場合じゃないのよね…こなたまでこっちに来ちゃったんだし」
「うん、まあそうなんだけど…最悪、つかさとみゆきさんもこっちに来てる可能性もあるし」
「え、それどういうこと?」
「わたしが寝る前にね、つかさとみゆきさんも眠そうにしてるの見えたから。つかさはともかく、みゆきさんが居眠りなんて普通じゃないし」
「そう…ね」
 またしても二人して沈黙してしまう。問題やはっきりしないことが増えていくだけで、喜べそうな要素が何一つ見当たらないからだ。
『そろそろ喋っていいかな?』
 そんな中で、アガートラームが我慢し切れないといった感じでそう言った。
「…あ、忘れてた」
『…ひどいなあ…人前では迂闊に喋るなって言うから、我慢してたのに』
「…え…ARMが喋った?」
 ホルスターから抜いたアガートラームと会話し始めたこなたを見て、かがみは唖然とした。
「ああ、やっぱかがみも驚くんだ…ってか、かがみはこの世界で目を覚ましたときに、近くにこういうのなかったの?」
「あったけど…喋りはしないわよ」
 そう言いながら、かがみはコートの内側から剣型のARMを取り出した。
「これだけど…」
『形式番号A-ARMS02。名称はナイトブレイザーだよ』
 かがみのARMを見たこなたが何かを言う前に、アガートラームがそう言っていた。
「相変わらず、名前だけはわかるんだね」
『わかるというか、思い出した…あと機能が一つ回復したよ』
「なに?アクセラレイターみたいなの?」
『いや、他のA-ARMSを感知できるようになったみたいだ』
 アガートラームの言葉に、こなたは嬉しそうに手を叩いた。
「そりゃラッキーだよ。わたしもかがみも持ってたって事は、つかさやみゆきさんも同じの持ってる可能性があるんだし、こっちの世界に来てるなら探しやすくなるよ…ね、かがみ」
 こなたはそう言いながらかがみのほうを見たが、かがみは自分のARMをじっと眺めたままだった。
「…かがみ?」
「え?あ、そ、そうね…それは助かるわよね」
「…なにしてたの?」
「え…いや…わたしのも喋らないかなって…」
 照れくさそうに頬をかくかがみに、こなたはため息をついた。
「で、近くに反応はあるの?」
 そして、アガートラームにそう聞いた。
『あるね。ここよりもうちょい西かな』
 それを聞いたこなたが、ロディにもらった地図をテーブルの上に広げた。
「えっと、今いるのは…」
「ここね」
 その地図に描かれている一つの大陸。その南東の方に、かがみが持っていたペンで丸を付けた。
「で、ここから西ってことは…可能性の高いのはここ」
 そして、そこから少し西にある、何かのマークに丸を付ける。
「ここには、アーデルハイド公国って結構大きな城下町があるらしいわ」
「へー…かがみは行ったことあるの?」
「ないわ。この村から出たこと無いから…なんかゴタゴタがあって、治安が悪いようなこと聞いてるしね」
「そっか…でも行かないとダメかな…かがみはどうするの?」
 こなたの質問にかがみは不満気な顔をした。
「どうするって、なによ?」
「ここに二ヶ月いたんでしょ?離れがたいんじゃないかなって…」
「怒るわよ。ここに居ついてるのは他に行く当てが無かったからよ。つかさやみゆきがどっかにいるかも知れないってわかったんだから、行くわよ」
「…うん、わかったよ」
 かがみの答えに、こなたはホッとした表情を浮かべた。

「でも…ちょっと問題があるわね」
「問題?」
「ゴブって砂獣よ。わたしがここに来た時くらいに、村の近くにアジトを構えたのよ。村をしょっちゅう襲ってくるから、わたしが用心棒みたいなことしてるのよ。今この村にいてる渡り鳥はわたししかいないから、どうにかしないとね…」
「そっか…ってか、かがみ渡り鳥やってるんだ」
 こなたは遺跡で会った二人組みのことを思い出していた。
「やってるっていうかそうなってるっていうか…渡り鳥ってのは砂獣と渡り合えるような戦闘能力持ってる何でも屋の総称みたいね」
「ああ、そうなんだ」
「こなたはこっちの世界のこと、あんまり知らないみたいね。その銃が教えてくれなかったの?」
「残念ながら銃の癖に記憶喪失のポンコツなもんで」
『ポンコツいうな』
 かがみはこなたとアガートラームのやりとりに苦笑すると、椅子から立ち上がった。
「あんまり長くいるとアシュレーさんに悪いから、あとはわたしの部屋で話しましょ」
「あ、そうだね…ってかそういうとこあるなら、最初からそっちの方がよかったのに」
 こなたもアガートラームをホルスターに収めて、椅子から立ち上がった。
「言い出す暇なかったのよ…ああ、そうだ。先に仕立て屋さんに行こっか。アンタの服どうにかしないとね」
 かがみにそう言われ、こなたは自分の着てる服を見下ろした。着ているセーラー服はあっちこっち砂と埃にまみれ、ところどころに穴が開いている。スカートにいたってはスリットのように縦に裂けている部分があった。
「…確かに、冷静に見てみるとわたしやばい格好してるね」
 こなたの呟きに、かがみは思わず吹き出していた。



 こなたとかがみが階段を下りると、店のカウンターに座っていたアシュレーが立ち上がって二人の方に近づいてきた。
「話は終わったのかい?」
「ええ、大体は…」
 かがみがそう答えると、アシュレーはパンの入った紙袋をかがみに差し出した。
「これ、いつもの。今日はまだ何も食べてないんだろ?」
 紙袋を受け取りながら、かがみはお腹が減ってることを思い出し、照れくさそうに頬をかいた。
「いつもすいません…じゃあ、わたし達はこれで…こなた、行くわよ」
 アシュレーに代金を渡した後、かがみはこなたの方を見た。
「…なにしてるの?」
「え、いやちょっとね…」
 こなたは店の奥の壁を眺めていたが、かがみに呼ばれて店の出入り口のほうに小走りに向かった。

「こっちの世界にもヤキソバパンってあるんだね…」
「あのパン屋さんの名物なのよ。美味しいからいつも注文してたら、もう店に行く前からアシュレーさんが用意してくれるようになっちゃって…」
 こなたとかがみは、仕立て屋に向かう道をパンを食べながら歩いていた。
「荒野歩いてるときは、大変な世界来ちゃったって思ったけど、この村見てるとそうでもないのかな」
 こなたが道端で談笑している村人を見ながらそう言うと、かがみは少し難しい顔をした。
「うーん、この村は立地がいいからね…森の近くだし、水源もあるし…小麦の名産地だから、他の町から行商人も結構来るのよね」
「…なるほど、それでパンが美味しいんだ」
 こなたはヤキソバパンにかぶりつきながら、納得したように頷いた。
「そういや、こなた。お店でなに見てたの?」
「え…ああ、なんか壁に変わった銃が飾ってたからさ、気になって」
 よく映画で見るようなボルトアクションのライフルに銃剣が付いている…というより、両手剣にライフルが取り付けられてると言った方が正しいくらいに巨大な刃の付いた銃をこなたは思い出していた。
「アレね…アシュレーさんが渡し鳥やってた時に使ってたARMらしいわ」
 そう答えながら、かがみは眉間にしわを寄せた。
「アシュレーさん、もう戦えないって言ってたから、アレもただの飾りになってるのよね…」
「そうなんだ。渡り鳥やめたのって怪我とかなのかな」
「さあね…そう言う話になると、あの人黙っちゃうから」
 かがみは食べ終わった紙袋を丸め、コートのポケットに突っ込んだ。
「…トニー」
 そして、前方で一軒の民家のドアにへばりついているトニーを見つけて、ため息をついた。
「こらトニー、わたしの家の前でなにやってるの」
「うえっ!?」
 背後からかがみに声をかけられて、トニーは飛び上がった。
「あ、兎のねーちゃん…はは、な、なんでもないよ…」
「無茶苦茶態度あやしいわよ…っていうか兎はやめなさい」
「あ、そっちのちびねーちゃん。やっぱ知り合いだったのか?」
 かがみに詰め寄られたトニーは、かがみの後ろにいるこなたを見つけ、話をそらそうとそう言った。
「そうよ、わたしの友達よ」
「よかったじゃん、兎のねーちゃん」
「…兎はやめろって…ってかアンタわざとでしょ?」
「渡り鳥に二つ名はつきもんだって…それじゃーね!」
 そう言いながら、トニーはかがみの隙を付いて逃げ出した。
「あ、こらトニー!…まったく、あいつは…」
 逃げて行くトニーの背中を見ながら、かがみはため息をついた。
「ねえ、かがみ」
 そのかがみの背中から、こなたが声をかける。
「ん、なにこなた?」
「わたしのちびねーちゃんは分かるんだけど、かがみの兎のねーちゃんってなに?」
「え…あーそれは…」
 かがみは少しうつむいて顔を赤らめた。
「…この世界来てから、渡り鳥の仕事頑張ってたら、いつの間にかクニークルスって二つ名が付いちゃって…」
「クニークルス?なにそれ?」
「…真面目兎…って意味らしいの…」
 かがみの答えに、こなたは腹のそこから爆笑した。
「ちょ、ちょっと笑わないでよ!」
「ぴったりじゃん、かがみ。今度からわたしもそう呼ぶよ」
「や、やめてよー。アンタに言われると余計恥ずかしいわよー」
 かがみは笑い続けるこなたに文句をいいながらも、久しくなかった感覚に少しばかり喜びを感じていた。



― 続く ―




次回予告

またかがみです。
つかさとみゆき。
この世界に来てるかもしれない二人を探しに出るために、わたしとこなたは村に残された問題を無くすために、ゴブのアジトへと向かいます。

次回わいるど☆あーむず第四話『誰のために』

渡り鳥だけに、立つ鳥跡を濁さずってことね。


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