ID:XDze6oSO氏:二人のツンデレ

某日某所。つかさの控室。
「ほい、つかさ。これ台本ね」
「う、うん…」
 つかさはこなたから薄い冊子を受け取ると、小さくため息をついた。
「…うまくできるかなあ?」
「だいじょぶだいじょぶ。かがみの真似すればいいんだよ」
 肩を叩きながらそういうこなたに、つかさは黙って頷いた。

 一方そのころ、いずみの控室。
「…なんでわたしなんでわたしなんでわたしなんでわたしなんでわたし…」
 椅子に座って頭を抱えたいずみが、ぶつぶつと呟いていた。
「ご指名があったからなんだけど…が、頑張って若瀬さん」
 その傍らに立つゆたかが、困った顔で励まそうとしていた。
「…あー、ところで小早川さん」
「な、なに?」
「この台本書いたの、小早川さん?」
「え、違うよ。わたしの伯父さんが書いたんだけど…」
 親戚。確かこの前制服で学校に来た卒業生も、この子の従姉妹だったはず。
 いずみはそのことを思い出し、この一族には関わらない方が良いのではないかと思っていた。



- ツンデレをさせてみよう -




~つかさ編~


 太陽を完全に遮る黒い雲。町並みが霞むほどの大降りの雨。俺は学校の玄関口から、うんざりとそれを眺めていた。
「…まだいたんだ」
 後ろの方から、そう女の子の声が聞こえた。
 俺がそっちを向くと、同じクラスの柊つかさが靴を履きかえ、こちらに向かってきた。
 そして俺の隣に並び、空を見上げた。
「帰らないの?」
 柊は空を見上げたまま、俺にそう聞いてきた。
「帰れるかよ。傘忘れたんだよ」
「ふーん…」
 俺が答えると、柊は興味なさ気に呟いた。興味ないなら聞くなよ…。
「濡れて帰れば良いのに。男の子ってそういうの気にしないんでしょ?」
「限度ってもんがあるだろ。こんなんじゃ、風邪ひいちまう」
 他人事だと思ってとんでもないこと言うな。
「堂々と学校休めるんだからいいじゃない」
「いいわけないだろ」
 俺はため息をつきながら柊の方を見た。女の子には明らかに不釣り合いな、男物の大きな傘を両手で抱えている。
「お前はどうなんだよ。傘持ってるから帰れるだろ」
「…関係ないでしょ」
 …そうかよ。

 しばらく二人して無言で立っていると、柊が持っていた傘を開いた。どうやら帰る気になったらしい。
 それにしても大きな傘だ。俺がぼーっとそれを眺めていると、柊は睨むような目付きで俺を見た。
「…持ってよ」
 そして、そう言いながら傘の柄を俺に押し付けてきた。
「…は?」
 思わず間抜けな声がでた。
「この傘、重いから。疲れるの」
 それはそうだろうけど…。
「だったらもっと小さな傘を…」
「いいから」
 俺の言葉を遮って、柊はさらに強く傘を押し付けてきた。
「…わかったよ」
 仕方なく俺は柊から傘を受け取った。それにしてもでかい傘だ。俺は男にしては小柄なほうだから、少し持ちにくい。
 ふと隣を見ると、いつの間にか柊が傘の下に入っていた。なんと言うか…いわゆる相合い傘状態だ。
 しばらくその状態が続いた後、柊は急に歩きだし、雨に打たれて慌てて傘の下に戻ってきた。
「なんでついてきてくれないの」
 少し涙目になりながらそう言って俺を睨みつける柊。
「急すぎてわかるかよ…」
 俺の言い分に、柊は頬を膨らませ、また歩きだそうとした。俺はまた柊が濡れないように、それに合わせて歩きだした。

 傘を打つ雨の中を二人で歩く。俺も柊も無言だ。
「…偶然…だからね」
 そんな中、柊はぽつりとそう呟いた。



「…はー、終わったー」
「つかささん、お疲れ様です」
 控室に戻ってきたつかさに、待機していたみゆきが冷たいお茶の缶を差し出した。
「ありがとう、ゆきちゃん…んー…ねえ、ゆきちゃん。一つ聞きたいんだけど」
「はい、なんでしょうか?」
「あの男の子って誰?高校の時のクラスメートとかじゃないよね?」
「ふふ、お気づきになりませんでしたか?あの方はかがみさんですよ」
 みゆきの答えに、つかさはポカンと口をあけた。
「…うそー…全然わかんなかったよー」
 そう呟くつかさを、みゆきは可笑しそうに眺めていた。





~いずみ編~


 目の前のプリントに必要な事柄を書き込みながら、僕は机を挟んで向かい側に座る女の子をちらっと見た。
「なに?わからない事でもあるの?」
 すぐに気付かれ、僕は慌てて視線をプリントに戻した。
 彼女は若瀬いずみさん。僕のクラスの委員長だ。
 放課後、僕はなぜかその若瀬さんにクラス委員の仕事を手伝わされていた。
 副委員長が休んでるからだってのはわかるんだけど、なんで僕が…。
「…はい、これもお願いね」
 僕の側にプリントの束が積み上げられる。
「ええ、ちょっと待ってよ。まださっきの終わってないよ」
 思わず不満を漏らす僕を見て、若瀬さんが大袈裟にため息をついた。
「だったら早く終わらせる。わたしのペースに追い付かないなら、どんどん貯まっていくわよ」
 なんかこう…理不尽だ。

 お互いのシャーペンの音だけが教室に響く。
 若瀬さんの方を見てみると、作業が終わったのか暇そうにシャーペンを回している。僕の方には積み上げられたプリント。終わったのなら手伝って欲しいなあ。
「…まだ?」
 若瀬さんがそう聞いてきたけど、答えてる余裕なんかない。

 ようやく最後の一枚を書き終え、そのまま僕は机に突っ伏した。
「時間かかりすぎよ。もう日が落ちそうじゃない」
 プリントを揃えながら、若瀬さんがそう言ってきた。
「…予定が狂っちゃったわ」
 その言い草に、さすがに少し腹がたった。
「だったらもうちょっと仕事の出来る人捕まえてよ。僕じゃなくてさ」
 僕の言葉に、若瀬さんは少し淋しそうな表情を見せた。
「…ごめん」
 そして、呟くようにそう言った。
 まさか素直に謝られるとは思ってなかったので、僕が面食らっていると、若瀬さんは机の上にラッピングされた小さな箱を置いた。
「ホントはね、仕事終わらせてからもうちょっと雰囲気の良いところで渡そうと思ってたんだけど…」
 僕はわけがわからず、箱と若瀬さんを交互に見ていた。
「…今日、誕生日」
 そんな僕を指差しながら、若瀬さんがそう言った。
「あ…」
 そう言えば、そうだっけ…じゃあ、この箱は…。
「へ、返品は受け付けないから…そ、それじゃまた明日ね」
 プリントを鞄に詰め終えた若瀬さんが、慌ただしく教室を出ていく。
 僕はそれを、何も言えずに見送っていた。




「…あー…終わった」
「…お疲れ様」
 いずみとみなみが連れだって控室に入る。
 いずみはそのまま椅子に座りこみ、みなみは帰る準備を始めた。
「いや、しっかし…相手が岩崎さんってわかっててもドキドキしたわー」
「…そう?」
「うん。岩崎さん普通にカッコイイしね」
「う…そ、そう…」
 みなみの反応にいずみは苦笑して、椅子から立ち上がりみなみの側にいった。
「ごめんごめん。やっぱり女の子だし、可愛いとかの方が言われたいよね」
「…え、えっと…別にそういうことじゃ…」


「イズミ×ミナミ…どーですかヒヨリ?」
「いや、なかなかアリなんじゃないかと…」
「…ヒヨリはナンでもアリですネ」
「えっ…い、いやそんなことない…と、思う…んだけど………自信ない」





数日後。

「ねえ、こなた…」
「ん、なにかがみ?」
「その…なんかつかさを見てるとドキドキするんだけど…なにか病気かな…?」
「…え、えっと…まあ、病気と言えば病気かな…草津の湯でも治らないとか、そんな感じの…」


「ね、ねえ田村さん」
「若瀬さん?どうかした?」
「な、なんか小早川さんにずっと睨まれてる気がするんだけど…」
「…なんスか、そのトライアングラー…」



- おしまい -


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  • お医者様でも草津の湯でも恋の病は治せねぇ
    (必殺仕事人Ⅴ オープニングナレーションより) -- 名無しさん (2010-05-07 20:34:53)
  • その発想は無かったわwwww
    その内ゆたかが空鍋でもやりそうで怖いんですがwww -- 名無しさん (2010-05-07 20:31:51)
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