ID:Cb.9n6Q0氏:呪縛(ページ2)

 沈黙が続いた。もう喋ってもいいのかな。名前くらいなら言っても問題よないよね。
つかさ「ゆきちゃん」
何の反応がない。
つかさ「ゆきちゃん?」
私は振り返った、そこに居るはずのゆきちゃんが居なかった。ドアの開閉の音もしなかった。まるで消えたみたい。消えた?。
そういえばゆきちゃん、三つ目のペナルティ言ってなかった。まさか三つ目のペナルティって本の事を話すと消えちゃう……。
急に恐ろしくなった。私はこんな事も知らないでおまじないをしてしまった。でも、あの時の私はこの事を知っていたとしてもおまじないをしていた。
おまじないなんて気休めみたいなもの、私はそう思っていた。ゆきちゃんだってきっとそう思ったから注意書きを読んでいてもおまじないをした。そうに違いない。

 こなちゃんは怪我と不治の病、ゆきちゃんは消えてしまった。これからお姉ちゃんにもなにか起きるかもしれない。ゆきちゃんは三つ目のペナルティで自分が消
えてしまうのを知ってて私におまじないの解き方を教えてくれた。ゆきちゃんは私に全てを託した。
ゆきちゃんが出来なかった事を私が出来るかな……。体がガタガタと恐怖で震えた。
ゆきちゃんは言った。もう後戻りできない。今、私が諦めたらゆきちゃんもこなちゃんも二度と会えない。もうやるしかないんだ!。
私はこれからこなちゃんの所にお見舞いに行く予定だった。でも、私は隠すのが苦手。こなちゃんに会えばちょっとしたことでおまじないの事を言ってしまうかも。
おまじない、違う、呪いを解くなら今しかない。

 私は自習室から出て誰にも会わずに直接家に帰った。家には誰もいなかった。都合がいい。部屋から呪いに使った紙を取り出し庭に向かった。
私は紙に火を点けた。火は瞬く間に燃え広がった……。

 気が付くと私は教室に居た。お姉ちゃん、こなちゃん、ゆきちゃんが私の席を囲うように立っていた。
かがみ「つかさ、何してるの帰るわよ」
こなた「ボーとしちゃって、置いていっちゃうよ」
いったい私はどこまで戻ったんだろう。ゆきちゃんは願いが叶う直前に戻るって言ってた。ふと黒板の日付とカレンダーを見た。
二年生の二月……。なんだもうこんなに早くクラスって決まっちゃうのか。
かがみ「つかさ!、聞いているの」
叫ぶように私を呼ぶ。私はゆっくり目を閉じて答えた。
つかさ「みんな、先に帰って、私はちょっと用があるから」
こなた「ちょっと用?、つかさ怪しいな、卒業生にこ・く・は・くじゃないの」
いつものこなちゃん、私をからかっている。まつりお姉ちゃんの事を思い出す。ここで本の事を言ってしまったら水の泡。
つかさ「想像にまかせるよ……」
意外な反応だったのか、こなちゃんはそれ以上私に何も言ってこなかった。

 その時だった。
みゆき「泉さん、かがみさん……」
二人の名前を呼ぶといきなり泣き出した。大粒の涙を、声を出して泣き出した。
こなた「ちょ、みゆきさん、いきなりどうしたの」
こなちゃんが慌ててゆきちゃんの元に駆け寄った。
かがみ「……、こなた、あんがあんな事言うから、昔の事を思い出したんだわ、みゆき……」
こなた「……ごめん、まさかみゆきさんが失恋……」
かがみ「ばか、何も言うな、こうゆう時は何も言わない……」

 お姉ちゃんはゆきちゃんをそっと抱き寄せた。ゆきちゃんは更に激しく泣き出した。感情を露ににしたゆきちゃん。
そういえば突然泣きだんだ。この状況を見て思い出した。こなちゃんは恋愛ゲームの話題を私としてたんだった。
こなちゃんと私の会話で泣き出した。私もそう思っていた。でもそれは違う。ゆきちゃんは呪いを解いて戻ってきたんだ。私と同じなんだ。
ゆきちゃんの呪いでこなちゃんとお姉ちゃんは亡くなった。お姉ちゃんとこなちゃんとの再会に感激した涙だったんだ。

 本当の事を言えないでただ泣いているゆきちゃん、呪いはまだ解けてない、ゆきちゃんの涙が私をそう実感させた。
今のゆきちゃんは私も呪いを解いていることを知らない。そして私が呪いを受けたことで知った本の秘密も知らない。
自分を犠牲にしてまで私に教えたのはこの為だったんだ。そして私が復活させるって信じてくれた。

 泣き止まないゆきちゃん、これからこなちゃんの提案でゲームセンターに気晴らしに行くはず。
ゆきちゃん、後は私に任せてゆっくり楽しんでね。私は皆に気が付かれないようにそっと教室を出た。そして図書室に向かった。

 そいえば、私はこの数日後にあの本を見つけたんだった、クラス替えが決まっているのにあんなおまじないをしたのか……この本、おまじないの
どころのレベルじゃない、既に決まったことさえ変えることもできる強力な力をもってるんだ。でもその為に誰かが犠牲になるならこんな本は要らない。
呪いを解く前に戻っても記憶が残る。普通ならこれで本と関わりたくなくなる、更にその本は別の本に見えるために見つからない。
この本はこうやって今まで誰にも燃やされなかった。しかも本の事を話すと本人が消えちゃうなんて、この本を作った人の意地悪さに怒りを覚えた。
ゆきちゃんの為にもぜったいに本を燃やしてみせる。

 図書室に着くと私は本棚に向かった。そう、あの呪いの本があった本棚。覚えている。しかしその本棚には別の本が置かれていた。
私はその本を手に取った。タイトルは……英語で書かれていて読めない。
(だまされないよ)
心の中でそう本に言った。ゆきちゃんはこの事を教えるために……本を持って図書室を出ようとすると。出入り口が受付になっている。
勝手に本を持ち出したらきっと図書委員の人に何処に持っていくって聞かれる。なんて答える?。本を燃やすなんていえる訳がない。
どうする?。この本は私が探してる時……あっ、そうだ、疑われずに本を持ち出す方法を思いついた。私は受付に向かった。
つかさ「すみません、借りたいのですが」
図書委員1「はい、それでは本を……この本は貸し出し禁止ですね、すみませんがお貸しできません」
こうくると思った。
つかさ「どうしても借りたいんだけど、韓国語が読めなくて家で調べながらでないと……」
おまじないの本の事を話さなくても聞くことはできる。わざと違う本の事を言えばいい。
図書委員1「韓国語?、この本は日本語で書いてありますけど……」
やっぱり、この本の正体を確信した。……。私とのやり取りに気が付いた別の係りの人が近寄ってきた。
図書委員2「すみません規則なんで借りられない……あれ、この本、管理番号がないぞ」
図書委員1「あっ、本当だ、どうしてだろう、少しお待ちください」
二人はあちらこちらの帳面を引っ張り出して調べ始めた。暫く私は待った。呪いの本を追い詰めている。もう少し。
図書委員2「管理番号が無いので本のタイトルから調べたのですが、図書室で登録されていないんですよ、全部登録されているはずなんですが」
図書委員1「先生に確認とったよ、最近外から本を勝手に持ち込んで置いていく生徒が増えているから、悪戯かなにかでしょって」
思った通りの反応だった。私は透かさず切り出した。
つかさ「それじゃ、この本、持って帰っていいよね」
図書委員1「別に構いません」
本を鞄にしまって図書室を出た。
(捕まえた、もう逃げられないよ、そうやって何人も人を不幸にしてきた、その報いを受けてもらうからね、覚悟しなさい)
また心の中で本に言った。

 家に帰ると庭で早速焚火の準備をした。もう少ししたらお姉ちゃんはこなちゃん達を連れて帰ってくる。
皆が来る前に終わらそう。枯葉に火を点けた。焚火は勢い良く燃え出した。
つかさ「さあ、呪縛を解かせてもらうよ」
私は本を焚火に放り投げた。火は直ぐに本に燃え移った。パチパチと音をたてて本は燃えていく。

 周りが薄暗くなった。気が付くと炎が氷のように固まっている。周りを見渡すと、雲が、飛んでいる鳥が、外を歩いている人が写真のように止まっていた。
???「やっと呪いが解けた……ありがとう」
後ろから声がしたので振り向いた。そこにはローブのような物を着た女の人が立っていた。
つかさ「だれ?」
???「その昔、悪い魔法使いにこの本に封印されてしまった妖精、私は六千年の間この日が来るのを待っていました、エジプトで封印された時は、
     皆、私を呪いから助けてくれようとしてくれた、しかし誰も呪いを解く事はできなかった、次第に本は忘れ去れて……
     シルクロードを渡り、人から人へと流れ、この辺境の片隅にある学校の小さな図書室に置かれた……永かった……」
つかさ「妖精……さん?、封印されてた?」
妖精「この本は私を封じ込める為に作られたもの、しかし人々は封印の事を忘れ、呪いの効力だけを求めるようになった、だからこの本は一つの場所に留まらず、    
    流浪の旅を続けました、ある人はこの本によって苦しみ、ある人は人を呪う為に使用した、時の権力者が使った事もありました、
    私はそれをただ見ていなければならなかった、この本に封印されてる呪いは強力です、ただ燃やしただけでは直ぐに復活してしまい
    封印を解くことはできない、封印を解くには呪いを分散すること、
    高良みゆきと柊つかさ、この二人に魔力が分散した為に本に火が移り、封印が解くことがでた」
つかさ「二人?、私とゆきちゃん……」
妖精「そうです、見事でした、真実を見抜く目、それを受け継ぐ素直な心、そして、実行する勇気を持った二人が居なければこの封印は解けなかった」
そんな事を言われても少しも嬉しくなかった。私は今までの怒りをぶつけた。
つかさ「その為に、こなちゃん、ゆきちゃんが酷い目にあったんだよ、お姉ちゃんだって、何より私は……こんな事したくなかった」

妖精「それはすみませんでした、この本の呪いを受けた全ての人間に謝ります、でも、心配は無用です、私がここを去り、呪いの本が燃え尽きれば
    この呪いの本に関わる全ての記憶が消えます、今までどおりの生活にもどれます、どうでしょう、私が去る前に貴女のその勇気を称えて
    一つだけ願いを叶えてあげます、もちろん呪いはありませんでご安心を」
つかさ「私だけ?、この呪いは二人じゃないと解けないんでしょ?、ゆきちゃんはどうするの?」
妖精「先ほど彼女の願いは聞いています」
いつの間に……、願いを一つ、か、何がいいかな。そういえばこなちゃん不治の病だった。元に戻ったこの世界でも病気になっちゃったら困るよね。
つかさ「こなちゃんの病気って本のせいだったんだよね?」
妖精は笑みを浮かべた。
妖精「なるほど、高良みゆきは柊かがみの病気を治してくれと言っていました、その願い叶えましょう」
つかさ「叶えるって、二人の病気は呪いじゃなかったの?」
妖精「本来、あの呪いで泉こなたと柊かがみは憎しみあって最終的にどちらかがどちらかを殺すはずでした、しかし二人の絆が強かったので、
    呪いは二人の関係を断ち切ることができなかった、呪いが効かなければ本の封印も解ける裏技です、こんな事はないと思っていました、
    二人の病気がなければ本の呪いを解いたのは泉こなた達が先だったかもしれません、いい仲間に出逢いましたね、しかし気をつけて下さい、
    強い絆は一歩間違えると悲劇になることを……話が長くなりました……忘れなさい、この本の関わることの全てを、そして、
    封印を解いたことにより開かれた新しい道を歩みなさい、貴女達にはその資格がある」
なんだろう、意識が遠くなっていく気がした。でも、ゆきちゃんにお礼を言わないと……
つかさ「みんな忘れちゃうとお礼が言えなくなっちゃう」
妖精「私との会話は……感情として残ります……貴女次第……貴女なら……」


かがみ「つかさ、つかさ、おーい、つかさ」
つかさ「あっ、お姉ちゃん、どうしたの?」
かがみ「どうしたの?、は私が聞きたいわよ、何やってたのよ」
つかさ「えっと、焚火……、そうそう、焼き芋も作ったんだけど食べる?」
こなた・みゆき「お邪魔します」
つかさ「あ、こなちゃん、ゆきちゃん、いらっしゃい」
みゆき「つかささん、何か学校で用事があったのでは、私達より早いお帰りですね」
つかさ「用事?、そんなのあったかな?、それよりゆきちゃん、泣いていたけど大丈夫なの」
みゆき「泣いていた?そんな事ありましたか?」
こなた「みゆきさんはふられたんだよ、悲しい恋物語……」
かがみ「こなた、見てきたような事は言わない方がいいぞ」
こなた「フラグが立ったと思って」
かがみ「また現実と幻想を一緒にして」
こなた「そんな事言うけどつかとみゆきさんの会話も幻想みたいで……」
私は二人の間に割って入った。
つかさ「お姉ちゃん、こなちゃん、喧嘩しないで、はい、焼き芋できたよ」
私は皆に焼き芋を配った。皆は熱い焼き芋で手を温めた。
みゆき「寒い日は、このような食べ物が温まります」
焚火にあたりながら私達はお喋りをした。普段と変わらない普通の話なのにとても楽しく感じた。

かがみ「もう二年生も終わりね、三年生のクラス替えどうなるかしらね」
こなた「またかがみだけ別のクラスだったり」
みゆき「そうですね」
つかさ「そうかも」
かがみ「……皆、なんだよ、いいわよ、どうせ私はのけ者ですよ」
私達は笑った。お姉ちゃんは少し不機嫌そうな顔をした。
つかさ「ゆきちゃん、ありがとう」
みゆき「どうしたのですか、急に改まって」
自然に出た言葉だった。何でだろう私も分からない。不思議そうにゆきちゃんは私を見つめた。
つかさ「なんとなく言いたくて、悪かったかな?」
みゆき「いいえ、全然構いません、こちらこそ、ありがとう」
こなた「何二人とも、意味無くお礼いってるんだよ、さっきの会話といい、おかしいよ」
つかさ「そうだね、意味無くお礼はおかしいね」
みゆき「そうですね……」
何か分からないけどとても幸せな感じがした。この感情を皆にも分けたくなった。
つかさ「これから、カラオケ行かない?、三年生になったらもう行く機会少なくなるし、どうかな?」
こなた「つかさから誘われるなんて滅多に無い、いいよ賛成」
みゆき「賛成です」
かがみ「私は……いかな……」
つかさ「お姉ちゃんも賛成、さあ、行こう!」
私はお姉ちゃんの手を引っ張った。
かがみ「分かったわよ、行くから手を離しなさい!」
手を離した。ふと焚火の方を見ると、ゆきちゃんが焚火をじっと見ていた。
みゆき「まだ焚火が燻っていますね、消さなくていいのですか?」
つかさ「もう全て灰になったみたい、出かける前の火の始末だね」
私はバケツの水を焚火にかけて火を消した。




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最終更新:2010年05月01日 10:25
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