ID:Cb.9n6Q0氏:呪縛(ページ1)

 二年もう終わろうとするある日のこと、いつものように放課後、図書室で私達四人は会話に花が咲いていた。
みゆき「あ、もうこんな時間 私もう行かないと、皆さんは私におかまいなく」
かがみ「そうね、私たちも今日はこのくらいで帰りましょうか」
こなた「まだ早いよね、買い物つきあってくれないかな」
かがみ「どうせゲームなんでしょ……そういえば今日、私の読んでたラノベの続編の発売日だったかしら」
こなた「決まりだね」
こなちゃん達の話を聞きながら何気に本棚を見るとある本に目が止まった。
かがみ「つかさはどうする?」
このままお姉ちゃん達に付き合ってもいいけど、何故か本が妙に気になった。
つかさ「私はもう少しここに残る」
こなた「へー、つかさが図書室に残るなんて、今日は雨でも降りそうだ」
かがみ「それじゃ私達は先に行くわよ」
お姉ちゃん達は図書室を後にした。

私は気になった本を手に取った。古い感じ。タイトルは『おまじない集』と書かれていた。高校の図書室にしてはやけに子供っぽい本。
ページを捲ると『貸し出し禁止』と大きな印が押されていた。貸し出し禁止?、確かに分厚い本ではあったがそんなに高価な本とも思えなかった。
私は本を持って席に戻った。何頁か捲ると古今東西のいろいろな呪いやおまじないが紹介されていた。
落し物を探すものから人を呪い殺すものまで多種多様だった。私はいつの間にはその本を夢中で読んでいた。

読んでいくうちにおまじないを試したくなった。こんなに沢山あるおまじない。何を試そうか。私はしばらく考えた。
そういえばお姉ちゃん、今まで私と一緒のクラスになったことなかったな。高校を卒業したら進路は別になる。せめて三年生くらいは一緒のクラスになりたい。
一緒のクラスになるとしたらあと一回しかチャンスがない。ため息を一回ついた。そんな都合のいいおまじないなんかある訳ない……

あった。『一緒のクラスメイトになるおまじない』。私が思った通りのもの。早速読んでみた。紙に魔法陣のような図形を書いて願を込めるような事が書いて あった。
思いのほか簡単そう、これに決めた。しかし図形がちょっと複雑なので覚えられそうにない。書き写すしかなさそう。
貸し出し禁止じゃここで写すしかない。私は一度教室に筆記用具を取りに教室に戻った。

私は丁寧に図形を写した。そして願の掛け方も写した。最後の方に注意書きがあった。
『このおまじないは他人にばれると効果がなくなる』と書いてあった。ばれちゃいけないのか。内緒にするくらいどって事はないよね。
その他いろいろな注意書きが書いてあった。でもおまじないが成功するかどうかも分からない。とりあえず今日はこんな所かな。
私は本を本棚に戻した。ふと気が付くともう外はすっかり暗くなっていた。もうすっかり終業時間になっていた。私は慌てて図書室を後にした。

そして、その日がきた。
こなた「お、つかさ、みゆきさん、私達一緒のクラスじゃん」
つかさ「本当、やったー!、こなちゃん、ゆきちゃん、三年連続だね」
みゆき「また一年間よろしくお願いします」
あちらこちらで歓声とため息が聞こえる。クラスが一緒になった人、ならなかった人、これも運だからしょうがない。
さて、お姉ちゃんは……。
こなた「柊かがみ……、名前載ってるよ、三年B組、かがみ、やったじゃんお正月のお祈りが叶ったみたいだね」
つかさ「やったー!、お姉ちゃん、一緒のクラスだよ、小学校からの夢が叶ったよ、この前のお……」
私は慌てて両手で口を押さえた。あれ?、おまじないの事言っていいのかな?、まさか本当に願いが叶うとは思わなかったから注意書き見てないや。
でも、どうせお姉ちゃん達に言ったって偶然にそうなったって言われるだけ。私はこのおまじないで叶ったと思いたい。言わないでおこう。
みゆき「どうしたのですか?つかささん」
つかさ「うんん、なんでも……ないよ」
かがみ「つかさ、はっきり言っていいわよ、こなたとまた同じクラスになって先が思いやれるって」
こなた「つかさ、はっきり言っていいよ、お姉ちゃん、学校まで一緒になって鬱陶しいって」
つかさ「お姉ちゃん、こなちゃん、私は……」
みゆき「ふふ、楽しいクラスになりそうですね、私は学級委員の引継ぎがありますので」
ゆきちゃんは笑顔のままその場を後にした。
ゆきちゃんも嬉しそう、私はあのおまじないの本に心でお礼を言った。

私はお姉ちゃんと同じクラスになる為にしたおまじないはこれが初めてじゃなかった。小学校の頃から人から聞いたり、本を読んだり、テレビを見たり、
毎年この時期になるといろいろ試してきた。結果は……まったく効果なし。でも今回は違った。高校最後でやっと願いが叶った。
高校を卒業したらもう同じ大学、進路になることはまず考えられない。こなちゃん、ゆきちゃんも二年の時より喜んでいる。
私はこれからの楽しい日々を想像していた。

それから一週間が経った。 
こなた「かがみ、何で壊したの」
かがみ「私じゃないわよ、勘違いもはなはだしい」
こなた「かがみ以外に誰がやったって言うんだよ」
壊した壊さないでお姉ちゃん達がもめている。何があったのだろうか。体育の授業を終え、教室にはいるとお姉ちゃん達は。睨みあっていた。
つかさ「どうしたの?」
こなた「つかさ、聞いてくれよ、かがみが私のDSを壊したんだよ」
かがみ「だから、こなたのなんていじっていないわよ、大体学校にそんな物もってくるのが悪い」
初めはただのじゃれ合いかと思った。今までこんな事は何度もあった。にらみ合う二人、そう、今までそんな事なかった。
どちらかが怒っても片方は受け流すような態度で喧嘩になることなんてなかったのに。今は二人の怒りが重なり合っている。
何とかしないと。私はあたふたしてお姉ちゃん達をなだめようとした。
みゆき「すみません、それは私がやりました」
こなた・かがみ・つかさ「えっ?」
私達はゆきちゃんを見た。申し訳なさそうに肩をつぼめ、俯いて立っていた。
こなた「なんで?、みゆきさんが?」
みゆき「鞄からはみ出していたのを見つけ、鞄に戻そうとしたのですが、手が滑って落としてしまいました、すみませんでした。泉さん」
ゆきちゃんは深々と頭を下げた。
かがみ「……どう、分かったでしょ、人を疑う前にちゃんと調べなさいよ」
そう言うと自分の席に戻っていった。
こなちゃんはばつが悪くなったのか無言で自分の席に戻った。
つかさ「ちょっと、ゆきちゃん」
私はゆきちゃんを呼んで教室の外に出た。

つかさ「ゆきちゃん、さっきの事、本当なの?」
ゆきちゃんは暫く黙っていた。
みゆき「いいえ、私は泉さんの鞄を触っていません」
つかさ「それじゃ何で嘘までついて罪を被って……」
みゆき「折角かがみさんが私達のクラスに入った、こんな事で終わらせたくありません」
つかさ「ちょ、ゆきちゃん、終わらせるって大げさだよ、確かにさっきのお姉ちゃん達の権幕は凄かったけど」
みゆき「そ、そうですね、大げさでした、でも、この場が収まってよかったと思います」
つかさ「そうだね、流石ゆきちゃん」
休憩時間の終わりを告げるチャイムがなった。私達は教室に戻った。

三年生になって一ヶ月、お姉ちゃんとこなちゃんは些細なことで言い合いになったり、怒鳴りあったりする事が多くなってきた。
初めは私が間に入ったりゆきちゃんが止めて直ぐに収まったけど……。
つかさ「ゆきちゃん、最近お姉ちゃんとこなちゃん様子がおかしいと思わない?」
みゆき「そうですね、新しい環境がそうさせているのかもしれませんね」
つかさ「それなら良いんだけど、家でも最近こなちゃんの話しなくなって、私、心配だよ」
ゆきちゃんは黙って俯いてしまった。
つかさ「ゆきちゃん、お姉ちゃん達がこうなった原因、知ってる?」

ゆきちゃんは飛び跳ねるように顔を上げて私を見た。
みゆき「わ、分かりません、何かいい方法がないか私も考えている所です」
つかさ「そうだね、私も考えるよ」
お姉ちゃんとこなちゃんが教室に入ってきた。
かがみ「ただいま、悪いわね、お昼待たせちゃって」
こなた「かがみ、何処に?」
かがみ「黒井先生に呼ばれてたのよ、こなたは何処行ってたんだよ」
こなた「私は購買行ってきた」
こなちゃんは牛乳とチョココロネを持っていた。
みゆき「お昼にしましょう」

今日はなんのトラブルもなく楽しいお昼になった。でも、今までとは何かが違う。お姉ちゃんが同じクラスになったから?。
本当は別のクラスになるはずのお姉ちゃん。私がおまじないでどこかに無理がでてきちゃっているのかな。
そういえば私、あの本の注意書きを殆ど読んでいなかった。何か方法に間違えがあったのかもしれない。もう一度あの本を見てみよう。

放課後私は図書室に向かった。本棚を見ると、おまじないのの本が置いてあった場所がぽっかり空いていた。本を読んでいる人も居ないようだ。
無い?。確かにここの本棚にあった。私は近くの本棚も探した。本が見つからない。誰かが借りていった?、それはない。あの本は貸し出し禁止。
かれこれ一時間は探しただろうか、見つからない。
???「何の本を探しているのですか」
突然後ろから声をかけられた、後ろを向くと男子生徒が立っていた。
???「一時間も探していたので、図書委員が何の為にいるのか分からなくなります」
図書委員さんか、確かに図書委員さんなら分かるかもしれない。でも、さすがにあのタイトルを言うのは恥ずかしい。
つかさ「いえ、貸し出し禁止の本を探していたもので」
図書委員「貸し出し禁止ですか、管理番号が分かればすぐに探せるのですが……」
つかさ「管理番号?」
図書委員「本の背表紙の上にある番号です」
つかさ「そんな番号付いていなかったような……」
図書委員「そんなはずはありません……あ、最近、悪戯で勝手に外の本を持ってきて本棚に入れる人が居るんですよ、困ったことです」
つかさ「そうですか……」
図書委員「力になれなくてすみません」
図書委員さんは受付に戻っていった。

終業時間まで私は本棚を探した。結局見つけることは出来なかった。なんだろうあの本は幻だったのかな。そんな事はない、確かに私は
あの本から書き写した……あっ、そうだ、私の部屋に移した図形があるはず。確認してみよう。

つかさ「ただいま!」
家に着くと早速私は自分の部屋の本棚に向かった。たしかこの本に挟んでおいたはず……。 あった。間違えなくあの時写した図形。
まつり「つかさ、かがみと一緒じゃなかったの」
部屋の入り口にまつりお姉ちゃんがいた。私はとっさに紙を隠した。
つかさ「え?、お姉ちゃん、今日は別行動だったから……、こなちゃんと一緒だったよ」
まつり「そう、一緒かと思ったんだけどね、買い物を頼んだんだけど、遅いわね……それより、つかさ、さっき何隠したの、まさかラブレターじゃないでしょう ね」
つかさ「そ、そんなんじゃないから、ぜんぜん違うもの」
まつりお姉ちゃんは笑った。
まつり「やっぱり何か隠してたんだ、つかさは隠し事ができないね、まあ、これ以上は追究しない、気をつけなさい」
笑いながらまつりお姉ちゃんは階段を降りていった。ほっとため息をついた。気を取り直して考えた。
おまじないをしたのが本当だとすると本も実際にあった。じゃ何処に?。誰かが隠した?。悪戯なのかな。
考えてもしょうがない。もうおまじないで願いは叶ってしまった。もうどうにか出来るものでもない。
それよりお姉ちゃんがまだ帰ってこない?。私よりも先に帰っていると思ったけど。心配になった。私は居間に向かった。

みき「ちょうどいい所に、食器洗ってくれない」
私は食器を洗った。そして食器洗いが終わった頃だった。
かがみ「ただいま」
まつり「おかえり、遅かったね、頼んだものは……」
お姉ちゃんの目が赤い、急にどうたのかな。お姉ちゃんは無言で鞄の中の物をまつりお姉ちゃんに渡した。そしてそのまま部屋の方に向かってしまった。
まつりお姉ちゃんも無言でそれを見送った。私はお姉ちゃんの後を追った。

ドアをノックした。
つかさ「入るよ」
返事がなかったけどドアを開けて入った。
つかさ「お姉ちゃん、どうしたの」
お姉ちゃんは自分の席について後ろを向いたままだった。更に聞いた。
つかさ「お姉ちゃん、どうしたの、その目、もしかして泣いてた?、こなちゃんと何かあったの」
かがみ「何でもないわよ、目が赤いのは、駅で強風に煽られて目にゴミが入ったからよ」
つかさ「帰りも遅かったね、私より先に帰ってたと思ったのに」
かがみ「こなたと別れてからまつり姉さんの頼まれごとを思い出してね、戻ったのよ、二度手間だったわ」
お姉ちゃんは振り返って渡しに笑顔で返した。でも作り笑顔だって事はすぐに分かった。お姉ちゃんも私と同じ、隠し事はできないみたい、
こなちゃんと何かあったことは分かった。でも今は答えてくれそうにない。

この日を境にお姉ちゃんとこなちゃんの関係は変わってしまった。お互いに話し合うことが無くなった。それにお昼になるとお姉ちゃんは
となりのクラスの日下部さんの所に行ってしまう。これじゃ一緒のクラスになった意味がない。このままじゃだめだ。

お昼休み。三人でお弁当を食べていた。私は思い切って聞いてみた。
つかさ「こなちゃん、お姉ちゃんと何かあったの、最近全然会ってないみたいだけど」
こなた「……別に、なんでもないよ」
つかさ「そのセリフ、お姉ちゃんからも聞いたよ、この状況で何でもないなんてないよ、私には教えたくないことなの」
すこし強い口調で話した。こなちゃんは牛乳を一気に飲み干した。
こなた「やっぱり隠せないね、お察しのとおり、かがみと喧嘩しちゃってね、いま絶交中なんだ」
つかさ「絶交中……って、原因は何?」
こなた「……それはっ……」
つかさ「言えない事なの?、何で、私が知ったらいけないことなの」
こなちゃんは黙ったしまった。
みゆき「つかささん、言いたくない様ですしこのくらいで、私も聞いたのですが答えてくれませんでした」
つかさ「でも、原因が分からないと仲直りのお手伝いもできないよ、それでもいいの」
こなた「つかさ、これは私とかがみの問題なんだ、もう何も聞かないで」
つかさ「……何で、どうして、これじゃ意味がないよ、折角一緒のクラスになったんだよ……最後だったのに、何でこうなるの」
私は教室を出た。

私のせいだ、私がへんなおまじないをしたせいであるはずのない事が起こってる。こんな事が分かっていたなら一緒のクラスにならなくていい。
中途半端なおまじないをしたみたいだった。ちゃんとしたおまじないをしたいけどもう本も無い。
みゆき「つかささん」
ゆきちゃんの声がした。私を追いかけてきたみたい。声のする方を向いた。
みゆき「泉さんが言うように私達ではどうすることもできません、でも、何もしない訳じゃないですよね、私もお手伝いできればいいと思っています」
つかさ「ゆきちゃん、もしかして、お姉ちゃん達の事を知っていた?」
みゆき「三年になってからすぐでしたね、様子がおかしいとは思っていました、でも、原因までは……それが何か?」
つかさ「喧嘩の原因が私だったら、怒るかな?」
みゆき「つかささんが原因?、つかささんが原因なら泉さんはあのような事は言わないと思いますが」
確かに私が原因なら直接そう言ってるかな。
つかさ「そうだね、ごめん、ゆきちゃん、それにさっきのありがとう、手伝ってくれるって言ってくれて」
みゆき「戻りましょう、お昼時間はもう終わりです」
つかさ「うん」

次の日の放課後私は陸上部の部室へと足を運んだ。
みさお「お、柊の妹じゃないか、どうかしたか?」
つかさ「日下部さんちょっといいですか、聞きたいことがあるんだけど」
みさお「聞きたいこと?」

私は日下部さんを校庭の隅に誘った。暫く待っていると。
みさお「わりいな、待たせちまった、で、話ってなんだ?」
つかさ「お姉ちゃんの事なんだけど」
みさお「柊?」
日下部さんはお姉ちゃんとこなちゃんの事をしらない?。私は経緯を話した。
みさお「柊とちびっ子が喧嘩……、初めて聞いた、通りで私のクラスに顔を出すはずだよな」
つかさ「お姉ちゃんから何も聞いてない?、喧嘩の原因とか」
みさお「今初めて聞いた事だよ、そういやB組の話は一切してない」
つかさ「すみませんでした、貴重な時間を……」
日下部さんにも話していないってことは峰岸さんも同じかな。
みさお「ちょっと待った」
もう帰ろうとした時だった。
みさお「そういえば、喧嘩の事かどうか分からないけど、時間がない、って言ってたぞ」
つかさ「時間がない?、何だろう」
みさお「悪い、余計混乱させてしまった、関係なさそうだ、忘れてくれ」
『ピーポ ピーポ』
みさお「お、救急車だな、近くみたいだな、交通事故か?」
そういえばさっきからサイレンの音がしていた。救急車だけじゃない、パトカーのサイレンの音もしているみたいだった。
つかさ「日下部さん、部活の邪魔してすみませんでした」
みさお「気にするなって、意外ともう仲直りしてるかもしれないぞ」
校舎から男子生徒が走ってきていた。姿からして陸上部員かな。日下部さんに近づいてきた。
陸上部員「日下部、聞いたか?、さっき近所で人が刺されたみたいだぞ」
みさお「刺された?、物騒だな」
陸上部員「それで職員室が大騒ぎ、刺されたのがうちの女子生徒らしい、青い長髪だだって、又聞きだから眉唾だけどその刺した相手もうちの生徒らしい」
まさか、そんな事があるはずない。私と日下部さんは顔を見合わせた。
みさお「柊の妹も同じ考えか?、部活どころじゃないな、私、今日部活休む、多分近くの総合病院だ、急ぐぞ柊の妹」
陸上部員「なんだ、急に休むって」
みさお「その刺された女子生徒に心当たりがあるんだ」
陸上部員「……顧問の先生に言っておく、犯人はまだ逃走中らしいから気をつけろよな」

お姉ちゃんが、こなちゃんを?、そんなことあるはずない、いくら喧嘩したってそこまで憎みあってたとは思えない。人違いであって欲しい。
ただそれだけを願って走った。

病院の前にはパトカーが止まっている。日下部さんは私を抜いて既に病院に入っている。救急車はもう戻ったようだった。
病院に入ると待合室に日下部さんとゆきちゃんがいた。ゆきちゃんがなんでこんな所に。疑惑がどんどん確信に近づいていくようだった。
みさお「柊の妹……、刺された人は泉こなた……やっぱりちびっ子だったぞ」
頭が真っ白になった。
みゆき「出血は止まったようですがまだ予断を許さない状況だそうです……つかささん、実は……」
つかさ「やめてー!、」
私は耳を両手で塞いで病院を飛び出した。もうこれ以上聞きたくない。聞けなくなるくらい遠くに行きたかった。
お姉ちゃん、何でこなちゃんを刺しちゃんだよ、何も私に言わないで一人で悩んでその結果がこれなの?、
お姉ちゃんらしくない、そんな事をしたらどうなるか一番良く知っているはずなのに。誰からもこの事実を聞きたくない。お姉ちゃんから直接聞きたい。

気が付くと家の玄関の前にいた。電車に乗っていたんだ。無意識に私は帰宅していたみたいだった。扉を開けるとお母さんが居た。
みき「つかさ、かがみは一緒じゃなかった?、最近どうしたの?、喧嘩でもした?」
お母さんはまだ知らないみたい。でも何時かは知ってしまう。私から話すか。だめだ。話せない。

『ピンポーン』
呼び鈴がなった。
みき「はーい」
お母さんが扉を開けるとそこには男が二人立っていた。
男「すみません、警察の者ですが……」
警察手帳をお母さんにみせた。お姉ちゃんを捕まえに来たんだ。私は家を出た。私が逃げてもどうかなるとも思えなかったけど、警察とお母さんの会話を
聞きたくなかった。ただそれだけだった。

携帯電話で何度もお姉ちゃんを呼んだけど留守電に繋がるだけだった。電源を落としている。私も携帯の電源を切った。そして、お姉ちゃんが
居るかもしれない所に向かった。幼い頃お姉ちゃんと見つけた秘密の場所。うちの神社の林の中に小高い丘がある。滅多に人が来ない場所。
私がいじめられて泣いているとお姉ちゃんがここに連れてきて遊んだっけ。

林を抜け坂を昇り、小高い丘に着くと思った通り、お姉ちゃんが居た。丘から街を見下ろしている。私はお姉ちゃんに近づいた。
つかさ「お姉ちゃん、やっぱりここに居たんだ」
かがみ「つかさ、やっぱり来ると思った、幼い頃よくここで遊んだわね……、みゆきから聞いたでしょ」
私は首を横に振った。
つかさ「直接お姉ちゃんから聞きたいと思ったから」
かがみ「そう……」
力なくそう返事した。しばらく沈黙が続いた。
つかさ「お姉ちゃん、病院に行ってこなちゃんに謝ろう、それから、警察さんに……」
お姉ちゃんは驚いて私を見た。
かがみ「何いってるのよ、なんで私がこなたに謝らなければならないのよ、警察って?、どうゆうこと」
つかさ「お姉ちゃん、なんでそんな事言うの、それに、もう逃げられないよ、さっき家に警察が来て……」
かがみ「……犯人が捕まったんだね、捕まったら家に連絡してくれるって言ったから」
つかさ「えっ?、お姉ちゃん、こなちゃんを刺したんじゃないの」
かがみ「おいおい、勝手に犯人にするな」
急に涙が出てきた。私の早とちりだった。私はその場にしゃがみ込んで泣いた。よかった。お姉ちゃんは犯人じゃなかった。
でも、こなちゃんが刺された事は事実、嬉しさと同時にどうしようもない悲しさも湧いてきた。私は泣きながらお姉ちゃんに言った。
つかさ「お姉ちゃん、こなちゃん危険な状態だよ、早く病院に行こう」
かがみ「私は……もうこなたの苦しむ姿をみたくない、だから携帯の電源を切った」
私はお姉ちゃんの行っている意味が分からなかった。
かがみ「放課後、こなた、みゆきと歩いていたら、ガラの悪い二人組みの男に絡まれてね、でもこなたは格闘技経験者、一人はあっという間に倒した、
でもね、もう一人の男がナイフを持ってて、私に襲ってきた……」
つかさ「お姉ちゃん……」
かがみ「私の盾になってくれたのよ、あいつ、もうそんな元気もないくせに」
つかさ「元気がないって、どういう事なの」
お姉ちゃんは私をじっと見つめた。
かがみ「こなたはつかさには最後まで黙っていろと言われた、みゆきもそう言った、だけど、今となってはもう黙ってても意味はない、
こなたは末期なの、もう半年も生きられないって」
つかさ「……う、そでしょ、なんでこなちゃんがそんな病気に、だって、顔色だってよかったし、お姉ちゃんとだって喧嘩するくらい……元気で……」
はっと気が付いた。
つかさ「もしかして、お姉ちゃんとこなちゃんの喧嘩って……」
かがみ「……いつ、つかさに話すか私と意見が合わなかったのよ、ただそれだけ」
つかさ「そんなの知らなかった、ゆきちゃんも知ってたなんて、お姉ちゃん達、いつ知ったの?」
かがみ「新学期になってすぐよ」
居ても立ってもいられなくなった。私は立ち上がった。
かがみ「どこに行くの、つかさ」
つかさ「病院だよ、お姉ちゃんも一緒に行こう」

お姉ちゃんは動こうとしなかった。
つかさ「どうしたの?、早く行こうよ」
かがみ「だから言ったでしょ、私はこなたを見ていられないって」
つかさ「そんなの分からないよ」
かがみ「とにかく、私は行かない」
こうゆう時の姉ちゃんは何言っても無駄、私は話を変えた。
つかさ「病院にゆきちゃん居たよ、日下部さんも」
かがみ「みゆきは分かるけどなんで日下部まで?」
つかさ「私、お姉ちゃんとこなちゃんの喧嘩の理由が知りたくて、日下部さんに聞きに行ったら、こなちゃんの怪我の事を聞いて……」
かがみ「口裏あわせ、喧嘩にしたのがまずかったわね、余計な詮索をさせてしまった」
つかさ「だからこなちゃんの所に行ってあげて」
かがみ「つかさ、何度も同じこと言わせないで」
つかさ「お姉ちゃん、私は勘違いしてお姉ちゃんがこなちゃんを刺したと思ってた……でもね、病気の事を聞いたら、お姉ちゃんが刺していた方が
よっぽど良かったと思ったよ」
お姉ちゃんは黙って私を見ている。
つかさ「だってそうでしょ、生きていれば仲直りだって、再会だってやり直しができる、でも、死んじゃったらもう何も出来ないよ、お姉ちゃん」
かがみ「……、こなたが言った、つかさが知ったら一番悲しむって、そして自殺しちゃうかもしれないって……今のつかさはそんな気もないみたい……
つかさは私達が思ってた以上に強いわね、私は……私はここで死のうとしてた……
こなたの居ない世界なんて……でも確かに……死んだら何もできない……病気の事を知ってはいけないのは私の方だったかもしれない」
お姉ちゃんは私に抱きつき泣いた。何故だろう、私も悲しいのにもう涙が出ない。
つかさ「行こう、病院へ、こなちゃんが待ってるよ」

私はお姉ちゃんを支えながら病院に向かった。病院に着くとゆきちゃんと日下部さんが待っていた。日下部さんは私達の姿を
見ると何も言わず帰った。その後、おじさん、成実さん、ゆたかちゃんが駆けつけた。特におじさんの悲しみ方は見るに耐えられなかった。
私達も日下部さんと同じように何も言わずに帰った。結局その日はこなちゃんに会うことはできなかった。

次の日の朝。登校して、お姉ちゃんが席を外しているのを見計らったようにゆきちゃんが教室に入ってきた。
つかさ「おはよう、ゆきちゃん」
みゆき「おはようございます、早速で済みませんが放課後、私に付き合ってもらいたいのですがよろしいでしょうか」
ゆきちゃんの目は真剣だった。
つかさ「いいよ、でも、何に付き合うの?」
みゆき「放課後、お一人で自習室に来てください、大事な話があります」
つかさ「大事な話?、時間はかかるかな?、私、こなちゃんのお見舞いに行きたいんだけど」
みゆき「泉さんにも関わる大事な話です、いいですか?」
ゆきちゃんは念を押した。私もその意気込みに圧倒された。

放課後、お姉ちゃんは飛び出すようにこなちゃんの入院している病院に向かった。私はゆきちゃんに言われた通り自習室に居る。貸切のようにだれも居ない。
適当な席に腰を下ろしてゆきちゃんを待っていた。約束の時間になるとゆきちゃんが入ってきた。
みゆき「お待たせしました」
私はゆきちゃんを見ようと振り向こうとした。
みゆき「振り向かないで、そのまま後ろ向きの姿勢でいて下さい」
へんな事を言うゆきちゃんだった。
つかさ「これじゃ話し難いよ、なんでこのままなの?」
みゆき「すみません許してください……、これからつかささんにいくつか質問をします、ですが、つかささんは一言も答えなくていいです、
そのまま私の話を聞いているだけでいいですから、いいですね?」
更にへんな事を言うゆきちゃん、一言も答えちゃいけないのなら今、私に話した事も返事しなくていいのかな。沈黙が続いた……。
みゆき「ご理解いただき、ありがとうございます……、つかささん、私は泉さんを助けたいと思っています、それにはつかささんの協力が不可欠なのです、
でも……これにはかなりの危険が伴います、失敗すれば命の保障ができません、それでも、私の話を聞く覚悟はありますか、もし、
少しでも疑問に思うのでしたら、私に話しかけて下さい……」
つかさ「……」
こなちゃんを助ける方法がある?。知りたい。危険って何だろう。少しくらいの危険は覚悟できる。それに、ゆきちゃんを信じる。
暫くゆきちゃんは私の返事を待っていたようだった。返事の無い返事……

みゆき「これからは後戻りできません、続けます……つかささん、図書室で『おまじない集』と言う本を探しませんでしたか」
つかさ「……」
え、なんで知っているんだろ?
みゆき「つかささんはもっと以前にその本を見て、おまじないを試しましたか」
つかさ「……」
ゆきちゃん、何で知っているんだろ、見られてはいないはずなんだけど。
みゆき「その試したおまじないは『一緒のクラスメイトになるおまじない』ではなかったですか」
つかさ「……」
みんな当たってる、何で、私はゆきちゃんが魔法使いのように思えてきた。
みゆき「最後の質問です、そのおまじないの解き方を知りませんね」
つかさ「……」
解く?、解くって何だろう。
みゆき「やっぱり、そうでしたか、質問は終わりましたけどそのままで聞いてください、私は図書室で聞きました、最近貸し出し禁止の本を探しに来た人が
いなかったと、リボンをつけた女子生徒が終業時間まで探していたと答えました、直感的に分かりました、つかささん、
……クラス替えの日、かがみさんが一緒のクラスになったと分かったとき、悪夢が蘇りました、
実は、私も以前その本のおまじないを試しました、おまじなは『一緒のクラスメイトになるおまじない』でした、そしてその対象者はかがみさんで す」

ゆきちゃんが私とまったく同じおまじないをしていた?。どうしてそんな話を私に。
みゆき「そのおまじないで三年年生のクラスは私達四人、一緒のクラスになりました」
それは私も知っているけど、なんで改まって言うのかな。
みゆき「その後、私は悲劇に見舞われます、かがみさんが急性白血病で亡くなってしまいました、そしてそれを苦ににして泉さんが後を追うように自殺、
つかささんは私を……励ましてくれた……」
ゆきちゃんはすすり泣いている。こなちゃんが自殺?、お姉ちゃんが白血病?何を言っているのか分からない。
みゆき「……かがみさんが亡くなった、私はどうすることもできない、泉さんの自殺も止められなかった、こんな世界は納得できません、だから私は
おまじないを解きました、そして、全ては元に戻りました、そして、今のつかささん見て確信しました、つかささんはまだこの呪いを解いていないの ですから
おそらく解き方を読んでいなかったのですね、私はつかささんにおまじないの事を一言も言わせたくなかった」
そうか、後ろから私の動きを見て、質問の答えを知ったのか、でもなんでこんな回りくどいことを?。
みゆき「私はあの本の全ての頁を写しました、だからおまじないの解き方も知っています、そのおかげで私はおまじないをかける前の状態に戻ることができまし た、
つかささん、これからが重要です、よく聞いて下さい、この呪いは二重になっています、呪いを解いても鎖で繋がれて身動きが取れないのです、
呪い、呪縛です……だから、つかささんも同じ呪縛にはまってしまったのです」
じゅばく、呪縛ってどういう事なんだろう。
みゆき「願いが叶った後、本はこの世界から一年間消えてしまいます、しかし、おまじないの事を誰にも話さなければ一回だけ、しかも一年以内なら願いが叶う 前
に戻ることができる、そう書いてありました」
そんな条件があったなんて、いままで内緒にしててよかった。私に喋らせなかったのはその為だったのか、さすがゆきちゃんだ。
みゆき「おまじないを解くとペナルティが三つ課せられます、一つは元に戻っても本人だけは願いが叶った後の記憶が残る、もう一つは二度と本を見つける事が
できなくなると書いてありました、それは、別の本になって見えると分かったのです、何故なら私の次につかささんが本を使ったからです、本は消え た
訳ではありません……本の知識と気が付いた事を全て教えました、つかささんはおまじないを解いてください、
そして、戻ったらおまじないの本を探さずに、最初に見つけた場所にあった本を手にとって下さい、そして、その本を燃やしてください、
もう私達のような体験は誰にもさせたくありません、おまじないの解き方は簡単です、おまじないの時に使用した図形を写した紙を燃やせばいいので す、
私の言いたいことは以上です……かがみさんから聞きました、かがみさんの自殺を止めたと、つかささんなら……」


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