ID:zJJmrC+TO氏:タイトル不明

タイトル「努力と意地と卓球と」


―きっかけは一つのケンカだった―
「つかさのくせに~」
「こなちゃんのくせに~」
お互いがつかみ掛かろうとするのを私とみゆきで全力で止める。
こなたの方はわからないが、つかさからは普段からは想像出来ない程の力で私を振りほどこうとしている。
気を抜くとすぐにでもこなたに飛びかかりそうだ。
私は即つかさをなだめにかかるが、私の言葉はつかさには届いていない様だった。
肩で息をする両者。みゆきはこなたを押さえながらも、この事態に戸惑っているのか、目をしきりにキョロキョロと動かす。
こなたはというと、いつもの眠たそうな目が嘘の様にしっかりと開いていて、つかさをキッと睨んでいる。

不意につかさが口を開いた。
「勝負……私と卓球で勝負だ!」

勝負は一週間後の日曜、学校の体育館に決まった。
それから二人は顔も合わさず、別々に行動する様になっていた。
私はというと、そんな二人の間に行くのが、気まずかったので、お昼はクラスメイトと取り、なるべく二人から遠ざかる姿勢を置いた。
時々みゆきが二人を心配して、私に相談をしに来たが、私をやるだけやらせたらいいとだけ答えた。
そうしてすっきりすればまた元どおりになるだろうから。

そうして家に帰ると、つかさが庭で一人黙々とラケットを振っていた。
どこから持ってきたのか聞きたかったが、つかさの必至に練習する姿の前にそんな言葉は潰れされた。
きっとつかさ自身も、こなた相手に素で勝負したら負けるとわかっているのだろう
だから必至に練習する。
そんなつかさの姿に私は、そこまで必死になる姿を、勉強とかに使ってくれと心で突っ込んでおいた。
無論言葉には出来ないけど。



そして日は進み、遂に決戦日を迎えた。
先生に無理を言って貸して貰った卓球台。
それに対峙する様に向かい立つこなたとつかさ。
「いくらなんでもつかさが私に勝てる訳ないじゃん。ほぼ全てに置いてね」
挑発的に鼻で笑う。
「そんなのやってみなきゃわからないよ!」
つかさも怒ったのか少し声が荒げていた。
「あの……お二人とも……もうお止めになりませんか?」
恐る恐るといった物言いでみゆきが二人に促す。
卓球のルールに詳しいという理由で審判を任せられたみゆき
だがこのケンカは見るのが嫌なのだろう
だが二人の反応は
「まま、サクッと終わらせるから」
「ゆきちゃん……ありがとう……でも私は……」
とみゆきの気持ちを受け入れなかった。

みゆきも諦めたのか、一度首を横に振ると、試合の審判として話を進め始めた。

ジャンケンをする二人。つかさが勝ち、つかさがサーブを先に打つことが決まった。
こなたは嫌味らしく「つかさが私に勝てるのはジャンケンとかだけかもね」
と吐き捨てた。だがこなたの表情はその言葉の嫌味さとは似ても似つかない程
苦しそうに見えた。ほんの微妙な違和感的な感じだったが、私は確かにそう感じた。


「こなちゃん……行くよ」
右手でピンポン球を握りながらそう呼び掛ける。
「いつでもいいよ」
手のひらでクルクルとラケットを回しながらこなたは答えた
それを聞いたつかさはサービスの構えに入る。
そして左肩当たりにフワッと球を上げると、それを前へコツンと弾いた。
球はスレスレの高さでネットを超え、台の浅いところで2バウンド目を着いた。

いいサーブじゃないの?
私は率直にそう感想を漏らした。
だがこなたは身体を卓球台に着けんばかりに近付け、なんなくつかさのサーブを拾って返す。
つかさも返って来たそれを普通に返した。

こなたは返って来た低く、少し鋭くもあるドライブをつかさの台に向かってかなりの速さで球を返す。
つかさは返すので精一杯なのか、勢いがかなり緩やかなリターンをした。
かえってきた球をさらに加速をつけたかの様な速度で打ち込む。

前陣速攻
今日の日に備え、少し卓球を調べた私はこなたの戦型が前陣速攻だということを確信する
台につくかつかないかというくらいまで台に近付き、テンポの早いラリーで相手を翻弄し、相手が返し損ねたチャンスボールをスマッシュで得点するのが主流な戦型。ただし、台から近いため相当な反射神経、それを身体に伝え即動く瞬発力
これが無いと前陣で速攻などただの自滅行為だ。
だがこなたはそのふたつを持ち合わせていることを私は知っている。

「うっ……」
力の無い、ただラケットに当てただけの山なりのリターンがこなたの元へ来る。
すかさずこなたはラケットを思いっ切り振る。
目にも止まらぬ速さでつかさの横を通り抜けていった。
こなたのスマッシュだ。まず先取点はこなたが取った。

ふふん、と得意気に鼻をならすこなた。
つかさは何も言わずに再びサーブを放った。

こなたはまた身体を台スレスレまで近付け、前陣速攻のスタイルを取りながら返す。
対するつかさは……身体を台スレスレまで近付け!?
「つかさも前陣……?」
つかさは素早くラケットを振り、球足の速いドライブを放つ。
こなたはそれの球足をもっと速くして返す。
とてつもない速さのラリーが始まった。
グングンと速まって行く球足。
しかし、次第につかさが押され気味になってきていた。始めにあった速い球足の返球も、こなたの攻めに押され気味になって、防御主体になっている。
こなたがこれでもかと言わん許りに攻撃のテンポを上げる。チャンスボールを返すまいと必死に返すつかさ。

だがつかさの頑張りも空しく、速いテンポに反応仕切れなくなったつかさは、フワリとチャンスボールを返してしまい、再びスマッシュを決められた。

汗が体育館の床へとしたたり落ちる。
手と足を着き、四つん這い状態になっているつかさは、汗を大量に床に落とし、ぜぇぜぇと息を荒げ、ただ下を向いている。
こなたがそれを上から見下ろす。
11―0
果敢にこなたに前陣速攻で挑んだつかさは、ことごとくこなたのテンポの前に弄ばれた。つかさもあの状態になるくらいに、必死にくらいついていたが、結局一点も取れないまま一セット目を落とした。
身体能力の差、前陣速攻ではその差が大きく響いて来る。

これがこなたとつかさの差か……。
私はしみじみとそう噛み締めた。


「やっぱり運動が得意なこなちゃんに、私がかなうわけないよね……」
つかさがそう漏らす。その声もどこか苦しそうだった。
「さ、早く立ちなよ。第二セット目だよ」
「……うん」
その声を聞き、ゆっくりと立ち上がるつかさ。
表情こそいつも通りだったが、その顔には汗が大量に流れている。
「だけど……卓球の技術じゃ今は負けないよ」
不意につかさがそう言い放つ。
そういえば……つかさが練習していたのは前陣速攻じゃなかった……確か

私がここまで思い出したところでこなたがサーブを放った。

やって来たこなたのサーブ。
つかさはそれを上から斜め下へと切るイメージを連想するように、ラケットを振り、球を返す。
フワリと山なりを描くピン球。
「よくわかんないけど……行くよ」

こなたが前陣速攻の構えに入る。

ピン球がバウンドを着く。
が球は真直ぐ跳ねず、バウンド先から垂直に跳ねた。
「え?」
予想外だったのだろう。こなたの上体は浮き、力の無い球を返した。

その先にはラケットを振りかぶったつかさが待っていた。
ラケットを思いっ切り振る。
つかさの放ったスマッシュは、こなたの右を通り抜けた。

そうだ。私は思い出した。
つかさが練習していたのはカットマンのそれだったことを。


1―0
努力の反撃が始まった。
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