ID:mf3PhF69氏:ツンデレラ

 ただいまより、陵桜学園臨時演劇部とその他有志による演劇『ツンデレラ』を上演いたします。
 人によっては不快な表現があるかもしれませんが、舞台に物等を投げずに、最後までごゆっくりご鑑賞ください。

 …っていうか、コレ。誤植じゃないの?


「お姉ちゃん、そろそろ始まるよ?」
「…つかさ…主役に釣られてタイトルをよく確認しなかった、一週間前のわたしを殴ってきて…」
「が、頑張ってお姉ちゃん…」



― ツンデレラ ―



 とある時代の、とある国のとある町。ツンデレラと呼ばれる娘が住んでおりました。
 ツンデレラは素直で可愛らしく、優しい両親と共に幸せに暮らしておりましたが、母が流行り病で亡くなり父が再婚をしてから、ツンデレラの生活は一変しました。
 継母とその二人の連れ子は、可愛らしいツンデレラが気に入らず、父親が単身赴任で留守にしているのをいいことに、ツンデレラにスカートの丈が短い邪道なメイド服を着せ、まるで家政婦のようにこき使いました。
 ………いや、いいんだけどね。
「よかあるかい」
 ツンデレラさん、その一言で『素直で可愛らしい』って部分が吹き飛んだんだけど。
「いいわよ別に…」
 まあ、それはともかく、今日も義理の姉達がツンデレラに意地悪をしに来ます。
「ちょっとツンデレラ!」
「実姉だぁ!?なんでまつり姉さんが!?練習のときは日下部だったじゃない!」
「何を言ってるのよ。わたしはあなたの義理の姉妹の妹の方。まつりじゃないわよ。そんなことより、わたしの部屋の掃除。何あれ?あれで掃除したつもり?雑すぎるじゃない、やり直して」
「…うーわー…なんかすっごい腹立つんですけど…」
 ツンデレラさん。演技、演技。
「うぅ…はい、分かりましたお姉さま。今すぐに…」
「ちょっと、ツンデレラ。わたしの服の洗濯。何あれ?あれで洗濯したつもり?雑すぎるわよ。やり直して」
 義理の姉妹の姉の方も、ツンデレラをいびりに来ました。ってかこれ言い難い。
「…いのり姉さんまで…峰岸だったはずなのに…ってか本気で殺意が沸くんですが…」
 ツンデレラさん。演技、演技。
「くぬぬぬぬ…わ、わかりましたお姉さま…すぐにやり直します…」
 さらには継母までもが、ツンデレラをいびりにきます。
「うん、誰かは予想はつくけど…」
「ツンデレラ。お母さん、ちょっと欲しいぬいぐるみがあるんだけど…」
「いびりじゃなくておねだりだ!」
「しかもぬいぐるみときたか!」
「可愛らしさをアピールするにも歳考えて!」
「…くすん、ちょっとくらいいいじゃない…」
 ま、まあそんな感じで、ツンデレラは不幸な生活を送っていたのでした。




 ある日のこと。ツンデレラの家に、お城から舞踏会開催のお知らせが届きました。聞けば、お城の王子様はお年頃。うまく目に留まれば、その花嫁になることも出来るでしょう。
 出会いに飢えた継母と二人の姉は、はりきってこの舞踏会に参加することにしました………えーっと、継母さん?あなたは出会いに飢えるのまずくないですか?
「演技よ、演技」
 …うん、まあいいけど…一応、あの人に報告だけはしときますんで。
「それだけはやめてー!」
 えーっと気を取り直して…コホン。ツンデレラも、華やかな舞踏会に出たいと思っていましたが、当然意地悪な姉たちが許してくれません。
「ツンデレラ!あなたは留守番してわたしのドラクエのレベル上げをしてなさい!クエスト勝手にやったら怒るわよ!」
「めんどくさっ!」
「あ、それじゃわたしのヴェスペリアの料理スキル上げもお願いね」
「さらにめんどくさっ!ってか同時にやれってか!」
「それじゃお母さんはねー」
「可愛さアピールは却下ね」
「…いってきます…」
 こうして継母たちは舞踏会に出かけ、ツンデレラは一人寂しく家でDSとPS3を起動させるのでした。




「…料理スキル上げがマジめんどくさい…」
 姉に言われたことを律儀にやりながら、ツンデレラはため息をこぼしました。
「はぁ…わたしも舞踏会に行きたいな…美味しい料理とか、美味しい料理とか、美味しい料理とか…」
 なにしに行くつもりなんですか。
「え、料理出ないの?」
 いや、出るけど…うん、まあいいや…そのツンデレラの願いが聞こえたのか、部屋に光り輝く不思議な扉が表れ、中から魔法使いが現れました。
「練習のときから思ってたけど、なんかこのシチュに覚えが…」
「はっはっは。気にしちゃ駄目だよかがみん…じゃなくてツンデレラ」
「…この名前をあんたに言われるとなんかむかつく」
 まあ、思うところは色々あるでしょうが、とりあえず話を進めてください。
「さて、ツンデレラや。あなたは舞踏会には行かないのですかな?」
「そりゃ行きたいけど…この服じゃあ、ね」
「ふふふ、この魔法使いにおまかせあれ…マハリクマハリター」
 呪文古っ。
「こ、これって…」
 魔法使いが杖を振りながら呪文を唱えると、ツンデレラがまばゆい光に包まれ、着ていたスカートの丈の短い邪道なメイド服は、スカートの丈が長い正道なメイド服へと変わっていました。
「さあツンデレラ。これであなたも舞踏会に…」
「いやいやいや、ちょっとまて」
「なにか問題が?」
「おおありだ。これスカート伸びただけでしょうが。ってかこれでお城行ったら、舞踏会の参加者じゃなくてメイドと間違えられて働かされるってオチになるだろ」
 ツンデレラのまくしたてるようなツッコミに、魔法使いはため息をつきます。
「わがままだなー。そういうオチを期待してる観客もいるでしょうに」
「いねーよ」
「はいはい分かりましたよっと…テクマクマヤコンテクマクマヤコン、きれいなドレスになれー」
 ツンデレラを再度まばゆい光が包み、ツンデレラの服が豪華なドレスへと変わりました。
「…おぉー」
「オーケーツンデレラ。これでどこからどう見ても凶暴には見えないね」
「それ、褒めてないよな?」
 ツンデレラは姉たちにも引けをとらない綺麗なドレスに喜びましたが、別の問題に気がつき顔を曇らせました。
「もうこんな時間…今から歩いてお城に行っても、舞踏会には間に合わないわ」
「はっはっは、心配後無用。それもわたしにお任せあれ」
 魔法使いはその辺にあったカボチャとネズミのぬいぐるみを並べると、呪文を唱えながら杖を振りました。
「ラミパスラミパス、ルルルルルルー」
 こなた、ルが一つ多いわ。っていうかそれ元に戻る呪文だから。
「細かいことは気にしなーい」
 まあそれはともかく、今度はカボチャとネズミがまばゆい光に包まれ、カボチャは馬車に、ネズミはそれを引く馬へと変わりました。
「…日下部…なにやってんだ…」
「…しらねー…姉役下ろされたかと思ったら、馬やれって…くそーこうなったらありえねえ速さで城まで連れてってやらあ」
「いや、日下部。ここ舞台だからな?走るには狭いからな?」
 舞踏会に出る準備が整い、ツンデレラは馬車に乗り込みました。そのツンデレラに、魔法使いが声をかけます。
「あ、そうそうツンデレラ。一つだけ忠告」
「なに?」
「わたしの魔法は日付が変わるまでしか持たないからね、それまでには帰って来るんだよ」
「わかったわ」
「うん…それじゃ、楽しんどいで」
「あ、魔法使いさん…」
「ん?」
「その………あ、ありがと…」
 そっぽを向きながら呟くツンデレラに、魔法使いは親指を立てて答えます。それを合図に、馬車が走り出しました。
「うおりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ひゃぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
 こうしてツンデレラは、ありえない速さでお城へと向かいました。

 …なにか舞台袖のほうでクラッシュ音が聞こえましたが、気にしないでおきましょう。




 さて、お城の大広間ではすでに王子様目当ての着飾った貴婦人たちが、舞踏会を楽しんでいました。
「…なんで練習に呼ばれないかと思ったらモブかよ」
「こ、こうちゃん先輩落ち着いてくださいッス」
「ミてくださいユタカ!メロンにナマハムがノってマス!リッチでス!」
「リッチなんだ…」
「みさちゃん、頭から突っ込んでたけど、大丈夫かしら…」
 …まあ、一応貴婦人だと思ってください。
「あ、あれは…」
 参加者の一人が、大広間の階段に現れたこの城の王子に気がつきました。
「皆さん。我が城の舞踏会にお集まりいただき、感謝いたします。今宵は時間の許す限り、存分にお楽しみください」
 王子の言葉に、舞踏会の参加者どころか、観客席からも黄色い声援が上がります。
「…みなみちゃん、普通にかっこいいんだけど…」
「…はまり役過ぎる…ってかなんであんなノリノリなんだろう…」
 王子は、自分のダンスパートナーを探して大広間を見回します。そして、一人の娘に目を留め、その傍に歩み寄りました。
「お嬢さん、もしよろしければ、わたしと踊っていただけませんか?」
「…へ?わ、わたし?」
 こらこらこらこら。その子違う、その子違う。
「…えー」
 不満そうな顔しない。
「え、えっとみなみちゃん。この劇終わったあとでなら、ね?」
「…オーケーゆたか。また後で」
 フォローありがとうございます。
「い、いえ。こちらこそみなみちゃんがすいません…」
 …コホン。王子はダンスパートナーを探して大広間を見回します。そして、一人の娘に目が留まりました。その娘は、他の着飾った貴婦人たちとは違う、目を奪われるような美しさを持っていました。
「…もぐもぐもぐ…あ、これおいひい…」
 …おいこら、ツンデレラ。
「…ほへ?」
 ほへ?じゃありません。なに本気で食いに入ってるんですか。
「え?あ、あーそうだった、ごめん。今どこだっけ?」
「貴女のような美しい女性を、わたしは初めて見ました。どうかダンスパートナーとなることを、お許し願えますか」
 とっとと終わらせたいのか、王子が強引に話を進めます。ってか棒読み。
「…はい、喜んで」
 はいはい、ツンデレラも料理から目を離しなさい。
「まだ食べてないのあったのに…」



 大広間に流れる優雅な音楽に合わせ、ツンデレラと王子は互いの手を取り踊り始めました。まるで長年付き添ってきたかのように息のあった二人の舞は、大広間にいた参加者たちが思わず手を止めて魅入ってしまうほどに美しいものでした。
 ツンデレラは魔法使いとの約束も忘れ、この夢のような時間に酔いしれていました。
 しかし、大広間に響き渡った日付が変わる零時を知らせる鐘の音に、ツンデレラは魔法使いの言葉を思い出しました。
「あ…ご、ごめんなさい!」
 ツンデレラは王子を突き飛ばし、大広間から逃げ出しました。
 この鐘の音が鳴り止めば、魔法は解けてしまう。あせるツンデレラは、階段を駆け下りる際に、履いていたガラスの靴の片方を落としてしまいました。
 しかし、拾い上げている暇はなく、ツンデレラは靴を残したまま、城の前に停めてあった馬車に乗り込み、全速力で馬を走らせました。

 …あ、またクラッシュ音。


 城から少し離れた場所で、魔法が解けたのか馬車はただのカボチャに戻り、ツンデレラも元のメイド服に戻ってしまいました。
 ツンデレラは、しばらくその場にボーっと突っ立っていましたが、夢が覚めたことをみとめ、ため息をつきました。
 ふと足元を見ると、ガラスの靴の片方だけが魔法が解けずに残っていました。ツンデレラはそれを拾い上げ、大事そうに胸に抱え家に向かって歩き出しました。


 その頃お城では、王子がツンデレラの残したガラスの靴を手に取り、ある決意を固めていました。
「…よし、出番終わり。ゆたか、待ってて」
 違うでしょ。
「…この靴の持ち主を探し出し、わたしの妃とする…必ず」




 舞踏会から数日後。突如やってきたお城の使者に、町は騒然となりました。
「よくきけー。このガラスの靴に足がぴったりの娘を王子の嫁にする。我と思う娘は遠慮せんと名乗り上げいやー」
 使者の布告に、町中の女性が我先にとガラスの靴に挑戦しましたが、不思議なことに誰一人靴に足を入れることが出来なかったのです。
 ツンデレラの二人の姉も当然挑戦しましたが、やはり靴に足を入れることは出来ませんでした。
「ツンデレラ。あんたもやってみる?」
 どうせ入りっこないと思ったのか、姉の一人がツンデレラにもやらせてみようと言い出しました。
「え?わ、わたしは…」
「ま、ダイエットも失敗するようなあんたじゃ無理だろうけどね」
「…姉さん。グリム童話版のシンデレラだと、姉が靴にサイズ合わせるために足の肉削ったりするの知ってるかしら?」
「ご、ごめんなさい…」
 姉に言われたツンデレラは一旦家に戻り、布に包んで置いてあったガラスの靴を持ち出すと、使者の前へと行きました。
「んー、次はお前か?」
「は、はい」
 ツンデレラは布を解き、ガラスの靴を使者に見せました。
「そ、それ…まさか…」
 使者が驚く中、ツンデレラは自分の持っていたガラスの靴を履き、もう片方の足に使者が持ってきたガラスの靴を履きました。靴はまるで吸い込まれるかのようにツンデレラの足にぴったりと合い、その瞬間ツンデレラの身体をまばゆい光が包みました。
 そして、光が消えたその場に現れたのは、舞踏会に参加したときのドレス姿のツンデレラでした。
「おお。その姿、間違いない。あの時のお嬢さんや。これで、王子も喜んでくれはるわ」
 ツンデレラはそのままお城の使者に連れられ、お城へと向かいました。


 そして、その様子をあの時の魔法使いが、屋根の上からじっと見守っていました。
「少し回りくどいかったと思うけどね…お幸せに、わたしの可愛い娘よ…」
 呟きと共に、魔法使いの姿は掻き消えていきました。


 こうしてツンデレラは王子の妃となり、末永く幸せにくらしましたとさ。



― 終劇 ー



キャスト

ツンデレラ 柊かがみ
魔法使い 泉こなた
王子 岩崎みなみ
いじわるな継母 柊みき
いじわるな長女 柊いのり
いじわるな次女 柊まつり
馬 日下部みさお
貴婦人A 八坂こう
貴婦人B 田村ひより
貴婦人C パトリシア・マーティン
貴婦人D 小早川ゆたか
貴婦人E 峰岸あやの
お城の使者 黒井ななこ

ナレーション 泉かなた



「…ねえ、ゆきちゃん」
「なんでしょう、つかささん?」
「…大道具係って大変だね」
「…そうですね」


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