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 そして土曜日になった。土曜は特に用事がなかったのでお昼の世話も私がやるとお母さんに言った。
お母さんは心配してくれたけど、今の私はミケちゃんの世話をするのが楽しくてしかたかがなかった。
あっと言う間に時間は過ぎた。晩の世話を終え自分の部屋に戻るとお姉ちゃんが居た。
かがみ「悪いわね、黙って入っちゃって」
つかさ「別に・・・何か用なの」
かがみ「特には無い、明日で約束の日になるかなって」
つかさ「そうだね、でも、お姉ちゃん、私が世話してるところ一回も見に来なかったね、ズルしてるかもしれないのに」 
かがみ「見る必要なんかない、これを見ればね」
お姉ちゃんは私の机に置いてあったノートを取って開いた。
かがみ「猫の育て方・・・よく纏められてるじゃない、一部こなたの字が混ざってるわね、あいつにしてはよくやったわ」
つかさ「お姉ちゃん・・・」
かがみ「本当は、半分くらいの日数で合格でもよかった、でもお父さんがあんなこと決めちゃったから引っ込みがつかなかった、悪かったわね」
つかさ「まだ明日が残ってる、謝るなら明日にして」
お姉ちゃんは笑った。
かがみ「つかさ、意外に頑固ね、それにその自信、私の負けは認めるわよ、もう何も言うことはないわ」
つかさ「・・・ありがとう」
かがみ「明日・・日曜の朝、見に行っていいかな、子猫、ミケって言ってたわね、三毛猫なの?」
つかさ「うん、こなちゃんは かがみ がいいって言ってたけど」
かがみ「かがみ?、なんで私の名前なのよ」
つかさ「見つけたとき、凶暴だったから・・・」
かがみ「あいつ・・・今度会ったららタダじゃおかない」
つかさ「こなちゃんは凶暴なんて言ってないよ、ツンデレだって」
かがみ「どっちだって同じよ、って、凶暴なんて誰が言った・・・!、つかさ!」
私は笑った。遅れてお姉ちゃんも笑った。
明日、楽しみだな。


 今日も目覚まし時計より早く起きる。もう日課になりそう。
小鳥のさえずりが心地よい。休日のせいか家はまだ静か。まだだれも起きていないみたい。
ベットから起き上がり一回大きく背伸びをした。
一通りの身支度をして居間に移動した。
ちょっと早いけど、ミケちゃんの世話をするかな。早く合いたい。
餌と水を用意をした。そして、神社の倉庫へと向かった。

 倉庫に着くと、静かな事に気が付いた。
おかしいな、いつもなら私がくるとダンボールから飛び出してじゃれついてくるのに。
寝てるのかな。まだ早すぎたかな。そんな事を思いながらダンボールを覗いた。
やっぱりまだ寝てる
つかさ「みけちゃん」
やさしく呼びかけた。反応がない。昨日遊びすぎたかな。疲れてるんだね。
つかさ「ミケちゃん、ご飯だよ」
起こすつもりで少し声を上げた。・・・えっ、なんかおかしい。全く反応がない。
つかさ「ミケちゃん、起きて、起きて」
何度も叫んだ。反応がない。私は思わず手に持っていた。餌と水を落としてしまった。お皿から水と餌が地面に散乱した。
そのままダンボールに駆け寄り、ミケちゃんを抱きかかえた。
するとみけちゃんはゆっくり目を開け一言『ニャー』と鳴いた。
つかさ「どうしたの、調子が悪いの、元気ないよ」
意識があるのが分かった。すぐダンボールに戻してタオルをかけてあげた。
そして、思い当たることを考えた。何も出てこない。
ご飯も、うんちも、昨日は正常だった。なんで、分からない。
ノートに書いてあるポイントを思い出してみても自分がなにかしたとは思えない。
もうノートに書いてあることは見なくても思い出せる。
ミケチャンの目が再びゆっくりと閉じていく。
私は焦った、何をしていいか分からない。ふと図書室から借りた本を思い出す。まだ返していない。
そうだ、あの本なら何か分かるかもしれない。
つかさ「ミケちゃん、ちょっと待ってね、すぐ戻るから」

 私は走った。今までないくらい本気で、息が辛い、心臓もパンクしそう。それでも走った。
家に飛び込むとお姉ちゃんが驚いて私を見た。起きたばかりなのか、髪の毛を結っていない。
かがみ「ちょっと、つかさどうしたのよ」
私は返事もすることなく自分の部屋に入った。そして借りた本を見た。気が動転して思うような項目が見つからない。
そこにお姉ちゃんが私の部屋に入ってきた。
かがみ「返事もしないで、何があったのよ」
つかさ「なんでもない、なんでもないよ、ちょっと疲れただけ、そう、疲れただけなんだから」
かがみ「何言ってるの」
お姉ちゃんが私に質問してくる、知られたくない。
私は本を持ったまま部屋を飛び出した。そして、そのまま家を出てミケちゃんの所に向かった。

つかさ「ミケちゃん、しっかりして、今、助けてあげるから」
ミケチャンは前より力のない声で鳴いた。
その場で本を見る。・・・見ても分かるわけがなかった。
ミケをタオルに包んでそのまま抱きかかえた。
タオル越しにミケを撫でてあげた。それしか出来なかった。
ミケから力が抜けていくのが手に伝わってくる。
これで私は悟った。もう何もできない。
つかさ「目を開けて、もう一回鳴いてよ、じゃれついてきて」
私は何度もそう語りかけた。
そして、ミケちゃんは・・・動かなくなった。
涙が出てくる。涙はミケを包むタオルに落ちていく。
私は声を出して泣いた。まだ朝早い、私の鳴き声だけが響いていた。

 もう涙が出ない。そのくらい泣いた。
ミケチャンをタオルを包んだままダンボール箱にそっと置いた。
この次にやることが頭をかすめる。皆になんて言えばいいのか。
でも、そんな事を考えている余裕はなかった。

かがみ「つかさ、これはどうゆうことなの、こんなに餌散らかせて」

 後ろからお姉ちゃんの声が聞こえた。約束の時が来た・・・はずだった。
私はゆっくり後ろを振り向いた。
そこには髪を結っていないお姉ちゃんが立っていた。私の様子がおかしいから、準備もそこそこに来たに違いない。
私の顔を見たお姉ちゃん。お姉ちゃんは何も話さないで私を見ている。分かってしまった。言い訳にしかならいけど。言うしかなかった。
つかさ「私、図書室でちゃんと調べたよ」
かがみ「知ってる」
つかさ「餌もカロリー計算したんだよ、ノートに何度も計算したよ」
かがみ「そうね」
つかさ「気温だって、低くも高くもなかった」
かがみ「解ってる」
つかさ「うんちの状態もちゃんとチェックしてた・・・それなのに」
涸れたはずの涙がまた出てきた。
かがみ「つかさは・・・悪くない」
その言葉を聞いた瞬間に私はお姉ちゃんに抱きついて泣いた。さっきよりも大きな声をだして。
お姉ちゃんに何を言われても、反攻しないと覚悟していた。
かがみ「こんな事になるなんて」
それだけ言うとお姉ちゃんは私を優しく包んでくれた。
私はそのまま残りの涙を全て使い切るまで泣いた。

 だいぶ落ち着いた。私はお姉ちゃんから離れた。
ダンボールに居るミケチャン見ながら私は話した。
つかさ「何も出来なかった、あれだけ調べたのに、何もできなかった」
お姉ちゃんは黙って聞いている。
つかさ「私の手の中でゆっくり弱っていくのを、見ていただけだった、見ていただけ・・・!」
聞き覚えがある言葉。お姉ちゃんが言った言葉。その言葉を私が口にしていた。
それに驚き私はお姉ちゃんの顔を見た。お姉ちゃんは目を閉じていた。
かがみ「そう・・・見ていただけ、つかさ、意味が分かったみたいね」
さらに驚き聞いた。
つかさ「お姉ちゃん、いつそんな事を、何か飼ってたなんて知らないよ」
お姉ちゃんはゆっくりと話し出した。
かがみ「小学校五年生、時期は今頃・・・子猫を拾った、つかさは知らないはず、私一人で育てたから」
つかさ「どこで・・・」
かがみ「学校の体育館裏・・・」
つかさ「知らない、そんなの知らなかった、いつも一緒だったのに」
かがみ「一緒ね、確かに、でもね、クラスは違ったでしょ、そのくらいの事はできる」
つかさ「なんで、内緒にしてたの」
かがみ「今思えば勘違いだった・・・つかさが猫を怖がったことがあったのを思い出してね、家で飼うのを反対されると思ったから・・・」
つかさ「そんな・・・私、猫を嫌いになったことないよ」
かがみ「そうよね・・・聞きもしないで、勝手にそう決め付けてた」
お姉ちゃんは悔しそうに一回倉庫の壁を叩いた。
そして私に同意を求めるうように、訴えかけるように話し出した。
かがみ「子供の私に何ができる、出来ることは、給食の残りをあげるくらい、カロリー計算どころの話じゃない、酷いものよ、
    ある日、急に弱りだしたのよ、タオルもなかった、知識もなかった、私の手の中で・・・弱っていくところを、見ていただけ、
    そんなのやだ、見てるだけなんて、あんな思いなんてもうしたくない、・・今なら解るよね、つかさ」
お姉ちゃんは急に涙を流しだした。いつものお姉ちゃんらしくない、気弱で、自信のない、そんな姿だった。
そして、反対していた理由が分かった。


つかさ「お姉ちゃん、私に課題をくれたのは、お姉ちゃんのように失敗しないようにしてくれたんだね、ありがとう」
この言葉にお姉ちゃんは喜ばなかった。
かがみ「つかさ、あんたはお人よしよね、何でそんな良い方に考えるの」
つかさ「違うの・・・」
かがみ「つかさの子猫を見たくなかった・・・見るときっと情が移る、だから喧嘩してまで猫を遠ざけた・・・それだけ」
私はしばらく何も言えなかった。
かがみ「卑怯よね、自分は何も出来なかったのに、それを妹に押し付けて・・・でもつかさはやったわね、完璧じゃない、
    今の私でもそこまではしなかった・・・笑ってもいいわよ、怒っても、叩いても、私はもう何も言う権利もない・・・」

 更に弱気になってしまったお姉ちゃん。でも、お姉ちゃんに対して怒ったりするような感情はなかった。
つかさ「私は完璧じゃないよ、私・・・お姉ちゃんを羨ましいと思った」
かがみ「それは、皮肉、それとも嫌味」
つかさ「私、ミケちゃんを見ていれば良かったと思ってる、本を家に取りに行くことなんかなかった」
かがみ「・・・何でよ」
つかさ「もうダメなのは何となく分かった、でも、お姉ちゃんに負けたくなかった、それで本を取りに行ったんだよ」
お姉ちゃんは黙って私の話を聞いている。
つかさ「そんなのは、どうでもいいよね、もしかしたら、本を取っている間に死んじゃったかもしれない、もうそれと同じだった・・・
    お姉ちゃん、最後まで子猫を見守ったんだよ、私より凄いよ、こんなこと出来ないよ、立ち会えるって奇跡だよ」
かがみ「やっぱりあんたはお人よし、そんな事誰も言わないわよ・・・」

 お姉ちゃんはそのまま私に抱きつき泣いてしまった。今まで溜めていた涙を吐き出すように。私のように声には出していないけど、分かる。
私とは比べ物にならない悲しみを感じた。お姉ちゃんは誰にもこの事を言わないで一人でずっと心で泣いていたんだね。

 お姉ちゃんは落ち着くまで私よりも時間がかかったような気がした。
お姉ちゃんは泣き止むと、その場にしゃがんだ。結っていない髪の毛が垂れ下がって顔を隠してしまった。そのまま動きそうになかった。
私は落ちていた餌の入っていたお皿と水の入っていたお皿を拾った。
かがみ「どこへ行くの」
お姉ちゃんは髪の毛を手でかきあげて私を向いて話した。
つかさ「餌と水を持って来ようと思って、溢してあげられなかったから、最後に・・・そう思って」
お姉ちゃんはしばらく私を見てから話した。
かがみ「待って、私も・・・したいことが・・・手伝って」
お皿を地面に置いてお姉ちゃんの近くに寄った。するとお姉ちゃんは立ち上がりポケットから何かを取り出した。
つかさ「首輪?」
かがみ「そう、・・・・・・こづかい貯めて買った・・・付けることが出来なかった首輪、今日、つかさに渡そうと思ってた」
つかさ「そうなんだ、私は飼うのが決まったら買おうとしてたんだけど」
かがみ「付けて・・・いいかな」
私はダンボールからタオルに包まれたまま、ミケを取り出してお姉ちゃんに差し出した。
かがみ「寝ているみたいね、今にも起きそう」
お姉ちゃんはミケちゃんに首輪を付けた。私はそのままダンボールにミケちゃんを戻した。そしてお皿をまた拾った。
かがみ「周り汚れているわね、私、掃除しておくわ、この倉庫に掃除道具あったわよね」
つかさ「ありがとう」

 家に戻り台所に餌を取りにいくと、いのりお姉ちゃんとお母さんが居た。
いのり「つかさ、今まで何してたの、かがみも居ないし」
み き「また子猫の事で喧嘩してないわよね・・・つかさ、どうしたの」
お母さんは私を見て異変に気が付いたみたい。でも、今は言えない。言いたくない。
つかさ「帰ってから話すよ、それまで・・・何も聞かないで」
お母さんといのりお姉ちゃんは顔を見合わせ首をかしげた。
二つのお皿に餌と水を入れていると、そこにまつりお姉ちゃんが入ってきた。
まつり「お腹空いた、朝ごはんまだかな・・・つかさ居るじゃん、これから餌ね、今日で最後、かがみもこれで納得するわね」
まつりお姉ちゃんも私に異変に気が付いたみたい。私を見ると何も言わなくなった。
私は何も言わずそのまま神社へと向かった。
もう溢さないように、ゆっくりと向かった。違う、行きたくなかった。この餌は持っていっても無くなることはない。空しい。
楽しくじゃれ付くミケちゃんの姿しか思い浮かばなかった。
普段の倍の時間をかけて倉庫に着いた。

倉庫に着くと、私が落として撒き散らした餌はきれいに無くなっていた。
お姉ちゃんが居ない。掃除道具を片付けに行っているのかな。
餌をあげるために、ダンボールに向かった。
ダンボールの中にミケの姿がない。お姉ちゃんが持って行った?。どこへ。なぜ。
しばらく呆然とダンボールを眺めていた。
『ニャー』
後ろから聞き覚えのある鳴き声がした。見なくても分かる。でも後ろを振り向けない。幻だったらやだ。
『ニャー』
もう一回同じ鳴き声、さっきよりも近づいている。振り向きたい。そんな気持ちが強くなってきた。
「つかさ、悪戯だったら怒るわよ」
後ろからお姉ちゃんの声、とても強い口調。いつもの怒った時のお姉ちゃんの声。私はゆっくり振り向いた。
振り向くとお姉ちゃんが居た。口調とは違って微笑んでいる。そして、お姉ちゃんは私の足元を指差した。
足元を見ると・・・子猫が私の足にすりよっている。
つかさ「ミケちゃん」
叫んだ。
かがみ「また餌を溢すなよ、掃除が大変なんだから」
何が何だか分からない。
つかさ「これは・・・何で・・・」
かがみ「そんなことより、お腹が空いてるんじゃないの、餌、欲しがってるわよ」
そう言われて慌てて餌の入ったお皿と、水の入ったお皿をミケに前に置いた。
飛びついて餌を食べだした。私はしゃがんでその様子をただ見ていた。
かがみ「やっぱりつかさはつかさだったわね、タオルで包んだままでよく猫の状態が分かったわね、感心したわよ」
つかさ「へ?」
かがみ「へ・・・じゃないわよ」
つかさ「思い込み・・・だった?」
かがみ「さあね、そんなの知らない、でも・・・そんなのどうでもいいじゃない」
つかさ「うん、そうだね」
お姉ちゃんもしゃがんでミケちゃんを見た。顔の前にきた髪の毛を手くしでで後ろに梳かす。
かがみ「掃除終わったらいきなりダンボールから飛び出したわよ、捕まえようとしてたらここから離れちゃってね」
つかさ「きっと、お姉ちゃんの猫が助けてくれたんだね」
かがみ「・・・つかさ、あんたね・・・」
私に文句をつけようとしたのはすぐ分かった。でもすぐにやさしい口調で、
かがみ「そうかもね・・・」
そう言った。
私たちはその後はただ黙ってミケちゃんが餌を食べてる様子を見ていた。

 お皿の餌と水を空にするとミケちゃんは、自らダンボールに入りそのまま寝てしまった。
かがみ「まったく、こっちの気も知らないで・・・無邪気なものね」
つかさ「そうだね」
安心しきって寝てるミケちゃん。生きている・・・幻じゃない。喜びがどんどん湧いてくる。
つかさ「やったー、ミケちゃん、また一緒に遊ぼうね」
思わず叫んだ。するとおねえちゃんは急に真剣な顔になり、ミケちゃんに付いていた首輪を取ってしまった。そして私を睨んだ。
つかさ「どうしたの」
私がお姉ちゃんを騙そうとしていたと思っているのかな。恐る恐る聞いた。
お姉ちゃんは私に首輪を渡した。私は首をかしげた。意味が分からない。
お姉ちゃんは静かに話し出した。
かがみ「つかさ、本当に飼うつもり」
つかさ「そうだよ、あれは本当に死んだと思ったんだよ、嘘じゃないよ」
お姉ちゃんは笑った。
かがみ「つかさにあんな演技ができるとは思わないわよ・・・これは、最後に聞きたかった事・・・つかさに条件つけた時からそう決めていた」
つかさ「聞きたかったこと・・・?」
お姉ちゃんはさっきよりも真剣な顔になった。
かがみ「猫の寿命は短い、人よりもずっと短いわ」
つかさ「それがどうかしたの」
かがみ「つかさは耐えられるかどうか聞きたい、いつかくるこの仔猫の 死 を」
つかさ「えっ?!」
かがみ「よく考えて、その時にくる辛さはきっと、さっきよりはるかに重いわよ」
その時、急にミケちゃんが私の手のなかで弱っていく光景が浮かんでしまった。
かがみ「私は耐えられそうにない、・・・これが・・・飼うのを反対した理由・・」
もう当分涙なんか出ないと思っていた。それなのに、目が潤んでくる。更にお姉ちゃんは話し続ける。
かがみ「それから逃れる事もできる・・・お父さんの知り合いに引き取ってもらう」
つかさ「そんなこと・・・出来ない・・・」
かがみ「目が潤んでるわよ、それでも飼いたいなら・・・その首輪をつけなさい、その後はもう私は何も言わない・・・」
お姉ちゃんはそのまま後ろを向いてしまった。
つかさ「そんなの簡単だよ、選ぶまでもないよ」
私は首輪を寝ているミケちゃんの首につけようとした。手が止まった。手が急に重くなって首に手が届かない。
つかさ「おかしいな、付けられないよ、お姉ちゃん、何でかな」
お姉ちゃんは黙って後ろを向いたままだった。ミケちゃんは静かに眠っている。涙でミケちゃんが歪んで見える。
つかさ「ずるいよお姉ちゃん、最後の最後にこんなこと言うなんて、ずるいよ・・・」
お姉ちゃんは何も言わない、後ろを向いたまま。
どんどん涙が出てくる。でも、この涙は何かが違う、さっきまでの涙とは何かが違う。分からない。

 ミケちゃんに首輪をまわした所から何もできない。どのくらい時間が経ったか。
お姉ちゃんは後ろを向いたままだった。私がどちらを選ぶか待っている。
まつり「つかさ、かがみ、いつまでそこに居るつもり、朝ごはん片付けちゃうよ・・・二人とも・・・なにを・・」
私たちの帰りが遅いのが心配になったのか、お父さん、お母さん、いのりお姉ちゃん、そして、まつりお姉ちゃんまで来た。
かがみ「もう少し、このまま考えさせてあげて・・・つかさがどっちを選んでも、何も言わないで受け入れてあげて」
まつり「受け入れるって・・・つかさ、泣いてるじゃない、あんた達、まだいがみ合ってるの・・・」
まつりお姉ちゃんは私の方に近づこうとした。お母さんがまつりお姉ちゃんを止めた。

 皆の視線が私に集まる。お姉ちゃんだけ後ろを向いていて表情が分からない。
ミケちゃんに合ってから今までのことが次々に思い出してくる。
それと同時にお姉ちゃんの言葉が重く頭に響く・・・
ミケちゃんは静かに寝ている。私がどちらを選ぶのか待っている。
時間だけが過ぎていく。




 私は・・・決めた。
つかさ「お姉ちゃん、私は・・・」



こなた「・・・そんな事があったんだ」
つかさ「うん」
みゆき「・・・」
こなた「しかし、かがみも意地悪だな、あの場面の後にそんな選択肢を与えるなんて、ゲームでもなかなか無いよ」
つかさ「わたしも決めるのに時間がかかったよ、こなちゃんなら、どっち選んでた?」
こなた「私?、つかさ、私はつかさに引き渡しちゃったんだよ、もう答えは出てるよ」
つかさ「でも、飼いたかったんでしょ」
こなた「私、ゆい姉さんに、かがみと同じようなこと言われてね、つかさの気持ち分かるよ」
つかさ「そういえば、成実さん、私を送ってくれた時、私に何度も猫のことで注意してた」
こなた「お父さんの猫アレルギーがなくても、同じことしたかな・・・」
つかさ「そうなんだ・・・」
こなた「ところでみゆきさん、さっきから黙ってるけど」
みゆき「・・・何か、ドラマのような出来事で、何も言うことができません」
つかさ「ゆきちゃん、どっち選んでた?」
みゆき「私も、誰かにお譲りしてたかもしれないですね」
つかさ「どうして」
みゆき「それは、チェーリーちゃんとみなみさんを見ていてそう思いました、私に動物の世話は出来そうにありません」
つかさ「そうなんだ・・・」
みゆき「難しい選択であったと思います」
こなた「そうだよつかさ」
つかさ「・・・」
こなた「ところでかがみは?、まだ来ないね、どうしたんだろ」
みゆき「はっ、いけない、委員会の会議でした・・・すみません、失礼します」
ゆきちゃんは慌てて筆記用具を用意して教室を出て行った。
こなた「さすがみゆきさん、ドジっ子だね」
つかさ「かなり慌ててたね」
こなた「会議だとかがみ達遅いね、待ってる?」
つかさ「ごめん、今日は早く帰らないと・・・今日はミケちゃんの餌当番の日だから」
こなた「そっか、じゃ帰ろうか・・・ねえ、ミケ、見に行っていいかな」


 あれから一ヶ月が過ぎた。あの時、私はお姉ちゃんに首輪をつけたミケちゃんを見せた。そう、私は飼うことを選んだ。

 あれだけ反対していたお姉ちゃんも進んでミケちゃんの世話をするようになった。
猫はお散歩する必要がないから皆で餌当番だけ決めた。
いつの間にかお姉ちゃんになついたミケちゃん、家族に愛敬を振りまいて、すっかり家族のムードメーカになった。
外ではおてんばぶりを発揮して近所の子供達の人気者になった。

 ミケちゃんに首輪をつける時考えた。
お姉ちゃんの言うように、いつか耐え難い悲しみが私達家族を待っている。
私だけを考えると、進学、就職、その他・・・家を出ることもあるかもしれない。
そうなればもっと早くミケちゃんとの別れがきてしまう・・家族とも・・お姉ちゃんとも・・そんな事まで頭を過ぎった。

 それでも私は飼う方を選んだ。
ほんの少しだったっけど、育ててみてそう思った。あの時、最後に流した涙がそう予感させた。
そんな悲しみよりも、もっと大切なものをくれるような気がしたから。
それが何かは分からないけど、もう貰っているかもしれない。・・・そうだよね、お姉ちゃん。

つかさ「こなちゃん、改まってどうしたの」
こなた「私は、ミケを見捨てたんだよ・・・やっぱり行き難い・・・」
つかさ「ミケちゃんを見たかったらいつでも来ていいよ、それに、見捨ててなんかいない、こなちゃんの選択、あれで良かったと思うよ」
こなた「でも・・・私はつかさのように・・・できなかった・・・」
つかさ「答えは一つじゃない、ミケちゃんを見れば分かるよ、行こう、こなちゃん」

泣き出しそうなこなちゃんに私は笑顔で返した。




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コメント:
  • GJ!
    考えさせられる話だった。 -- 名無しさん (2011-02-23 23:19:16)

  • 泣いた -- 名無しさん (2010-02-07 11:49:24)
  • 泣ける
    その一言につきる -- キリン娘 (2009-11-20 23:16:13)
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