ID:s > k5O.k0氏:夢の未来へ P2

 ジリリリリリリリリ…

 「う~ん、…あ、あれ?ここは……私の部屋……どうして?」

 私はさっきまであの道路で倒れていたはずだった。それがなぜか自分の部屋にいた。

 「…も、もしかしたら…」

 私は今がいつなのか携帯で確かめてみた。

 「そんな…これって…」

 携帯の無機質なディスプレイが映し出した日付は未来ではなく…

 「この日って……確か、初めてあの夢を…未来を体験した日……」

 私の全身の細胞が凍りついた気がした。



 私は急いで学校へ行った。いつもよりかなり早い時間だった。
 そして教室の前までたどり着いた。中からは数人の声が聞こえる。もう何人かが登校しているようだった。
 私は震える手でドアを開けた。

 「…ゆたか…、おはよう…。早いんだね」
 「みなみ…ちゃん」

 私はみなみちゃんのそばにより顔を胸にうずめて泣いた。
 みなみちゃんは驚いた様子だったが何も言わずに抱き返してくれた。


 その後もいつも通りに学校は始まりそして終わりを告げた。
 ちなみに学校は全てが前回と同じというわけではなかった。
 前回は数学の時間に体験していた予知夢が、今回は一時間目だったりした。
 それでも私には未来を夢で体験する力が残っていた。
 確かみなみちゃんが車に轢かれたのは今から数日後、今回は絶対に…



 そしてその数日後、みなみちゃんはまた死んでしまった。



 私は助けようとした、意識が戻ったと同時にみなみちゃんへと走った。
 でも助けられなかった。助ける直前でなぜか体勢を崩してしまう。
 今回みなみちゃんを殺したのは大型のバスだった…

 そしてまた私の視界はブラックアウトした。

 起きれば予知夢に目覚めたあの日の朝。

 それを何度も繰り返す、でも一度もみなみちゃんを助けることが出来なかった。

 助ける直前になぜか体勢をくずしたり、はたまたみなみちゃんを見失うことさえもあった。





 そして私は今に至る。この今だって暦上では何度も体験した。
 親友の死の時と未来が体験できるようになったあの日とのループの狭間で…何度も…何度も…

 目の前には親友だったものが…動くことなく横たわっている。
 何も見えない。私の目は涙で覆われている。その涙も…もはや意味を持たないのかもしれない。
 聞こえるのは近くの人の悲鳴…悲鳴…悲鳴…
 その波に飲まれ、私の意識はブラックアウトした…



 ジリリリリリリリリ…

 なんだか眠った気がしない…、でもどれだけ寝ようときっと睡眠はたりないんだろうなぁ…。
 私は携帯を開き日付を確認した。
 日付はまた戻っていた、私が未来を体験できるようになったあの日に…
 私の気分は嬉しさ半分、残りの半分は…私にはわからない…
 まだループも最初の頃はみなみちゃんを助けることが出来るかもしれないと喜んでいたが、今はあまりわからない。
 何度も何度も親友の死の瞬間を見てきた私には、昔のような繊細な感情は消えちゃったのかもしれない。
 ある時は車に轢かれ、ある時は電車に…、そしてある時は落ちて…
 どれも助けることが出来なかった…。
 今度こそ…、この決意も何度目になるのかなぁ…。
 …そうだ、思い出した、確か今回で…



 私の学校生活は特に普段と変わらない。
 朝学校でいの一番にみなみちゃんの無事を確認しその後はいつも通りにクラスで過ごしている。
 ただ最近はよく「なんだか暗いよ」とか言われるようになった。
 ここ最近のループではこなたお姉ちゃんも、そうじろうおじさんも少し心配している。
 私も努めて明るく振舞っているつもりだけど、なんだか余計に不振がられてるみたい。
 …もうどうすればいいんだろう。



 そしてついにあの日が来た、みなみちゃんが死ぬ日。…それが鎌首をもたげやって来た…。

 私はまた夢を見た、あの未来を体験する予知夢を…
 どうやら今回は車のようだ、後ろからいきなりみなみちゃんに向かって…
 私の夢はそこで覚めた。

 目覚めると自分の部屋、自分のベット。
 そして私は日課となった日付確認をした。
 どうやらみなみちゃんの死ぬ日と私がこの予知夢も能力を得る日にちは毎回同じらしかった。

 私はみなみちゃんとの待ち合わせ場所に向かった。


 その日は二人で買い物をする約束をしていた。
 二人で適当に町をぶらつき色々な店を回ることが目的だった。
 そしてその時間は来た。

 私の視界が急にブラックアウトする、そして目を開けるとそこは夢で経験した未来の場所、そして時刻は夢の終わったその直後。
 すべていつもどおり、そして後ろを見ると向かってくる車が一台私はみなみちゃんへ向かって走った。
 まだ車とみなみちゃんとの間には距離がある。
 もう少し!もう少し!今度こそ親友をみなみちゃんを助ける!
 そして私はみなみちゃんのすぐ近くまで来た。間に合った…?

 しかし私の体はバランス崩した…。

 その瞬間私は見た、そしてやっとわかった。
 私の体を倒した…、ううん、押し返した…



 みなみちゃんを…



 目が覚めるとそこは私の部屋…、見慣れた天井、見慣れた家具達。
 また戻ってきた。
 例によって携帯の時間を確かめると、やっぱり戻ってきたみたいだった。
 私は今までのループの記憶の中からついさっきの記憶を掘り起こした。
 そう…、私が今までみなみちゃんを助けられなかったのは、突然妨害されたり、みなみちゃんを見失ったりしたからだ。
 考えれば分かることだったのかもしれない。
 私はさっきの記憶のみなみちゃんを思い返し、一つの結論を出した。

 私が今までみなみちゃんを助けることが出来なかったのは…みなみちゃん自身が私を妨害したから…
 思えば最初のループの時から腑に落ちなかったことがあった。
 私が幾度未来を見て、そしてその後に降りかかる災難からみなみちゃんを守っても、私は満足できなかった。
 …それは同じくらい助けてもらったからだ。しかもよく考えれば簡単に出来ることではなかった。
 私が倒れそうになった時、みなみちゃんは支えてくれた。
 あれだっておかしい。みなみちゃんはその時私の方をほとんど見ていなかった。
 にもかかわらずみなみちゃんはすごい速さで私が倒れるのを止めてくれた。そう…まるで…

 私が倒れるのを知っていたかのように…

 まさか…、まさかね…、みなみちゃんが私と同じ予知夢を…、未来を…経験してた…とか……、まさかね。

 「ゆーちゃーん!朝ごはんできたよー!」

 下からお姉ちゃんの声が聞こえた。
 私はとりあえず制服に着替えて台所へと向かった。


 私はその後朝食をとり学校へと向かった。
 教室にはすでにみなみちゃんがいた。
 よく考えればこれも毎回変わらない。ループした最初の日は必ず私より先に教室にいる。
 私のこと心配してくれてるのかな?
 少し聞いてみることにした。

 「おはよう、みなみちゃん。早いんだね」
 「うん…、少し目が覚めたから…」
 「何か怖い夢でも見たの?」
 「そう…」
 「どんな夢?」
 「………覚えてない」

 やっぱりはぐらかしてきた。
 とりあえず私は予知夢のことやループのことを深く追求するのはやめた。
 それはループの終わりの日まで続いた。


 最終日、私はまた未来を見た、今度もみなみちゃんに乗用車が向かってくるというものだった。
 今回は喫茶店で会計をして店から出てきて車に気づくまでの未来を体験した。
 …それにしてもなんだかみなみちゃん、今までと少し様子が違う様な気が…

 この日はみなみちゃんと二人でお買い物をすることにした。
 最近は二人で出かけることが多い。その方がうまく動けるから。
 それに前にでかけずに家で最終日を過ごしたらたくさんの人が死ぬ結果となった。
 さすがに未来を経験していたとしてもかなりつらかった。
 だから最終日は必ずどこかに出かけることにしている。

 朝に喫茶店で待ち合わせをしていた私達はさっそくお目当ての店に行く……はずだった、予定ではね。

 「ねえ、みなみちゃん」
 「…なに?」

 私は今日まで溜め込んできた疑問を全てぶつけることにした。

 「みなみちゃんってわかってるの?」
 「…何が?」
 「未来が…」
 「…そんなわけない、どうしたの、急に?」
 「ここ最近みなみちゃんが私を助けてくれる時、
 みなみちゃんはまるで私がこうなるってわかっているような感じで助けてくれるからね」
 「ただ単に気づくのが早かっただ…」
 「みなみちゃん、もういいよ」

 私はみなみちゃんの言葉を無理矢理さえぎった。

 「わかってるんだよ、みなみちゃんが私と同じように夢の中で未来を体験できるってね」
 「……ゆたか……」

 私はやっと話してくれると思った。

 「何を言ってるの?」

 私の期待は砕かれた。

 「ゆたか…本当にどうしたの?私未来なんてわからないよ。それにゆたかは見えてるの?
 …その未来が…夢の中で…」
 「……」

 私はみなみちゃんの顔を見た、そこには親友を本気で気遣っている心優しい岩崎みなみの顔があった。

 「…ゆたか…」
 「…みなみちゃん、これから話す事は全部本当だから」

 私は深く深呼吸し今までのことを全て打ち明けた。


 「…そんな…私が…今日…」
 「うん…ごめん…」
 「…ゆたかが謝ることじゃない、それにゆたかはいつも私を守ってくれた。謝る必要なんてない」
 「うん…うん……みなみちゃん…みなみ…ちゃん…」
 「ゆたか…、今までありがとう…」

 私達は人目もはばからずに抱き合い泣いた。
 おかしいな…、今まで何回も何回も流してきた涙が…、なんだか違うものに感じるよう…
 そっか…、私つらかったんだ。どれだけ頑張っても親友一人救えない。
 それでも一人でやらなくちゃいけない。そう決め付けてた。
 最初から打ち明けるべきだったんだ。私ってばかだなぁ…。

 「ゆたか、大丈夫?」
 「うん、もう平気だよ」

 私はそう言い、みなみちゃんに微笑んで返した。
 みなみちゃん顔が真っ赤だよ。

 「…一つ聞きたいんだけど、これでゆたかは何回やり直したの?このループを…」
 「……」

 私は一つ一つのループを思い出した。どれも決していい思い出ではないけど、全部が全部悪い思い出でもないのかもしれない。
 …そんなこともわからなかったんだ、でも今なら分かるよ。
 みなみちゃんと一緒にいられて楽しかったから。

 「…今回で103回目だよ」
 「そ、そんなに…」
 「大丈夫だよ…もう…大丈夫。過去102回では救えなかったけど今回は…今回こそは…」
 「…ゆたか…」
 「みなみちゃん、泣かないで」
 「…うん…うん…ありがとう…今まで…本当に…………ありがとう」

 その後落ち着いた私達はいったん店を出ることにした。
 …そろそろ周りの人たちの視線が痛かったしね…
 そして私は会計を払うためにレジへ向かう。

 視界が一気に黒く…黒く…染まった…



 目を開けたその時見えたのはこっちを見ているみなみちゃん、そして迫る自動車。
 今朝見た未来の続きだった。

 「みなみちゃん!」

 私は走った、今までのどんな時よりも早く、力強く駆けた。
 私は馬鹿だ、なんで喫茶店で私が今朝見た夢の…未来の内容を伝えなかったんだろう…。
 もういちいち自動車がどこまで迫ってるかなんて気にしない。
 みなみちゃんだけを見据えて私は走った。
 今度こそ!今度こそ!
 その時みなみちゃんも自動車に気づいた。
 みなみちゃんまでもう少し。私は手を伸ばした。せめてその場から突き飛ばせれば…。
 するとみなみちゃんが私を後ろへ飛ばそうと手を伸ばした、これが今までみなみちゃんを救えなかった理由。
 みなみちゃんは今までずっと私をかばってくれてたんだね。
 私はその手をかわしてみなみちゃんに触った、このまま突き飛ばせば…………!



 そこから先はわからない、わかるのは自分が地面に倒れてること。
 それとその横でみなみちゃんが倒れていること。
 みなみちゃんは息も絶え絶えだった。私もなんだか体が熱いしくらくらしてきた。
 私はそこでようやくなにがあったか理解した。


 あの時私はみなみちゃんを突き飛ばした。


 …でもすでに遅かった。
 もう車はすぐそこまで近づいていた。
 それがわかっていたからこそ、助からないと思ったからこそ、せめて私だけでも助けようと、
 みなみちゃんは私反対に押そうとしたんだ。さっきも、そして今までも…
 今更になって理解した。私はただ単に足を引っ張っただけ。
 私が何のアクションも起こさなければ、あるいはみなみちゃんは助かったかもしれない。

 「…ゆたか…」

 みなみちゃんがこちらへ首を向けて話しかけた。

 「みなみ…ちゃん…、ごめんね、ごめんね」

 体中から大量の血液が流れているのにもかかわらず私は涙を流していた。

 「謝る…必要は…ない…よ…」
 「みなみちゃん…」

 私はみなみちゃんの手をにぎった、でも私の手にはもうほとんど感触がない。
 目もどんどん霞んできた。

 「助けようとしてくれて…ありがとう、ゆたか。ずっと…親友だからね…」

 みなみちゃんはそっと目を閉じた。

 「もちろん…だよ…、みなみ…ちゃん、…ありが…とう」

 私も目を閉じた。
 頭の中を今までの記憶が駆け抜けていく。
 よく考えればみなみちゃんはどんな時でも私を助けようとしてくれたなぁ。
 元はそんなみなみちゃんに恩返しがしたかった。
 そんな時にこの予知夢で未来を経験し、それを元にみなみちゃんを助けてきた。
 もしかしたらこれは私が望んだから持ってしまった力だったのかもしれない。
 そう考えれば、みなみちゃんが危険な時の一瞬手前の未来しか見なかったのも納得がいく。
 …全ては私のせいだったんだね。
 こんな私でもみなみちゃんはまだ友達でいてくれるかなぁ…

 私はかすかに動く口を開いた。
 もはや声になるかすらもわからないけど、私はみなみちゃんに向かって言った。






                  もしまた夢が見れたなら 二人で笑いあってる夢が見たいなぁ



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