白雪が染まらない 発生編

斧を振り上げた状態のままで、動きが止まる。
 自分が決めた事とはいえ、やはりこの行為は気が引ける。
 だが、ここまで来た以上後には引けない。
 少女は意を決して、目の前のソレに斧を振り下ろした。


- 白雪は染まらない~発生編~ -


 とある冬の日。こなた、かがみ、つかさ、みゆき、それにゆたかとみなみの六人は、雪山へとスキーを楽しみに来ていた。
 大学受験も無事終わり、その慰労もかねてと、みゆきがこの旅行を提案してきたのだ。


「へー、思ったより広いねー」
 こなたがゲレンデを見渡しながら、感嘆の声をあげた。
「うん、これなら気持ちよくすべれそうね」
 隣にいるかがみが、それに賛同する。
「喜んでいただけて何よりです。皆さんをお誘いしたかいがありました」
 その後ろから、みゆきがにこやかにそう話し、さらにその後ろでは、みなみがふらつくゆたかの身体を支えて付いてきていた。
「…ゆたか、大丈夫?」
「う、うん…なんとか…」
 こなたがゆたかの傍にいき、心配そうに顔を覗き込んだ。
「ゆーちゃん、あんまり無理しないでよ?」
「大丈夫だよ、お姉ちゃん。みなみちゃんも付いてくれるし、少ししたら慣れるよ」
「うん、だったらいいけど」
 そう言ってこなたは、かがみの隣に戻った。スキー板を履いているにもかかわらず、その足取りは軽快だ。
「それにしても、こう見てるとこなたがスキー初めてって信じられないわね…」
 それを見たかがみが、感心したように呟く。
「歩くくらい簡単でしょ?」
「…そうだといいんだけど」
 かがみはチラッとこなたと逆の方を見た。そこには、先ほど転んで立ち上がれずにもがいているつかさがいた。
「おねーちゃーん!助けてよー!」
 かがみは溜息をつくと、つかさに手を貸し起こしてあげた。そして、一同の顔を見渡す。
「それじゃ、スキーの経験が無いのはこなたとゆたかちゃんだけね?」
 その言葉にこなたとゆたかが頷く。
「かがみさん達はご経験がおありなのですね?」
「うん…って言っても、中学の修学旅行の時にやったことあるってだけだけどね」
 みゆきにそう答えたかがみは、再び一同を見渡した。
「じゃ、わたしはつかさ見るから、みゆきはこなたを教えてあげて。みなみちゃんはゆたかちゃんをお願いね」
「わかりました」
「…はい」
 そうして、各々が思い思いにスキーを楽しみ始めた。

 

「いやっほー!」
 こなたが歓声と共に、ゲレンデに見事なシュプールを描く。
「…いやまあ」
 それを見ながら、かがみは呆れたような声を上げた。
「アレがホントに初心者の滑りか?みゆき、どんな教え方したのよ…」
 そして、隣にいるみゆきにそう聞いた。
「いえ、わたしは基本的なことしか…泉さんは、その辺りの上手な方の滑りを真似たようでして…」
「ラーニングかよ。青魔道士かあいつは…それに比べると…」
 かがみは自分の後ろをチラッと見た。そこには、先ほど雪に顔面から突っ込んだつかさが座り込んでいた。
「…こなちゃんと一緒にしないで…」
 顔にまだ雪を残したままのつかさが呟く。
「いや、まだ何も言ってないけど…まあ、だいぶマシになってきてるからもうちょっと頑張ろ?」
 かがみは、苦笑しながらつかさの手をとろうとした。
「二人ともスキありゃー!」
 その時、こなたが猛スピードで滑ってきて、かがみ達の傍で急ブレーキをかけて雪を浴びせかけてきた。
「…あんたねえ」
 下半身を雪まみれにしながら、かがみがこなたをジト目で見る。同じく下半身が雪まみれになっているみゆきも、少し困った顔でこなたを見ていた。
「あ、あら、怒った?…ちょっとしたジョークだよー」
「いや、わたし達はいいんだけどね…」
 かがみは自分の後ろの方を指差した。こなたがそちらの方を見ると、顔面を真っ白にしたつかさが座っていた。
「…つかさ、いたんだ…」
「こなひゃん、ひほいほー」
 口に入った雪を吐き出しながら、つかさがこなたを非難する。
「いや、そのなんてーか…ごめん」
 つかさの惨状に、流石に罪悪感を覚えたこなたは素直に謝った。
「…ねえ、みゆき。なんか、雲行き怪しくなってきてない?」
 そんな中、かがみが空を見上げたままみゆきにそう聞いた。
「そうですね…山の天気は良く分かりませんが…」
 みゆきも空を見上げる。空では、色の濃い雲が不気味にうごめいていた。
「吹雪くといけませんし、早めにペンションに戻りましょうか?」
「そうね」
 かがみは頷くと、なぜか雪合戦に発展してしまっているこなた達に声をかけた。
「つかさ、こなた。なんか天気悪くなりそうだから戻るわよ」
 つかさとこなたは頷くと、雪玉をぶつけ合っている手を止め、かがみ達の方にやってきた。
「ゆたかちゃんとみなみちゃんは何処だろ。携帯の使えない場所って、こういう時不便よね…こなた、みゆき。悪いけど、二人でゆたかちゃん達探してペンションに戻ってくれる?」
「いいけど、かがみは?」
「…つかさが一人で戻れなさそうだから、連れてくわ」
「ああ、なるほど」
 納得するこなたの後ろで、つかさが不満そうに口を尖らせていたが、かがみは無視することにした。
「…あの、そう言う事でしたら、わたしがつかささんと行きますので、泉さんとかがみさんで、その…」
 かがみの後ろから、みゆきがそう言い難そうに言ってきた。
「ん、なに?なにか不都合でもあるの?」
「あ、いえ…そう言う事では…いえ、そうですね…すいません、忘れてください」
 みゆきはかがみに頭を下げると、こなたの方を向いた。
「…泉さん、参りましょう」
「あ、うん」
 こなたは何か腑に落ちないといった表情で、みゆきに付いていった。
「ゆきちゃん、何か変だったよね?」
「…そうね」
 つかさとかがみはお互い顔を見合わせて、首をひねった。

 


「遅いわね」
「…うん」
 宿泊先の、みゆきの親戚が経営するペンションについたかがみとつかさは、玄関の前で他のみんなが戻ってくるのを待っていた。
 かがみが空を見上げると、さっきよりも一層雲が濃くなっていた。
「…不味いわね。本格的に天気崩れそうよ」
「お姉ちゃん、あれじゃないかな?」
 つかさが指差した方を見ると、こなた達四人がこちらに向かい歩いてくるのが見えた。
 様子がおかしい。歩いてくる四人を見て、かがみはそう思った。
 先頭を歩いているのはみなみだが、他の三人を置いていかんとばかりに早足だ。そのみなみにゆたかが何かを言いながら、必死に食らい付いていた。みなみは人前ではあまり感情を表に出さないタイプだが、かがみにはみなみが怒っていることがはっきりと分かった。
 その後ろには、しょぼくれたように俯いて歩くみゆきと、心底困り果てた表情のこなたが続いていた。
「お姉ちゃん、なんか変だよ…」
 つかさが心配そうに呟きながら、かがみのスキーウェアの袖を引っ張った。四人が近づいてきて、つかさにも様子がおかしい事が分かったようだ。
「うん…なにかあったのかしら?」
 かがみは、とりあえず先頭を歩くみなみに話を聞こうと近づいたが、みなみはかがみの方を一瞥すらせずに横を通り抜け、ペンションへと入っていった。
「みなみちゃん!待ってってば!わたし、気にしてないから!みなみちゃんってばー!」
 更に息を切らしながら追いついてきたゆたかも、かがみ達の横と通り抜け、みなみを追ってペンションに入っていった。
「…なんなのよ、一体」
 かがみは、少し遅れてやってきたこなたに事情を聞くことにした。
「ねえ、みなみちゃんどうしたの?なんか変よ」
「んー…いや、それがね…」
 こなたが頭をかきながら語った話によれば、みなみ達を見つけたときにみゆきがスキーでゆたかにぶつかりかけたと言う事だった。
「それで、なんかみなみちゃん怒っちゃって…ゆーちゃんもわたしもなんとかなだめようとしたんだけど、なんか聞き入れてくれてくれなくて…」
「…すいません…わたしのせいで…すいません…」
 話しているこなたの後ろで、みゆきはずっとそう呟くように謝っていた。
「みゆきさんもずっと謝ってるのに、みなみちゃんなんであんな意固地になってるんだろう?」
 こなたが心底理解できないと言った風に首を捻る。それについてはかがみも同感だった。
 いくらゆたかが自分にとって大切な友人であるとはいえ、実際にぶつかった訳ではないし、わざとぶつけようとした訳でもない。みゆきも謝っているし、こなたやゆたかもなだめようとしている。そして、みゆきもまたみなみにとっては大切な人ではなかっただろうか?
 どうにも腑に落ちない。かがみが考え込んでいると、不意に袖を引っ張られた。
「かがみ、早く中に入らないと…」
 こなたの声で我に返ると、顔に冷たい雪と風が叩きつけられた。
「そうね、いきましょ」
 かがみはこなたに頷くと、ペンションの入り口に向かった。

 

 夕食を終えたこなた、つかさ、かがみは、ペンションの一階にあるリビングでそれぞれ時間を潰していた。さっきの件があるためか、くつろぐと言うには程遠いものだが。
 みゆきは夕食を覆えた後、すぐに自分の部屋に篭ってしまい、みなみにいたっては夕食に顔を出すこともしなかった。ゆたかはつい先ほどみなみの分の夕食を持って、部屋に向かった所だ。
 客室はすべて二階にあり、二階へ上がる手段は今こなた達がいる居間から見える階段のみだ。部屋は全部で四部屋。そのうちの三部屋を、こなたとかがみ。つかさとみゆき。ゆたかとみなみの組み合わせで使っている。もう一つは空き部屋だ。
 部屋はさほど広くなく、トイレも風呂も無い。それらの施設は全て一階にある共同のものしかなかった。全ての客室に一つづつある窓の外には、ベランダが設置されていたが、このペンション自体がスキーシーズンしか開かないため、外に出る客は滅多になく、こなたがペンションのオーナーに「これ、無駄じゃない?」とか言って、かがみに頭を叩かれたりしていた。

「凄い音だね…」
 つかさが隣に座っているこなたにそう呟いた。外は相当な吹雪らしく、風の音がまるで地鳴りのようだった。
「うん…あ、ゆーちゃん。みなみちゃんどうだった?」
 つかさの話を聞きながらDSに興じていたこなたが、二階から降りてきたゆたかに気がつき声をかけた。
「…ごめんなさい…なんか、みなみちゃん怖くて、部屋にいてられなくて…」
「謝ることないけど…ゆーちゃんが怖いって、みなみちゃん相当だねー」
 こなたがどうしたものかと、腕を組んで考え込む。
「まあ、少し時間おくしかないわね…今晩くらいは、みなみちゃんもみゆきもそっとして置いた方がいいかもね」
 夕飯の後からずっと考え込んでいたかがみが、顔を上げてそう言った。
「そうだね…それじゃわたしたち、何処で寝よう?」
 つかさがゆたかの方を向いてそう言った。
「オーナーさんに言って、開いてる部屋使わせてもらおうか?みゆきの親戚だって言うし、ソレくらいの融通は効くでしょ」
 かがみがそう言った後、大きく溜息をついた。
「…なんでこんなことになっちゃってるのかしらね」
 目をつぶって、もう一度溜息をつく。そのかがみの腕を、こなたがつついた。
「ん、なにこなた?」
「いや、全然関係ないんだけどさ。このペンションのちょっと向こうにある建物って、何かなって…」
「本気で関係ないな」
 かがみがジト目でこなたを見つめる。
「あ、それわたしも気になってた」
 そのこなたの隣で、つかさも手を上げてそう言った。
「あんたら、ホント変なところが似るなあ…あれは、ボイラー施設らしいわよ」
「ボイラー?お湯沸かすの?」
「そ、お湯沸かすだけだから、ボイラーって言うより大型の給湯器って感じらしいけどね。個々のお風呂とか炊事場。あと暖房に使うお湯をあそこで沸かしてるらしいわ。旧型で事故ったりすると危ないから、ペンションを改築した時にちょっと距離を離したらしいわ」
「へー、ここの暖房、お湯なんだ」
「うん。一階の床下と中二階、それに屋根にお湯を通して暖房にしてるらしいわ。屋根のは屋根自体を温めて、雪が積もり過ぎないようにする意味もあるみたい」
「ふーん」
「だけどこの暖房システム、ちょっと欠点があってね、各部屋ごとの温度調整が出来なくて、温度が全部屋一緒になっちゃうらしいの」
「なんか…お姉ちゃん詳しすぎるね」
「うん…」
 急に雄弁に語りだしたかがみを、つかさとこなたが引いた位置から眺めていた。
 それに気付いたかがみが、視線を逸らして頬を染める。
「…わ、わたしも気になったから、オーナーさんに色々聞いたのよ…悪い?」
「悪くは無いけど、ちょっと可愛い」
「う、うるさいなあ…」
 そんな三人をクスクスと笑いながら見ていたゆたかは、少し気が楽になるのを感じていた。

「…あれ…みなみちゃん!?」
 そして、二階から降りてくるみなみを見つけ、そちらの方へ駆け寄った。みなみの方でもゆたかに気がつき、ぎこちない笑顔を見せた。
「み、みなみちゃん…あの…その…」
 何から話していいか分からずおたおたしているゆたかを、みなみは手で制した。
「…ごめん、ゆたか…少し用事があるから、後で…」
「え?用事?」
「…うん…雪でよく見えなかったけど、ボイラー施設が少しおかしい気がしたの…それで少し見てこようと思って…」
「そうなんだ…で、でもそれってみなみちゃんが行かなくても…オーナーさんに言って見てきてもらおうよ。外、凄い吹雪で危ないよ」
「…大丈夫、こう言う事は初めてじゃないから…それに、あの人と少し離れて頭を冷やしたかったし…」
 みなみはゆたかから離れ、オーナーとその奥さんが寝泊りしている部屋へと向かった。
「みなみちゃん…」
 その背中を、ゆたかが心配そうに見送る。
「…あの人って、みゆきさんの事だよね」
「うん…これは相当ね…」
 いつの間にかゆたかの後ろにいた、こなたとかがみがそう囁き合っていた。
「ねえ…間違ってたらアレだから、言わなかったんだけど…」
 さらにその後ろから、つかさが言い難そうにそう声をかけてきた。
「ゆきちゃんとみなみちゃんって、この旅行始まってから一回も会話してないよね…?」
 つかさの言葉を受けて、かがみとこなたが顔を見合わせる。
「そういえば…そうよね」
「それじゃ、みゆきさんとみなみちゃんは旅行が始まる前から仲悪くなってたって事?」
 かがみがしばらく顎に手を当てて考え込み、そしてゆたかの方を向いた。
「みなみちゃんをこの旅行に誘ったのは、ゆたかちゃんよね?」
「はい、高良先輩からお誘いをいただいた時に、みなみちゃんも誘って欲しいって…」
「それもおかしな話よね…みゆきがみなみちゃんを誘って、そこからゆたかちゃんに…ってのが自然よね」
 かがみの隣で同じように考え込んでいたこなたが、「あっ」っと声を上げた。
「もしかしてみゆきさん、仲直りのきっかけにしたくてみなみちゃんを旅行に誘ったのかな?」
「なるほど…で、自分じゃ誘いづらいからゆたかちゃんに頼んだ…」
「そうそう」
「でも、仲直りどころか悪化してるよね…」
 ポツリと呟いたつかさに、かがみとこなたのジト目な視線が集まる。
「つかさ、あんた…」
「それはそうなんだけど、言っちゃダメでしょ…」
「…ごめんなさい」
 そんな事を話してるうちに、みなみがオーナーの部屋から出てきた。
 みなみは雪山登山に使うような、ゴツイ防寒具に身を包んでいた。見た目より動きやすいのか、みなみは普段と変わらない足取りで玄関に向かい、靴を履き始めた。
「みなみちゃん…気をつけてね」
 その背中に、ゆたかが声をかける。
 みなみは無言で片手を挙げて答え、玄関を開け吹雪の中へと入っていった。

 


 みなみが出てから十分ほどした頃、こなたが不意に天井を見上げて首を傾げた。
「こなた、どうしたの?」
 それを見たかがみがそう聞いた。
「うん…なんか変な音聞こえなかった?ドスンって感じの」
 それを聞いたかがみもこなたと同じように天井を見上げた。
「わたしは聞こえなかったわね…屋根になにか当たったのかしら?この風だと何が飛んでてもおかしくないし」
「そうだね…でも、そういう飛んでくるのって、窓に当たると危なくない?」
「…そういう対策してないっぽかったけど、大丈夫なのかしらね」
 二人はそこで会話を切り、またそれぞれ没頭していたことに戻った。

 それから二十分ほど後。

 ガシャンっと、今度ははっきりとした音がこなたの耳に飛び込んできた。
 思わずこなたはかがみの方を見た。かがみも今のは聞こえていたのか、驚いた顔でこなたの方を見ていた。
「かがみ、今の…」
「ええ、今のはわたしも聞こえたわ」
「え、何?どうしたの?」
 つかさには聞こえていなかったらしく、こなたとかがみの顔を交互に見ながらおろおろしていた。
「ガラスの割れる音!二階よ!みんな付いてきて!」
 かがみは大声でそう言うと、階段を駆け上がった。

 


「わたしは自分の部屋を見てくるわ。こなたは空き部屋。つかさとゆたかちゃんも自分の部屋を見てきて」
 二階に上がったかがみは、あとからついてきた三人にそう指示を出した。
「わかったよ」
「うん」
「わかりました」
 中央の廊下を挟んで、田の字に配置された二階の客室。上がってきた階段から見て、右手の手前がかがみとこなたの部屋。その奥が空き部屋。左手の手前がみゆきとつかさの部屋で、ゆたかとみなみの部屋がその奥だ。
 かがみは自分の部屋のドアを開けて中を覗き込んだ。鍵はかかっていない。トイレ等が全て一階にあるため、いちいち開け閉めが面倒だし、自分たち以外に客がいないので、鍵はかけないでおこうと決めていたのだ。
 かがみは自分の部屋が無事であることを確認し、外に出ようとした。
「ゆきちゃん!開けて!ゆきちゃんってば!」
 不意に聞こえたつかさの叫び声。かがみは部屋を飛び出しつかさの方を見ると、つかさは自分の部屋のドアを叩きながら、みゆきの名を呼んでいた。
「つかさ、どうしたの!?」
「お姉ちゃん!鍵が!鍵がかかってるの!おかしいよ!なんでゆきちゃん鍵を閉めてるの!?」
「つかさどいて!」
 騒ぎを聞きつけてきたこなたが、つかさとドアの間に身を滑り込ませ、耳をドアに当てる。そして、弾かれたようにかがみ達の方を向いた。
「風の音!窓割れたのこの部屋だ!」
「つかさ!鍵は!?」
「部屋の中だよ!」
「かがみ!ドア破ろう!」
「待ってこなた!下に行ってマスターキーを…」
「ど、どうしたんだね?この騒ぎは…」
 聞こえた声に、かがみ達四人が一斉にそちらを向く。そこにはペンションのオーナーが立っていた。
「オーナーさん!この部屋のマスターキーを持って来てください!」
 かがみにそう言われ、オーナーは驚いた顔を見せた。
「マスターキー?どうしてまた」
「この部屋の窓が割れたみたいなんですが、鍵がかかってて入れないんです!中にはみゆきがいてるはずなのに!」
「な…なんだって…」
「早く!」
 かがみに急かされ、オーナーは慌てて階段を駆け下りていった。
 それを見届けた後、かがみは部屋のドアの方を見た。こなたとつかさがみゆきの名を叫びながらドアを叩いている。ゆたかはどうしていいか分からないようで、泣きそうな顔でこなた達を見ていた。
「…なにが起きたっていうのよ」
 かがみの呟きは、誰にも聞こえなかった。


- つづく -

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