ID:XzcPHcAO氏:続.後悔

「むーむー」
「やれやれ、あんた私のノートばっかり見てるからこうなるのよ。たまには良い薬になるわね」

くぅっ、かがみの言うことがいちいち正論だから頭が痛い。
はあぁあ、今日の深夜アニメは録画してあるけど、出来ればリアルタイムで見たいな。
こんなものそれまでに終われば良いんだけど。

「ごめんね、こなちゃん……(>_<)じゃあ、トランプやろうよ。こなちゃん抜きで!」

ガーン!
つ、つかさ!?あんた鬼だよ……。ひぐらしの*く頃にの鬼*しにでも合いそうな気がして怖いよ。

「では大富豪をいたしましょうか。ルールを確認しましょう」

くそーっ、本当にみんな私抜きでゲームしてじゃんよ。
こ、こんなもの!真面目にやってられっかてんだい!
と、そんな時、天国と地獄の対比が、非常にわかりやすく再現された私の部屋に天使が舞い降りた!

「お姉ちゃん入るよぉ~」

そう、殺伐した部屋を照らし出したのは言わずもがな、我が妹ゆーちゃんであったあぁぁあぁっ!

「ジュースとお菓子を盛ってって欲しいって、おじさんが」

おぉっ、ゆーちゃんがジュースとお菓子をお盆を両手で抱えているではないか!
ふぅ、これでサボリ、ならね気分転換が出来るや、ヒャッホーイ……、なんて、今ふと私の頭にはブラックホールよりもずっと暗い暗~い考えが頭によぎったのだ。
この決して実行してはならない禁断の策略を、今すぐにでも実行しなくてはならない。
今だ、今しなければ二度とチャンスは訪れないかも知れない。
でもダメだ!
そんな事をしてしまったら、私は鬼になってしまう!
私の頭の中では天使のみなみちゃんと悪魔のみなみちゃんが
『そんな事しちゃダメ……』『大丈夫、きっとかわいいよ。やろう……』
静かに、囁くように争っている。
そして輪っかが頭についたみなみちゃんが、『う、うん、やろう……』『ふふ、ごめんね、ゆたか』
コウモリの翼が背中についたみなみちゃんに従った。

いざ、私は行動に移る。
ゆーちゃんがお盆を持って、一歩ずつこちらに近づいてくる。
私の前を通り過ぎ、オレンジジュースがいっぱい入ったグラスを乗せたお盆を、小さな机に乗せようと、最後の一歩を踏み締めようとする。
刹那!私は駿足の早さで足を延ばし、ゆーちゃんの足の前へと張り出した。

「うわっ」

どんがらがっしゃーん

無防備に私の足につまづくゆーちゃん。
オレンジジュースが水滴が一粒ずつはじけ散り、お菓子が宙を舞う!
その光景が、まるでスローモーションのように、鮮明かつ鮮やかに私の目に映し出された。
そしてこの隙に、宿題であるノートをオレンジジュースの着地地点へと、目立たぬように素早く差し出した。
すると見事にノートは黄色く染まり、そこに書かれた文字たちが一瞬で滲み、ピカソの芸術的絵画のようになった。

そして私は、白々しくも私はゆーちゃんのもとへ。

「大丈夫?ゆーちゃん!」
「えぅっ、うっ、ごめんなさい!かがみ先輩のノートが……。こ、こんなにびしょびしょに」
「いいのよ!気にしないで!こんなの拭けばすぐに元通りよ!こ、こなた?ティッシュ取ってくれない?」
「ラジャッ」

かがみは私が渡したティッシュでノートを拭く。しかし文字はますますピカソを超えた芸術作品に化けるばかりで、明らかに文字とは呼べないものになってしまっていた。

「ごめんなさい!ごめんなさい!私のせいで先輩のノートが……」
「あ、あははははは……。大丈夫よぉ。このくらい平気平気……。みゆきのノートを見せてモラウシ……ネ?」
「は、はい。大丈夫ですよ!授業の内容は同じですから」
「あう……。すみません……」

こうして私が宿題をするという罰ゲームはうやむやになっていき、私は解放されたのである。

しかし、事はこれで済んだ訳ではなかった。
次の日、学校からつかさ達と帰ろうと言うとき、ゆーちゃんとみなみちゃんが私の前に立ちはだかった。
私の目線がゆーちゃんと合うと、小動物のようにビクリと怯えてみなみちゃんの背中へと隠れてしまった。

「泉先輩。ちょっといいでしょうか。お話したい事があるのですが」

嫌な予感がする。周りの空気が急に重たく感じられるようになった。
みなみちゃんから発せられるオーラは、私の知る限りの全てのアニメキャラのそれを、はるかに超えているのだ。
これが二次元と三次元の壁と言う奴なのだろうか?
私の本能は早く逃げろと訴えているのに、みなみちゃんの強い視線が私をその場に射止め、金縛りのように体が動かない。
今のみなみちゃんには、背中にコウモリの翼を付けたみなみちゃんなんて、そんなメルヘンなイメージは全くない。
そう、この世で本当に怖いのは悪魔や鬼なんかではなく人間なのだ。
つかさ達も同じ同じ空気を感じたらしい。

「こ、こなちゃん?私達、先に帰ってるね?またね」

あぁ、つかさ達の背中がなんて恨めしいんだろう。

「泉さん、昨日の事をゆたかに聞きました」
「わ、わわ私はははは、ご、ごめんなさい。つい出来心で……」



私は今、みなみちゃんとゆーちゃんの宿題をしています。はい、すみません、心の底から反省してます。

「むーむー」
「泉さん、これもわからないのですか?一年生の問題ですよ?」
「うっ……」
「お、お姉ちゃんファイトー」

ふと辞書を開くとそこには『後悔先に立たず』と書かれていた。
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