ID:lwd44TY0氏:進路面談

進路面談


 放課後。

 進路指導室第四面談室。
「柊の志望は弁護士か。まあ、順当なとこだな」
 ひかるは、ぶっきらぼうにそう言った。
「志望大学も妥当なとこだし、柊の成績なら落ちることはあるまい。むしろ、問題はその後だな」
「そうですね。司法試験は最難関ですから」
「いや、ペーパー試験なんざ、勉強すれば誰でも受かる。こんな私でも教職試験は通ったんだからな。受かる奴と落ちる奴の違いは、勉強量と要領のよさの差でしかない」
「はぁ……」
 ひかるのあまりにもぶっちゃけた物言いに、かがみはどうにも返答に窮した。
「柊は、弁護士の職業倫理とかいう面でも問題はなかろう。でも、仕事はあくまで生活の糧を得るための手段だ。それを忘れるな」
「それはどういう意味ですか?」
「柊は、情に流されやすいからな」
「……」
 あまりにも図星をつかれて、かがみは沈黙するしかなかった。
「私が心配なのはそこのとこだけだ。常にそれだけは意識しとけ」


 進路指導室第二面談室。
「調理師学校か。柊にはぴったりやな。将来は、どっかのホテルの一流シェフか?」
 ななこの質問に、つかさは、
「いえ……あの…将来どうするかはまだ全然考えてなかったり……」
「そうか。まあ、ゆっくり考えればええやろな。柊なら、その辺の男つかまえて、養ってもらうこともできるやろし」
「ええっと……」
「いつまでも姉ちゃんにべったりしとらんで、その辺のことも考えた方がええで。でないと、うちみたいに行き遅れてまうで」
「……」
 ななこの自虐ネタにどう返答してよいものやら分からず、つかさは沈黙するしかなかった。
「話がそれてもうたな。まあ、調理師学校でも一応ペーパー試験はあるんやから、ちゃんと勉強はせぇよ」


 進路指導室第四面談室。
「進路希望は進学か。素直に嫁とでも書けばよかったんじゃないか?」
「まだ早いかと思いまして。彼もまだ学生ですし」
 ひかるの直球に臆することもなく、あやのはそう答えた。
「その辺はちゃんと考えてるんだな。まあ、峰岸の成績ならたいがいの大学は問題ないだろうが、大卒後の進路はどうするつもりだ? 最近は世の中いろいろと厳しいからな。夫婦共働きってのも考慮には入れてといた方がいいぞ」
「分かりました。考えてみます」


 進路指導室第二面談室。
「高良は何の心配もあらへん。以上、終わりや」
「ええっ!?」


 進路指導室第四面談室。
「日下部は、一応進学希望か。どんなとこに行きたいんだ?」
「いやぁ、それがよく分かんなくて……。陸上は続けたいから、陸上部があるとこがいいかなぁとか」
「陸上部があるとこでおまえの頭でも受かりそうなとこをいくつか選んで資料渡すから、親と相談して選んどけ」
「分かったぜ」
「で、将来はどうするんだ?」
「どうすんべ」
「考えてないなら、教職の資格ぐらいはとっといた方がいいぞ。現に私もそのくちだしな」
「でも、試験あんだよな?」
「体育教師なら馬鹿でもなれる。うちの連中見ても分かるとおりな」
「そっかぁ」


 進路指導室第二面談室。
「おまえなぁ。進路希望調書にネタ書くのはやめぇや」
「いやぁ、先生ならウケてくれるかと」
「いくらうちでも笑えんわ!」
 仮にもななこは高校教師であり、進路希望調書に「団長」とか書かれてるのを笑ってすますわけにはいかない。
「正直、進路といわれても思い浮かばなくて。とりあえず、大学だけは行っときますか?」
「グータラ大学生のおまえの姿がありありと想像できるわ」
 ななこはあきれ果てた表情だ。
「正直、おまえについてはもうサジ投げたいところやけどな」
「うっ……」
「でも、友達見捨てるのも目覚め悪いから、一緒に考えちゃる。ほかの先生だったら、とっくに見捨ててるで」
「ありがとうございます」
「おまえに向いてる仕事っちゅうたら、どんなのやろな? 趣味を生かして、ゲームクリエーターとかそんな感じやろか?」
「趣味を仕事にはしたくないですね。趣味を趣味として楽しめなくなっちゃいますし」
「まあ、それは同感やな。でも、泉がOLとかしてるのは想像もでけへんしなぁ」
「それは、私も想像できません」
「となれば、自由業やろな。泉の親父さんは作家さんやったよな?」
「そうですけど、私に文才があるかどうかは分かりませんよ」
「ああ、なんや、柊姉の方が好きなやつがあったやろ?」
「ライトノベルですか?」
「それや。それやったら、泉でも書けるんちゃうか?」
「どうでしょうね。まあ、選択肢の一つとしては考えてみます。っていうか、考える時間がたくさんほしいところですよね」
「おまえに時間やっても、全部遊びに使うやろ?」
「反論の言葉もございません」
「でも、まあ、高校出ていきなり就職っちゅうのもきついのは確かやな」
「そういう意味では、やっぱり大学には行っといた方がいいんでしょうね」
「おまえの頭でも受かりそうなとこいくつか選んで資料渡しちゃる。親父さんとも相談して決めぇや」
「ありがとうございます」
「今の成績で受かるとこはないやろけどな」
「ううっ……」
「そういうわけだから、これからは厳しくいくで。覚悟せぇや」


終わり
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