ID: > q5SXmA0氏:死亡フラグを回避せよ!

 こなたです。
 最近、かがみが死んじゃうんじゃないかと、気が気じゃないとです。

~死亡フラグを回避せよ!~

 自慢ではないが、私は幼少の頃から本当に数多くのギャルゲ・エロゲに親しんできた。
 それと同時に、勉強する間も惜しんで無数のアニメや漫画の世界を堪能してきた。
 うん。本当に自慢にならないね、これは。
 ともかくそんな訳で、私はこの歳にしてはかなり多くのフラグと接してきたと言える。
 なので、登場人物の言動や周囲の状況、話の展開からたいていのフラグは予想が付く。
 ゲームで選択肢を見れば、どれが死亡フラグで、どれが生存フラグかなど瞬時に看破することができる。
 その正答率もほぼ100%と言って過言ではないだろう。
 この域に達した私には、フラグをたてるのも降ろすのも、たったフラグを壊すのも自由自在なのだ。

 で、冒頭の私の心情吐露は、かがみの死亡を回避させるフラグのひとつになっている訳で。
 あんな物語の始め方の後で、『あ、ダメだ。やっぱり死んじゃった』的な展開は非常に稀であろう。
 なんで私がこんなことをしているのかって?。
 まあ、理由は簡単で、何故か最近のかがみは死亡フラグがばんばんたっちゃいそうになるからである。
 私はそれらのフラグをたたないようにしたり、壊したりすることでかがみを守っているのだ。

 今日は幸いにして、朝会ったときからかがみの死亡フラグがたつ兆候は全く見られなかった。
 そんな訳で、私は久々に平和でゆとりある学園生活を満喫することができたのだった。
 放課後はいつもより長くみんなとおしゃべりを楽しみ、黒井先生に早く帰れと追い出されることとなった。
 そして、そんな充実した1日の帰り道、かがみがなんだか落ち着かない様子を見せ始めた。
 なんだかとても嫌な予感がする。

「かがみさん、さっきから鞄をゴソゴソしてますけど、何か探しものですか?」
「ちょっとね。教室に忘れ物しちゃったかもしれないのよ」
「お姉ちゃんが忘れ物なんて、珍しいね。鞄のどこかに入ってるんじゃないの?」
「そう思って探してみてるんだけど……見当たらないのよね……」

 ちなみに、本日の教室でのおしゃべりは学校の7不思議についてのものだった。
 つかさが誰かからそれ系の怖い話を聞き、みゆきさんにその真偽をただしたのが話題のきっかけになったのだ。
 つかさとしてはみゆきさんに全否定してほしくて出した話題だったらしいのだが、希望通りにはいかなかった。
 結局、みゆきさんはやんわりとしか否定しなかったばかりか、オマケとして陵桜の7不思議を丁寧に説明してくれたのだった。
 つかさはずっと涙目だった。
 そんなつかさの為を思ってか、かがみはずっと7不思議完全否定派にまわっていた。

『迷信よ。もし本当だったら毎年のように行方不明者やら死者やらがでてるはずじゃない?』
『かがみは夢がないねぇ』
『うっさい。あんたはもう少し現実を生きろ』

 うあ。しまった。
 うっかり回想などしてしまった。
 なんらかのフラグがたちかねない。
 まあ、この程度ならまだまだ大丈夫だろう。
 いつもの事を考えれば些細なことだ。

「まいったな~、やっぱり忘れてきたみたい……仕方ない、取りに行ってくるわ」
「今日はもう遅いですから、諦められた方がいいんじゃないでしょうか?」
「そうだよ、お姉ちゃん。夜の学校なんてあまり行くところじゃないよ」
「それが、そうもいかないのよ。忘れてきたのは明日提出のプリントなのよね」
「そうですか。では私が一緒に――」
「ああ、いいって、いいって。もうこうんな時間だし、先に帰っててちょうだい」
「ねぇ、やっぱり帰ろうよ。夜の学校なんて危険だよ……」
「今日はやけにからむじゃない。どうしたのよ、つかさ?」
「だって……さっきあんな怖い話したばっかりなのに……」

 つかさの馬鹿。
 それを口に出しちゃったら、かがみの7不思議遭遇フラグがたっちゃうかもしれないじゃん。
 まあ、まだその程度ならよしとするか。
 ちなみに私が今のところ会話に参加せずずっと黙っているのは、余計なフラグをたたせないようにしているためだ。
 プラス、肝心な時に備えて体力を温存しておくという目的もある。

「まったくあんたはしょうがないわねー。心配しなくてもすぐ戻ってくるわよ」
「……うぅ……だって……」
「ホントにしょうがないわね……ホラ、これでも持ってなさい」
「……ペンダント?」
「戻ってくるまでの間、それをあんたに預けとくわ。ま、私がつかさの元に帰ってくる証というか、約束みたいなものよ」
「……これ、お姉ちゃんの大事な……うん!ありがとう、お姉ちゃん!」
「うおおおおおぉーい!何やってんだよ!かがみぃー!!ほら、つかさもさっさとかがみにソレ返して!!」

 私は叫びながら2人の間にわって入る。
 すぐにつかさからペンダントをひったくり、かがみの手に強引に握らせる。

「うわっ!?なに突然叫んでんのよ!びっくりするじゃない!」
「こなちゃん、ひどいよ~」
「びっくりするのはコッチだヨ!そのペンダントのくだりおかしいよ!かがみのペンダントにまつわる話なんて今までに一回も聞いたことがないし!」
「えっとね、こなちゃん、このペンダントは私とお姉ちゃんが一対で持ってる大事なお守りでね……」
「別に説明は求めてないヨ!ていうか、この状況ならお守りはむしろかがみが持ってるべきだよ!戦争映画の死亡フラグみたいなことしないでよね!」
「落ち着いてよ~、こなちゃ~ん」

「……まったく、こなたったら今日も元気ね。あんたのそういうところ、好きよ。ああ、それにしても今日はやけに月が綺麗ね」
「いつもと違うタイミングで妙なデレ方しないでヨ!しかも好きとかさらりというなぁー!何気ない日常の風景に突然見惚れるのも禁止ッ!」
「あっ!お姉ちゃんに買って貰った靴の紐が……!」
「あら?かがみさんから頂いたストラップの紐が……?」
「不自然に切れるなぁー!フラグたてようとすんなぁー!ていうか、本人が間近にいる場所でそういうフラグとかあんまり意味ないからッ!」
「そうだ、つかさ。あのさ……私が学校から戻ったら、大事な話があるんだけど」
「なんでこのタイミングでそんなこと言うんだヨ!その台詞をここで言う必然性ないでしょ!?もう訳わかんないよッ!」
「若者達よ、夜の学校に近付いてはならん!」
「誰だおまえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええッッ!!」

「少し落ち着きなさいよ。息があがってるわよ?そんな大声出したら周りの人達までびっくりするじゃない」
「だ、誰のせいだと……思って……ハア、ハア……」
「まあ、いいわ。とりあえず忘れ物取りに行ってくるから。それじゃ……みんな、さよなら……って、何で腕をつかんでんのよ、こなた」
「ゼエ、ゼエ……溜めをつくって『さよなら』だなんて、反則だよ……私も、一緒に行くからさ……ちょっと待って……ハア、ハア……」
「ねぇ、ゆきちゃん。私、やっぱりお姉ちゃんの事が心配だよ~」
「そうですね、では、かがみさんから1時間以上連絡がなかったらご両親に相談する、と決めておきましょう」
「うん、そうするよ。お姉ちゃん、ちゃんと電話してよ?」
「わかったわよ。ちゃんと携帯から……あれ?おかしいな、圏外って表示されてる。この間修理に出したばっかりなのに」
「おかしいですね。おそらく、一時的に電波を受信し損ねているだけだとは思いますが……」
「あ、3本たったわ。みゆきの言うとおりみたいね。とりあえず、忘れ物を回収したらすぐにでもこの携帯で連絡するわ」
「うん。お姉ちゃん、私、いつまでも連絡待ってるからね……戻ってきたら、また一緒に勉強とかしようね」
「……もうさ、みんな少しでいいから黙っててくれないかな……私を休ませてよ……」

 連絡につかうのは私の携帯、ということにしてかがみと2人で学校へ戻る。
 無駄にフラグをたてたりおろしたり、なんやかんやでずいぶん時間を浪費したせいか正門はもう閉まっていた。
 職員通用口にまわって事務員に事情を話し、職員室にまだ残っていた黒井先生から鍵と懐中電灯を借りる。
 正門から職員通用口にまわるまでにもいろいろとあった。

『わざわざ裏口に行かなくても、こんな正門くらい楽勝で乗り越えられるわ。隣の柵にでも落ちなきゃ怪我なんてしないわよ』
『こなたにだってできるんだから、私に出来ないなんてことはないわよ』
『そんなに私の事心配してくれるなんて……ありがとう、私、この先何があってもこなたのこと絶対に忘れない』
『そうだ、落としちゃうと大変だから、このペンダント預かっといてくれないかしら?』
『なんだか雨でも降ってきそうね……ちょっと用水路の様子でも見てこようかしら……』

 これでもかとばかりにフラグをたててくるかがみ。
 何を死に急いでいるのだ、と言いたくなる。
 それと、ペンダントのくだりはいらないよ。もういいよ。もうお腹いっぱいだよ。
 あと、最後のやつは何をどう考えても必然性の無い台詞だと思うんだけど。

 あれこれ考えているうちに、かがみの教室へとたどりつく。
 かがみが机の中を覗き込み、それを私が懐中電灯で照らす。

「かがみんや、忘れ物は見つかったかい?」
「うーん……それが、机の中に入れたはずなんだけど、見当たらないのよね……」
「えー。そんなはずないでしょ」
「そうなんだけど……どこかに落としちゃったのかしら?ちょっと懐中電灯貸してくれない?」
「えー」
「何よ、その反応。ほら、さっさと貸して」
「むー。しょうがない、わかったよ。でも、むやみに変なところとか照らしたりしないでよ?」
「なに言ってんのよ。あんたじゃあるまいし」

 私が懐中電灯を渡すと、予想通りかがみはいろんな場所を照らし始める。
 お願いだから人の話を聞いてください。

「あれ?今あっちで何か動かなかった?」
「何も動いてないよ」
「ちょっと!そこに誰かいるんでしょ!?」
「誰もいないよ」
「そこかっ!……なんだ猫か。脅かさないでよ」
「プリント探そうよ」
「あれ?懐中電灯の電池が切れちゃったみたい」
「大丈夫。予備の電池を貰ってきてるから」

 こんなこともあろうかと、っていうやつだ。
 かがみの身に起こるであろうだいたいの事の予想はつく。
 明かりが無くなる→何かの気配を感じる→確認しに行ってアウト、なんてのは王道だ。
 これを回避するには明かりを絶やさねばよいだけのこと。
 懐中電灯を受け取り、電池の入れ替えをする。

「なんか寒いわね。風が吹いてる?……ああ、窓が開けっ放しなのね」
「ちょ、かがみっ!まだ電池の交換中だから待ってよ!あんまり動かないで!」
「ああ、大丈夫よ。ちょっと窓を閉めてくるだけだから」
「窓なら私が閉めるから!かがみはプリント探しててよ!ここを離れないで!」
「あー、はいはい。わかったわよ……コホッ、コホッ」
「か、かがみ?」
「あー、やばい。寒いから風邪引いちゃったかしゴフッ!」
「うわぁあ!」

 その場に崩れ落ちるかがみ。

「ちょ、かがみ!血?血がっ!」
「大丈夫、大丈夫。みんなには内緒にしてたけど、最近よくあるのよ」
「しっかりして、かがみっ!」
「大丈夫よ、ちょっと休めば……すぐ…元気に……なる…か…ら……」
「ああああああ、フラグが、フラグがぁ!」
「ふふ……今日は北斗七星に寄り添う星があんなに綺麗に見えるわ」
「うわああああ!フラグが!死兆星がぁ!」

 なんだか今日のフラグは半端ない。
 もうこれ以上、かがみの死亡フラグを壊し続けるのは不可能なのか……ッ!?


 ☆


「あ、お姉ちゃんおかえり~」
「ただいま、つかさ。ふぅ、今日もいろいろと疲れたわ」
「お疲れ様。それで、こなちゃんの様子はどうだった?」
「今日も最後まで元気だったわ。呆れちゃうくらいにね」
「良かった。今頃はゆきちゃんが電話してる頃かなぁ?」
「ああ、そう言えばみゆきが私の病状をそれとなく明かすイベントも今日だっけか」
「そうそう。でも、そろそろお姉ちゃんのネタで引っ張るのも限界だよ」
「そうね。じゃあ、来月あたりからつかさが不治の病かもってパターンに移行しようか」
「うまくできるかな~」

 かがみの携帯電話が着信を告げる。

「もしもし、みゆき?」
『かがみさん、お疲れ様でした。泉さんはだいぶ元気そうでしたよ』
「よかった。ところでさ、そろそろつかさにバトンタッチしようかと思うんだけど」
『そうですね。これ以上かがみさんで引っ張るのも無理がありそうですから』
「それじゃ、今週末にでも私の生存フラグとつかさの死亡フラグのイベントについて打ち合わせをしましょうか」
『はい。わかりました。いくつかパターンを考えておきますね』
「ありがと。じゃあ、また明日ね」
『はい。また明日もよろしくお願いします。それでは、おやすみなさい』

 通話終了のボタンを押し、かがみは呟く。

「こなたの死亡フラグが発生する暇なんて、私達が絶対に与えてやらないんだから」

 その視線は1冊の本に向けられていた。
 泉そうじろうの手によって製作された「泉こなた死亡フラグ回避計画」。
 昨年の秋から冬にかけて、謎の体調不良でたびたび倒れることのあったこなたを救う、起死回生の計画だ。
 こなたに死亡フラグがたたないように周囲の人間がイベントを発生させまくる、それがこの計画の概要である。
『こなたが生死の境を彷徨ったあの日、かなたが夢で俺を導いてくれた。その時できたのが、この計画なんだ!』
 そうじろうが土下座までして必死で懇願してきた為、かがみ達はダメもとで協力することを約束したのだ。
 そしてこの計画の発動後、医者も驚くほどあっという間に、こなたの体調はすこぶる良くなったのだった。


 ☆


「こなちゃん、あの最後の1枚の葉っぱが落ちたら、私……」
「うわああああああ、つかさっ!?気をしっかり持ってよっ!?」

 今日もこなたはみんなの隠された愛情に支えられ、人一倍元気です。

「かがみの次はつかさが……ぐっ……そろそろ胃に穴があきそうだよ……」

 たぶん元気です。
ツールボックス

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