ID:hdKQyCM0氏:タイトル不明

「こなちゃん……お姉ちゃんがいなくなっちゃた……」

 高校を卒業して1年が経とうという頃、つかさから突然の連絡がはいった。
 つかさによると、何かしらの事件に巻き込まれた恐れがあるとのことだ。
 詳しい話はお姉ちゃんのアパートで、と言われたので私は急いで家を出た。

 卒業後、かがみは一人暮らしを始めていた。
 自宅から通えなくはない距離の大学だったが、かがみは家から出ることを希望したのだ。
 勉強に専念するつもりよ、なんて話していた様子が昨日の事のように思い出される。

 かがみの住んでいるアパートの前には数台の警察車両が停まっていた。
 入り口には制服姿の警察官が2人。
 横を通り抜けようとすると制止され、この建物の関係者の方ですか、と尋ねられた。
 かがみの部屋番号を伝え、その部屋の主の妹であるつかさに呼ばれた事を説明する。
 そうすると、少し待って下さいと言って1人が部屋に入って行き、すぐにつかさと一緒に戻ってきた。

 事態が事態なので簡単な挨拶だけを交わして、つかさと一緒に部屋へと入る。
 ドアを開けてすぐのキッチンでは、みゆきさんが警察官と何やら話をしていた。
 その奥の部屋の方では複数人の警察官がゴソゴソと調査をしているのが見えた。
 私はつかさに連れられて、みゆきさんと話をしている警察官のところへと進む。

 みゆきさんと簡単な挨拶を交わしていると、警察官がいくつか質問をしたいと話しかけてきた。
 質問に答えているうちに、この部屋でかがみと会った最後の人物が私達3人であるということが判明した。
 数分後、私達は部屋へと通され、最後に来た時と今とで部屋に変化がないか確認することとなった。

 部屋の中はいかにも事件が起きた後、といった様子に見えた。
 割れた窓ガラス、電源が入ったままのPC、血の着いたキーボード、転がった椅子、床に散らばった衣服。
 ガラスは何か大きなモノで叩き割ったのだろうか、鍵の周辺だけでなく全体が割れ落ち破片が派手に散らばっている。
 また、事が起きた時にかがみは課題でもしていたのだろう、PCの画面上には書きかけの文書が表示されたままになっている。
 キーボードにはPC使用者から飛び散ったと思しき血痕が付着しており、いくつかのキーの上には指の形をした血痕が見てとれる。
 そして、かがみがPCを使用する時にいつも座っていた椅子は、主を失ってクッションと共に虚しく横たわっている。
 椅子のまわりの床に乱暴に散らばる服は、かがみが最近よく着ていたお気に入りの部屋着と、それと……下着が一式、だった。
 横に居たつかさが泣き崩れ、それをみゆきさんが支えていた。

 結局、私達が気がついたのは何故か毛布が1枚無くなっていた事ぐらいだった。
 警察官と連絡先のやり取りだけをして、3人でアパートを後にした。


「……お姉ちゃん、大丈夫なのかな……もしかして、もう……っ!!」
「大丈夫だよ、つかさ。あのかがみがそう簡単にどうにかなる訳ないじゃん」
「そうですよ、つかささん。泉さんの言うとおりです」
「……うん」
「そんなに心配しなくても、たぶんすぐに戻ってくるよ。私にはわかるんだ」
「……ありがとう、こなちゃん……」





 その日の深夜、疲れて眠っていた私はありえない音で目を覚ました。
 私の部屋の窓――つまり、2階の窓――を何者かが叩く音で。

「ん……んぁ?」
「――た、起きてちょうだい……こなた……ここを開けて……」
「そ、その声は」
「……こなた……ここを開けて、こなた……私を、助けて……」
「かがみ!?」

 窓の方から生ぬるい風が流れてきているような気がした。
 何か嫌な予感がする。
 しかし、私は鍵を開けざるをえなかった。
 何故ならばその声が私の嫁であるかがみのものだったからだ。
 鍵を開けたとたん、窓は信じられないほど凄い勢いで開いた。





「こなたぁーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
「ひゃあっ!?」
「う~~~~、寒かったぁ~~~~~~~~っ!!」
「うわっ、ちょ、冷たっ!離れて!離れてよ!冷たい!冷たいって、かがみっ!」
「冷たくて当たり前よ。この寒空の下を昨日から毛布1枚で過ごしてたんだから」

 窓から飛び込んできて私に抱きついているかがみの装備は全裸に毛布1枚。
 体は完全に冷え切っており、あろうことか私の体で暖をとりはじめた。
 仕方がないので、熱い飲み物を淹れてくることを条件に体を放してもらう。

 その後、ココアを2杯飲んだところでやっとかがみは落ち着きを取り戻した。
 とりあえず、なんでこのような状況になってしまったのか説明を求める。

「昨日のことなんだけど、ネットで巨大掲示板を見てたらさ、私の好みの絵柄の絵師が安価で絵を書いてたのよ」

 むぅ。よくある話ですな。

「で、私が見事に安価をとることに成功したの」

 安価をねぇ。暇なんだね、かがみは。

「安価の内容は、蒼くて長い髪の小柄で貧乳な女子高生が○○を××で△△して□□なっちゃうっていう……」

 かがみん、それはちょっと。
 さすがの私もひくんですけど。

「か、勘違いしないでよ?その、別にあんたの事を意識してそういうリクエストをした訳じゃないんだから」

 ま、まあ、話を続けたまへ。

「で、もちろん全裸待機するじゃない?」

 いや、しないから。
 みんな言ってるかもしれないけど、実際にする人いないから。

「ところがなかなか絵が出来なくって、仕方ないから毛布にくるまって課題のレポートとかやってたのよ」

 服を着ようよ。

「さすがの私も2時間を過ぎたあたりでいったん諦めようかと思ったわ」

 もっと早く諦めようよ。
 せめて服を着ようよ。

「でも待ってみた。頑張って保守もした……そしたらね、投下されたのよ!期待以上のモノが!私のこなたの□□な姿が!」

 わーお、『こなた』ってはっきり言っちゃったよ。
 さっき言ってたのやっぱり嘘じゃん。
 いろんな意味でもうダメだ、この人。

「もう、ものすごくテンションが上がっちゃって……そりゃ血とかでるわよ!窓から飛ぶわよ!」

 ああ、それであの惨状ができたんだね。
 窓を開けるのすら忘れるほど理性を失ってた、という訳か。

「飛ぶ前に画像を閉じるだけの理性はかろうじて残ってたけどねー」

 わかったからとりあえず帰れ。

「あ、ダメだ。思い出したら、なんかテンションあがってきちゃった!……そぉい!」

 ちょ、何を――
 うにゃああああああああああ!

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最終更新:2009年02月25日 00:54
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