ID:kUxRTJs0氏:彼女の日記

「あれ?なんだろ、このノート」
 ある日、部屋の整理をしていたこなたは、見覚えの無い一冊のノートを見つけた。
「…日記…こんなのつけてたっけ?」
 何の変哲も無い大学ノート。表には『日記』と書かれ、その下には何故か『にっき』とひらがなで書かれてあった。
「んー…よし、見てみるか」
 これはさぼりじゃない、確認だ。そう自分に言い訳しながら、こなたはそのノートをめくった。


- 彼女の日記 -


 私 柊かがみ
 父 柊ただお
 母 柊みき
 姉 柊いのり
   柊まつり
 妹 柊つかさ(双子)
 友達 泉こなた
     高良みゆき
     日下部みさお
     峰岸あやの

 とりあえず、これだけ書いておく。忘れても見返せば思い出せるはず。
 明日から日記をつけようと思う。
 毎日は無理だと思うから、気が向いた日だけ。日付もいらないかな。いつまで続くかわからないし。
 それでも、何かの助けにはなるはず。正直、明日が怖い。



 今日、いのり姉さんとまつり姉さんを間違えた。こんなこと初めてだ。
 まつり姉さんは笑っていたけど、わたしは笑えない。


 つかさが妹だって事、忘れてた。
 一番忘れない自信があったのに、なんで?


 お昼休みに、日下部に「最近、隣のクラスに行かないのな」って言われた。
 なんでわたしがわざわざ隣のクラスに行ってお昼を食べるんだろう?
 そう言ったら、峰岸と二人で黙り込んだ。訳がわからない。ちゃんと言って欲しい。忘れてるのかも知れないから。


 つかさが隣のクラスだった。わたし達は双子だったんだ。
 妹だって事は覚えていたのに、次はこれか。


 日記と言うよりメモみたいだ。まあ、いいか。


 こなたと会話がかみ合わない。
 つかさは元からだって言うけど、何か違う。
 なんだかイライラする。


 こなたに酷い事言った。わたしどうかしてる。
 明日、ちゃんと謝らないと。


 こなたが一日中機嫌悪かった。
 原因が分からなかったけど、日記を見て思い出した。
 最低だ。明日はちゃんと謝ろう。


 みゆきと会話が出来なくなってきてる。分からない言葉が多すぎる。
 今の自分を突きつけられてるみたいで、みゆきと話すのが怖い。
 みゆきは何も悪くないのに。


 色々と分からない。頭の中が削られていく感じ。
 お願い、止まって。忘れたくないこといっぱいあるのに。


 最近、つかさが笑ってない。間違いなく原因はわたし。
 つかさが笑えるように、しっかりしないと。つかさの笑顔、好きだから。


 頭がグチャグチャする。気持ち悪い。今日はもう寝よう。



 どうしよう。かんじがわからない。かけないしよめない。どうしよう。


 なまえはわかるのに、だれがいもうとでだれがともだちかわからない。
 さいしょからひらがなでかけばよかった。わたしばかだ。


 くさかべに「いいかげんにしろ」ってどなられた。こわかった。
 でもそのあと、くさかべはみねぎしにおこられていた。
 くさかべはわるくないのに。わたしのせいなのに。ごめん。


 こなたにおこられた。りゆうがわからない。
 さいきんおこられてばかりだ。しっかりしないと。


 つかさに「そんなにあやまらなくてもいい」っていわれた。
 でもおこられてるんだから、あやまらないと。わたしのせいなんだし。


 「あやまるな」っておこられた。どうすればいいんだろ?


 みんながおかしい。わたしのせいだ。
 あやまったらまたおこられるからここにかいとく。
 ごめんなさい。


 きょうしつであばれた。ごめんなさい。


 がっこうにいけなくなった。いやだ。おこられてもいいからみんなにあいたい。


 いえにもいられなくなった。にゅういんしなくちゃいけないらしい。
 いきたくない。みんなからもっとはなれる。
 みんなのえがおがみたい。すきだったから。


 あたまがぐちゃぐちゃする。はきそう。



 のーとがかばんにはいってた なにかかいてるけどよくわからない
 わたしもこれにわかることかこう


 びょういんはつまらない なんにもない
 ともだちがたくさんきてくれるのがうれしい でもだれもわらってくれない
 わたしつまらないのかな


 ともだちがほんをいっぱいもってきた
 えばっかりのへんなほん かいてあることがわからないっていったら よんでくれた
 でもきいてもわからない せっかくよんでくれてるのに しっかりしないと


 きょうもともだちがほんをよんでくれた でもとちゅうでそのこがないちゃった
 すごくかなしいはなしだったみたい わたしもなけばよかったのかな


 きょうはほんをよんでくれなかった ともだちのかずがへってるきがする
 さびしいからなにかしゃべってほしい


 ともだちがあまりきてくれなくなった わたしのせいなのかな
 ほんがいっぱいのこってる がんばってよめるようになろう
 そうすればちゃんとおはなしできるようになるとおもう


 おへやかわった まえよりもっとなにもない
 ほんもどこかもってかれた わたしのじゃないのに ちゃんとともだちにかえしておいてくれるかな
 かくのはいいみたい でもこれだけじゃつまらない とこだちこないかな


 ひさしぶりにともだちがきた うれしい
 でもみんなさみしそうだった
 わらってほしいな そっちのほうがすきだから


 あたまがぐちゃぐゃ やめて



 なにもない わからない


 ともだちいる とおい こっちきて


 て にぎった うれしい


 わらった うれしい みんな すき


 あたま









 久しぶりに日記を書く。
 明日、退院。良かった。
 家族とか友達とかいっぱい迷惑かけた。凄く感謝してる。ありがとう。
 でも大変なのはこれからだと思う。思い出せなかったこと、頑張って思い出したりもう一度覚えたりしなくちゃ。
 それにしても、日記の事思い出してよかった。恥ずかしいこといっぱい書いてる。
 早く処分しとかないと、こなたとかに見られたら最悪だ。
 どうせ処分するし、最後に書いとく。
 みんな大好き。
 


「…んー」
 ノートを閉じて、こなたはポリポリと頭をかいた。
「そっか。かがみが病院から出てきたところを直接拉致ってわたしんちで退院祝いやったから、そのときに紛れちゃったのかな」
 もう一度、表紙を見る。そこにある、大変だった日々。
「…どうすっかなこれ」
 そこでこなたは、あることを思いついて、手を叩いた。
「まあ、折角書いたんだし、処分するのはダメだよね。こういうのは、みんなで分かち合ってこそ親友だよ…最悪のご指名もいただいてることだし」
 こなたはニヤニヤしながら、机の上にあった携帯をとった。
「へろーかがみー。今、部屋の片づけしてたらさ、面白いものが出てきてねー。今度、みんな集めて鑑賞会でも…」
 今はもう、そんな日々。
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