ID:WjVl2oAO氏:たとえば、そんな愛し方。

「…あたしさぁ、追っかけられてんだよね。」
「……はぁ。」
らっきー☆ちゃんねるの収録前の楽屋で、あきら様はそう言った。
追っかけられてる。
おいかけっこの類いですか、と聞こうとしたが、あきら様の顔が深刻そうなので、止めた。かわいい。
「歩いてたら後ろからついてくるし、止まると足音も止まるんだよね、あれなんだろうね。」
「……ストーカー、ってやつ、ですか?」
「たぶんね。」
飲み終わったジュースの缶を、ぺっこん、ぺっこん、手持ちぶさたにやっている。
あぁかわいい。
「…人の話きいてんの?」
「も、もちろんです!」
でね、と付け加えた。
話が飛んだり長かったりするので、要約すると、こうなる。

・仕事の後、必ずついてくる
・マネージャーがいるときは、いない
・足音がこつこついう

「…不気味、ですね…」
「でしょ?昨日もそうでさぁ…ふぁ…」
「昨日?お仕事でしたよね、確か…クイズ番組の。」
「あ?あぁ、そうね。」
あきら様は首を傾げる。かわいい。
「あんたに言ったっけ、クイズ番組って。」
「…はりきってたじゃないですか、クイズ番組出るって。賞金とるって。」
「あー、言ったわ、ハワイ行きたいって言ったわ。」
「取れたんですか?」
「OAまで待ってね(きらっ☆)」
……この格好…!!
「んで、帰ったわけよ。」
あ、話戻った。
「そしたら、こつ、こつこつ、ってついてきて。」
「たまたま同じ方向だったとかじゃないんですか?」
「違うわよ、あんたね、人が話してるのに腰折らないの。」
「はぁ、すいません。」
「で、郵便受けに、これが。」

ひらり、と舞い落ちる花びら。
真赤な薔薇の、花びら。
「これが、ぎっしり。」
「花びらだけ、ですか?」
「そ。」
大変そうだな、花びらだけ入れるって。
まずばらさなきゃならないしね、薔薇だけに。
「で防犯カメラをみたのよ。しっかり写ってたんだけどね、」
「証拠あるんですね、捕まえられるじゃないですか!」
「うん、でもね…」
何か問題でもあるのだろうか。
写っているなら問題はないはずだ。
「その人、メイド服なの。」
「……は?」
メイド服?コスプレによく使われる、あの?
「ピンクのメイド服に化粧して、茶髪のロングのカツラつけててさ、全然顔がわかんないの。」
「それじゃ監視カメラの意味、ないじゃないですか…」
「そうよ、もうまいっちゃってね…」
はぁ、とあきら様はため息をつく。
「あの、じゃぁ、今日、僕と帰りませんか?」
「は?あんたと?なんで。」
「マネージャーさんと一緒の時はいないのであれば、僕はどうなのかな、って。」
「う~ん……」
腕組みをして1分ほどだろうか、ゆっくり考えてから、僕に指を向けて宣言する。
「いいわ、そうしましょ!ただし!」
「ただし?」
ぷい、とあきら様はそっぽをむく。
なにか少し、困ったように、泣きそうな顔で。
「……き、今日は白石の家が良いの。」
「なっ…なんでですか?」
「…帰れない、事情があるのよ。色々ね。」
「は、はぁ…」
多分、これ以上触れてはならないんだろう、僕は勝手にそう考えて、
それ以上の質問は止めた。
それは、僕に対する、罠のひとつに過ぎなかった。
「ここ?」
「えぇ、ちょっと、ぼろっちいですけど…」
「へぇ~、確かにぼろっちいわね」
「うぐ…」

築30年と言われたアパートにたどり着いた。
ここが、僕の住んでいるところ。
2DKだが所々ガタがきているので、そんなに心地良い、とは言えない空間だ。
まぁまだ外見だけだが。
「中もぼろっちいの?」
「まぁ…」
こつこつ、2つのローファーが音をたてて階段を昇る。
僕はその後ろを着いていくだけだ。
そう、着いていくだけ。
「ここ?」
「えぇ。」
僕はあきら様に、鍵を渡す。
「開けてもらえますか?」
「うんっ!」
ドアノブに手をかけて、鍵を回す。
鍵が空いた瞬間。
「……!!」
目の前で、彼女の膝が折れる。
ぐったりした彼女を抱き抱えて、僕はドアを開ける。
彼女が目を覚ますのは、まだ先だろう。
僕はスタンガンを靴箱にしまい、彼女をベッドへと下ろす。
声が漏れる。
笑いが止まらなくなった。
彼女の頬をそっと撫でてはまた、首の白さにみとれていた。

やっと、手に入れたんだ。
僕だけの、貴女を。

「お目覚めですか?あきら様。」
彼女は目をゆっくり開ける。
僕を見上げている。
「じゃ、電気、つけますね、まぶしいかもしれませんけど、我慢、ですよ?」
ぱちり、電気をつける。
「おはようございます、あきら様…」
彼女は自分の置かれた状態に、目を白黒させていた。
それから、抵抗するように、全てを剥がすように、手足をばたつかせる。
縄で机の脚に大の字に繋がれた、その可愛らしい手足を。
「あぁ…可愛いですよ…その、怯えた目も、僕を軽蔑するような目も、全部…」
声にならない声をあげる。
猿轡のせいで喋れないから、仕方ないのだけれど。
目に涙がたまっていく。
僕はそれをじっと眺める。
最初の涙が落ちたのと同時に、僕はそれを舐めとろうと、唇を近づけた。
顔を、背けられた。
「そんな、避けないでくださいよ、寂しいなぁ…」
彼女が部屋を見渡して、悲鳴をあげる。
「あ、これですか?あきら様の写真、ですよ?」
壁に、机に、ベッドに、至るところに貼り付けた、「あきら様」の写真。
どれも「あきら様」らしい表情を浮かべている。
「あきら様は相当驚いているみたいですね。まぁ1mmの隙間もなく貼られているから、驚くのも無理はないのかもしれないですけど。」
壁の写真を指さして説明する。
「これは1回目前の顔合わせ、これは数学の授業中、これは9回目、これは…4時間目が終わった直後、ですね。」
ぶるぶると、首を横にふる。
僕に対する恐怖?
それとも、何?
僕が、おかしい?
「そんなに首ふったら、首が取れちゃいますよ?」
僕は彼女に覆い被さるように、彼女の上に四つん這いになる。
と、右足に感じる違和感。
彼女のポケットの中のものが、当たったらしかった。
それを抜き出す。

<通話中>

秒数はどんどん進んで行く。
また1秒、また1秒。
その通話終了のボタンを押すと、時間が表示された。

<1時間46分34秒>

そんな前から録られていたなんて気付きもしなかった。
通話履歴を開ける。
目に飛び込んできた名前に、心臓が、止まりそうになる。
まさか、あなたに筒抜けとはね。
「始めから、解っていたんじゃないですか。」
彼女の猿轡を外す。
それが、唾液でべちゃべちゃになって光っている。
「なにが、よ、」
「僕が、あきら様のこと愛してるって。だから、どれもこれも、僕がやった、と。」
「違う、そんなの、ちゃんとした愛なんかじゃない!」
それを舐める。
彼女の味がして、また舐めたくなる。
「嘘。僕はあきら様のことをこんなに愛してる。」
「違う、違うよ、白石…」
「僕はあきら様だけを見てる。あきら様のことだけ考えてる、だから」
「だからってあたしは」
「だからあきら様にも僕のことを考えて欲しい見て欲しい、僕だけのことしか考えて欲しくない。」
「白石、どうしちゃった、の…?」
「どうして、伝わらない…何故、わからないのですか!!」
涙が、止まらない。
悔しくて、情けなくて。
そして、愛されていないのが嫌で。
愛して欲しくて。
僕を、愛して欲しくて。

階段をかけあがる音。
女性のヒールの音。
こんな下品な音をたてて走る人なんて、他にいない。

僕は、その音が鳴り止む前に。

カッターで彼女を切りつける。
僕の痛みを全部わからないなんて。
わかって貰わなきゃ困る。
これが、憎しみ?
僕にはわからない。
彼女を愛してるのか、
愛しすぎて憎いのか。

「しら、いしっ、痛い…!」
「まだ、まだ軽いじゃないですか。」
「いっ、やだ…痛いよ…」
「大丈夫ですよ、僕はこれ以上痛い思いをあなたにされたんだから。」

カッターを振り上げて

血飛沫。

悲鳴。

「白石…なんで…」
「かはっ…ひ…あき…げほっ」

目の前が真っ赤に染まる。
言葉が、喋れない。

ドアが乱暴に、開く音。

「あきら!白石!」

一足遅い。
遅いよ、ゴットゥーザ様。

僕はニヤリ、彼女に笑いかける。

あきら様、
僕は貴女を、
愛してるから。
誰にも、渡さない。

僕だけを、見ていて…
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。