ID:r5PtZ21g0氏:タイトル不明

「こなたお母さんいなくて、寂しいか?」
「・・・別にお父さん一人で賑やかだし・・・」
「そうか」
お母さんがいないのは寂しいか?
寂しくないといえば嘘になる。
子供の頃からずっと思ってきた。もしお母さんが生きていたらどうなってただろう?
今みたいにオタクにはなっていないだろうか?
みゆきさんみたいに聖人君子みたいになっていただろうか?
そして私はコントローラを動かす手を止める。
「あーもう寝るヨ、おやすみ」
「おーこなた、おやすみ」
自室のベッドに倒れこんだ瞬間、涙が溢れ出してくる。
本当はものすごく寂しかった。ずっと昔から。
小学生の時、そのことでよく同情を買われていた。別にそんなものは欲しくないのに。
そして昔からこんなセンチメンタルな気分になった時決まって一人で部屋で泣いている。
「お母さん、会いたいよぅ・・・」


「こなた!ほら朝よ!おきなさい、またゲームばっかりして!もっと高校生らしい健全な・・・」
あーもううるさいなあ、はいはい起きますよ・・・
「ふぁ、おはよ・・・」
「ほら学校!早く支度しなさい。朝ごはん出来てるから早くきなさい、わかった?」
ドアを開けて母が朝から怒号を飛ばしている。
学校ではかがみ、家ではお母さん。私はツンデレに恵まれているなあとくだらないことを思いながら、
名残惜しい布団の感触から身を起こす。
こんな時間か、と着替える手を早めながら、朝から響く母の怒号と格闘しながら準備を整え、食卓へ向かった。
「はい、今日もきちんと食べてちゃんと勉強してくるのよ。チョココロネばっかり食べてないでお弁当も食べなさい。」
「はぁい」とまだ寝ぼけ眼の眠い目を擦りながらお母さん特製味噌汁を啜る。
あー今日も学校があるのか、またつかさやかがみ、みゆきさん達と駄弁る当たり前な日々。
そう当たり前の毎日。
私は一抹の違和感を覚えた。いやようやくと言うべきか。
だってお母さんは、
「もういないんだ・・・」
そうこれは夢なんだ、そう気がついた瞬間美しく彩られていた世界は影を落したの如くセピア色の世界へと移ろってゆく。
「どうしたのこなた?早く食べて学校いきなさい。」
お母さんの声がおぼろげに聞こえる。自分が意識が引かれるような感覚。
けれど、せめて今だけは、せめて・・・そう思い届くように強く言った。
「お母さん、ギュってして・・・」
母はキョトンと言う擬音が恐ろしくマッチする表情を浮かべたが、すぐに、
「変な子ね。ほらギュッ・・・」
と私を強く、そしてやさしく抱いてくれた。


「あ~・・・」
目が覚める。妙に残る夢。
そしてじっとりと濡れる枕。きっと泣きながら寝ていたんだろうと思う。
まだ若干残るお母さんの感触。強くてやさしい残滓。
ピリリリとその余韻を邪魔するかのように携帯電話が鳴る。
「もしもしこなた?アンタ絶対今日遊び行く約束遅れてくるんじゃないかと思って電話したのよ。」
「あー。あ、あああ、うん。ちゃんと行くよかがみ」
「ほらやっぱり忘れてる!アンタちゃんと来なさいよ!どうせまだ寝てたんでしょ?早く起きて支度しなさい!」
「う、ん・・・あははははは」
「ちょ、何がおかしいのよ、さてはアンタt・・・」
思わず夢の母と同じような発言をするかがみに笑いを零す。
そうだ私にはみんながいるんだ。別に寂しがることはない。
ちょっとメランコリックに陥るときもあるけれど、
「もう、大丈夫だよ。お母さん」
「ちょっと聞いてんの!?こn・・・」
「聞いてるよ、もう準備済んで家出るところだよ。そういうかがみたちは準備できるのかなー?」
ああもう夏だと窓を開けて身を乗り出す。
差し込む朝日は爽やかに私を照らしていた。私の心を映し出したかのように――――
最終更新:2007年06月20日 22:40
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