ID:Og48Ir140氏:ラブレター

「やー、珍しいね。かがみが私に相談事なんて。しかも、わざわざ家に訪ねてくるとは」
「ん、学校ではちょっと話し辛い内容だったから。……で、これが悩みの原因」
「ラブレター? かがみにもようやく春が来たんだねぇ。今日は相談と称した惚気話かなー」
「……差出人の名前を見たら、たぶん、同じことは言えなくなるわよ」
「ええっと………あれ、女の子……から?」
「だから困ってるのよ。どうすれば傷つけないで断れるのか、わからなくて」
「付き合ってもいいんじゃないの? ほら、減るもんじゃないし」
「それはつまり……こなたは、女の子同士でも恋愛感情は成立しておかしくないと、そう思ってる?」
「え。いや、私は興味ないけど。そういう人たちもいるでしょ、普通に」
「…………自分は違うけど、か。なんかずるいよね。その言い方」
「かがみ……?」
「同性愛に理解を示しているようで、受け入れないと宣言してる。それは認めてないのと同じだよ」
「急にどうしたのさ。ていうか、そもそも断る理由を探していたんじゃ……」
「ううん、もういい。そろそろ帰るね」
「あ、かがみ!」

息が切れた頃にたどり着いた公園で、私は跳ねる鼓動を抑えるために足を止めた。
夕日で赤く染まった公園には、ベンチに座る自分を除いて誰もいない。
「バカだな、私。確認なんてしないでも、わかってた事じゃない」
そう。わざわざ尋ねなくてもわかっている。
異常なのはこなたを好きな自分のほうで、同性愛を否定するこなたのほうが普通に間違いない。
だから――その声は聞こえるはずがなかった。
「かがみ」
世界で一番聞きたい声で、今は一番聞きたくない声。
それでも身体は自然に反応してしまい、振り向いた先にいた背の低い同級生の少女と目が合った。
「…………なんで、なんで追いかけてくるのよ。放っておいてよ!」
「嫌だよ。私は、かがみのことが好きだから」
好き。そんな簡単な言葉で、全力疾走していたとき以上に身体に熱が帯びる。
「好きだなんて、軽い気持ちで言わないで! もう友達としては見れないくらいに好きになってるのに」
「……それなら問題ないよ。私も、同じ意味での『好き』だから」
「うそ。だって、興味ないって言ってたじゃない」
「あれはかがみが、告白してきたのが女の子だから困ってるみたいに言うから、そう言うしか」
「それは……同性だからっていう理由を、こなたに否定して欲しくて……それで」
「…………」
「……えっと、つまり私たちは両思い……で、いいのよね?」
「うん。もちろん」

私たちは夜に近づいていく公園の中で、大きな声で笑った。
互いの臆病から生まれた誤解がおかしくて。
理由もなく楽しくて。
いや――好きな人が隣にいるというのは、十分すぎる理由だろうか。

「そういえば、あの子には悪いことしたわね」
「あの子?」
「ラブレターを送ってきた人よ。こなたの気持ちを確かめるためとはいえ、他人に読ませちゃったから」
「……他人が読んだわけじゃないけどね」
「え?」
思わず隣を見ると、こなたの手には見覚えのある可愛らしい封筒があった。
「って……まさかあんたが?」
「かがみの気持ちを知るための小道具としてね。ちょっと予定は狂ったけど」
「はあ……あ、でも誰かに代筆を頼んだの?」
「いやいや私だって、丁寧に書けばこれくらいの字に出来るんだよ。それで、これは修正版」
私はこなたから、再び手紙を受け取る。
封筒の裏に書かれた送り主の名前には二重線が引かれ、本文と同じ筆跡で『泉こなた』と直されていた。
「でも、ラブレターを手渡すのって意味ないよね。知り合いじゃないなら、顔を見せる必要があるけど」
「別にいいんじゃない。伝えたい事を整理して届けられるし、渡されたほうもずっと持っておけるしね」
「そうだね」

偽物のラブレターは、こうして本物へと変化した。
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