らき☆すた殺人事件~紅く染まる白銀の世界~FILE.1

冬休みを目前に控えた陵桜学園。
すでに受験を終えた生徒も多数いるため、休み時間には『冬休みの予定を話し合う生徒』と『受験勉強をする生徒』とにきっぱり別れるのである。
今、3―Bで昼食をとっている六人組のうちの三人――泉こなた、高良みゆき、峰岸あやのは前者であり、もう三人――柊かがみ・つかさ姉妹、日下部みさおは後者だ。

「冬休みはスキーかぁ……いいなぁ……」
「みゆきさんの家の別荘、楽しみだヨ」
「私も。スキーしたことないから、ちょっぴりわくわくしてるの」

受験を終えたこなたとみゆきとあやの。この三人は冬休みを利用して北海道にあるみゆきの別荘に向かう予定だ。

「私達はこれから受験だからねぇ……楽しんで来なさいよ?」
「わかってますよ。かがみさんつかささんも、そして日下部さんも、お勉強頑張ってくださいね」
「うぐ……ぜ、善処するってヴぁ……」

聞いていて、こなたは耳が痛かった。
みゆき、あやの、こなた。この三人の中で、唯一試験に落ちてしまったのがこなたなのである。

「……こなた?」
「絶対……受かってよね……」

声が、身体が、震えている。

「っ……私、みたいな……こんな、辛い思いは……絶対に……しないで……えぐ……」
「こなた……」
「こなちゃん……」
「ちびっ子……」

受験前、みんなで何度も勉強会をしたのだが、こなたは『なんとかなるだろう』と適当にやっていたのだ。
そして、前日に一夜漬けをしたのだが……そんなんで間に合うはずもなく。
結果は受験生360人中359位と惨敗。『なんとかならなかった』のだ。
これにこなたは相当ショックを受けた。まさか、受験に失敗するということがここまで辛いなんて。

「絶対に……ひっく……落ちちゃ……ダメなんだからぁ……」

涙を流してそうお願いするこなたを見て、三人は決意した。

「……もちろんよ。あんたの分まで、しっかり頑張るわ」
「私も、できるかぎりのことをするよ」
「だからちびっ子、アタシ達のことは気にしないで、思いっきり楽しんでこいよ」

三人の決意を聞いても、こなたの涙が止まることはなかった。


・・・


「北海道……?」

一方その頃。1―Dの教室でも、同じような話が進められていた。

「こなたお姉ちゃん達、受験が終わったから遊びに行くんだって。みんなもどう?」

そう提案したのは、こなたの従妹である小早川ゆたか。決して妹ではないので注意。

「でも、泉先輩は確か……」
「Yes……Failしちゃったのデハ……?」

こう尋ね返したのは、親友の田村ひより・パトリシア=マーティンだ。
ちなみに冒頭の「北海道……?」と言っていた人間は岩崎みなみ。ゆたかのもう一人の親友である。

「……実はこの旅行、こなたお姉ちゃんとみなみちゃんのために高良先輩が提案したんだ」
「え……」

みなみが首を傾げる。

「こなたお姉ちゃん、受験に失敗してすごく傷ついちゃって……。それで高良先輩にどうすればいいか聞いてみたら、『それなら慰安旅行がいいでしょう』って」
「さすがミユキ、慰安旅行がホッカイドウなんてスケールがBigデース!」

大袈裟なバンザイに苦笑したが、その発言が『旅行についていく』と言っているに等しいことにゆたかは気付いた。
顔をひよりに向けると、ひよりも顔を縦に振った。

「そういえば、なんで岩崎さんのためでもあるの?」
「アレですよ。アノ事件」
「あ……チェリー……」

みなみの家で飼っていた、シベリアンハスキーのチェリー。
長年に渡って愛されてきたチェリーだが、先日岩崎家で火事が起きたのだ。
炎の中に取り残されたみなみとチェリーを助けに来たのがみゆきだった。
しかしみゆきも、炎のせいで崩れた屋根を防いだ際に片腕を負傷。二人ともを連れていくことはできなかったのだ。
まず親友の命を救おうと、みなみを家のなかから連れ出し、それからチェリーを助けにいくつもりだったのだが……
みゆきが突入する直前に、岩崎家は音をたてて崩れ落ちた。

「高良先輩、チェリーちゃんを助けられなかったことで、悩んでたみたいなんだ。『無理をしてでも、二人とも一緒に連れていけばよかった』って」
「それで岩崎さんへの謝罪を込めた冬休みの旅行を考えてて、泉先輩も一緒にってなったわけだね」

みなみは自分の胸に手を当てた。おそらく、天国にいるチェリーに想いを馳せているのだろう。
そしてみなみはゆっくりと顔をあげ、

「……みゆきさんを恨んではないけど……悲しみが少しでも紛れるなら……」
「私も行くよ。行くなら大勢の方がもっと楽しくなるしね」
「スキーはExperience(経験)したことあるデスから、ミナミとコナタのためにワタシも一肌脱ぐデース!!」

四人全員が旅行に行くことを決定。
こちらは三年生組と違って、その別荘はどんな家なのか、などという話題で盛り上がっていた。
 
 
 
 
 
 
 
「泉さん……不憫です……」
「ええ……勉強会まで開いて、今まで頑張って教えてきたのに……」
「ですが、その勉強会も……泉さんは乗り気ではありませんでしたし……」
「でももう、どうしようもないわね。来年こそ、泉ちゃんが受かってくれるように祈りましょう」
「はい、これからもできる限りのサポートはしていくつもりです」
「それと……小早川ちゃんから聞いたわ。岩崎ちゃんのこと……」
「あれは……本当に、悪いことをしてしまいました……。小早川さんも、田村さんも、パトリシアさんも……皆さんが、チェリーさんを愛していました……」
「でも、腕が動かなかったんだから仕方がないわよ」
「……いえ。本当は……動かそうと思えば、いくらでも動かせたんです」
「え……」
「本当は、傷は浅く、動かすのになんの支障もありませんでした。しかし、私は痛みに負け……」
「……過ぎたことを今さら後悔しても、もう遅いわ。とりあえず、今度の旅行はちゃんとみんなで楽しみましょうよ」
「……はい……」

 

 

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