ID:.UN9.jA0氏:出会い話(こなたとつかさ)

「・・・よしっ」

もう何回目か分からない持ち物チェックを済まし、私は呟いた。
そう、自分を勇気づけるものの、心臓がばくばくいってて、また持ち物チェックがしたくなる。

落ち着け、落ち着け私・・・。

「つかさ~、そろそろ行くぞ~」

「あ、うん、お姉ちゃっ・・・へぶゥ!!」

お姉ちゃんの声が玄関から聞こえ、慌てて駆け出したけど、こけてしまった。
玄関に立っていたお姉ちゃんは「またか・・・」という感じに呆れ顔になった。

「はうう・・・」

「ほら、つかさ大丈夫?今日から高校生なのよ?しっかりしなさいよ」

「う、うん・・・ごめんね」

お姉ちゃんの手を借りて起き上がる私。

そう、私たちは今日から高校生になるんだ。
今日は高校初日・・・入学式の日。
そのせいで私は緊張していたんだけどね・・・。

中学のときはいつもお姉ちゃんと一緒で、友達も少なかった。
けど、私も高校生になるんだから、お姉ちゃんに頼ってばっかりじゃいけないと思いつつ・・・
また今日もお姉ちゃんに迷惑かけちゃった。ああ、だめだな私・・・。

ちょっとしょぼんとしながらお姉ちゃんと電車に乗る。

私たちがこれから行くのは私立進学校の陵桜学園というところ。
お姉ちゃんがそこに行くというから、私も頑張って入ったんだ。
ああ、やばい。また心臓がばくばくし始まったよ・・・。

・・・友達できるかなぁ。

そんなこんなで学校に到着。
クラス割をお姉ちゃんと見に行く。

「また別のクラスねー」

「うん・・・そだね」

中学んときもお姉ちゃんと同じクラスになったことはなかったから慣れてるけど・・・
でも、やっぱり初めての高校だからすごく不安だよお・・・

校舎内に入り、教室を目指す。

「・・・つかさ、大丈夫?」

「えっ、うん・・・ちょっとどきどきしてるかも・・・」

心臓がさっきからばくばくとうるさい。
お姉ちゃん、心配そうにこっち見てる。

「で、でも大丈夫だから・・・、だからお姉ちゃん、心配しないで」

強がりだけど、精一杯いつもどおりに言う。

「う、うん。じゃあ帰りにまた・・・」

そう言うとお姉ちゃんは自分の教室に入って行ってしまった。
取り残された私はばくばく言う心臓を無視して、自分の教室の扉をみつめる。

・・・うん、頑張ろう。

やっとの思いでガラッと扉を開ける。
中には数人生徒が来ていて、初々しい雰囲気で言葉を交し合っている。
私はそんな中、自分の席に着く。

私も誰かに話しかけないと・・・友達作るんだもん・・・
うう・・・でも・・・
どうして話しかけられないんだろう?
勇気が出ないよ、お姉ちゃん・・・はっ
またお姉ちゃんに頼ろうとしてる・・・だめだ。こんなんじゃだめだよお。

躊躇しているうちに、先生が入ってきた。

「はーい、皆席着けー」

ああ、もうっ・・躊躇なんかしてるから・・・

入学式が終わったあと、先生からいろいろ高校のことを聞いて、係や委員会などを決めていった。
そして、自己紹介などもあった。定番ではあるけどいつも緊張しちゃうんだよね・・・

そういうことなどがあって帰りになった。
結局今日は誰とも話せなかったなあ・・・
うう・・・初日からこれで大丈夫かな・・不安だよ。

私はお姉ちゃんと一緒に帰るためにC組の教室の前まで来た。

「あっ、お姉ちゃん!」

手を振る。
そんな私を見つけてお姉ちゃんがこっちまでやって来た。

「あー、つかさ。ごめん、私学級委員長になっちゃったから今日先に帰っててくれる?」

「えっ」

せっかくお姉ちゃんと一緒に帰れると思ったのに・・・

「ホントごめん・・・」

「え、うん、わかったぁ、頑張ってね!」

「うん、ありがと・・・じゃ」

そういうとお姉ちゃんは廊下の向こうへと消えた。
そんなぁ・・・1人で帰るなんて・・・どうしよう・・・
外でお姉ちゃんを待ってようかなぁ・・・・

とりあえず外に出てみる。
校門を出て、しばらく歩く。
お姉ちゃん、どのくらいで終わるのかなぁ・・・
ずっと1人でいるのは寂しいや・・・

キレイな桜並木。
しばし、みとれる。
だんだん人もまばらになってゆく。

なんだか、こういう綺麗な景色を見てると、不安もちょっと和らぐなあ。
1人でにこっと笑っていた矢先・・・

「ペラペラペーラペラ」

「ふぇ?」

いきなり後ろから声が聞こえ振り向く。
がっちりした体格の外国の男の人がなにやら話している。
もちろん、私に向かってである。
けど、何て言っているのかさっぱり分からなかった。

「え?え?」

混乱する私。

「ペラペラペラペラペラペーラ」

構わず続ける外国人さん。

「はわわわわわ~@@」

ど、どうしたらいいのぉ~!?
外国人さんは私が分かっていないのに気づいたのかジェスチャーを始める。
傍目から見ればけっこう怪しい図なのかもしれない。

「てりゃぁーっ!!」

ズガッ

そのとき、声とともに、視界にもう1人の人が入って来る。
それと同時に外国人さんも吹っ飛んで・・・・
介入してきたその子は私よりもちっちゃくて、同じ制服で・・・・
青いキレイな長髪をなびかせて、私の前に、立っていた。

何故だか、ちっちゃいのにその背中には大きな存在感があって・・・
振り向いて私を見据えるその目は、しっかりしていて・・・
そして、とりまくように舞う桜はその子のかっこよさに拍車をかける。

そう、この時・・・私たちは、出会った。

「・・・大丈夫?」

しばらくぽかんとみとれていた私は我を取り戻す。

「あ、えと、ありがとうございますっ・・・」

「・・・あるぇ?見たことある顔だと思ったら・・・柊さんだっけ?」

自分の名前を呼ばれて一瞬驚く私。
そしてよくよく見てみれば私もその子を知っていた。
それもそのはず、だって数時間前には同じ教室に居たんだもん。
自己紹介をしたときのことがフラッシュバックする。

「あ!えと・・・泉さん?」

こくっと無言で頷いて、半ば苦笑気味に言う。

「いやー、でも危なかったねー」

「え?・・・何、」

言葉を発しかけたとこで私は気づく。
泉さんは私が外国人さんに襲われていると勘違いしていることに。
私はおずおずと続ける。

「あ・・・、あのね、今の外国人さん道を聞いてきただけだったかも・・・」

それを聞いてきょとんとする泉さん。
そして私をじっと見つめてくる。

「ほほぉー」

「え・・・な、なぁに?」

見つめられてちょっと赤面。

「もしかして柊さんて、英語で受け答えできちゃったりする人!?」

「あー・・・・」

いきなりの問いかけ。
そしてよく考えると・・・

「あ、うん。やっぱりちょっとピンチだったかも・・・」

外国人さんには悪いけど、泉さんが介入してきて良かったなぁと思う。
えへへとちょっと苦笑。

「あっ!!!」

「はうっ!?」

いきなり泉さんが大声を出した。
そのせいで私もビクッとなる。

「ごめん、はやく帰らないとアニメ始まっちゃう・・・」

「へ・・・?」

「うん、だから・・また明日ね」

「う、うん!また明日」

そう言うとたったと行ってしまった。
不思議な人だなぁ。とその後姿を見ながら思った。

でも、悪い人じゃないみたい。

・・・。

・・・「また明日」かぁ・・・。

ふっと微笑む。

友達、できたのかな。



「つかさ!?」

「えっ?あ!お姉ちゃん!」

グッドタイミングでお姉ちゃんが向こうからやって来た。
焦ったような怒ったような複雑な表情だ。

「ばかっ!あんた、ずっと待ってたの?」

「う、うん・・・。だって1人は寂しいし・・・」

「もう・・・あんたは・・・」

はぁと呆れ顔でため息をつくお姉ちゃん。
悪いことしちゃったかなぁ。

「ご、ごめんね」

「ん?あ、いいのよ。ごめんね、待たせちゃって」

そして私たちは帰途につく。
家に着いてからご飯を食べ、お姉ちゃんと今日の高校についてのことを話した。

「まったく、消臭剤置けってかんじよねー」

「うんうん、すっごく臭いのー」

やっぱりお姉ちゃんと話してるのが1番落ち着くなぁ。
ニコニコしている私をお姉ちゃんがじっと見ている。

「妙に機嫌いいじゃない。何かあった?」

ポッキーを1本取り出しながらお姉ちゃんが聞いてくる。

「えへへー今日新しい友達ができたんだー」

やっぱりお姉ちゃんには分かっちゃうんだなぁと思いながら答える。

「おーっ、何て人?高良さんなら分かるけど」

「ううん、委員長じゃないよ。泉さんって人だよー」

何でお姉ちゃんが委員長を知ってるんだろうと一瞬考えたけど、
そういえば今日は委員長の集まりがあったんだっけと思い出す。
お姉ちゃんはむぅと少し考えてから私に聞いてきた。

「うーん、知らないなぁ。どんな人?」

「とってもいい人だよ」

ニコッと笑って今日助けてもらったことを思い出す。
お姉ちゃんも笑顔になる。

「へぇ、そっか。良かったじゃない」

そして一瞬間が空く。

(って、ちょっと待てよ?つかさの”いい人”はアテにならん・・・!)

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最終更新:2008年06月22日 17:02
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