ID:8aQt3JyZ0氏:タイトル不明

「……お父さん?」
「なんだぁ、こなた?」

お父さんは、ぶっきらぼうに居間でテレビを見ている

いつもと違って朝から抱きついてきてない
少しだけ、少しだけだけど暗い

「ううん、なんでもない」
「おいおい、隠し事かぁ?父さん寂しいぞ」

あははは、と笑って誤魔化す
はたから見たら、何処も何も変わってない
いつものお父さん

だけど、私との会話が終わると、またテレビに視線を戻す
でも、よく見るとわかる
お父さんはテレビなんて見てない

心ここにあらず

一体どうしたのだろうと
私はカレンダーを見た

そしてすぐにわかった

今日は、お母さんの死んだ日だったんだ……

私はお母さんの事はあまり覚えてない
何しろまだ物心がつく前だったから

でも、お父さんが寂しいと、私も寂しい

普段いろいろ言ってはいるけど
やっぱりたった二人の父娘だから

お父さんとお母さんは幼馴染だったって聞いてる
昔から、一緒に生きてきた人

お父さんにとって、一番大切だった人
それを失う気持ちは、私にはわからない
でも、たくさんそういうゲームをしてきたから、なんとなくはわかる

だから、お父さんが寂しいのがわかって
それが、余計私を寂しくさせる


「お父さん」
「んー?」

私はお父さんに抱きついていた
何を思ったのだろう、自分でもわからないや

でも、ちょっとだけ、お母さんにジェラシーを感じた

お父さんにとって一番大切だったのはお母さん
そして、私にとって、少なくとも今、一番大切なのはお父さん

だから、ちょっとだけ甘えたくなった

そうすることで
もしかしたらお父さんの寂しさをまぎわらしてあげられるかもしれなかったし

「どうした?急に?」
「んー、なんとなく」
「そうかぁ、だが父さんは嬉しいぞぉ」

無精髭の生えた顎で頬ずりされる

ちょっとチクチクして痛かったけど
お父さんの感じがしてちょっと嬉しかった

私はお父さんが大好きだから

将来もっと好きな恋人ができるかもしれないけど
少なくとも、今一番好きなのはお父さんだから

普段皮肉言ったり
避けたりもするけど

それはお父さんの気を引きたいからかもしれない

ちょっと変わったお父さん
ちょっとだけ変態のお父さん

でも、私だけのお父さん

「お父さん」
「ん?」

「ふふ、呼んでみただけー」
「あー、やったなこのやろー」

私はお母さんの代わりにはなれないかもしれないけど
お母さんだって私の代わりにはなれない自信がある

願わくば、ずっとお父さんが笑顔でいてくれたらいい

ずっと、そう、ずっと
私が甘えていられますように

-fin-
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