※この話はID:IokxDns0氏 サイバー☆ゆーちゃん~小早川ゆたかの危機~の少し後のお話です
「…………」私は今、自分のベッドの上に頭だけの状態で置いてあります。身体は前回、地震が起きた時に壊してしまい、今は修理に出しています。頭部の検査も受けてはみたんですが、特に異常は起きてなかったので頭だけは家に帰ってくることができたんですが……頭だけじゃ何もできないから……ありていに言って暇なんですよね……「ふぁ……」おっと、失礼しました。頭に予備電源が入っているので、顔の表情とかは動かせるのですが……身体がないから自分から動くことは……「やふー! ゆたか、いるー? あ、いたー」「ひゃわっ! お姉ちゃん!?」突然、ゆいお姉ちゃんが扉を開けて入ってきました。あくびをしようとした瞬間に入ってきたから、変な声を出しちゃったよぅ……。……あれ? 今は家に誰もいないはずだから……もしかして不法侵にゅ…「ゆたかー、実はゆたかにお願いしたいことがあるんだよ」「え、お願い? なに?」「ちょっと待ってね」――ブチっ「え……おね……ちゃ……?」な……ナんで……デンゲ……ン……☆「……あれ……?」頭がぼんやりする……えと……何が起きたんだっけ……「お、成功成功。おはよーゆたか」あ、ゆいお姉ちゃん。「……お、お姉ちゃん! なんで私の電源切ったの!?」そうでした。私はゆいお姉ちゃんにお願いがあると言われて……電源を切られたのでした。
「ゆたかー、これなんだ?」そう言って私の目の前に持ってきたのは…………私の……頭……?「え!? じゃあ今の私は!?」「えへへ、ほい鏡」そう言ってお姉ちゃんが出した鏡に映っていたのを見て、絶句しました……。そこに映っていたのは……小さな、犬、でした……「なななななな!!?」「ごめんね、ゆたか。最初からこうなるってわかってたら、絶対に拒んでただろうからね」その後私は、お姉ちゃんから話を聞きました。私のお祖母ちゃんは『るり』という犬を飼っていたんですが、先日、遂に死んじゃったんだそうです。それでお祖母ちゃんが体調崩しちゃって、なんとか元気になってもらおうと、私をサイボーグにしてくれた博士に頼んで私の『ブレインクリスタル』をこの子犬に移植したらしいんです。 ちなみに『ブレインクリスタル』とはちょっとだけ改造した私の脳のことです。「そういえば……この身体って本物だよね。なんで動けるの?」「実はその子犬、もう死にそうだからって処分されそうだった犬なんだ。それを引き取って、生きてるうちに脳を移植したからね。だから普通に生きてるのと同じなわけよ?」そ、そうなんだ……可哀想だな……ごめんね、子犬さん……☆「ごほっ……ごほっ……」ようやく四足歩行に慣れた私は、お姉ちゃんと一緒にお祖母ちゃんの家へと向かいました。ふすまの間から部屋を覗くと、仰向けに寝ながら咳き込むお祖母ちゃんがいました。
(ゆたか、準備はいい?)(わんっ)犬の鳴き真似で答えて、私は庭へと回り込みます。鳴き真似……というより、身体が犬だから、本当に犬が鳴いているようですね。「ごほっ……ん……?」『くぅ~ん……』そう声を出しながら、お祖母ちゃんの家の庭をうろうろします。するとお祖母ちゃんがヨロヨロと歩いてきました。「おやおや……迷子かい……?」縁側に腰を掛けるお祖母ちゃんに近づいて、また小さく『くぅん』と鳴いてみせます。「かわいいねぇ……」近寄った私の頭を優しく撫でてくれたお祖母ちゃん。よし……そろそろかな。『……お祖母ちゃん……』「え……?」『お祖母ちゃん……私、るり。覚えてる……?』私はお祖母ちゃんに向かってそう話しかけました。最初は心臓が止まってしまうんじゃないかと思ったんですが……一瞬、驚いたような顔になった後、私を見ながら優しく微笑んできました。「るり……戻ってきてくれたのかい……?」『うん……お祖母ちゃんが心配だから……』「ごめんね……死んだ後になっても迷惑をかけて……」『迷惑なんかじゃないよ。お祖母ちゃんといた13年は……すっごく楽しかった』「そうかい……アタシも楽しかったよ……」それから私達は、昔の思い出を話し合いました。知らないはずの出来事なのに、なぜか次から次へと思い出が甦ってきて……多分、私の中に……るりが入ってきたんだと思います。(お~い、レモンちゃん~? どこに行ったの~?)ゆいお姉ちゃんの声。そろそろお別れの時間だ。
『今のご主人様だ。もうすぐ行かなくちゃ……』「そうかい……じゃあね」残念そうに言うと、また私の頭を撫でてくれました。なんだか、病みつきになりそうな心地よさです。『じゃあね、お祖母ちゃん。元気でね』「ああ、るり……いや、レモンもね……」私は駆け足で、ゆいお姉ちゃんのところへと向かいました。☆「いや~、お祖母ちゃんが元気になってくれてよかった~!」「……うん」あれから数日が経って、私の『ブレインクリスタル』は私の頭に帰ってきました。身体も帰ってきて、その足ですぐにお祖母ちゃんの家に向かいました。お祖母ちゃんは走れるくらいにまで回復していて、家に来ていたお医者さんの話だと、もうどこにも異常は見られないそうです。「ねえ、ゆいお姉ちゃん」「んぅ? 何?」「生きてるって……当たり前のことじゃないんだね」「そうだねー。人は生きてるから何でもできるんだもんねー」「朝起きて、ご飯食べて、学校に行って、お風呂に入って、あったかいお布団で眠って……それだけでも、本当はすごいことなんだよね」機械の身体になってすぐもそう思ったけれど……今回も、それを思い知らされました。私は死ぬまで、それを忘れないでしょう。生きてるっていうことは、とっても素晴らしいことなんだって――
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