FILE.4
「ちょっと! 何よ今の叫び声は!」「何かあったのですか!?」
みさおの声を聞きつけ、かがみとみゆきが飛んできた
「うっ!!」「そ、そんな……峰岸さん、まで……」
あやのの惨状を見た二人は、思わず目を背けた
「く、日下部……」
そのあやのにすがり付くみさおに声を掛けようとしたとき、
「うあああああああああ!!」
みさおは叫びながら、階段を駆け上がっていった
「あ、ちょ、日下部!?」「……そっとしておいてあげましょう。お二人は幼なじみだと言っていましたし……相当ショックを受けたのでしょうから……」
・・・
「ううう……うあああああ!!!」
その頃、日下部は自室でなにやら唸っていた。鬼のような形相で
あやのを殺されたことで、彼女の頭は怒りでいっぱいになっていた犯人を見つけたら、殺す。あやのと、同じ苦しみを味わわせてやる。そういった感情が、彼女を支配していたしかし、良心までは支配されていなかった。敵討ちなんて間違っている、という思いが、彼女を動かした誰の干渉も受けないで、自分の気持ちを鎮めるために、自室に閉じこもったのだ
「……はぁ……はぁ……」
なんとか落ち着いたみさおは、汗でびっしょりの顔を拭いた親友を殺される。それが、こんなにも辛いなんて、知らなかった
「……あやの……」
ベッドで仰向けになり、そっと目を閉じる。太陽のようなあやのの笑顔が、そこにはあっただが、その笑顔はもう、二度と見ることはない。次に目を開けた時、瞳は怒りに燃えていた。ただし、先ほどとは反対の怒りだ
「そうだ……人殺しなんて、間違ってる……!! どんな理由があっても、人の未来を奪うなんて……そんなの……おかしいじゃないか!!」
みさおは拳を握り、決意する
「犯人は、私が絶対に見つけだす! ……そうだ、みんなの部屋を見せてもらおう! 何か手掛かりがあるかも!」
みさおがドアを開けようとした時、いきなりドアが開いておでこがぶつかった
「~~~!!」「く、日下部!? ごめん!」
ドアを開けようとしたのはかがみだった。みさおは頭を押さえてしゃがみこんだまま動かない
「あ、あれ……? く、日下部……?」「ぷ……く……あはは……」「へ?」「あっはははははははは!!」「どわあぁ! 日下部が壊れたぁ!!」
みさおはしばらく笑い続けた。よくある光景に、張り詰めていた緊張の糸が切れたのだ
「ははは……柊、ありがとな。少し、頭が冷えたよ……」「い、いや……そんな風には見えなかったんだけど……」
笑い終えたみさおはかがみの瞳を見つめる
「柊、もうちょっと待ってくれ。ちびっことあやのを殺した犯人、絶対に見つけるからな」
みさおのまっすぐな瞳を見て、かがみは頷いた
「そういや柊、なんのようだ?」「あ、うん。話し合って決めたんだけど、みんなで広間にいるわ。お互いを監視できれば、それはそれで安心だもの」「わかった。じゃあ、柊から二人に言っておいてくれ。みんなの部屋を調べたいから、勝手に入るぞって」「わかったわ」
つかさの部屋――
「さて、まずはここからだな。……しっかし、隣であんなことがあって気が付かないモンなのか?」
ぶつくさ独り言を言いながら、物色を開始する
「まあ柊の話だと、アイツ抜けてるらしいし……ん?」
部屋の隅に赤い箱を発見、開けてみるとスパナやハンマー、どうやら工具箱のようだ
「なんでこんなとこに……って、これはテグスか?」
みゆきの部屋――
「さて、次は高良の部屋だな」
着くや否や、早速部屋を調べ始める
「っても、そんなホイホイ証拠が出るワケが……」
そう言いながらベッドの下を覗き込んだ時、部屋の光に反射して光を放つものが見えた。引っ張りだしてみると、
「! これは……ボーガンじゃん!!」
そのボーガンを持ったままドアに目をやる
「高良……まさか……」
かがみの部屋――
「んだよ……ここにもあんのか……」
かがみの部屋に着いて真っ先に調べたのはベッドの下だったすると、なんとそこからもボーガンが見つかったのだ
「つーことは、ボーガンは全部の部屋に備え付けられてるのかよ……」
嘆息しながらも証拠となり得るものを探す。が、最初のボーガン以外に見つからなかった
「……さて、結局戻って来ちまったか……」
みさおはこなたの部屋に戻ってきた部屋の穴に目をやる。飛び散ったこなたの血液に、何か紐のような跡が付いていた、あの穴である
「う~ん……多分こうしたんだろうけど、これなら犯人は誰でも……」
部屋の中を行ったり来たりして考える
「……ダメだ! 埒が開かねぇ!!」
気分転換も必要だ、みさおは窓を開けて外の空気を吸う。外はまだ薄暗く、何があるのかよくわからない懐中電灯を地面に向けて照らすと、そこは白く覆われていた
「ん、いつの間にか雪が降ってたのか。気付かなかったゼ」
まだ四月上旬、しかもここは山奥だ。雪が降ってもおかしくはないよく見てみると、木の右側に雪が集中している。ついさっきまでは吹雪いていたのだろう
「……ん? なんだありゃ?」
みさおが懐中電灯を向けた先には、黒光りする謎の物体。よく見ると、雪のなかにボーガンが埋まっていた
「ボーガン……? なんであんなところに……誰かが落としたのか……?」
前述したように、ここは山奥だ。漁師のような職業の人が無くしたとしてもおかしくはない
「……待てよ? それはあり得ない! ということは……!」
部屋を飛び出すと、また全員の部屋を調べ始めたそして、最後に調べた自室から出てきたみさおはあごに手をやる
「外に捨てられたボーガン……穴の血にあった紐のような跡……そして……」
ぶつぶつと呟き、状況を整理していく
「ダメだ……あれがある限り、犯人とは言えな……?」
待てよ? と言って、みさおはこの屋敷に来てからの出来事を思い出す
「そうか……そういうことだったのか……!」
拳を握りしめ、階段を降りていく
「あ、日下部!!」「どうでした? 」「……ああ、バッチリだよ」『!!』
日下部の言葉に、三人の顔が強張った
「で、では……」「ああ。犯人も、密室殺人の謎もわかった」「そ、それで、犯人は誰!?」
かがみがみさおに詰め寄った
「その前に、みんな、私が誰を差しても、驚くなよ」三人の唾を飲み込む音が、広間の静寂を切り裂く
「ちびっこを、そして、あやのを殺した犯人……それは、アンタだよ!!!」
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