大空を自由に飛びたい。人間なら誰もがそう思ったことでしょう。もし自分が空を飛べたら…。
昔から人間は空に、鳥に憧れてきました。飛行機ができたのも、その願いをかなえるための方法でした。
こんにちは。小早川ゆたかです。…じつは私も、高校時代「空を飛べたら学校までひとっとびなのになぁ」と思ったことがあります。空を飛ぶって、どんな感じなのかなぁ…。
―チーターマン オレッテチーター チーターマン オレオレ…♪ふいに音楽が響いてきます。私の耳に内蔵された電話機の着メロです。…チーターマンを選ぶあたり、私もすっかりそっち方面に染まっちゃってるかも。
「もしもし、小早川ゆたかです…え?みゆきさん?…私に用事って…はい、わかりました」
一体、何があるんだろう?
「ゆーちゃん、どうしたの?」「お姉ちゃん、実は…」「そっか、それじゃぁみゆきさんが言ってた場所まで連れてってあげるよ☆」私は、こなたお姉ちゃんのインプレッサに乗って例の場所へと向かいました…。
「お待ちしておりました、小早川さん。泉さんも一緒なんですね」なにやら白衣を着たみゆきさん。その後ろには物々しい箱がひとつ、置いてありました。
「あの、時にみゆきさん…」質問を仕掛けたのはこなたお姉ちゃんでした。「この後ろの大荷物は一体何かね?」「よくぞ聞いてくださいました。じつは今回、小早川さんをお呼びしたのはこの装置の実験をするためなんですよ」そう言いながら、テクテクと箱のほうへ歩いていくみゆきさん。装置…?実験…?一体何が始まるんでしょう…。
その時、みゆきさんが箱を開けると、中から翼のついた機械が出てきました。人が乗る…?ようにはできてないし…?じゃあ、これは一体…?
「さぁ、着けてみてください」「ふぇ!?」つ、着ける?…背中に…?でもこのコネクターの形は…見覚えが…。あ、そう言えば、私の背中にあるのと同じ形…。とりあえず、戸惑いながらもこの機械を背中に取り付ける私。
「おぉ!ゆーちゃんカッコいい!」「なかなかお似合いですよ」「そ、そぅかなぁ…」「ええ、何しろ小早川さん専用に作ったフライトユニットですから」フライトユニット…?じゃぁ、私は空を飛べるんだ…。
「フライトユニットは、小早川さんの思い通りに動かすことが出来ます。右に行きたいと思ったら右に、左に行きたいと思ったら左に進むことが出来ますよ」ホントだ…。私の思い通りに、右の翼と左の翼が動いてます。なんだか、もうわくわくしてきちゃいました。
「それでは、早速実験を開始しますね」と、みゆきさんが取り出したのは赤いボタン。「では泉さん、カウントダウンお任せしますね」「よしきた!…ファーイブ!」―ジャーン!「フォーァ!」―ジャーン!「スリィー!」―ジャーン!「トゥー!!」―ジャーン!!!…え、ええっ!?こ、この演出はまさか…「…ワン!」―ポチッ「は、はうぅぅぅぅぅぅ~~~~」何が起こったかわからず一瞬目をつぶってしまったけど…目をあけてみると、その風景に驚きました。「わわわわわわ…」と、飛んでる…私…空を飛んでます!頬に当たる風が気持ちいいです。『ゆーちゃん!どんな気分ー?』「う、うん…すごく気持ちいいよー。ちょっと緊張するけど…」『では、さっき言ったように旋回してみてください』「は、はいっ!」まずは右…今度は左…。あ、ホントだ。思い通りに動ける…。あはは、なんだか…本当に鳥になったみたい。空を飛ぶって、こんなに楽しいことだったんだ…。
『大変です、小早川さん!』慌てた様子のみゆきさん。一体どうしたんでしょう…。『実は推進系統のネジが一つ緩んでいたみたいでして…』『みゆきさん、そういうのは先に直しとこうよ…』…え!?ちょ、ちょっと、みゆきさ…―ボンッ!…とっ、止め…っ!誰か、止めてぇぇぇぇぇぇぇ~~~~~~~~…
それから数時間後。…私が身体を起こすと、見たことのない風景が広がっていました。ここ…一体どこだろう…辺りを見回していると、線路が見えました。どうやら駅が近くにあるみたいなので、とりあえずそこへ向かうことにしました…。
「えっと…に・ら・さ・き…?」……駅名を見た瞬間、言葉を失いました。私は山梨県まで飛ばされてしまったのです。結局、フライトユニットも壊れてしまったので、その日の帰りは電車でした。なんか、一気に疲れちゃったよぅ……。
数日後。「小早川さん、前回の失敗を教訓に新型を開発してみたのですが…」「そ、空を飛ぶのはもうこりごりです…」しばらくは、空を飛ぶことが怖くなってしまった私なのでした…。
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