【デュエル前パート】
「こなたぁぁぁぁぁぁっ!!」「やぁぁ! やめてよぉー!!」
かがみとこなたのいつもの光景、今日も平和だ。
「またやってるよあの二人……」「本当に仲が良いんですね」
もはや二人の関係はこの学校では常識として認定されてしまっていた。非常に良いことだ。
「全然良くないって! んしょっ……!!」「あぁ、こなた待ちなさいよ! 照れ屋さんなんだから」
少女は走る。ただひたすらに……。
白熱のらき☆すたデュエル!!
ふぃ~、今日も何とか逃げ切れた……。かがみんめ、いつもは真面目なのにスイッチが入るとあぁなるんだからなぁ……。こっちの身がもたないよ。
「ただいまぁ~……あれ? 靴がない、出掛けてんのかな」
お父さんが何処へ行こうと今の私にはどーでもいい。私はさっさと部屋に行くと、ベットに倒れ込んだ。
「あぁ~……。最近かがみ激しすぎだよ……疲れたぁ~」
どーにかしてかがみを正気に戻さないと、いつかやられる……。恋人でも捜してあげようか?
「でも、あのかがみが認める男なんてそうそう居ないだろうし……私の人生\(^o^)/オワタ」
などと人生を諦めかけていたとき、奇跡は起こった。
「こなた……」「え?」
私はどこかで聞いたことがあるその懐かしい声を聴き、ガバッと起き上がった。
「久しぶりね、こなた。と言っても、こなたは赤ちゃんだったから覚えてないかしら?」「お、お母さん……!?」
目の前にいたのは、死んだはずのお母さんだった。姿形はアルバムで見た事あるけど……。あぁ、ついに幻覚まで見るようになっちゃったか……。
「幻覚じゃありません、ほ~ら」「わわっ!?」
私はお母さんに抱き寄せられる。暖かい、この温もりは幻覚なんかじゃない。本物のお母さんだ……!
「こなた……会いたかった」「私も、お母さん……!!」
こんな機会は二度と訪れないかもしれないと思い、私は力強く抱き返し、暫く母の温もりに浸っていた。
「でもお母さん、どうして……?」「会いたかった……ってのもあるけど、見ていられなかったってのが本音ね」「見ていられなかった?」
もしかして私が毎晩のようにネトゲやらエロゲやらをやってることに怒りを示してる!?
「そうじゃないの……、こなたの友達の事よ」「私の友達?」「そう、その友達の中の柊かがみちゃんのこと」「あぁ……かがみの事」
私たちの関係が、あっちの世界でも見られてるのか……。
「私にもよく分かんないんだよ、いきなり暴走するし」「それは『コナタニアン症候群』って言う病気なの」「こなた……え、何? 私?」
お母さんは突然なにを言い出すんだ。コナタニアン症候群……?
「こなたって可愛いじゃない? だから稀(まれ)にいるのよ、その可愛さに取り付かれてしまう人が……」「それが、かがみなの?」「そう、彼女は末期状態に入りつつあるの」「えぇーっ!?」
驚いた、私だけ? 豚骨はりがねおかわりだだだだだーん!! まさか、こんな非日常的な事が起こるなんて……、ゲームやアニメを見てるときはこういう事があっても良いなぁ~、とか思ってたけど……流石にこの設定は……。
「それで、お母さんはどうしたいの?」「私は、こなたには普通の恋愛がしてほしいの」
うーん、まだ恋愛には興味ないけどねぇ~。口には出さないけど。
「だからね、かがみちゃんの病気をこなたに治してもらうために来たのよ」「私に? お母さんじゃなくて?」
「私は既にこの世の人間じゃないから無理なの」
お母さんはそう言うと、私に手の平を差し出した。
「だからこなたに、これを使ってほしいの」
すると、手の平が光りだし、何かが現れた。これは……。
「カード?」「そう。でもただのカードじゃないのよ、このカードを使ったゲームに勝てば、何でも願いが叶うっていう凄いカードなの」「ホントに? でもこのカードって、遊戯王のカードに似てるんだけど……」
似てるというか、そのままだよ、あの世って一体……。
「あら、やっぱりこなたは知ってたのね。あんまりあの世の事は教えられないんだけど、『INDUSTRIAL ILLUSION社』が今回の為に特別に作ってくれたカードなの」「えぇ!? ちょっと、向こうの世界で何してんの? お母さん!」「禁則事項です♪」
お母さんは人差し指を口許に、ウインクをしながら可愛く言った。何でその仕草を知ってるの~! マジで向こうで何してるんだよ、超気になるじゃん!!
それから、お母さんにカードの事について詳しく教えてもらった。 お母さんが持ってきたカードは80枚、半分の40枚は相手に、かがみに渡すらしい。ゲーム方法は遊戯王のゲームと全く同じルールだ。私は少しかじったことがあるけど、かがみはどうなのか……と疑問に思っていると、お母さんいわく「心配しなくても大丈夫」なんだとか。 そしてこのカードには絵柄が無い。どこから取り出したのか、お母さんが持ってきたデュエルディスクという物にデッキをセットすることで、自分に合ったカードが作成されるらしい。
「じゃあ早速セットして……」「あぁ、ダメよ。戦う前にデッキを確認することはルール違反なの。ルールを破ったら、願いが叶うという効力は消えてしまうのよ」「えぇー!? そんなルールがあるの~?」
というわけで、自分のデッキを把握することは出来なかった。う~む、これホントに勝てるのかな……。
「因みにこのゲーム、負けたらどうなるの?」「もちろん、相手の願いが叶うのよ……」「えぇー!? じゃあ私が負けたら100%……」
その先は口に出したくないし、想像したくもないので止めといた。なんというゲームだよ……絶対負けられない。
「大丈夫、私はこなたが勝つと信じてるから。信じる力があれば運命さえ乗り越えられるんでしょ? ファイト、おー! よ」「お母さん……、もう一度聞くけど……あの世ってどんなとこ?」「うふふ、ひ・み・つ。さ、明日に備えて今日は寝なさい。パソコンも無しよ」「いや、まだご飯食べてないし、お風呂も……」「あらら、そうだったわね。私ったら、うふふ」「……」
お母さんは自分の額を軽く小突いて、舌を出して笑った。なんだろう、お母さんってこんなに可愛かったのか……!
その後、ご飯を食べて、お風呂に入って、お母さんの言う通りパソコンもやらずに眠りについた。お風呂に入るとき、お母さんが見に来たときは焦ったよ、すぐに出てもらったけどね。 それと、どうやらお母さんは私にしか見えないみたい、せっかくお父さんにも会わせたかったのにな……。 何はともあれ、明日は頑張らないと!!
・・・ この家に来るのも久し振りね……。まさかあんな理由で来る事になるなんて思ってもみなかったけど。 私が今回、姿を見せられるのはこなただけ。それが大天使様との約束……でも……。 そうくんとも話しがしたい……そう思うのはいけないこと?
「かなたぁ……zzz」「ふふ、そうくん……」・・・
――翌日の学校「今日は運命の日だ!」「頑張ってね、こなた」
こなたはかがみのクラスにデッキとデュエルディスクを持参し、ドアの前に立つ。因みに朝は、昨日の事があってか、一緒には登校しなかった。
「さぁ、始まるざますよ」
こなたはかがみのクラスに入る。その顔は自信に満ちている。それもそのはず、今日の為に昨日こっそりとデュエルの勉強をしていたのだ。
「あ、そうだ。こなた、これ」「え? 何これ」
かなたが取り出したのは一つの飴玉だった。
「これは例えカードゲームのルールを知らないかがみちゃんでも、舐めるだけで即座にルールを理解できてしまうものなの」「あぁ、昨日言ってた『心配しなくても大丈夫』ってこれのことか。……。」
これがあったんなら、昨日勉強する必要無かったな。こなたはそう言おうと思ったが口には出さなかった。過ぎてしまったことはしょうがない。
こなたは飴玉を受け取り、かがみのもとへと向かった。
「やっほ~、かがみ」「あっ! こなた、何で今日一人で登校してるのよ!!」
やはりというか何と言うか、かがみはこなたが一人で学校に登校したことに納得がいかない様子だった。
「いやぁ~……、ちょっと用事があってね」
と、曖昧な返事をするこなた。かがみを避けるため……などと、口が裂けても言えるはずがなかった。
「まぁ、こなたがいればそれで良いわ。で、何で鞄持ってるの? アンタのクラスはあっt……!」
言いかけてかがみは止める。その先の言葉は合っていると思うのだが、何かに気付いたようだ。
「そう、こなたは私のクラスに転入したいのね!! 勿論OKよ、歓迎するわ。先生には私が言っておくからぁぁぁ!!」「いやいや、そうじゃないよ!!」
抱き着いてくるかがみを必死で避け、言い放つ。抱き着く対象が居なくなったかがみは、そのまま壁に激突する。
「ふぎゃっ!?」
ちょっとした振動がクラスに響く。何事かと、その光景をクラスの連中がこなた達を見るが……「なんだ、いつもの事か」と、通常モードに戻っていく。
「こなた、そろそろ……。このままじゃ、かがみちゃんが可哀相だわ」「分かってるよ。暴走するかがみは中々止まらないからね……」
こなたはかがみを、まるでシールを取るように壁から引き剥がす。
「うぅ……、こなたぁ~」「かがみ、ちょっと良いかな?」「な、何よ」
いつになく真剣な眼差しのこなたに、かがみは少したじろいでしまう。
「今から屋上に来てくれない? 大事な話しがあるんだけど」「だ、大事な話し……!?」
みるみる顔が赤くなっていくかがみ。頭の中は百合でいっぱいな気がする。いや、そうに違いないだろう。
「勿論、行くに決まってんでしょ!!」
かがみの返事を聴くなり、屋上へと向かうこなた達。 因みに今からホームルームなのだが……。そんな事よりも、こなたにとってはこっちの問題が優先なのである。 かがみに至っては、既に頭の中がこなたで埋め尽くされており、ホームルームの事など、これっぽっちも考えていないようである。これが末期か……。
「それで、大事な話しって……?」
屋上に着くなり、こなたに問い掛けるかがみ。……何故か上目使いで。
「はい、これ」「へ?」
こなたは鞄からデュエルディスクとデッキを取り出すと、それをかがみに渡す。
「これ……何よ?」
「実はね……」
こなたは昨日かなたに言われた事を説明する。勿論、『コナタニア症候群』の事は言わない。
「へぇー、つまり私がそのデュエルってので勝てば……」「私を好きにして良いよ。なんだったら、お嫁さんにしても良いよ」「お、お嫁!? 嫁嫁嫁よめ……こなたが私の嫁……!!」
こなたの大胆な発言に、頭から煙を出すかがみ。『お嫁』という言葉が相当効いたらしい。
「こなた……? そんな事言っちゃって大丈夫なの?」「しまったぁ~、言うつもりはなかったのに、つい……」「……」
もしかしてこの子、その気があるんじゃ……。と、少し心配するかなたであった。
「でもこなた! せっかくこなたがお嫁さんになってくれるのに、私デュエルのルール知らないわよ!」
まだ嫁になると決まったわけでもないのに、何を言い出すかねこの娘は。とりあえず前者の言葉はスルーして、ルールの問いかけに返すこなた。
「心配しなくて良いよ。そのためにこれがあるから」
こなたはポケットから、かなたに貰った飴玉を取り出し、かがみに手渡す。
「それを舐めるとね、デュエルのルールが頭の中にインストール出来ちゃうみたいなんだ」「……ホントに? さっきからテンション上がってて、色々とツッコメなかったんだが……。もしかして、私からかわれてんのか?」「う……」
デュエルに勝てば願いが叶う。飴を舐めればルールが解る。この非日常の連続に、かがみは冷静さを取り戻していた。そして、実際に試したことがないこなたは、そこで言葉を詰まらせる。 なんでこういう時だけ冷静になるんだよー、と頭の中でツッコミを入れながら。
「大丈夫よ、あの飴の効果は実証済みだから。自信をもって」
「う、うん。お母さんがそう言うなら……」
かなたの言葉で確信を持つこなた。かなたが居ること自体、こなたにとって非日常なのだから、何を今更……と思うこなた。
「そう思うのは、その飴を舐めてから言うもんだよ、かがみ!」「わ、分かったわよ」
飴を包みから取り出し、口に含むかがみ。
「へぇ~、意外とおいし……うっ!」
何かの衝撃で、頭を抱え、膝を付くかがみ。少し苦しそうに見える。
「か、かがみ!?」「大丈夫よ、落ち着いて」「う、うん」
慌てるこなたを静かに止めるかなた。その落ち着きから見て、かがみが苦しんでいるのは、突然知らない情報が頭の中に流れているからだろう。今頃かがみの頭の中では「俺のターン!」とか流れているに違いない。 そして、落ち着きを取り戻したかがみは静かに立ち上がると、こなたにビシッと人差し指を向け、こう言い放った。
「さぁこなた、デュエルの時間よ!!」「……!」
友人のいつもと違う変わりように、こなたは少し驚いていた。かがみの目を見ると、その目には闘志の炎が燃えている。
「いよいよね。こなた、頑張って!」「うん、お母さんはそこで応援してて!」
かがみは既にデュエルディスクを腕に装着している。
「こなたが私の嫁こなたが私の嫁こなたが私の嫁こなたが……」「……」
何かとんでもないことを永遠とリピートしているが、こなたは聞こえなかった事にした。 そして、こなたも準備が完了し、二人は距離を取る。
「さぁ、いくわよ! こなた!」「いつでも良いよ、かがみん!」
「「デュエル!!」」
二人の戦いが今、始まった!!
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