オマケ
南のサーバ地方へ向かう道中、日も暮れたので、三人はキャンプをすることにしたつかさはフライパンを焚き火の上に乗せると、バターを落とし、玉ねぎと生米を入れてよく炒め、そこにブイヨンと水、肉を加えて炊くようにしたつかさが初めて母親から教わった料理、『リゾット』。作り方は、忘れるはずもない。
「学校について教えてって?」
そこから少し離れたところ、こなたとかがみは話をしていた
「私行ってなかったから、少し興味があるんだ」「そうねぇ……教科はわかるでしょ?」「うん。国語、数学、理科、社会、イリジアン語が必修科目でしょ?」
イリジアン語とは、北西の方にある『イリジアン地方』に古くから伝わる言葉であるあのパティも、言葉と名前からしてイリジアン人だろうもっとも、こなたがそれを知ったのはこの旅の途中であったが
「そうね。あと普通の人は剣術、印を持つ人間は魔術を学ぶの。私は剣術ね」
そう言ってかがみは腰に提げた鞘から湾曲した剣を抜いてみせる
「学校では木刀だったけど、今は柊家の家宝『シャムシール』を使ってるわ。獅子の尻尾って意味があるの」「そうなんだ」「学校で習うのは基本的な剣術だけなんだけど、私達の家には独特の剣術があってね……」
かがみが立ち上がったと思うと、剣を振るって衝撃波を発生させた
「おお!」「これが『魔神剣』っていう技。私の祖先が最初に編み出した技なんだけど、会得するまで一週間近くかかったわ」「一週間も?」「私、家族の中で一番弱かったのよ。姉さんに至っては、魔神剣を応用して新しい技を編み出したり」
剣を鞘に収め、こなたの正面に座った
「パトリシアって人と戦った時、驚いたわ。同じような技があるなんて、世界は広いわね。……そういえばあんたは? 格闘家みたいだけど」「私? 私のは色んな流派を取り入れた総合格闘技だね。オリジナルなのは一つもないかな。武器は基本的に素手、たまにグローブかガントレットを使ってるんだ」
ガントレットとは、言うなれば鋼鉄でできたグローブのようなものである本来は防御用のものだが、威力は素手よりある。攻防一体、といったところか
「剣術も少しは習ってたんだけど、あれって一歩間違えると簡単に人を殺せちゃうじゃん? だから、ね……」「私も最初はそうだったわね。でも、自分の身を守るためだって考えたら、普通に使えるようになったわ」「ご飯が出来たよ~」
つかさの声だ。会話を一時中断して焚き火の方へ向かうつかさは重ねてあった皿を一枚取り、リゾットをよそってこなたへと渡した
「胡椒とハーブがなかったから、あんまり美味しくないかもしれない」「こんな状況じゃ、贅沢言えないわよ」
スプーンを受け取り、かがみは一口すくって息を吹きかけて冷まし、口に運ぶ
「……うん、確かにいつもよりは味が落ちてるわね」「ほれへもなはなはほいひいほ(それでもなかなかおいしいよ)」
先に頂いていたこなたが口いっぱいに含みながら伝える
「言いたいことはわかるが、意地汚い。飲み込め」
口の中のリゾットを一気に飲み込む。『ごっくん』という擬音が聞こえたような気がした
そして食後、焚き火の周りで三人は先ほどの話の続きをした剣術についてはかがみに聞いた。次はつかさに魔術について聞く
「魔術の方はね、それぞれの属性魔術を使える先生がいるの。その人の元で学ぶんだよ」「でも、オーフェンは小さな村だったからね……光と闇、雷と土の魔術を行使できる先生がいなかったの」「だからアウレから翻訳された魔導書を借りて、自分たちで勉強するんだ」
こなたもそうだった。図書館の魔導書で魔術の知識を得たこなたは、少し親近感が湧いた
「魔術って本当に便利よね。頭の中のイメージが具現化されるんでしょ?」「魔力とかにも左右されるけどね。自由自在に操れるのは確かだよ」「結構、便利よね。体力が下がるのはゴメンだけど」
魔術師ではない人間が焚き火を作るのは至難の業であるしかし魔術師ならば指先から火を出せば一発なのだあの焚き火だって、つかさの魔術によって火が着けられたのだ
「でもパトリシアさん、印を持ってたのに強かったよね」「もしかしたらパティは、魔剣士として育てられたのかもしれないね。そういうのは昔もあったみたいだし。ただ……」
自分の右手に付いている白晶石を見つめながら、こなたが呟く
「晶石を使って魔術を使えるようにする技術はとっくに失われてるんだ。その技術が書かれた魔導書だって、翻訳されてないしアウレに一冊しかないし……」
そう、こなたが気に掛かっているのはそれだ失われた技術である。魔導言語が読めない限りは現在に復活するなど、あり得ないのだ
「あんたみたいな奴がまだいるって意味よね。でも、これ以上考えても埒が開かないわよ。次に会ったら聞いてみましょ」「……うん、そだね」
それ以上考えるのをやめ、こなたは二人を見るそして、気が付いた。かがみの腰には鞘が――武器があるしかし、つかさは何も持っていないのだ。魔術師であっても、杖などの武器は常備してるはずなのに
「そういえば、つかさは何か武器はないの? 前の戦いじゃ、見なかったけど……」「使わなかっただけだよ。ちょっと待ってて」
そう言ってつかさはテントの中に入っていくそして、少し大きめなカバンを持ってきた
「ここにいろいろ、武器とか入れてるんだ」「つかさは魔術師である前に、あの呪いがあったからね。腕力とか、普通の魔術師よりないのよ。だから……」
つかさがリュックを地面に降ろす。置いた瞬間、『ドスン』という音がしたような……?それに気付かなかったのか、かがみが何事もなかったかのように中を漁る。出てきたのは小型拳銃
「こういう拳銃とか投てき武器とか、軽いものを使うよう……に? なんか増えてるような……」
かがみが更にカバンを漁る。するとまあ出てくる出てくる拳銃、ハンマー、短剣、ボール、クナイ、手裏剣、チャクラム、爆弾、怪しげな薬、以下略……投てき用の武器に至っては、同じものが幾つも入っていたカバンの横に出来た武器の山。明らかにカバンの方が小さいはずなのに……その全てが、カバン一個から出てきた
「なによ、この量……?」「こっちの方が絶対に重いよ……?」「あ、あはは……無くなるよりは、持ってた方がいいかなって……思ったんだけど……」「ていうか……このカバンのどこにこれだけの量が……?」「四次元ポ○ットっていうのを魔導書で見たけど……これ、カバン……」
とりあえず、それ以上何もツッコまないことで二人は合意した
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