1―3
(さて、どうしようかな……)
暗闇の中、こなたは宿屋の前で思案していたアウレ町の宿屋は少し特殊で、宿泊客以外の人間が中に入るには宿泊客の許可を得ないといけないもちろん向こうは自分の名前を知らない。自分も向こうの名前を知らない。これでは会うことはほぼ不可能だ
(……仕方ない、覗きみたくなっちゃうけど、窓の外から……)
こなたは宿屋と隣の家屋との間に入り、裏手に回るそこは意外と広々としており、夕方なら小さな子供が鬼ごっこをしていそうだこなたは宿屋の窓から見えないよう、窓の下を通る中をそっと確認し、目当ての女の子がいないと、次の窓に向けて動きだす。その繰り返しそして、とある窓の下で彼女の動きが止まる窓の下から目の部分から上だけを出し、中を確認するそこには、薄紫色の髪の女の子が二人いた一人は椅子に座り、一人はベッドの中で上半身を起こしている
「……つかさ、またひどくなってない?」
椅子に座る女の子の声。横顔しか見えないが、あのツインテールは間違いない、今朝の女の子だ
「ううん、私は大丈夫だよ、お姉ちゃん…」
今度はベッドの上の女の子。どうやらツインテールの女の子の妹らしい、姉と違ってショートカットだなぜか肩で呼吸をしており、苦しそうにしているが、ここからでは顔がよく見えない左手にアザがあるところを見ると魔術師であろう
「ほら、あまり無理しちゃだめよ?」「うん……。少し横になるね」
そう言うと、つかさと呼ばれた女の子はベッドの中に潜り込む少しだけ身を乗り出してみると、つかさの顔が少しだけ見えた
(……!?)
「……この旅を続けてもう一ヵ月だね」「そうね……でも、つかさの容体は悪くなるばかりね……」「私の病気って、生まれつきなんだよね……」「ええ……いろいろなところの医者を訪ねたけど、結局治る気配すらなかったって、お母さんが……」『それは医者じゃ治らないはずだよ』「「え!?」」
突然した声に驚く二人。窓の外を見ると、青く長い髪に頭からぴょこんと跳ねた毛ツインテールの彼女には、それらに見覚えがあった。今朝、ぶつかった女の子だ
「ごめん、話は聞かせてもらったよ」「あんた、なんでここにいるのよ!?」
彼女が窓を開けて尋ねると、こなたは窓のさんに飛び乗る
「説明は後だよ。まずはつかささんが先決だ」
ひらりと舞い降りて部屋の中へと入る
「お姉ちゃん、知り合い?」「あ、うん。今朝、ぶつかった女の子よ」「つかささん、っていったっけ。私は泉こなた。よろしくね」「うん、よろしくね。私のことはつかさでいいから」
笑顔ではあるが、呼吸は荒く、辛そうにしている
「私は姉のかがみよ。ちなみに名字は柊。それで……つかさが医者じゃ治らないってどういうこと?」「教えてほしかったら八坂こう(この世界唯一の魔導言語翻訳家)さんのサインを」
……鈍い音が辺りに響いた
「気を取り直して……」
ドでかいタンコブを頭に作ったこなたはつかさの顔を見てから少し間を置き、
「つかさは多分……呪われてるよ」『……え……?』
二人は何も言わず、つかさを、自分自身を見るつかさは、自分は、ただ病弱なだけだと思っていた。それがまさか、呪いだったなんて……今までの苦労は何だったのだろう、落胆したかがみはうつむいた
「これは……どうやら対象者の魔力を奪う呪いみたい生まれつきってさっき言ってたから、その時から狙われてたんだろうね。つかさは常人よりも魔力が高いみたいだし」
魔力とは、魔術を行使する際に必要な力であり、すべての命の源でもある。これが尽きると、その者の命も尽きてしまうのだ基本的に魔術を行使する際に消費され、時の経過により回復していくが、つかさのように呪いによって魔力を吸い尽くされた人間もいるのだ
「……さて、どうする? 一番手っ取り早いのは呪いをかけた張本人を倒すこと」
淡々と、二人にそう説明し、反応を伺う。すると、うつむいたままのかがみが左の手で拳を作った
「……場所は、わかるの……?」「うん、だいたい予想はついてるよ。一緒にくる?」
かがみは顔をあげ、拳を高く振り上げた
「私も、つかさを救けたい!!」「……決まりだね」
かがみからつかさへと視線を変え、
「つかさは私の家で待っててくれないかな? 本当は強いんだろうけど、今のつかさだと酷だよ」
つかさは少し考え、憂いを含んだ顔で何も言わずに縦に振った
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